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中川淳一郎著『ウェブはバカと暇人のもの―現場からのネット敗北宣言』(光文社新書)

 梅田 望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書、2006年2月刊)はロングテール、Web2.0といった言葉を世に広め、企業関係者らにもインターネットに対する期待を抱かせたが、最近、「そんな言葉に踊らされてはダメ」という本が増えてきた。
 山本 一郎著『ネットビジネスの終焉』(PHP研究所、2009年11月刊)は、「ネット発のキーワード、とりわけ『Web2.0』と関連づけられた概念は、ことごとく・・・『実際のビジネスで考えると想像以上にコストがかかる』ものばかりである」と批判。
 夏野 剛著『グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業』(幻冬舎新書、2009年7月刊)は「ウェブ2.0がバブルのようにもてはやされていた頃は、その言葉に踊らされて、これまでインターネットを使ったサービスにまるで見向きもしなかった企業さえも、ウェブ事業に乗り出した。『何かやらなければいけない』と気ばかりが焦ってしまい、結局、業種や商品、サービス形態など、自分たちの強みをまるで考えることなしに、『皆がやっているから』という理由だけで始めた事業は大体失敗している」「実は、ウェブやITというのは、単なるツールにすぎない。つまり、自分が手がけている商売の本質は、ウェブになっても何ら変わらないのだ。なのに、世の中はインターネットが一般的になったから何かやろうという安易な発想でウェブビジネスを始める企業が多すぎる。まるで、ウェブを使えば悪い点を覆い隠し、何もかもが成功に導かれると思っているかのように」と“バカ企業”が多いことを嘆きながら、正しいネットビジネスを伝授する。
 中川淳一郎著『ウェブはバカと暇人のもの―現場からのネット敗北宣言』(光文社新書、2009年4月刊)も気になっていたが、あまりにストレートなタイトル(笑)で新しさを感じず、読んでいなかった。しかし、最近、Twitter(ツイッター、フリー百科事典『Wikipedia』によると、個々のユーザーが「つぶやき(ツイート)」を投稿することで、ゆるいつながりが発生するコミュニケーション・サービス)がはやるなど、「暇人のもの、というのはもしかしたら、当たっているかもしれない」と思い、読んでみた。
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ウェブはバカと暇人のもの―現場からのネット敗北宣言

 ブログでちょっとした失言をすると正義感を振りかざしたネットユーザーの批判のコメントが殺到し、ブログは炎上する。著者は「『失言増幅装置』であるインターネットのユーザーが増えたことにより、世の中のコンテンツがより無難に、つまらなくなっていく流れは、たぶんこれからも進んでいくだろう」と危惧する。
 それにしても何で「関係のない人」がそんなに怒るのだろう。余計なお世話ではないか。著者が思い悩んだ末の結論が「どう考えても彼らは暇人である」だ。

 著者は「ネットで流行るのは結局テレビネタ」ということに気づく。ネットユーザーは地上波テレビのユーザーとかぶるのだ。「両者に共通するのは、テレビは受信料、ネットはプロバイダとの契約料さえ払えば、あとはどれだけ見ようが無料な点だ」。
 暇人かどうかは知らないが、ネットで積極的に書き込みをするようなユーザーとテレビユーザーはどうも重なっているようなのだ。テレビで視聴率の高い番組を思い浮かべれば、だいたいユーザー層はイメージできる。

 そして、著者は「ネットは暇つぶしの場であり、人々が自由に雑談する場なのである。放課後の教室や居酒屋のような場所なのである」と断言。ネットへの向き合い方を提案する。

 「居酒屋で客が『商品にやたらと詳しい中年のオッサン』よりも『商品に詳しくはないけど、ノリの良いキレイなおねえさん』を求めるのは当然だろう。ネットでも『商品に詳しくはないけど、ノリの良いキレイなおねえさん』によるプロモーションをすべきなのである」

 ネットはそういう場だから、あまり期待しすぎてはいけないと著者は言う。
 「何かプロモーションをしたい場合、これまでの既存マス4媒体と屋外広告・イベント等にネットをいかに組み合わせるか」くらいでいいのだ。

 ネットは「予約」「検索」「価格比較」「空席確認」「地図」「路線検索」「クーポン取得」「とある分野に詳しい人の発見」「通販」・・・などの分野では他の追随を許さないほど便利だが、「これはあくまでも『プロがネットを相手にした結果』である。・・・だが、一般人がネットを使うと途端に問題が各所で散見してくる」。
 「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」というのが『ウェブ進化論』でのWeb2.0の定義だが、集合知ではなく「集合愚」が渦巻くいまのネットは、こうした理想の姿とはかけ離れているようだ。
 「ネットへの幻想を捨てよ」というのが著者の結論だ。

 ネットへの期待と幻滅が交錯して、ネット社会は正しく育っていく。夏野氏の言うように、インターネットはようやく、単なる道具になってきたのだろう。

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Comments

たしかに暇人なんだろうなあ。それは確かだと思う。ネットも道具・器に過ぎないのもたしかだと思う。ただやっかいなのは「つながっていたい」と幻惑させるような中毒性があることではないか、と高校生になる息子の狂ったようなネット依存をみていると感じる。

Posted by: さいのめ | 2009.11.25 07:45 PM

インターネット麻雀などは、麻雀を打ってみて相手を知ることができるから、実際に会っても違和感はないのだけれど、ネット上での会話だけの付き合いは、どうも信じられない。

Posted by: フーテンの中 | 2009.11.26 06:11 AM

現役高校生です。自分を棚に挙げると(そういう行為はしてないけど)同意。

Posted by: 常 | 2010.03.13 01:23 AM

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