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境真良著『Kindleショック~インタークラウド時代の夜明け』(ソフトバンク新書)

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Kindleショック~インタークラウド時代の夜明け

 境真良著『Kindleショック~インタークラウド時代の夜明け』(ソフトバンク新書、2010年5月25日発行)を読んだ。話は「本の誕生と進化」から始まり、「電子書籍」で終わると思いきや、「ツイッター」「フリーミアム」「クラウド」と、どんどん広がっていく。同氏の『テレビ進化論』(講談社現代新書)は「次のテレビ」「テレビの次」を論じ、映像ビジネスの未来像を見せてくれたが、本書も「次のインターネット」、「インターネットの次」を予見する刺激的な内容だった。

 講談社や小学館、新潮社など主要出版31社が今年3月、都内で日本電子書籍出版社協会(東京・文京)の設立総会を開いた。専用端末の登場で急速に立ち上がりそうな電子書籍市場に協調して対応するのが狙いだという。

 日本の出版社が電子書籍に前向きに対応し始めたのはなぜか。

 本書はまず「出版業界が目を背けているうちに『現代的な本』はすでに生まれ、その相互作用による情報空間が生まれてしまい、しかも今なおそれは進化し続けている」という環境変化を理由に挙げる。
 「ブログを中心とした言説空間はブロゴスフィア(ブログ界)とも呼ばれ、一定の社会的影響を持つにいたった」「ブログからツイッターへと文字メディアは大きく拡大してきた」「映像系でも・・・ユーストリームの勢いがものすごい。この、すでに編集さえ放棄した『ダダ漏れ』とも呼ばれるライブ中継型の情報発信は、通常の報道機関の報道や職業作家の商業出版とは対極にある情報生態系を生み出しつつある」。

 「出版産業はいずれくる未来ではなく、すでに現状に追いつくために何らかの手を講じなくてはならない状況に追い込まれている」。そして、キンドルやiPadに目を向けた。
 
 なぜキンドルやiPadなのかというと、こうしたデバイスが「コンピューターであって、コンピューターでない」からだと本書は説く。
 「ウェブブラウザとパソコンの組み合わせは、コンテンツを有料で購入するデバイスとしては、信じられないくらい非力だからだ」「パソコンとウェブブラウザという存在が海賊行為の大きなセキュリティホールになっている」「ウェブブラウザでなければ、こうした事態はある程度防げる。もしパソコンでなければ、事態はなおよい」。
 「コンピューターなのだが、パソコンでできるはずのことがいろいろ制限されている機器は、『情報家電』とか、『デバイス』とか、『アプライアンス』と呼ばれる」が、これがデジタルコンテンツの有料販売に力を発揮すると言うのだ。

 デジタルコンテンツがフリーになっていくという議論も出版産業の目をキンドルやiPadに向けさせるきっかけになったと本書は見る。

 クリス・アンダーソンは著書『FREE』で、「潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる」と言い、デジタルの世界で配布にコストがかからなくなった情報は無料になっていくが、その周辺で稀少性のあるビジネスを作ればお金がとれる、という主張をしていた。たとえば、配信費用が安いデジタル書籍は無料でもいいが、著者の稀少な時間を使う講演やコンサルティングではしっかりお金を取る、という考え方だ。

 しかし、「コンテンツ産業は、フリーミアム論に大きな疑問を持ち、同時に広告費への依存という道を選ばず、不可能といわれた問いに取り組むのである。すなわち、インターネット環境において、コンテンツは常にフリーでなければならないのか? ほかのモノやサービスに収益機会を求めなくてはならないのか? という問いだ。・・・コンテンツそのものを『今だけ、ここだけ』にすることで、そしてお金を払った、あるいはお金を獲得する助けをしてくれた『あなただけ』にコンテンツを提供して、ビジネスにすることはできないか? その一つの解が、キンドルやiPadなどのデバイスである」。

 「このデバイスを可能にしたのが、ネットワークの向こう側の変化であった」。

 「クラウド」である。
 インターネット時代は分散処理が基本だったが、ネットサービスが成長するにつれて端末は「自分で仕事をしないでネットワーク上のサーバーに任せるという傾向」が強まった。メインフレームに相当する高機能サーバー群に依存する「クラウド」とは、かつてのメインフレーム時代への先祖返りであるというのが本書の見方だ。

 そして「パソコンという万能海賊版製造機器」に代わって「海賊耐性」が強く、「使い勝手」がよいキンドルやiPadなどのデバイスがクラウドと結びつくことによって「デバイス=クラウド生態系」が出来上がったとみる。コンテンツビジネスの環境は劇的に変わり、古い購入型モデルがよみがえった。
 
 iPhoneやiPadの機能はたとえばMacOSXに比べて限定されているが、これはむしろ、コンテンツビジネスのデバイスとしては好ましいのだ。

 今後のインターネットは「そのかなりの部分をデバイス=クラウド生態系が担う」と本書はみる。
 しかし、それにより「これまでのネットワークが分断されていく」という問題も生じる。
 
 これを乗り越えるものとして本書は「インタークラウド」を提言する。「一つ一つのサービスは閉じたビジネスの生態系を持ち、デバイス=クラウド環境の中でより閉じた発展を許されながら、それが最大限(時として競合サービスの間であっても)相互に接続され、利用者に最大限の選択の自由を与えるような、ネットワークサービスのあり方である」。そして、インタークラウドは「インフラ間の接続であったインター+ネットの場合と異なり、サービス間の連携」で、それらを連携させるためには「技術基準や法規制といった静的な環境整備では足らず、事業者に相互接続したいと思わせるような力を生み出」す必要があるという。

 iPhoneやiPadはパソコンにもケータイにない魅力があるが、その背景には「デバイス=クラウド生態系」という構造があったわけだ。オープン環境下におけるフリーなサービスと「デバイス=クラウド生態系」における付加価値の高いサービスが連携し合って、今後、インターネット上で多様なサービスが展開されていくようになるのだろう。

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