江戸東京博物館開館15周年記念特別展「北斎~ヨーロッパを魅了した江戸の絵師」
江戸東京博物館開館15周年記念特別展「北斎~ヨーロッパを魅了した江戸の絵師」(2007年12月4日~2008年1月27日)を見に行った。
一般に「赤富士」と呼ばれる冨嶽三十六景「凱風快晴」や冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」 で有名な北斎(1760~1849年)。けれども、「北斎の作品は『赤富士』などの版画ばかりではありません。一生を通じて制作した分野はむしろ肉筆画や各種の版本への絵の提供でした」と特別展のあいさつで言うように、北斎の世界ははるかに広いことを実感できた。すばらしい特別展だった。
まず驚いたのが西洋画のような肉筆画。北斎工房という枠のなかで北斎とその弟子たちが、さまざまな風俗画を描いているのだが、そのどれもが、遠近感もしっかりある現代絵画のような絵なのだ。
その中には冨嶽三十六景「隅田川関屋の里」のもとになった絵もあった。二つを比較すると肉筆画は武士が馬に乗って疾走する様を写実的に描写しているが、版画になると視点が高くなり、構図も美しく、よりデザイン感覚が強くなる。冨嶽三十六景を完成させる前に、まず、地道にいろいろな題材を描いたのだろう。
次に驚いたのが、何でも絵にしてしまおうとする北斎の貪欲さ。
上は「悪玉踊り」の図解だ。これがあればすぐに踊りだせそうなほど、動きがよく分かる絵だ。
さらに、「画本早引」では普通は絵で説明しにくい「概念」までも絵にしている。
例えば上にあるような我が儘。「賄賂」とか「別れ」なども絵にしていた。すごい。
そして、現実世界には飽き足らず、水木しげるも驚くくらい、いろいろな幽霊、妖怪の絵を描いている。斬首刑で切られた生首の絵もあった。人間、動植物、風景、風俗など現実世界を限りなく描いている北斎だが、あの世も描いてみたかったのかもしれない。
Googleという会社は、オンライン上にある情報だけでなく、あらゆるものを検索の対象としてGoogleに取り込んでいこうとしているが、北斎も現実に見えるものから概念、あの世のものまでも描こうとしている点で、相通じるところがある。
「北斎漫画」十編にある上の絵には「まいった」。
上の真ん中にある割り箸(?)を鼻と口に入れている姿は、私がカラオケでの十八番である「ゲゲゲの鬼太郎」を歌うときの姿なのだ。う~ん。オリジナルだと思っていたのだが、江戸時代から同じことをしていた人がいたのか(大汗)。
現代人の多くは現代は明治から続いているような気になっているのではないだろうか。江戸の文化が豊かなことを理解していても、少なくとも私には、江戸と現代に間には隔絶感があった。でも、北斎の絵を見ていると、同じ日本人だなと感じる。90歳まで生きた北斎、きっと茶目っ気のある面白いお爺さんだったのではないだろうか。
常設展示室5階第2企画展示室では「北斎漫画展」「北斎諸国名橋奇覧と諸国瀧廻り復刻版画展」(2008年1月2日~2月11日)も開かれていた。
「赤富士」の摺りの実演が行われていた。
富士の裾野の左がわの空。うっすら青い色をつけたところ。絵の具の付け方に工夫しており、なかなか大変な業。
何度も版を重ねる。見当(版画や印刷で、刷る位置を示す目印。また、多色刷りで、刷り重ねる時の目印)にあわせて、紙を置く。見当違い、見当はずれになると版画は失敗する。自分でやったら、ここで失敗しそうな気がする。
赤い部分を摺る。
できあがり。一つ摺ると水でぬらした新聞紙に摺る紙を挟むなど細かい手順がある。大変な作業だ。1枚1万円以上で売られていたのもうなずける。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、「東京都江戸東京博物館(とうきょうとえどとうきょうはくぶつかん)は、東京都墨田区横網(よこあみ)にある博物館である。両国駅から徒歩3分、国技館の隣に位置する。東京都歴史文化財団が管理と運営を行っている。分館として、小金井市の小金井公園内に江戸東京たてもの園がある。失われていく江戸、東京の歴史と文化に関わる資料を収集、保存、展示することを目的に、平成5年(1993年)3月28日に開館した」とある。
国技館(上の写真)の隣にある。
常設展示室では江戸、東京の建物を復元。
建物の模型も数多く展示されている。
古くから伝わるおもちゃも販売している。
開館時間は午前9時30分~午後5時30分 (土のみ午後7時30分まで)。
休館日は毎週月曜日 (祝日、振替休日が休館日に当たる場合は開館、翌日休館・大相撲東京場所開催中は開館)と年末年始 (12月28日~1月1日)。
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Comments
北斎はすごい人ですよね。ムンクも北斎と似ているところが多いと思います。
Posted by: さいのめ | 2008.01.08 12:51 AM
へえ~そうなんですか。
ただ、ムンクのいろいろな絵が関連しているところは、漫画家のようだなと感じていました。
Posted by: フーテンの中 | 2008.01.20 10:21 PM