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霧積温泉・金湯館その1

――母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?
ええ、夏碓井から霧積へ行くみちで、
渓谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ。
――母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
僕はあのとき、ずいぶんくやしかった。
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
――母さん、あのとき、向うから若い薬売が来ましたっけね。
紺の脚絆に手甲をした――。
そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。
だけどとうとう駄目だった。
なにしろ深い渓谷で、それに草が
背丈ぐらい伸びていたんてすもの。
――母さん、本当にあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍に咲いていた車百合の花は、
もうとうに枯れちゃつたでせうね。そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが鳴いたかも知れませんよ。
――母さん、そして、きっと今頃は、――今夜あたりは、
あの渓間に、静かに雪が降りつもっているでせう。
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y・Sという頭叉字を
埋めるように、静かに、寂しく――。
(西条八十作 帽子)
 角川映画「人間の証明」(森村誠一原作)でむしろ有名になったこの詩。
Mama, do you remenber? ~ジョー山中の歌う主題歌とともに流れる帽子が山中を飛んでいくシーンのスポットCMがいまだ記憶に残る。この詩にあるのが、「霧積」。
 峠の釜めしから碓氷峠を目指し、途中、「玉屋ドライブイン」のところを右折。約30分、クルマで上っていくと、霧積温泉・金湯館(きんとうかん、碓氷郡松井田町坂本1928、027・395・3851 )がある。
 まさに秘湯。クルマですれ違うのもつらい1本道が続く。途中、山猿にも出合った。クマ、イノシシ、カモシカもいるという。 
 最後は駐車場にクルマをとめ、山道を下っていくと水車が回る金湯館にたどりつく。
 明治16年に建てられた木造2階建ては今も残っている。
 冬でも4輪駆動車でスタッドレスタイヤをつければ訪ねられるというが、宿泊客は玉屋ドライブインまで、送迎もしてくれるという。冬の秘湯。いいかもしれない。
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