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変化を嫌うリーダーは去れ! 夏野剛著『夏野流 脱ガラパゴスの思考法』(ソフトバンククリエイティブ)

Natsunoryu
夏野流 脱ガラパゴスの思考法

 夏野剛著『夏野流 脱ガラパゴスの思考法』(ソフトバンククリエイティブ、2010年6月4日発行)を読んだ。

 日経電子版の前身であるNIKKEI NETのIT PLUSで連載されていた「夏野剛のネオ・ジャパネスク論」を書籍化したもの。
 IT PLUSの連載をちゃんと読んでいたつもりだったが、本で一気に読むと、忘れている記事もあったし、新たな「気づき」もあった。
 「本」という形態は捨てがたいと改めて思った。

 「はじめに」に本書の狙いが語られている。
 「恐慌や混乱、争い、経済ショックは、多くの場合、不自然な仕組み、合理性のないシステム、社会のコンセンサスを無視した強権、あるいは古い考えに固執するあまりに環境の変化に対応しきれなくなった『歪み』を原因として生まれる。そういう意味では、現在の金融恐慌と社会混乱は、人間社会あるいは社会システムが新しいフェーズに脱皮するためにもがき苦しむ時期なのだと捉えることができないだろうか。そのように考え、原点に戻っていろいろなことを見直してみよう」

 夏野氏がまず、メスを入れるのは企業だ。
 「マネジメントのリーダーシップが問われている。変化する市場環境、広がるグローバル市場、ますます重要になるビジネスモデル――。会社を組織を、どの方向へ走らせるのか、焦点を定め、限られたリソースを効果的に使い、結果を出す。…IT革命により業際があいまいになり、順列組み合わせ的にすべての可能性を追求することは不可能となった。数が多すぎるのである。マネジメントに求められているのは、思い切った割り切りと『選択と集中』だ」。
 問題は「そんな意識で役員をやっている人」が多数派ではないことだ。「まだまだ根強く残る日本の経年重視昇進システムは、幹部ほど長い期間その会社にいるという仕組みを作り上げてしまった。勤務年数が長い分、危機感は薄い。変革意識に乏しい。…どこか過去における会社への『貸し』(人生を会社に捧げて生きてきたこと)を、自分に役職がある理由だと思っている」。
 しかし、「IT革命後の今、ビジネス上の決断をするにあたり、昔のパラダイムは通用しない。昔の経験だけをベースにしていても判断はできない。変化する市場の動向、トレンドを『読み』、過去の経験を参考にしながらもそれに捉われることのない『決断』をしなければいけない。経験がないことに対して判断を下す時、経営者はどうするだろうか。当然いろいろな人に意見を聞くだろう。…経営判断ともなれば、相当真剣に、時間と労力をかけて意見をしてもらわなければならない。とすれば聞く相手は経営幹部の中に持つしかない。…つまり、現代の大企業では経営陣の多様化が必須ということになる」。
 「会社をよく知っており、長く勤めてきた人の知見・経験は大事である。しかし、全員がそうである必要はないはず」。

 IT、メディアにも切り込んだ後、再びリーダー論を展開する。
 「Changeはトップからしなければならない。社会体制というものはボトムアップで大きな変化を実現するのは難しい」。
 「平時には日本型システムは強い。…しかし、緊急時には弱い。とりあえず周りに合わせて動く、過去の延長線上に戦略を描く、内部の論理で仲間内だけで議論する――というのでは、市場の変化についていけない」。
 「高度成長期のシステムを長々とひきずっている日本では、リーダーは指導力よりも、人徳、性格、ウケなどが優先されることが多い。これは高度成長には誰がリーダーでもある程度の繁栄は『市場の成長』という形で保証されていたからである。しかし、この選び方では、方向を決めない、強くは導かない人をリーダーにする確率が高い。なぜなら、既存の仕組みを変えようとする発言や主張を行っている人は、必然的に構成員のウケが悪いからだ」。

