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日経コミュニケーション編『NTTの深謀』(日経BP社)その1

 日経コミュニケーション編『NTTの深謀』(日経BP社)を読んだ。
 この本を理解するためにはNTTの民営化や分割論に関する知識が必要だ。
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、「中曽根内閣の民活路線のもと、1985年に3公社(日本電信電話公社、日本専売公社・・・の民営化が決定した。その一環として日本電信電話株式会社法(現在の日本電信電話株式会社等に関する法律、以下『NTT法』・・・)が施行されたことにより、旧日本電信電話公社の業務を承継し」日本電信電話株式会社(NTT)が設立された。「同法はNTTの常時発行済株式総数の3分の1を日本政府が保有しなければならないと定めている」。
 「1987年2月9日に株式公開した。・・・民営化後もその事業範囲の広大さと経済への影響力の大きさから、米国の圧力により国鉄分割(JR7社)のような地域分割論が噴出し政治問題化した。NTTは地域分割を回避すべく、ソフトウェア開発のNTTデータや移動体通信のNTTドコモなど、固定電話事業以外での子会社を設立し議論をかわしてきた。しかし、1997年に改正NTT法が国会で成立し、4社分割による再編成が決定した。1999年に固定電話事業は都道府県間電話部門として東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)に分割された。また長距離部門はNTTコミュニケーションズ(NTTコム)が設立され引き継いだ。そしてNTT自身は東西NTTとNTTコムに加え、NTTドコモとNTTデータを傘下に置く持株会社となった。NTTコムは法律上完全民営化を果たし、悲願だった国際通信に参入した」。

 さらに、「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書の内容も知っておく必要がある。
 『ウィキペディア』によると、「通信・放送の在り方に関する懇談会(つうしん・ほうそうのありかたにかんするこんだんかい)は、竹中平蔵総務大臣のもと総務省に設けられた、通信と放送の融合時代における情報通信政策の在り方を幅広く討議するための懇談会。 ・・・平成18年1月より開催され、6月に最終報告書がまとめられた」。
 ウィキペディアにはこれしか内容がないので、ITproが報じた過去の記事を引用する。日経コミュニケーションの宗像誠之記者の2006年3月22日付の記事だ。

【詳報】NTTのアクセス部門分離を巡り議論紛糾,竹中懇の公開ヒアリング
 竹中平蔵総務大臣が主催する「通信・放送の在り方に関する懇談会」が3月22日,第7回会合を開催。NTTの和田紀夫社長,KDDIの小野寺正社長兼会長,ソフトバンクの孫正義社長といった大手通信事業者トップがそろい踏み,公開ヒアリングに挑んだ(写真)。会合は2時間半の予定時間を約30分もオーバーし,熱い議論が続いた。最も盛り上がったのは,NTT東西地域会社のアクセス部門の分離問題についてである。・・・NTTの和田社長が,NTTの中期経営戦略の推進について説明。懇談会から投げかけられていた,独占回帰への懸念や,アクセス部門分離の見解については,有馬彰取締役が「ブロードバンド市場では各レイヤーで競争が進展しており,中期経営戦略によりNTTの一社独占に戻ることはあり得ない」,「インフラの円滑な構築やサービスの安定供給が損なわれる恐れが大きく,構造分離に伴う多大な労力や混乱が生じるため,諸外国でもアクセス部門の分離を実施した例はない」などと回答した。

 続くKDDIの小野寺社長は,IP化時代の公正競争には,「NTT持ち株会社の廃止とグループの完全資本分離,アクセス部門の分離,当面の措置として,NTTグループ内の人,モノ,カネ,情報の共有を遮断するファイアウォールの設置が必要」と,従来の主張を改めて懇談会のメンバーに訴えた。
 最後のソフトバンクの孫社長は,「一番大切なのは,国民一人一人にとって何が有益かという視点。ブロードバンドは競争により安く,速くなったが,次はそれを国民すべてに提供すること」と切り出した。・・・孫社長は,NTTの垂直分離だけでなく,民間企業として光ファイバを引く「ユニバーサル回線会社」の設立を提言。この回線会社が引いた光ファイバ上で,NTTも含めてサービス競争を展開すべきと訴えた。孫社長は,「NTTの中期経営戦略は2010年までに光3000万回線というが,残りの3000万回線はどうなるのか,いつになったら光化されるのか」と問題提起。併せて,NTTのアクセス部門に代わるユニバーサル回線会社により,月額約690円で全国6000万回線の光化が可能という,別の懇談会で披露した孫社長の試算結果を説明した。今回は,ユニバーサル回線会社は全国で一社ではなく,電力会社のように地域ごとに分け,互いに競争させる案も新たに付け加えた。

 通信事業者3社へのヒアリングが一通り終了すると,「KDDIとソフトバンクの主張は明確で,NTTのボトルネック性とドミナンス性をどう考えるかという点に論点は絞られてきている。NTTは反論ありますか」という,懇談会座長である松原聡東洋大学教授によるNTTへの問いかけを皮切りに,NTTのアクセス部門分離の是非に焦点が当たった議論が始まった。

