「デジタルサイネージアワード2010」も発表! デジタルサイネージ ジャパン2010
幕張メッセ(千葉市美浜区中瀬 2-1、043・296・0001)で開かれている「Interop Tokyo 2010」(「IMC Tokyo 2010」、「デジタルサイネージ ジャパン 2010」、「Mobile & Wireless Tokyo 2010」を同時開催)に行った。
開催概要にはこう書いてあった。
「Interopは、1994年以来、時代にあわせて、最新のインターネットと企業のネットワークが「いかにつながるか」をテーマに、インフラを中心にメッセージを送ってきた実績と歴史があります」
「現在、SaaSや、映像コンテンツなど、リッチでクリティカルなシステムを支えるための強固なインフラが必要とされています。さらにはトラフィックの集中、セキュリティやCo2の排出削減義務、IPv4アドレスの枯渇、コスト最適化とアウトソースへの流れなど、今後に向けた企業の課題は山積みです」
「2010年のInteropでは、NGN、次世代データセンターやサーバー・ネットワークの仮想化、クラウドコンピューティング、次世代ワイヤレス、グリーンITといった、課題解決につながる最新のキーワードを網羅してお届けします」
クラウドコンピューティングが目玉のようで、今日の基調講演も「クラウド、巨大データセンタ、そして、スマートグリッド」(村上憲郎グーグル株式会社名誉会長)、「キャリアから見たクラウドの意義」(海野忍NTTコミュニケーションズ株式会社代表取締役副社長 法人事業本部長)と二つがクラウド絡みだった。
しかし、展示会は「目に見えるもの」がやはり面白い。見せ方が勝負のデジタルサイネージの製品展示は華やかだった。豪華メンバーが登壇したパネルディスカッション、「デジタルサイネージアワード2010」なども見聞きしたため、この日はほとんど「デジタルサイネージ ジャパン 2010」の見学になった。
NTTグループのブースでは、ネットワーク接続型デジタルサイネージ「ひかりサイネージ」を紹介していた。
ピーディーシーのブース。空港でのデジタルサイネージ活用事例を紹介。
大日本印刷も印刷だけでとどまっている訳にはいかないと、サイネージに積極的。画面の前に立った人の画像に吹き出しやアフロヘアなどの髪型をリアルタイムで重ねるインタラクティブなスクリーンを展示。
インテルの「インテリジェント・デジタルサイネージ」。パネルに近づいていくと、カメラが視聴者の特徴を識別し、性別や身長に応じたユーザー・インタフェースを起動。画面上には視聴者に適すると思われる商品の情報が表示される。
基調講演の一環として催された「街角に入り込むインターネットとデジタルサイネージの挑戦 <パネルディスカッション>」も、役者揃いで大変面白かった。
デジタルサイネージコンソーシアム理事長の中村伊知哉氏がモデレーターをし、村井純慶應義塾大学環境情報学部教授と古川享慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授がものすごく濃い話を短時間にするという展開。スピード感があって、メモがほとんどとれなかったが、その面白さの一端を紹介する――。
なお、それぞれの方の略歴は次の通り(略歴をさらに圧縮した)。
中村 伊知哉(なかむら いちや)
デジタルサイネージコンソーシアム 理事長
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授
1961 年生まれ。京都大学経済学部卒。
1984 年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。電気通信局、
放送行政局、通信政策局、パリ駐在、官房総務課を経て1998 年退官。
1998 年-2002 年MIT メディアラボ客員教授。
2002 年-2006 年、スタンフォード日本センター研究所長。
2006 年10 月、慶應義塾大学DMC機構教授。
2008 年4 月より現職。
村井 純(むらい じゅん)
工学博士(慶應義塾大学・1987年取得)
現職:慶應義塾大学 環境情報学部長 教授
1955年生まれ。
1984年国内のインターネットの祖となった日本の大学間ネットワーク「JUNET」を設立。
1988年インターネットに関する研究プロジェクト「WIDEプロジェクト」を設立し、今日までその代表として指導にあたる。
2000年-2009年7月内閣 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)有識者本部員。
その他、各省庁委員会の主査や委員などを多数務め、国際学会などでも活動する。
古川 享(ふるかわ すすむ)
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、教授
1978年2月株式会社アスキー入社
1986年5月 マイクロソフト株式会社設立。初代代表取締役社長に就任
1991年 同社代表取締役会長兼、米国マイクロソフト社極東開発本部長に就任