 最終章でも、夏野氏は改革を嫌う現在の日本リーダーたちに苦言を呈する。
 「今の日本が低迷している最大の原因は、この20年で前の高成長時代のシステムを変革できなかったことにあると強く感じる」。
 「経済大国化の時代に形作られた終身雇用、年功序列、官僚主導、長期政権、サラリーマン社長、多様性欠如、ものづくり神話、外国語軽視などの特徴は今も根強く日本社会のシステムに根付いている。これらの特徴はすべて、右肩上がりの成長基調の中で、『みんなで成長し、みんなで困難を克服する』システムである」。
 「日本に足りないもの、それは変化、変革を積極的に受け入れようとする姿勢ではないだろうか。世界経済は、市場環境は予想以上のスピードで変化し続けている。特にIT革命以降のこの10年は、変化のスピードに拍車がかかっている。そんな中、変化を嫌い、過去となるべく同じように仕事をし、同じような政策を考えていては、状況についていけないことは明白である」。
 「しかし、日本のリーダー層、特に今現在政治や企業経営の中枢にいる政治家や経営者は、変化についていけない制度、仕組み、ビジネスを、なんとか延命させることを第一の目標にして懸命の努力をしているように見える」。

 「日本には期待の持てる点もたくさんある。まず技術。…次に人材の教育レベル。…そして資金。いまだに個人金融資産は1400兆円以上。文化もそうだ。アニメのようなオタク文化だけではなく、ファッションから伝統芸能まで、日本文化に対する世界の尊敬、憧れは大きな資産である。そして国内市場。目の肥えた、所得水準の高い、しかも競争の激しい国内市場は、世界に打って出る際に非常に有利なローンチパッド(発射台)になるはずだ。…足りないのはリーダーシップだけなのだ」。

 いろいろなことが書いてあるのだが、何よりも帯のキャッチフレーズが強く印象に残る本だった。
 「変化を嫌うリーダーは去れ!」

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わいん厨房・たるたる(東京・銀座、ワインバー)

 わいん厨房・たるたる(中央区銀座7-12-6 銀座トキワビルB1、03・5565・9898)に行った。

 カウンター席中心の小さなお店。しかし、各国のワインを揃えており、グラス単位でも、いろいろなワインが飲めるので、ワイン好きにはたまらない。

 ワインに合う料理も手ごろな値段で食べられる。
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 ラタトゥイユ 680円。

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 田舎風パテ 880円。

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 じゃがいもとベーコンのソテー 680円。

 営業時間は午後3時から午後2時まで。
 不定休。

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DENMARK・THE ROYAL CAFE(デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ、東京・銀座、カフェ)

 DENMARK・THE ROYAL CAFE(デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ、東京都中央区銀座4-6-16 三越銀座店1階、03・3561・7018)に行った。
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 中央のカウンター席に座った。18時を過ぎるとディナーメニューになり店内がやや暗くなるが、カウンター席は明るく、本を読みながらお茶を楽しむのには絶好の席。

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 コルタード。735円。ダブルエスプレッソに同量のミルクを入れたもの。

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 ケーキはどれにしようか迷ったが、デンマーク産チーズが入ったロイヤルチーズケーキ“スワン”840円を頼んだ。

 公式ホームページもあるが、伊藤園のホームページの説明が詳しかった。
 株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、デンマークの首都コペンハーゲンで人気のカフェ「THE ROYAL CAFE(ザ・ロイヤルカフェ)」を日本国内で店舗展開する権利を取得しました。今後、当社の100%出資子会社であるRCダイニング株式会社(社長:町澤慎一 本社:東京都新宿区)が事業を運営してまいります。
今回第1号店を、9月11日(土)に新たに増床オープンする銀座三越東側の1階に「DENMARK・THE ROYAL CAFE(デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ)」としてオープンいたします。“北欧デンマークの新しい食文化”をコンセプトに、独創的なデザインに彩られたデンマーク本店の雰囲気のまま、オリジナルの料理やスイーツ、スペシャルブレンドコーヒーやアルコール類をお楽しみいただける、ライフスタイルカフェです。