 NTTの和田社長は「(ボトルネックとされる)電電公社時代に敷設した設備は,民営化する際に,複数の専門家により株式に算定し国に返した(形になっている)。しかも,光ファイバは民営化後に本格的に着手したものだ」とKDDIとソフトバンクの主張に真っ向から反論。有馬取締役も「電柱を開放し光ファイバを敷設する実験も始まっている。光ファイバは,今でも引こうと思えば引けるはず」と援護射撃した。

 だが,KDDIの小野寺社長は「有馬氏は,『引こうと思えば引ける』と言ったが,それはその通り。問題視しているのは今の手続きでは時間的にNTTと比べて我々が不利だといっている。『ボトルネック』という考え方が違うのではないか」と切り返し,ソフトバンクの孫社長も「NTTは,政府保証債で引いた国民のものである電話線を光ファイバに張り替えている。光ファイバを張り替えるベースの設備が国民のものなのに,光ファイバを引く引かないをNTTの主観で決めるのはいかがなものか。690円で6000万回線を光化できる可能性があるのに」と完全にNTT対KDDI+ソフトバンクという構図で議論が続いた。

 途中,「(電話設備について)『国民のもの』という言い方はやめていただきたい。今は株主のものです」と和田社長が孫社長の主張に声を荒げて反論し,「政府保証債で引いたものを『国民のものと言うな』というような会社に,将来のインフラを任せてもいいのだろうか」と孫社長が切り返すなど,強烈な応酬が続いた。このやり取りに際し,松原座長は「株式会社といっても,NTTは政府設立の株式会社ですからね」と株主の存在を主張するNTTをやや突き放すようなコメントを放つなど,議論はKDDIとソフトバンクにNTTが押され気味となった印象を残した。

 さらに懇談会の最終報告書に関する宗像記者の2006年6月19日付の記事を引用する。
どうなるNTT?,混沌とする“2010年問題”の行方
 6月6日,竹中平蔵総務大臣が主催する「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)が,6カ月間にわたる議論に終止符を打ち,最終報告書を完成させた。その中で懇談会は,政府がブロードバンド・ゼロ地域の解消を目指す2010年度と,地上波放送のデジタル化が完了する2011年を見据え,2011年を「完全デジタル元年」と命名。そのために,通信・放送改革に今すぐ着手すべきだと訴えた。

 竹中懇談会の通信分野における重要な論点となったのが,2010年に向けたNTTの在り方だった。NTTグループが今後のブロードバンドの主役であり,放送コンテンツを流す媒体にもなる光ファイバを大量に敷設する能力を持つからだ。報告書では,NTT東西地域会社のアクセス部門を,会計だけでなく人事交流なども分ける「機能分離」を短期策として実施するよう強調。さらに,「2010年には」通信関連法制を抜本的に見直すため,NTT持ち株会社の廃止などを含む検討を「速やかに」始めるべきとも提言している。

 ただし報告書は,アクセス部門の機能分離やNTT法の廃止を提言するなど,NTTに厳しい要求を迫るだけではない。東西NTTの業務規制の撤廃にも言及するなど,東西NTTの自由度を高める新たな施策を打ち出しているのだ。つまり2010年以降,現NTTグループ企業同士の再統合が可能となり,東西NTTが放送局を買収することさえ自由になる可能性がある。

 報告書の提言が実現すれば2010年には,現在とは全く異なったNTTの姿が形作られ,日本の通信・放送市場に今だかつてない競争環境が訪れる。だが,これが本当に実現するのかどうかは全く不透明な状況にある。

「2010年までに光3000万回線」を宣言したNTTの猛反発
 「“2010年問題”は一体どうなるのか」---。通信業界では最近,このような言葉がささやかれ始めた。竹中懇談会が打ち出した2010年に向けた提言に,NTTの競合事業者が期待する一方で,その実現性をいぶかる声もあるからだ。実際,2010年に向けた通信市場の競争環境の在り方について,NTTや政権与党である自由民主党(自民党)の意見は,竹中懇談会と食い違う。

 アクセス部門の機能分離やNTT法廃止については,当のNTTが猛反発している。というのもNTTグループは,2005年11月に中期経営戦略のアクションプランとして,光アクセス回線の構築計画を公開済みだからだ。具体的には,2010年までに次世代IPネットワークを構築し,光アクセス3000万回線を普及させるという計画を達成するため,現在のNTTグループの一体化を進めるというもの。NTT持ち株会社の配下にある東西NTTやNTTコミュニケーションズ,NTTドコモなどの主要通信事業会社の役割分担を明確にし,重複事業の解消を目指している。このための布陣を敷いた矢先に,持ち株会社の廃止も視野に入れる竹中懇談会の報告書が出てきたわけだ。

