久々に泣いた。映画『オーケストラ!』
映画『オーケストラ!』を東京・銀座の「シネスイッチ銀座」で観た。
公式サイトのイントロダクション。
ロシア・ボリショイ交響楽団で劇場清掃員として働くさえない中年男アンドレイが、楽団の指揮者のふりをして、偽のオーケストラを引き連れ、芸術の都パリに乗り込んだ──!
実は彼は、かつてはボリショイ交響楽団の主席まで務めた、正真正銘の天才指揮者。
しかし、名声の絶頂期に起きたある事件が原因で、指揮者の座を追われる。それから30年、ひたすら負け組人生を歩み続ける彼に、一発逆転のチャンスが訪れた。きっかけは、清掃中に届いた1枚のFAX。パリのシャトレ座からの出演依頼だ。それを読んだ瞬間、彼の頭の中で、とんでもないアイデアが閃いた。彼と同じく落ちぶれた昔の仲間を集めて、ボリショイ交響楽団になりすまし、生涯の夢だったパリ公演を成功させようというのだ!
救急車にタクシーの運転手、蚤の市業者、ポルノ映画のアフレコ──様々な職業でかろうじて、しかし逞しく生きている元名演奏家たちが再び集まり、寄せ集めオーケストラが誕生した。
演奏曲は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲二長調。アンドレイがソリストに指名したのは、今をときめくパリ在住のスターヴァイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケ。
アンドレイの真の目的は、己の復活だけではなかった──。
果たしてコンサートの行方は?
荒唐無稽なドタバタ劇と思いきや、ヨーロッパの歴史に刻まれる悲しい民族対立が主要なテーマであることが分かる。会話ではなく演奏で、当事者たちは互いに理解し合う。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏が進むなかで、隠された過去が明らかになり、別れの悲しみと再開の喜びが激流となって渦巻く。泣かずにはいられない。
かつてみた『砂の器』(1974年、松竹映画)に似た感動もあった。砂の器では加藤剛扮する和賀英良が、過去に背負ったあまりに悲しい運命を音楽で乗り越えるべく、ピアノ協奏曲「宿命」を作曲し、初演する。演奏とともに、和賀の脳裏をよぎる過去の回想シーンも映し出され、涙した思い出がある。
砂の器は、ハンセン氏病に対する偏見という重いテーマがあったが、映画はやはり何らかのメッセージが必要と改めて思う。
上映前に流れた日本映画の予告編を見ていると、「殺人」や「重病」を持ってこなければ重さを与えられない日本映画の軽さが妙に気になった。
『オーケストラ』の主なスタッフ、キャストは以下の通り。
監督 ラデュ・ミヘイレアニュ
音楽 アルマン・アマール
アレクセイ・グシュコフ(アンドレイ・フィリポフ)
メラニー・ロラン(アンヌ=マリー・ジャケ)
ドミトリー・ナザロフ(サーシャ・グロスマン)
フランソワ・ベルレアン(オリヴィエ・デュプレシ)
ミュウ=ミュウ(ギレーヌ・ドゥ・ラ・リヴィエール)
ヴァレリー・バリノフ(イヴァン・ガヴリーロフ)
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