白洲次郎&武相荘(町田市)
いま、とても気になっているのが、白洲次郎。改憲論議が活発になろうとしているが、終戦連絡中央事務局の参与として、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)と憲法制定をめぐって真っ向からやりあった「従順ならざる唯一の日本人」が白洲次郎だ。
憲法論議となると概念的なやり取りに終始することが多いが、『白洲次郎 占領を背負った男』(北康利著、講談社)を読むと、当時の様子が克明に分かる。現在の憲法が占領軍によって押し付けられたということは否定しがたい事実で、次郎は「今に見ていろという気持ちを抑え切れなかった」という文書を残している。
けれども彼は日本国憲法について「そのプリンシプルは実に立派である。押し付けられようが、そうでなかろうが、いいものはいいと率直に受け入れるべきではないだろうか」とも語っている。
歴史の表舞台に立つのは吉田茂だったりするわけだが、実際に現場で動いた者に焦点を合わせたルポはリアリティがあって実に面白い。白洲次郎は吉田茂を盛り立てて、懐刀として獅子奮迅の活躍をした。通商産業省を創設したのも白洲次郎だ。
「プリンシプル」は白洲次郎がよく口にする言葉である。大原則をしっかり持っていれば人は揺るがない。
目先の細かいことに拘泥せず、長い目で見て正しいと思うことをしよう、といつも思っている。白洲次郎の人生観には共感できる。白洲次郎の生き方に惚れてしまった。
しかも、彼は、ゴルフ好き、クルマ好き、酒好き、野球好き。趣味も一致している(^_^;)
さて、白洲次郎は戦況が怪しくなると、東京は危ないと考え、いち早く町田市の鶴川駅近くに家を構える。それが「武相荘」(ぶあいそう)だ。武蔵の国と相模の国の境にあるから武相荘なのだが、「不愛想」ともかけている。
鶴巻温泉の後、武相荘(東京都町田市能ヶ谷町 1284、042・735・5732)を訪ねた。
小田急線鶴川駅から徒歩15分。
開館時間は10時~17時(入館は16時半まで)。休館日は月曜日・火曜日(祝日・振替休日は開館、夏季・冬季臨時休館あり)。入館料は税込み1000円。
茅葺屋根の家。
少し前までタケノコだったと思われる竹。
バラ。
キショウブ。
武相荘の中は撮影禁止。ホームページに写真と説明がある。
武相荘の中では料理の模型などを置いて、生活感を出しているが、そんな仕掛けなしに、当時の様子がはっきりわかるのが正子の書斎。仕事がはかどりそうな書斎だった。
次郎は日本の狭くて曲がりくねった山道をジープで走っている図を書いて、日本の伝統に沿った道を選ぶようにGHQを説得した。そのときの「ジープウェイ・レター」の展示もあり、興味深かった。
武相荘を訪れる人の大半は、恐らく次郎の妻、白洲正子ファンだろう。
どんな人か。ホームページによると、「戦後は早くより小林秀雄、青山二郎と親交を結び、文学、骨董の世界に踏み込む。二人の友情に割り込むために、飲めない酒を覚えるが、そのため三度も胃潰瘍になるなど、付き合い方は壮絶」。
晩年二人は武相荘でゆっくり過ごすが、白洲次郎が現役のころは、ほとんどすれ違いの生活だったに違いない。でも、夫婦は、それぞれが生き生きとしているのであれば、多少のすれ違いがあってもいいのではないか。
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Comments
白洲次郎は、私もはまっています。爽やかな人生ですね。
プリンシプルを大事にするのは、私と同じです。あれほどスケールは大きくないけど、会社の中での位置づけは白洲次郎みたいなものかと・・・。
あと、ダンディじゃないとダメなんで、そこのところは大いに感化され、修行中です(笑)。
Posted by: ちき | 2007.05.20 01:02 AM
こうした立派な人とは対局にいる非人ではありますが、「プリンシプル」「大原則をしっかり持っていれば人は揺るがない」というのは本当にそう思います。いまはそれがありませんからね。
Posted by: 賽目 | 2007.05.22 04:05 AM