映画と小説で楽しむ『アリス・イン・ワンダーランド』
映画『ALICE IN WONDERLAND(アリス・イン・ワンダーランド)』(3D、字幕版)を丸の内ルーブル(東京都千代田区有楽町2-5-1 マリオン新館7F、03・3214・7761)で観た。映画『AVATAR(アバター)』に続く、3D(3次元)映画だ。夢の世界は3Dで描きやすいのかもしれない。
だが、それ以上に、ティム・バートン監督とジョニー・デップのコンビに期待した。このほどテレビでも放映された『チャーリーとチョコレート工場』以上の摩訶不思議な、シュールな体験ができるのでは、と思った。
映画館に入ると3D用の特殊メガネが配られたが、今回は貸与ではなく、「記念にお持ち帰りください」。3Dテレビ対応で、メガネは大量生産され、配布できるくらいの値段になったのかもしれない。
公式サイトによると、ストーリーは以下の通り。
アリス、戦う――ワンダーランドの運命を賭けて。
19歳のアリスは、チョッキを着た白うさぎを追いかけているうちに、うさぎの穴からアンダーランドと呼ばれる不思議の国(ワンダーランド)に迷い込んでしまう。この世界の奇妙な住人たちは、なぜか皆アリスを知っていた。実はこの国の年代記には、アリスという救世主が現れると預言されており、残忍な赤の女王の恐怖政治に苦しむ彼らにとって、アリスは残された唯一の希望だったのだ。そして、誰よりもアリスを待ちわびているのが、赤の女王への復讐を誓うマッドハンターだった。
アリスは、自分が6歳の頃にこの世界に来たことを忘れており、すべては夢の中の出来事だと思い込む。だが、この悪夢はいつまでも醒めず、アリスはいつしか運命を賭けた戦いに巻き込まれていく。絶体絶命の窮地に陥る中、アリスが下した決断とは――?
これ以上の詳しいストーリーの紹介はネタバレになるので避けるが、実は映画を見た後、感動を2倍にすることができるノヴェライズ作品が竹書房から出ている。入間眞ノヴェライズの『アリス・イン・ワンダーランド』(619円)だ。
この小説だけ読んでも結構楽しい。レベルの高い作品だ。
この本も参考にしながら、この映画について簡単にレビューしたい。
「ティム・バートン監督とジョニー・デップのコンビが、映画史上もっとも摩訶不思議な世界への扉を開く」とパンフレットのイントロダクションにあったので期待したが、もともと原作が摩訶不思議な夢の世界を描いていただけに、それほどの理不尽さは感じなかった。
ビジュアルは子供のころに読んだディズニーの絵本(ディズニーの映画といった方が正確か)に忠実で、懐かしささえ感じた。逆に、その不思議な世界を描きながら、ストーリーは、監督が「僕は『アリス』の世界に、もっと深さを与えたかった」と言っているように、しっかりしたテーマ、世界観を盛り込んでいる。
夢ということで安易に終わらせる漫画を手塚治虫が批判したように、夢のような世界だが、そこに存在するリアリティをしっかりと描き、感動を与えてくれる映画だったと言えるのではないか。
もちろん、中心となるのはアリスとジョニー・デップが演じるマッドハッターの心の交流だ。
とてもいい台詞があった。
アリスの父親が悪夢を見るアリスに語りかける言葉。
「頭がどうかなって、いかれてしまったみたいだね。でも、おまえにいいことを教えてあげよう。世の中のすばらしい人たちというのは、実はみんなどこかおかしいんだ」
同じことを、後にアリスがハッターに語る。
「あなたは完全にいかれてしまったようだわ。でも、いいことを教えてあげる。世の中のすばらしい人たちというのは、実はみんなどこかおかしいものよ」
子供の頃はできたことが大人になるとできなくなる。さらに、女性の場合は男性以上に、社会的に「こうあるべきと」いうタガがはめられていて、自由になることができない。アリスは冒険の旅で自由をつかみ、生きがいを見つける。
閉塞感の強まるいまの時代に、とてもすがすがしい映画を見た気がする。
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