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水野和夫著『100年デフレ~21世紀はバブル多発型物価下落の時代』(日経ビジネス人文庫)

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100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)

 水野和夫著『100年デフレ~21世紀はバブル多発型物価下落の時代』(日経ビジネス人文庫)を読んだ。2003年発刊の単行本を文庫化したもので、リーマン・ショックより前の著作だが、世界経済の現状をロングスパンで分析しており、現時点でも十分に通用する内容だ。

 水野和夫氏は三菱UFJ証券チーフエコノミスト。彼は本書で、歴史家、歴史学者、作家らが今を「歴史の大きな転換点」と見ているのに対し、経済学者の多くが今が歴史の転換点にあるという認識なしに、伝統的な経済理論によって現在の低迷から脱出しようとしてると批判する。

 人類の歴史を振り返ると、過去に二度の歴史の断絶点があり、91年が三度目の歴史の断絶点であるという。
 「一度目は、紀元前8000年の新石器革命あるいは農業革命である。細石器の出現によって、人類は『食料採取から食料生産』へ移行した」。
 「二度目の断絶は、16世紀か18世紀かという議論がある。近代主権国家と資本主義の誕生によって、中世封建社会の危機を乗り越えたことを重視すれば、16世紀に断絶が起きたことになる。筆者は・・・16世紀説を支持する」。
 「第三の歴史の断絶点は・・・1991年(ソビエト連邦解体)から始まっている」。
 「三度目の歴史の断絶が起きているのだから、16世紀以来の、とりわけ20世紀に有効だった政策は通用しない可能性が高い」と水野氏は主張する。

 そして、「21世紀はデフレの時代」となり、デフレは100年続くというのだ。

 21世紀をデフレの時代とみる根拠は、第一に「大競争時代の到来によって世界の供給能力が飛躍的に伸び、完全雇用水準が極端に高まったこと」。
 「91年に冷戦が終わり東側と第三世界の多くの国々が市場経済へ移行したことによって」「潜在的な生産能力が2.75倍に増えた・・・もし、世界経済が今後も90年代と同じペース(3.6%)で成長すると仮定すれば、2000年時点の生産能力は、33年先の需要まで織り込んでしまったことになる」。さらに試算をすると、「2.75倍の潜在的な需給ギャップは99年後にようやく均衡する」。

 第二の根拠は「デジタル革命、インターネット革命が起きたこと」だ。「IT革命は世界最低賃金の国と世界最高水準の技術水準を結びつけることを可能にした」「IT革命によって、手先の器用さといった日本人の優位性は消滅しつつある。長い時間をかけての伝承を必要といない生産技術が発達し、技術移転が容易に行われるようになった」。

 第三の根拠は「」通貨調整が行われないまま、全地球規模の市場統一が進んだこと」。
 「冷戦終了後、人類史上最大の非連続的な変化が起きたにもかかわらず、為替の調整は全く行われなかった。21世紀が抱え込んだ問題は、先進国に存在する数十%の内外価格差ではなく、先進国と途上国の間に存在する6倍から7倍に広がった内外価格差である」。試算では為替調整には48年かかるという。

 「現在進行中の大競争、グローバリゼーション、IT革命といった現象は、お互いに絡み合い歴史的な断絶を引き起こしている」。それなのに「現在のデフレ現象を『戦後初めて』とか『循環要因』のようにとらえると、処方箋を間違ってしまう」「まずしなければならないのは、このような『20世紀型の遺物』である思考からの脱却である」。
 「デフレは戦後初めての以上現象だ」とみると、「デフレ脱却のためにはどんな政策も正当化される。しかし、こうした何でもありの政策を採ったとしても、デフレから脱却できない」。
 「20世紀型思考に基づき『インフレは貨幣現象』という前提のもと一層の金融緩和を続けても、一般物価のインフレをもたらすことはできない。マネーは過剰になり、資産インフレを引き起こす」。
 「まず何よりも景気を回復させないと構造改革に耐えられない」という考えも間違っているという。「構造問題をかかえているうちは景気回復が持続しないという」問題を無視しているからだ。

 21世紀のデフレへの処方箋は構造改革しかないというのが水野氏の意見だ。「構造改革とは、低収益構造に陥った企業の体質改善を促す一方で、新規サービスや技術革新が生ずるような仕組みを作ることでもある。この両者が揃わなければ、持続的な成長軌道に乗ることはできない」。

 小泉政権の構造改革は掛け声倒れに終わり、痛みだけが残った。民主党政権も「小泉改革こそ諸悪の根源」というスタンスをとっているから、成長力を高めるような構造改革に、まだ前向きに取り組んではいない。
 
 本書は多くの実証データをもとにした分析をしており、「100年デフレの時代」というのは信憑性が高い。こうした歴史認識を政府や企業が共有しないと、日本はさらに迷走するような気がする。

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Comments

1991年のソ連解体より、1989年の東欧革命のほうがより正しいとは思います。ご指摘の通り、きちんと歴史認識をもつことが重要だと思いますが、なかなかむずかしいですよね。

Posted by: さいのめ | 2009.12.26 at 12:59 PM

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» これからはデフレが普通。生活を変えられる者の勝ち。 [大欲は無欲に似たり]
 私は経済学が専攻ではなく、数式を出されても「ハァ?」となってしまう。  とはいえ、自称高校1年生レベルの数学力と、自称オタクレベルの雑学と歴史知識でマクロの動きぐらいは、素人評論家並みには掴めるつもりではいる。  さっさと、参考リンク先を挙げておく。  世界同時「真性デフレ」の恐怖…日経ビジネスオンライン  生産性格差デフレ*…池田信夫blog  書評:水野和夫著『100年デフレ~21世紀はバブ... [Read More]

Tracked on 2010.01.10 at 11:25 AM

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