 2007年5月にコペンハーゲンの中心地、ストロイエ通りにオープンした「THE ROYAL CAFE」は、デンマーク伝統のデザインをアレンジしたモダンインテリアや、オープンサンドイッチ「スムッシー」、スペシャルブレンドコーヒーなど、それまでのカフェとは一線を画した空間と料理でお客様を魅了している、人気のカフェです。特に「スムッシー」は、デンマークで300年の歴史をもつオープンサンドイッチ「スモーブロー」と日本の「寿司」をヒントに創られた、「THE ROYAL CAFE」オリジナルの大人気メニューです。さまざまな色や食感の食材を重ね合わせた、エレガントな一口サイズのオープンサンドイッチで、おいしさはもちろん、その芸術性が話題です。

 今回オープンする「DENMARK・THE ROYAL CAFE」においても、四季折々の旬の食材を盛り付けた「スムッシー」や、本店のオーナーで、バリスタ世界大会の審査員経験もあるルド・クリスチャンセン氏が開発したダブル焙煎のスペシャルブレンドコーヒー「RUD’S ダブルロースト」、ホームメイドスタイルケーキなどのオリジナルメニューをご提供いたします。また、店内にはデンマークの自然の中でのピクニック気分を味わえるような大きなメタルツリーを施し、食器、カトラリー、インテリアにはデンマークブランドを中心とした最上級の北欧ブランドを用いることで、デンマークの上質なライフスタイル空間を実現しました。

 客席は、銀座三越既存の建物(西側)と今回の増床部分(東側)とをつなぐパサージュに面した立地をいかし、店内席のほかテラス席もご用意しております。

 当社は、日本の伝統食材である「緑茶」を中心に事業を展開し、日本の豊かな“食文化”や“食の喜び”をさまざまなかたちでお客様に伝えています。今回初出店する「DENMARK・THE ROYAL CAFE」におきましても、デンマークの食文化・伝統をエッセンスに特別な空間を演出し、お客様に心地よい時間と食の楽しさをご提供していきたいと考えております。
 
 今後RCダイニング(株)は、国内の複数出店を視野にいれた運営を行ってまいります。

■ショップ プロフィール
ショップ名 : DENMARK・THE ROYAL CAFE(デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ)
開店予定日 : 2010年9月11日(土曜日)
出店地 : 銀座三越1階 (東京都中央区銀座4-6-16)
営業時間 : 午前10時~午後11時
客席数 : 80席(店内56席、テラス24席)
コンセプト : 北欧デンマークの新しい食文化
ご提供内容 : (1)食事(ランチ、ディナー、アラカルト)
(2)デザート(ケーキ、デニッシュ、焼き菓子など)
※デザート類はテイクアウト販売もいたします
(3)飲み物(コーヒー、紅茶など)
(4)アルコール(ワイン、ビール、カクテルなど)
(5)その他、グッズ
特徴 : (1)デンマークで大人気の「THE ROYAL CAFE(ザ ロイヤルカフェ)」海外初店舗
(2)デンマークで300年の歴史をもつスモーブローと日本の寿司をヒントに創られたオープンサンド「スムッシー」や、スペシャルブレンドコーヒー「RUD’S ダブルロースト」などのオリジナルメニューをご提供
(3)食器、カトラリー、インテリアなどに、ジョージ・ジェンセン、フリッツハンセン、カールハンセン、コスタボダ、オレフォスなどの北欧ブランドを用い、上質なライフスタイル空間を実現
ビジュアル : (1)一面ガラス張りで天井の高い、開放的で明るい店内に、高さ約5メートルのメタルツリーを2本配置
(2)デンマークにゆかりのあるアイテムを描いた長さ約14メートルの壁画
(3)オリジナルデザインされた約7メートルのロングテーブル

 今度行ったときは「スムッシー」を頼んでみよう。

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木挽町 楓(東京・銀座、居酒屋)

