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クラウドの限界も感じさせてくれた城田真琴著『クラウドの衝撃』

  『クラウド化する世界』 『クラウド』を読んだ勢いで、『クラウドの衝撃』(城田真琴著、東洋経済、1500円、2009年2月19日発行)も読んでしまった。 頭の整理ができる良い本だった。
Shirota_makoto
クラウドの衝撃

 クラウド・コンピューティング・サービスを分類すると以下の3つに大別される。
(1)HaaS(Hardware as a Service:ハードウェア・アズ・ア・サービス)
 サーバーのCPU能力やストレージなどのハードウェアをインターネット経由で提供するサービス
(2)PaaS(Platform as a Service:プラットフォーム・アズ・ア・サービス)
 アプリケーションを稼動させるプラットフォーム機能をインターネット上で提供するサービス
(3)SaaS(Software as a Service:ソフトウェア・アズ・ア・サービス)
 アプリケーション・ソフトウェアの機能をインターネット上で提供するサービス

 これらを企業のIT戦略のなかでどう活用すべきか、を論じていた「第5章」は大変参考になった。
 自社でサーバーを調達する場合とこれらの3つの場合を比較すると、自社調達の場合は、すべて自社でコントロールできる半面、高コストになる。これをHaaS→PaaS→SaaSと切り替えていくに従って、自社でコントロールできる範囲は小さくなるがコストは安くなる。このコストとコントロールのバランスをどうとるのかが企業にとって重要だという。
 バランスをどうとるかにあたって、コンサルタントのジェフリー・A・ムーア氏が提唱する「コア/コンテクスト」理論が参考になるという。
 「コア」とは企業競争力の源泉となり、永続的な差別化を可能にする企業活動であり、それ以外の業務が「コンテクスト」となる。
 同氏はさらに「ミッション・クリティカル」(万一、停止してしまった場合、直ちに深刻なリスクにつながる企業活動)と「非ミッション・クリティカル」(それ以外の活動)の区別を提唱。コア、コンテクストと組み合わせて、クラウド・コンピューティング・サービスの適用領域を規定する。
 以下の4パターンがあるという。
①コア×ミッション・クリティカルの領域は「企業に競争優位をもたらす戦略的なシステムであり、万一システムが何らかの障害により稼働しなくなった場合、企業経営に多大な影響を及ぼす。このため、この領域のシステムだけは積極的に社内リソースを投入し、自社開発を行うべき」としている。
②コア×非ミッション・クリティカルの領域は「非公式な研究プロジェクトや実験的試行など将来的に競争優位をもたらす可能性がある一方で、成果を出せない可能性もあるシステムが該当する。この領域はクラウド・コンピューティング・サービス、とくにPaaS、HaaSの利用を積極的に検討すべき」という。
③コンテクスト×ミッション・クリティカルの領域は「コアでなくてもビジネスの根幹を支えるシステムであることから、サービスレベルが許容範囲を下回り、業務に悪影響を及ぼすことがあってはならない。SaaSの利用を検討すべきだが、サービス・プロバイダの選定は慎重に行わなくてはならない」と指摘する。
④コンテクスト×非ミッション・クリティカルの領域は「他社との差別化につながるわけでもなく、経営の観点からも重要度が低いため、クラウド・コンピューティング・サービス、とくにSaaSの利用がもっとも効果的」であるとする。
 クラウド時代になっても“コメ”のように自給自足が必要な根幹の事業分野にはクラウドには向かないということで、クラウドを全面的に肯定しない意見は参考になった。

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