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吉川尚宏著『ガラパゴス化する日本』(講談社現代新書)~日本企業や日本が脱ガラパゴス化するための戦略本

Garapagosu

ガラパゴス化する日本

 吉川尚宏著『ガラパゴス化する日本』(講談社現代新書、2010年2月20日発行)を読んだ。
 海外に住む友人が、「日本は最近、政府も国民に引きこもっている感じがする」と言っていたが、日本の一部の製品だけでなく、日本国そのものや日本人がガラパゴス化していると本書は指摘する。そのケーススタディを読むと、まさにガラパゴス化に向かって突き進んでいる日本の姿が見える。しかし、一方で本書は脱ガラパゴス化戦略についてもきちんと提言する。ガラパゴス化の動きを甘く見ず、提言を本気で検討すべきだと強く感じた。

 「はじめに」でガラパゴス化について説明している。
 それによると、「もともと、このガラパゴス化という言葉は、筆者の同僚であった北俊一氏が『日本は本当にケータイ先進国なのかガラパゴス諸島なのか』という問題提起を行った論文で使ったのが最初である。北氏の指摘は携帯電話産業だけに閉じた話であったが、…議論の中で、どうやらこのガラパゴス化は携帯電話にとどまらないで、ICT(Information Communication Technology―情報通信技術)産業全般、あるいは広く日本の産業分野に及んでいる現象であることに気が付き、日本が独自進化して世界から逆にかけ離れてしまう現象を『ガラパゴス化現象』として、プロジェクトの中で筆者が明確に定義した」という。

 この本では、ガラパゴス化を次の3つから構成されるものとしている。
●日本製品のガラパゴス化
日本企業がつくりだすモノやサービスが海外で通用しないこと
●日本という国のガラパゴス化
日本という国が孤立し、鎖国状態になること。地方だけでなく、東京も含め日本全体が鎖国状態となるリスクをはらんでいること
●日本人のガラパゴス化
最近の若い人のように、外に出たがらなくておとなしい性向のこと

 ガラパゴス化が進行している日本のモノやサービスは携帯電話だけではない。
 医療サービスは、日本の医療関係者があまり知らない間に、世界でJCI(国際病院評価機構)の医療サービス基準が構築され、アジアではシンガポールで15、インドでは13の病院が認証を受けているが、日本で認証を受けている病院はたったひとつだという。
 大学ランキングの策定、国際会計基準でも、日本は乗り遅れた。

 日本という国もガラパゴス化している。
 「日本には2008年時点で3311の外資系企業が参入しているが、そのうち、じつに74.1%(2452)の企業が東京に日本本社を置いており、次いで多いのは神奈川県(282社、8.5%)となっている」。「東京は例外的にグローバル化は進んでいるが、地方はグローバル化との距離が遠く、グローバル化の恩恵も受けがたい構造になっている」。
 「それでは東京が安泰かといえば必ずしもそうではない」「2009年10月に開催された東京モーターショーでは、海外メーカーはわずか3社しか出展しなかったが、4月に開催された上海モーターショーでは20ヵ国以上から自動車メーカーが参加していた。すでに海外企業の目は東京に向いていない」。

 日本人のガラパゴス化は若者に顕著だ。日本から海外へ出国する日本人の数を年代別にみると、海外に行く若者が増えていないことがわかる。
 「20代については2004年にはいったん回復したものの、2005年以降は男女とも減少傾向にある。特に女性については2004年には191万人が出国していたのに対し、2007年には172万人と約20万人も減少している。男性についても、2004年には120万人であったのが2007年には110万人と10万人減少している」。

 「日本企業、日本国、日本人のそれぞれがガラパゴス化を続けるのか、それとも脱ガラパゴス化を果たせるかで、組み合わせの数は八通り存在する」
 それが①総ガラパゴス化シナリオ②若者日本脱出シナリオ③霞が関商社化シナリオ④国が先導し、若者が中心となる脱ガラパゴス化シナリオ⑤JUDOシナリオ⑥優良企業、有料人材脱出シナリオ⑦官民グローバル化シナリオ⑧完全開国シナリオ⑧′出島シナリオ――だ。
 完全開国に到達させるルートとしては筆者は⑧′→⑧または③→⑦→⑧が現実的であるとする。

 「第4章 脱ガラパゴス化へのヒント」が面白い。
 日本がデファクトスタンダードを握れないのは、競争のルールを作り出すことが苦手なのが原因として、ゲームのルールをつくる、あるいは変える手法を説明する。
 「市場を支配するルールを変えるには「提携戦略、メディア戦略、ロビー活動戦略といった、これまであまり日本企業が使ってこなかった筋肉を活用していくことが重要となる」という。
 また「日本の国や企業が目指す思想、哲学を具現化する指数を開発し、ゲームのルールをつくっていく」ことを提言する。

 「霞が関商社化」とは制度設計の輸出入を指す。まず、「日本の場合は、超高齢化、人口減少などの『課題先進国』となるが、ここでつくられる制度や仕組みを世界でも通用するものにしていく必要がある」。
 そして、「一定程度の経営資源を投入して世界標準になることが無理だとわかった後は、日本基準をあきらめ、海外の基準を持ち込むべきである」とする。

 出島シナリオとは、まず「企業の中に、『出島』の事業部門をつくり、ここでグローバル化の練習を積み、遺伝子をハイブリット化させていく」。
 さらに、「21世紀アジアの実験都市」となるような出島を設ける。東京そのものを出島化することも選択肢だという。
 地方再生も大切だが、東京に集中的に追加投資をするという視点は最近はあまり聞かない。しかし、一点集中で臨まなければ、もはや日本のガラパゴス化は止まらないのかもしれない。

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