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 木挽町 楓(東京都中央区銀座3-14-5 銀座Jビル2階3階)に行った。銀座にも、こんなに店があるんだなあと思う素朴な店。この日は食べなかったが静岡おでん、静岡のお酒、富士宮焼きそばなど、静岡の味が楽しめる店だ。

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 9月のおすすめ。名物とろろ焼き(桜えび入り)800円。

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 じゃが芋素揚げ。600円。

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 いろいろきのこバター炒め。700円。

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 富士宮焼きそば(三元豚入)。750円。

 富士宮焼きそばは、東名高速道路の3つのサービスエリアに店があるが、どの店も開店が遅い。混まないように早朝高速を走ると、食べられない。それだけに、余計に食べたくなる。

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、富士宮やきそば(ふじのみややきそば)は、「富士宮やきそば学会」の登録商標であり、静岡県富士宮市の焼きそばである。
 1999年、富士宮市の町おこしに付いて話し合いをしている際、独自性がある地元の焼きそばに着目したのがきっかけである。
 この「富士宮やきそば」という名称は、古くから当地で食べられてきた焼きそばを新たに命名したものである。
 御当地人気料理特選に選ばれていて、B級グルメの人気を決めるB-1グランプリにおいては第1回と第2回は第1位、第3回は特別賞となった。町おこしの成功例として取り上げられることもある。
 富士宮やきそばは、通常のやきそばとは製法や使う食品が異なる点があり、次の3つが挙げられる。
1.富士宮やきそばを名乗るためには指定された麺を使用する
2.油かす(富士宮では「肉かす」と呼ぶ)を使用する
3.仕上げに削り粉をふりかける
 富士宮やきそばに使われる蒸し麺は水分が少なく固い状態のため、調理の際に少量の水を加えることで調節し、調理を行う。なお、富士宮やきそばとして使われる麺は原則として3つの製麺業者の麺のみであり、富士宮市内の製麺業者であるマルモ食品工業、叶屋、曽我めん、木下製麺所[2]であるとされている[3]。富士宮やきそばを売る店はお宮横丁など、富士宮市内に多く存在する。市外にも富士宮やきそばを提供する店も増えている。
 富士宮やきそばを名乗るためには、特定の製麺会社と仕入れ契約を交わし、富士宮のPR活動を行い、登録商標使用料(ロイヤリティー)の契約を交わす必要がある。

 東京で富士宮焼きそばを食べるならばこの店だ!

 「食べログ」によると、営業時間 [月~金]は11:30~14:00(L.O)、18:00~23:00(L.O)。
 定休日は土曜日(予約のみ営業)、日曜日、祝日とあるが、店の名刺は営業時間のところがマジックで消されていた。気分で店を閉めるのかもしれない(笑)。

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株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ著『ソーシャルストリーム・ビジネス~Twitter、Facebook、iPhone時代の消費者を巻き込むビジネスの新ルール』(インプレスジャパン)

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ソーシャルストリーム・ビジネス

 株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ著『ソーシャルストリーム・ビジネス~Twitter、Facebook、iPhone時代の消費者を巻き込むビジネスの新ルール』(インプレスジャパン、2010年8月1日発行)を読んだ。

  本書は2007年にリクルートが発足させた“メディアと技術に対する実証研究機関”メディアテクノロジーラボが行った実証実験をもとに、「ソーシャルストリーム」についてまとめた本だ。
 
 「ソーシャルメディア」というと、「ユーザーがコンテンツや情報を作りだす」という側面が強調されてきたように思うが、、実際に今、注目されているのは「ソーシャルストリーム」という情報流通の側面ではないか。
 本書はこの流れをしっかり分析している。

 最近では、ユーザーが複数台のモバイルデバイスを活用するようになった。本書は「常にネットにつながっている新たな時代において、ソーシャルストリームこそが鍵となるであろう」という。
 「ソーシャルストリームとは、ソーシャルな関係性(ソーシャルグラフ)の中を伝わる情報の流れを指す」。

