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大前研一著『サラリーマン「再起動」マニュアル』(小学館)

 大前研一著『サラリーマン「再起動」マニュアル』(小学館)を読んだ。
Saikidou
サラリーマン「再起動」マニュアル

 「イントロダクション」に次のように書いている。
 「バブル経済崩壊後17~18年もぬるま湯につかっていたせいで日本は緊張感が全然なくなり、政府はもとより地方自治体も企業も個人も、たるみ切っている。だから、どの部門もトラクション(駆動力)がなくなって日本全体が“フリーズ”しているのだ。しかし、そういう現状は、志のあるサラリーマンにとっては大きなチャンスである。周囲がみんなフリーズしている時に『再起動』してグローバルに通用する人材になれば、日本企業はもちろん、世界中の企業で活躍できるからだ」。
 たるみ切っているとは思わないが、時代の大きな変化についていけず、業績の急降下にコストカットで対応するだけの覇気のない企業が多くなっているのは事実だ。何が間違っていて、どうすれば現状を打開できるのか。本書は欲求不満の高まるサラリーマンの背中を強く押してくれる。
 「2009年は・・・『AG25年』・・・『AG』とは『アフター・ゲイツ(ゲイツ後)』、すなわちゲイツ率いるマイクロソフトの『ウィンドウズ』バージョン1が誕生した1985年に幕を開けた新世紀を意味している。・・・世界はこの年を境に一変した。・・・何もかもがアナログからデジタルへ、リアルからバーチャルへ、モルタル(現実の店舗)からクリック(サイバービジネス)へと急速に移行していった。そして、それ以降の25年を細分化すると、5年ごとに大きな転換点を迎えており、現在は、旧世紀の残滓が一掃される最終段階の激変期に突入している」
 ところが、「いま日本の社会で中核的な役割を担っているはずの」「30代後半~40代のサラリーマンの大半は、このビジネス新大陸にうまく適応できていない」という。「新大陸の環境(=デジタル時代の新しい経済社会)で生き延びていくための戦闘訓練を受けていない」ためだ。
 どんなことを行えばいいのか。
 「新大陸で勝ち残る企業の多くはプロジェクト・ベースの組織が主流になると思う。なぜなら、新しいものを生み出していくためには、マンネリ化しやすいピラミッド型組織ではなく、変化に柔軟かつ素早く対応できるプロジェクト・ベースが適しているからだ」
 「プロジェクトは、立ちふさがっている問題が明確に存在し、それを解決して答えを出すためにやるもの、社内の既存組織ではなかなかできないことをやるためのものだ。その場合は従来路線から発想が飛ばなければ絶対にブレークスルーできないので、同類項や既存の人間だけを集めてもダメなのだ」
 「経営指標はたしかに重要だ。しかし、それが目的になってはいけない。現場で何が起きているのか? お客さんの財布の使い方はどう変わっているのか? 現場でじかにお客さんと接し、現場で考え、現場から発想することが大切だ」
 「会社に入って20年前後の中堅世代には事業構想が苦手な人が多い。その最大の理由は、会社の中で事業計画が“年中行事”になっているからだ。たとえば、毎年秋になると事業計画会議があって、来年度の予算は事業計画を決めろといわれる。そうすると、どうしても・・・『Do More Better』という考え方、すなわち従来と同じ方向の中でより良くしていくという考え方に陥りがちになる」
 「旧大陸系企業は、数字がコミュニケーションの基本である。・・・まず数字を示して目標を立て、その目標に到達するための行動計画を作り、それに必要なヒト、モノ、カネを手当てしていく。・・・しかし、その数字はすべてアナログの数字である。つまり旧大陸はアナログ社会なのである。だから発想が飛ばない。方向転換ができない。同じ方向でスピードと程度を変えるだけだ」

 本書は「現場力」が強い企業がエクセレントカンパニーだとして、スペイン生まれのカジュアルブランド「Zara」を例に挙げている。スペイン・ガリシア地方のアパレルメーカー、インディテックスが展開している店だ。
 「たとえば、東京・六本木ヒルズ店の店長から、うちの店ではこういうジーンズが売れていて在庫が足りなくなりそうだ、と本社に連絡が入る。すると、わずか48時間以内にその商品が届くというオンデマンド・システムを構築しているのだ。そればかりか、全く新しい商品でも2週間あれば作れるというから驚きである。これから流行しそうなパンツやドレスが競争相手から出てきたら、それに沿ったものをすぐに作って店に並べられる。要するに、アパレル版の『ジャスト・イン・タイム』方式なのだ」
 「日本の小売業の場合は、本社部門に立て籠もって販売データだけを頼りに現場感覚をおろそかにしている、といわざるを得ない。・・・日本の小売業はもっと現場を大切にして、統計よりも現場感覚に重きを置き、それに本社部門が対応していくべきではないだろうか」
 しっかりと顧客をつかんだうえで、ものづくりは世界で最も安くて最も優れたものをつくる企業に委託するというのがこれからのエクセレントカンパニーだという。その例として、パソコンメーカーのデル、世界最大のEMS(電子機器受託製造サービス)メーカーの鴻海工業(Hon Hai Precision Industry)を挙げている。
 「ところが日本の総合電機メーカーには、そのことに気づいている会社が少ない。・・・自分で設計し、自分の部品を使い、自分で組み立て、自分のブランドで売るという垂直統合モデルでやってきた彼らは、メーカーのプライドだけ高くて作る能力がない。コストは高いし、設計では意地を張るし、何でも自分でやろうとする」

 最近のリストラに対しても一刀両断。「根本的な企業体質に問題がある会社がよくやるリストラ策は、“ケチケチ運動”だ。たとえば、昼休みは電気を消す、紙は必ず裏も使う、ボールペンは使い切るまで新品を支給しない、といったみみっちい経費削減である。これはダメ会社の典型だ。その程度の節約は会社のムードが暗くなるだけで、全部足してみても0.1%の削減になることは、まずない」
 「リストラを始めた会社はやたらと仕事が忙しくなる。仕事をリストラしないでヒトをリストラするから、残った人の仕事量が倍ぐらいになってしまうのだ。しかも、それは全部、『できる人』に回ってくるので、今度は過労死の問題が出てくる。本来は不要な仕事をリストラして効率を上げるべきなのだが、そんなことをしてくれる気の利いた経営トップは見たことがない」
 「普通、会社の組織は必要な業務と不要な業務、必要な人間と不必要な人間が霜降り肉のように混ざっている。分析すると、どこの会社にも4割ぐらいの不要な業務がある。たとえば、2回で十分な事業計画を5回も開いていたり、社長がまともに読みもしない分厚い業務リポートの提出が義務づけられていたり、といった定型業務である。ダメな人間に限って定型業務が好きだから、ダメな人間が多い古い会社ほど、知らず知らずのうちに脂肪がたくさんついてくる」

 自分の会社は明らかに旧大陸企業。そう思った読者が多かったのではないだろうか。政権交代のような思い切った再起動が、成功体験もある企業などで果たしてできるのだろうか。再起動できないまま、クラッシュする未来が思い浮かぶ。

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Comments

ためになりました。日本にしがみついていたら、いまごろぼくはクラッシュしています:) AGという表現が笑える。

Posted by: さいのめ | 2009.11.13 at 05:36 PM

うちの会社もどんどんダメ会社になっていきます。さいのめさんは正解、というかよくぞ踏み切った、という感じですね。

Posted by: フーテンの中 | 2009.11.15 at 09:54 AM

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