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越川禮子著『江戸の繁盛しぐさ―イキな暮らしの智恵袋』 (日経ビジネス人文庫)

Edonohanjoshigusa
江戸の繁盛しぐさ―イキな暮らしの智恵袋 (日経ビジネス人文庫)

 越川禮子著『江戸の繁盛しぐさ―イキな暮らしの智恵袋』 (日経ビジネス人文庫)を読んだ。
 1992年12月に発行され、「江戸しぐさ」ブームを作ることになった『江戸の繁盛しぐさ』(日本経済新聞社)の文庫版である。
 「傘かしげ」「こぶし腰浮かせ」など粋な江戸の人々のしぐさを公共広告機構が図案化、さりげなくマナーの大切さを訴えたことで、「江戸しぐさ」が一気に全国に広がった、と文庫版まえがきにある。
 もっとも、江戸しぐさとして「肩引き」(路地などで、肩を後ろにひいて、胸と胸を合わせる格好で人とすれ違うこと)などを教わらなくても、「そんなのは常識」と私は思う。日本人のマナーが悪くなってしまったため、当たり前の江戸しぐさが話題になったのだが、本書を読むと「江戸しぐさ」とはそんな表面的なしぐさばかりではない。現代のビジネスマンにも通用する、仕事やコミュニケーションを進めるうえでのノウハウなのだ。

 「江戸しぐさ」は文字にされておらず、著者が、「江戸しぐさ」の研究家である芝三光(しば・みつあきら)氏から聞き書き(江戸しぐさでは「利き書き」と書く)して、本書をまとめたという。なぜ文字に残っていないか、などの説明も興味深いが、「江戸しぐさ」がいかに奥の深いものかを本書から引用し、江戸しぐさの凄さを伝えたい。

 まず、著者が芝氏に面会を求める手紙を送り、返事をもらった時から、「江戸しぐさ」の“講義”が始まる。
 「午後3時~同10分の間、御遠慮なくベルをお鳴らしくださいまし」。
 時間をしっかり守るAランクの人には正刻プラスマイナス5分、多少ルーズなBランクの人には正刻プラスマイナス10分、このひとはいい加減とみられたCランクの人には「午後3時ごろ」と指定するのだそうだ。
 もっとも、「時間に関する限りB級」でも、他の能力ではA級かもしれない。「江戸しぐさ」は人を評価するポイントが880項目(一説には8800項目)もあったらしい。これが、どんなに悪いことをしても、それなりの事情があったのだろうと、「盗人にも三分の理あり」とした真の意味だという。

 「江戸の下町は対等の社会、平等の社会だった。あいさつひとつでも、たとえば『おはようございます』と言った人には『おはようございます』と丁寧に同じ言葉で返さなければ失礼になったという」。
 「おはようございます」と言って「おはよう」というのは良い方、「ん」なんて言う上司は近くにいないだろうか。

 江戸では「しぐさ」を見て江戸っ子かどうかを判断したという。江戸しぐさができれば、出身地や身なりに関係なく、江戸っ子として通った。
 「江戸っ子の見分け方の最大公約数は、『目の前の人を仏の化身と思える』『時泥棒をしない』『肩書きを気にしない』『遊び心を持っている』の4つといわれてきた」。
 なかなか、目の前の人を仏の化身とは思えない。しかし、これを守っていれば、人間関係は良くなるのではないか。まさにビジネスマンのコミュニケーションのイロハだ。

 「江戸っこ精神と言えば人間優先、金や物より人間を大事にし、打てば響く反応の早さが特徴であり、楽天的で、結果として良い物ができたら『もうけもの』という生き方、生活態度(思考、哲学)を持っていた」。
 「言葉は人間関係を円滑にする『道具』や『潤滑油』と考えられ、口から出た言葉は言の端ではなく、事(行為・行動)と同じ価値を問われた」。
 「『江戸しぐさ』は各地から集まった風俗、習慣の異なる人たちが皆、共に生き、共倒れをしないでうまくやっていけるように考案された『人間関係』改善の知恵だった」。

 特に平成以降の現代人は、余裕もなく、言葉はいい加減、人より金が大事、という風潮に流されていないか。
 現代人は「忙しい」という言葉を、半ば自慢げに口にするが、江戸では禁句だったという。「忙しいという字は偏とつくりに分解すると、心を亡ぼすとなる。江戸では心を失った人はデクの棒(丸太)とし、人間ではないと考えた」。

 江戸では年代に応じたしぐさが尊ばれた。たとえば「耳順(還暦)代の『江戸しぐさ』は『畳の上で死にたいと思ってはならぬ』『己は気息奄々、息絶え絶えのありさまでも他人を勇気づけよ』『若衆(若者、ヤング)を笑わせるよう心がけよ』だったという」。60歳になってもはつらつと生きよという、前向きな生き方を提言している。

 共生の考え方、高齢者の生き方などは、高齢化社会、環境問題をクリアしなければならない日本にとって参考になる。何よりも楽天的で遊び心のある人間が尊ばれる雰囲気がいいではないか。自らの江戸の遺伝子を生かして、自由にものを考えたいと思った。

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