 本書は「ポータルサイトの時代」から「検索エンジンの時代」を経て、「ソーシャルストリームの時代」へと突入した、とネットサービスの進化を振り返る。

 「この時代の特徴は、ユーザーがコンテンツや情報そのものを作りだすことに加え、その流れもユーザーが作りだすという点である」「クチコミ(バイラル)と呼ばれるこの現象は、リアルの世界でも起きるが、ネット上のクチコミは、そのスピードと広がりが桁違いである」。

 「ソーシャルストリームにおいてユーザーは重要な役割を果たしている。ソーシャルストリームの流れを増幅するのも、せき止めるのもユーザーだ」。

 「ソーシャルストリームが流れる場所、つまり、ユーザーがコンテンツや情報を作りだしたり、それを増幅したりする場所がソーシャルメディアである」。

 「ソーシャルストリームに流れる情報やコンテンツは、ユーザーの視点から作られており、広告より共感・賛同が得られやすい。また、ソーシャルストリームは、ユーザーやブログやSNSで紹介する、つぶやく、コメントするといった、ユーザーの自発的なアクションが積み重なってできるので、企業やブランドがコストを負担しなくてもいい(もしくはコスト負担が小さい)」「反面、企業やブランドにとってソーシャルストリームはリスクでもある。それはソーシャルストリームが企業やブランドの側からコントロールできないためである」。 

 本書は、ソーシャルメディアを運営した経験からゼロからファン集団を形成するノウハウを公開。
 
 さらに、ソーシャルストリームでの話題の伝播には、次のようないくつかのパターンがあることを紹介する。
1.パルスパターン 瞬間的に広がるが、すぐに収束するパターン
2.クオリティーパターン 瞬間的に広がり、限定したコミュニティーの中でしばらく持続するパターン
3.ブレークパターン 徐々に広がっていき、最高潮を迎え、静かに収束するパターン
4.その他 特にピークがないパターン

 ある新しいサービスを投入した時に、そのサービスがものになるかどうかはソーシャルストリームのパターンから予想できるという。
 「ブレークしてバイラル的に広がる兆候がある場合は、コストをかけて修正をどんどん行い、ユーザー数を増加させるべきだが、一過性の兆候である場合は、即時にサービス停止の判断をし、次の新しいサービスの企画検討に専念すべきである」。

 本書は「ソーシャルメディアを構築する技術」をはじめ、ネットビジネスを手掛けるために必要なノウハウを惜しみなく提供している。

 しかし、つかみどころのないソーシャルストリームをどうビジネスにつなげるかというノウハウは、既存のメディアにとっても役に立つ情報だと思う。

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池田紀行著『キズナのマーケティング~ソーシャルメディアが切り拓くマーケティング新時代』(アスキー新書)

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キズナのマーケティング

 池田紀行著『キズナのマーケティング~ソーシャルメディアが切り拓くマーケティング新時代』(アスキー新書、2010年4月10日発行)を読んだ。

 「はじめに」を読むと、この本のスタンスがよく分かる。
 「人と人、ウェブとウェブがつながるソーシャルな時代において、企業のマーケティングコミュニケーションはどう変わらなければならないのか。この本は、ソーシャルメディアマーケティングへの取り組みを煽るのではなく、その本質を理解してもらった上で、どう取り組むべきなのか(場合によっては取り組まないべきなのか)、ということについて、比較的冷静な視点で書いてみたものだ」。
 「自社が抱える課題は何で、理想と現実の間にはどんなギャップがあってということを把握し、それを埋めるシナリオの中で、ソーシャルメディアマーケティングが向いているのであれば取り入れればよいだけなのである」。
 「企業のマーケティングコミュニケーションは『変わらなければならない』のではなく、『変わることができる』のである。『脅威』ではなく『機会』なのだ」。

 「この10年間に起こったマーケティング環境の変化」の考察はなるほど、と思った。
 「世の中の情報流通量が爆発的に増加したことがアテンションエコノミーを引き起こし、広告が効かなくなった」と言われているが、「どうやら犯人は情報爆発だけではなさそうなのだ」として、8つの要因を挙げる。
 