2002年 米国マイクロソフト社 アドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデントに就任
2005年6月 マイクロソフトを退社
2008年4月 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、教授に就任
2010年4月 ルネサスエレクトロニクスの社外取締役に就任
中村氏は、「デジタルサイネージが金融機関のサイネージなど、ハイエンドのものから、ミドルエンド(JRなど)→ローデンド(商店街など)→パーソナル(家庭など)と広がっている」とし、さらに、「政府のIT計画、知財計画でもサイネージは明記されている」とサイネージがメディアとして認知されてきた事実を紹介する。
「新しい技術の開発、広告指標の確立などさまざまな課題がある」とするものの、コンソーシアムが昨年12月に行った秋葉原実験などを紹介、一つひとつ課題を解決していることを明らかにした。
サイネージのさまざまなディスプレーがインターネットと一体化しているが、「放送とも融合していくのではないか」と予想する。
インターロップの実行委員長を務める村井氏は「17年間インターロップに関わっているが、ゲストで話すのは今回が初めて」と挨拶した後、さまざまな数字を紹介する。「インターネットのトラフィックが増えている。IPTV、PCTV、P2Pなど動画が相当流れており、トラフィックのほとんどがビデオになった」「わが国ではインターネット広告収入が新聞の広告収入抜いたが、イギリスではテレビを抜いたらしい」「ネットの世界で使われている言語は英語が主流だと思われていたが、中国語がかなり迫っている。その次がスペイン語で、日本は4番目・・・」。
10分と言われて話し始めたので、要点のみガンガン説明する村井氏。100%理解するのは難しかったが、インターネットがすごいことになっているという実感は伝わってくる。
ようやくサイネージに焦点が当たり始める。
「タイムズスクエアはカオス状態だが、あれが同期をとって管理されたらどうなる?」
怖いかもしれない。
「サイネージも広告だとすると視聴率が気になる。人それぞれにつけられたパーソナルIDをセンスできるようになるといい。広告が人を追いかけてくるようになる」「“双方向通信のサイネージ”は、いつできるのだろうか。センサーデータを活用すればできるのではないか」
「HTML5はブラウザベースで分散処理ができる。図を描く、ビデオを流すなどを分散処理できれば・・・」
「サイネージが日本で進むのはいいが、日本独自の発展をとげると、またガラパゴス化の問題が・・・」
村井氏の話はじっくり聴きたいと思ったが、10分ではしかたないのだろう。
そして中村氏が「いつの間にかマック、アイパッド派になった」と紹介する古川氏の番になった。
デジタルサイネージ市場動向ということでスライドを紹介してくれるのだが、メモをとろうとすると、もう次に行っている(笑)。
取り上げられたのは「巨大LEDアレイディスプレイ:ラスベガスの事例」
「日本におけるIPTVの事例」
「ユナイテッド航空、デルタ航空などの機内でのディスプレー」
「六本木ヒルズのIPTV、300台以上の端末に映像配信」
「PanasonicのNMStage」
「日立のMediaSpace」
「トムソン・カノープスの米国での展開、ウォルマート全店に」
「BOX OFFICE:PATRIOT」
「表参道ヒルズの事例」
「ISBのアンドロイドベースのSTB」
「カンガルーTV」
「インタラクティブな触覚ディスプレー(NHK技研)、触って伝えるテレビ」
「有機ELディスプレイ」
「360度パノラマディスプレイ」
「シャープPNーV601 i3wall」
「フューチャーライフウォール(お台場、パナソニックセンター)
「litefast」
「P2Pライブ配信システム」
「Chumby One」
「sonyのDash」
「ニコン UP300x」
「マイクロソフトのSurface」
「AR応用した体験型ディスプレイ」
これらの製品名がすぐに分からないとデジタルサイネージの未来は語れないのだろう(汗)。
時間はちょうど10分。
中村氏に戻り、デジタルサイネージは①メディアとしてどうか②ビジネスとしてどうか③グローバルな視点としてどうか――と質問。
古川氏は「ディスプレーはいろいろなもの出てくる。サイズ、柔軟性、色の表現が異なり、いろいろな場所に設置される。これらに向けコンテンツを毎回編集したり著作権処理をその都度していたら大変だ。共通の書式で管理、どのデバイスでも表示できるようにしなければならない」と課題を一言。
村井氏は「すごく多様なディスプレーが考えられる。例えばコンビニの本棚の裏が外から見えているが、ああいうところはものすごく利用できる。タイムズスクエアは丸いビルにもディスプレーがある。すべてをケーブルでつなぐ必要はない。LTEの時代になると無線のインフラも使えるようになる」とディスプレーの話で受けた後、再び、「双方向にした場合、何がユーザーに戻るのか?ディスプレーセンサーについてはぜひ議論してほしい。それが“つながるサイネージ”への大きなステップになる」と双方向性の議論の必要性を改めて説いた。