 NTT持ち株会社の和田紀夫社長は,竹中懇談会の報告書が出来上がる前から,懇談会の議論をけん制する発言を繰り返した。「アクセス部門の機能分離など受け入れられない。最終報告書は出ていないが,仮にNTTとして納得いかない内容なら,明確に抗議する」と発言。NTTの有馬彰取締役も,「現状のNTTの組織形態に問題があるとしても,だから機能分離をしろというのはあまりに乱暴な議論」と非難する。

 同時に有馬取締役は,「そもそも懇談会は通信と放送の融合について議論すると言っていたのに,なぜNTTの組織論に焦点が当たったのか。議論の経緯を見ながら,嫌な予感はしていたのだが」とぼやく。独自に3000万回線の光アクセスを引くことを宣言したNTTにとって,竹中懇談会の報告書はまさしくその方向性をひっくり返すもの。東西NTTなどの規制緩和という“アメ”が用意されているとはいえ,すんなりと受け入れられる内容ではない。

「速やかに始めるべき」か,「2010年ころに検討すべき」か

 一方,自民党はNTTと重なる部分が多い意見を明らかにしている。片山虎之助氏が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)がまとめた案では,NTTの組織問題について「拙速に結論を出すべきでない」と提言。「2010年ころに」NTT法などの関連法令の改正を検討するべきだ,としている。

 片山委員会は竹中懇談会とほぼ同時期に始まり,竹中懇談会と同様に放送と通信の在り方について議論を進めてきた。NTTは竹中懇談会の報告書案が見え始めたころから,片山委員長にも相談に行っていたようだ。こうした動きが奏功したかどうかは不明だが自民党案は,NTTが次世代ネットワークを完成し,3000万回線の光アクセスを引き終わるまでは様子見をする案となっている。

 NTT法廃止の議論は,竹中懇談会の提言通り「速やかに始めるべき」なのか,自民党案の「2010年ころに検討すべき」なのか---。7月初めにも政府が基本政策としてまとめる「骨太方針」への反映に向け,竹中懇談会と自民党の調整は水面下で続いている。2010年のNTT像と通信・放送市場の競争環境を左右するこの「2010年問題」の行方を,業界全体が見守っている。


 そして、2006年6月20日に、通信・放送の在り方に関する政府与党合意がまとまる。宗像記者の2006年6月22日付の記事を引用する。
【特報】「NTTの組織問題は『2010年時点』で検討」,政府与党が合意
 通信・放送分野の改革案について,政府・与党が6月20日時点で合意していたことが明らかになった。焦点となっていたNTTの組織問題は,政府・与党の合意文書に「2010年の時点で検討を行い,その後速やかに結論を得る」と明記している。

 合意文書である「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」には,最終調整に当たった竹中平蔵総務大臣や片山虎之助自由民主党参院幹事長などが既に承認のサイン済み。22日現在,自民党や公明党,総務省など関連部署の幹部の承認を待っている状態で,これらの承認がすべて取れ次第,合意内容は来週にも正式発表される見込みだ。この政府与党合意の内容が,7月上旬にまとめられる経済財政運営の基本方針「骨太方針」に反映される。

 竹中総務大臣は,自身が主催した「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)で,「『2010年には』通信関連法制を抜本的に見直すため,NTT持ち株会社の廃止などを含む検討を速やかに始めるべき」(『』は編集部による注記)と提言する内容の報告書を発表していた。一方,与党である自民党の片山参院幹事長が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)は,NTTの組織問題について,「拙速に結論を出すべきでなく,『2010年ころ』にNTT法などの関連法令の改正を検討するべきだ」と提言していた。NTTの在り方に関しては,竹中懇談会と片山委員会の見解が一致せず,骨太方針への反映を巡り調整を続けてきた。

 今回の政府与党合意に明文化される「『2010年の時点』で検討を行い,その後速やかに結論を得る」という表現は,竹中懇談会と片山委員会の折衷案と言える。最後まで議論となったのは,「2010年の時点」という文言だった。

 片山委員会の案ではNTTの組織見直しを「2010年ころに」としていたが,この文言であれば,検討開始は2010年に限定されず,2012年や2013年に検討するという解釈も可能。だが,「2010年の時点」と明記することで,4年後の検討開始が約束される。合意文書の表現は一見すると,「2010年までに」と主張してきた竹中懇談会が大幅に譲歩したように見えるが,もともとの片山委員会の案からも時期が前倒しとなる格好。「2010年の時点」という明確な表現は,2010年までの検討開始を求めた竹中懇談会と,2010年以降の検討開始を提言した片山委員会の,最終調整における落としどころとなった。

 NTTの組織問題について「2010年の時点で検討」と,議論の時期を明確化することには,NTTからの猛反発があったとされている。竹中懇談会と片山委員会の意見のすり合わせに時間がかかった背景には,当事者であるNTTとの調整にも時間を費やした事情も絡んでいるようだ。


 これでようやく『NTTの深謀』が理解できると思う。(^^ゞ

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