富士登山その1(五合目~八合目)
富士山は子供のころから登ってみたいと思っていた。しかし、今年登るとは、考えてもいなかった。決めたのは7月になってからだった。
きっかけの一つは、7月1日にテレビで見た山開きのニュース。はじめて「富士山は7月、8月しか登れないのだ。登るならこの時期だ」と思った。
次に友人が7月22日は関東でも日食が見られるので、甲府のぶどう畑で日食を見ないか、と誘ってくれたこと。日食のときは木漏れ日が地面に映る形も日食の形になる。ぶどう畑の無数の木漏れの影を見ると幻想的というのだ。これは良い提案だった。乗りかけたが、ぶどう畑を経営する甲府のワイナリーが水曜日は休みで、レストランなどが利用できないことが分かった。それならば、日本で一番太陽に近い場所で、日食を観察しようと思った。
夏休みを取り、富士山に登ることにした。
初めはバスツアーを考えた。しかし、ご来光を見るツアーがほとんどで、午前零時を過ぎてから、真夜中に登山するという計画になる。夜中に山登りはしたくないし、今回はご来光ではなく日食を見るのが目的だ。
それに、登山ツアーには二つのマイナス面がある。
一つはどんな参加者と一緒になるか分からないので、足を引っ張られる心配があること。今年のゴールデンウイークで参加した「残雪と新緑のブナ林ショートハイク」。小さな子供を連れた家族が突然参加したために、残雪の上を子供を連れて歩くのは危険だからと、途中で引き返すことに。
逆に、ツアーだと天候が微妙な時に「決行」となる可能性も高い。多少危険でも、多くの客が行きたいと言えば、そちらに流れやすい。原因はよくわかっていないが、北海道・トムラウシ山で悪天候のため年配の登山客が遭難した事故は、まさにツアーの強行が原因だった気がする。
ガイドがいることは心強いし、それゆえにツアーを選ぶ人が多いが、すべてがガイド頼みになる欠点もある。 装備をきちんとして、自分の判断で行動することが、登山には必要なのではないか。
富士山の地図を買い、そこに掲載している山小屋に電話をして予約を取った。
さらに、いつもは山歩きの師匠、Mさんに頼り切っているが、登山用品店に行って大き目のリュック(3.2ℓ)を買い、医薬品、食料品、水などを十分に持っていけるようにした。
前置きが長くなったが、富士登山、決めたのは急だが、準備はしっかりしたつもりだ。
自家用車に乗って家を午前6時ごろ出た。休日の1000円乗り放題がないので、高速はすていて、富士スバルライン経由で8時過ぎには五合目に着いた。駐車場もすいていた。
高山病にならないように、五合目でしばらく体を慣らしてから来てください、と山小屋に言われていたので、3時間くらい、五合目で過ごした。
五合園レストハウス(0555・72・1251)でコーヒーを飲んだ。標高2305m。霧(雲?)に包まれたり、晴れたり、天候が頻繁に変わる。
神社があったので、「無事山頂に登れますように」「日食が見られますように」と祈った。
クルマで仮眠。食事は売店でソーセージ、肉まん、あんまんを買って食べた。おにぎりも売っていた。
登山口スタートは11時37分。
気楽に五合目まで来て、ちょっと歩こうという人から、本格的な山登りの装備をしている人までさまざま。外国人も多かった。
12時5分、六合目に到着。六合目の簡易トイレには長い行列ができていた。五合目で済ましておけばいいのに。
六合目からが本格的な山登りだ。
馬に乗って下りてくる人もいた。
ちなみに乗馬料金は
五合目~泉ヶ滝片道4000円。
五合目~六合目片道7000円。
五合目~七合目片道1万4000円。
獅子岩~五合目下山1万2000円。
乗馬組合が運営している。
歩きにくい砂利道。落石防止と思われるフェンス沿いに、ジグザグの道をゆっくり登る。
七合目の山小屋が遠くに見える。「3歩進んで2歩下がる」という感じで、砂利道は滑り、前になかなか進めない。
もう少しで七合目の最初の山小屋、花小屋。
13時6分、七合目到着。
七合目からは登山道は岩の道に。しかし、足場がしっかりしていると登りやすい。
七合目からの景色。雲が下の方に見える。
岩の道は続く。
空気が薄くなったという実感。すぐに息が切れる。
八合目の最初の山小屋、太子館が見えてきた。
14時43分、八合目到着。
八合目に来ると風が強くなり、気温も低くなってきた。
山小屋で小休止。
霧も出てきて環境が厳しくなってきた。
道は再び砂利道に。靴が沈み込むし、後ろに滑り、なかなか前に進まない。
15時18分、白雲荘に到着。もう少しだ。
目的地は次の山小屋、元祖室。
富士山の厳しさが体感できた。
寒さと疲れが重なってきたころに、元祖室(がんそむろ、山梨県富士吉田市上吉田6-9-4、0555・24・6513)に着いた。15時28分。
元祖室は標高3250m。ホームページには「2007年8月4日放送の『アド街ック天国』で元祖室がランクインされました」とある。キムタクと草なぎ君が泊った山小屋としても有名だ。
靴を脱いで、レインコートを脱いで、 宿泊料金(平日、一泊二食付7500円)を払うと、寝室に案内してくれる。 山小屋に泊るのは初めて。体を寄せ合って眠る感じだ。
このスペースで二人。一つの布団に二人という感じだ。
4時半に夕食。カレーライス。夕食時は御茶、飲み放題。花らっきょうと福神漬も好きなだけ食べられる。とても空腹だったので、早い夕食はありがたかった。
その後も30分おきに到着順に夕食を食べる仕組み。
席が空いていれば、残ってもいいと言われたので、しばらく本を読んでいた。
読んだのは大学時代に買って、読んでいなかった新田次郎「孤高の人(上)(下)」(新潮文庫)。
ちょうど”孤高の人”加藤文太郎が冬の富士山に登るところだった。
加藤文太郎は、日ごろの訓練と独自の工夫で、冬山の単独行を何度も成功させたが、加藤の物まねをする男と初めて二人で登山。彼の無謀な計画に引きずられて遭難してしまう。
自分の体力や生命にかかわることは他人に引きずられずに自分で決めなくてはならない。単なるお付き合いで山には行ってはいけないと改めて感じた。
翌朝の弁当も配られる。下山時に砂が舞うということでマスク付き。
弁当の中身はこんな感じ。
頂上でご来光を見る人は午前2時出発。八合目でご来光を見る人は午前4時半、元祖室前で。いずれも起こしてくれるというので、午後8時に寝た。
暴風雨が吹き荒れる音が一晩中していた。22日の頂上行きは無理だな、と思っていた。
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