古川氏はポスターに手で触ればレゴが組み上げられてクルマになるデモを紹介しながら、「こうしたシンプルなインタラクティビティが大切」と強調。「街角でもいろんな表現力を試せると思う」とした。
この話を受け、村井氏は「作る人がとてもイノベーティブにできる環境つくるべきだ。それがないと発展しない」と強調。「たとえば球面ディスプレーに何を表現しますか?と言われても。標準プラットフォーム、言語がないから先に進まない。共通のプログラミング言語、デベロップメント環境、デザイン環境が必要だ」。
古川氏は「開発において何が一番障害かというと、テレビは“この映像を使いたい”と言って一ヵ月後に払えばいいが、サイネージなどの場合は著作権管理組合に許可を得ないと編集を始めることすらできない。権利処理がややこしく、これに時間をとられてしまう。著作権処理がクリアしているか、使用条件が明確になっているコンテンツライブラリーがあるといいのだが」と著作権の問題にも触れた。
さらに古川氏はアイフォーンにも言及し「アイフォーンがさらに高精細になりアイパッドと同じになる。二つカメラがついていてHDで撮影でき、簡単に編集もできる、これが199ドル。高精細ムービーカメラが手軽になる」と発言。動画の広がりのスピードが予想以上になっている現状を紹介した。
村井氏は昔よく見られた「街頭テレビ」を例に上げ、「パブリックスペースのメディアを責任を持ってだれが作っていくか、何を流すかは大きな問題」と指摘した。
グローバル化、産業化についても発言はあったが、面白かったのは以上のような古川、村井両氏のメディアとしてのサイネージに関する発言だった。
中村氏は「サイネージの話をすると、拡散するばかりでまとまらないが、逆に一番面白い時期なのかもしれない。業界は苦しんでいる。ビジネスモデルが確立せず人材も不足している。しかし、助走段階は終わった。これからジャンプへと向かう。勢いつけてもらいたい」と結んだ。
会場では、「デジタルサイネージアワード2010」の表彰式があった。
30社38作品の中から部門賞(3部門)と優秀賞計10作品を選んだ。
コンテンツ部門は3作品。
①乃村工藝社とNTTアイティ「漢字ファンタジア」
福井県立こども歴史文化館に設置された。偏とつくりを正しく合わせると漢字の成り立ちがアニメーションで見られる。
ほのぼの。
②バスキュール「東京ガールズパレード」
東京ガールズコレクションのプロモーションサイトやステージビジョンに、自分が作ったキャラクター(アバター)が登場、パレードをする。
③オリコム「アサヒ飲料一番ドリップ」
ついていく缶、離れていく缶など、人の動きに反応するデジタルサイネージ。
ロケーション部門も3作品。
①社団法人共同通信社、大日本印刷「社内サイネージからノウハウ蓄積」
ロケーションに合わせてサイネージを設置、試行錯誤を繰り返した。共同通信ニュース、天気予報も流した。工場ではPCは1人1台は持っていなかった。このため、サイネージを情報共有、伝達に役立てた。これからは90の工場に拡大。ノウハウを取引先に紹介したいという。
②ユニカ「ユニカビジョンジングル『音を楽しむ』篇
新宿東口のユニカビジョン。100㎡の画面のなかで18人のミュージシャン、ダンサーがそこにいるような感覚でパフォーマンス。
③バンテン、ソニー・コンピュータエンタテインメント「『新型PS3×機動戦士ガンダム戦記』発売試遊イベント」
410インチのビジョンでゲーム。
システム部門3作品。
①日本電信電話、NTTアイティ「ひかりサイネージ」
機器とサービス、コンテンツパッケージ化。デジタルサイネージの発展に寄与するシステム。
②ピーディーシー、シティバンク銀行、エイト「最先端タッチパネルサイネージを活用したスマートバンキング銀行」
最先端のタッチパネルサイネージ技術を使い口座開設が15分以内でできる「スマートバンキングシステム」を構築。東京駅前支店、日本橋支店に導入。
③㈱ビー・ユー・ジー「有機EL極小ウェアラブルデジタルサイネージ」
極小サイネージ。50g。
このほか、総合的評価が高い作品として「優秀賞」を丸紅テクノシステム「羽田空港太陽光ECO見える化サイネージ」が受賞。
特別賞を立教大学の「縦シネマ『檜原村滝めぐり』『再発見ヨコハマ』が受賞。
アドビシステムズ賞をピクルス「TweetBubbles」が受賞した。イベントでのプレゼンテーション上にTwitterのコメントを表示するシステム。
最後にインテル賞をトライポット「2010サンフレッチェ広島開幕イベント イオンモール広島府中ソレイユクリスマス『のぞくとサンタ』」が受賞した。画像認識技術で、画面をのぞくと顔にいろいろなものにつくので注目される。そこに広告を置いた。
サイネージのクリエーターの裾野が広くなれば、街のデザインも面白くなりそうだ。
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