 1.消費の成熟―欲しいものは、もうすべて持っている
 2.消費の学習効果―そして僕らは賢くなった
 3.情報リテラシーの向上―毎日が、情報の取捨選択
 4.メディアの多様化―消費者との接触ポイントは分散化
 5.UGCの量的増加と質的向上―量が質を押し上げるサイクルに入った
 UCGとはUser Generated Content(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)。「ユーザーが生成するコンテンツである」。

 6.認識できる(取得可能な)選択肢の増加―だけど、選ぶのがメンドクサイ!
 7.認知的不協和の増大―失敗しないから、調べまくる
 「認知的不協和」とは、「あっちのほうが良かったかな」「失敗したかな」といった、「矛盾する認知を抱える状態で、そのときに感じる不快感」を表す表わす社会心理学の用語だという。
 「大切な人と大切な日に行くレストランや、あまり買い替えのきかない家電、高額な自動車や保険商品、一生に一度か二度くらいしかない不動産の購入などは、その認知的不協和も巨大な怪物となる」「できる限り認知的不協和を回避したい僕たちは、いつからか購入前にネットで『失敗しないための』情報探索を丹念に行なうようになった」。
 8-1.企業メッセージの相対的信頼性の低下―もう無垢な消費者ではない
 8-2.広告アテンション獲得力の低下―広告は邪魔者
 8-3.従来型CRMによる顧客関係性の維持・向上力の低下―顧客とのキズナづくりへ
 CRM(Customer Relationship Management)は「約半数の企業で失敗している」という。池田氏はこれについて「そこに『キズナ』がなかったからだと思っている」と分析する。
 「これからのマーケティングに求められるのは、企業と消費者の真の『キズナ』づくりだ」。

 ここからキズナづくりのためのソーシャルメディアマーケティングの具体的なノウハウが語られ始める。
 
 ソーシャルメディアマーケティングには
(1)短期的な話題化を図るバズ・バイラル型

(2)アドボカシー型
がある。
 「バズとは、『鉢の羽音』(蜂がブ~ンとざわめいている)という意味で、話題となるコンテンツをつくり、そこに人を惹きつけるプロモーション手法だ」「一方、バイラルは『ウイルス』という意味で、話題性のあるバズネタを人から人へのクチコミでウイルスのように伝播させるマーケティング手法である」

 アドボカシー(advocacy)とは。『顧客の信頼を勝ちとる18の法則―アドボカシー・マーケティング』(山岡隆志著・日本経済新聞社)によると、「『支援』『擁護』『代弁』等の意味を持ちます。顧客との長期的な信頼関係を築くため、企業は顧客を支援します。…『アドボカシー・マーケティング』とは、徹底的に顧客の側に立って、モノゴトを考え実行する信頼ベースのマーケティング手法です」という意味らしい。

 なぜ、アドボカシー型に取り組まなければならないのか?

 池田氏は次のような理由を挙げる。
(1)潜在顧客とお近づきになるチャンスを失ってしまうリスク
(2)競合他社が先にキズナを形成してしまうリスク
(3)消費者のホンネを知らないリスク
(4)無駄な広告宣伝広告コストをかけ続けるリスク
(5)変化したマーケティング環境に適応できないリスク
(6)手遅れになってしまうリスク
 
 リスクを恐れ、先頭に立って行動を起こさない企業が増えているが、何もしないことがリスクであるという視点が面白い。

 しかし、「ソーシャルメディアマーケティングは『結果』をコントロールするものではなく、最適な結果を導き出すための『プロセス』をマネジメントすること」なのだ。このことを池田氏は何度も強調する。
 「ソーシャルメディアはクチコミ同様、消費者同士が利害関係なく、自由にコミュニケーションをしている公園なのだ。その公園であなたはマーケティングを『させていただく』のである」というたとえはわかりやすい。

 ここを間違えると、ソーシャルメディアマーケティングは失敗する。

 実践篇では、具体的事例も交え、詳しくソーシャルメディアマーケティングを解説する。

 ソーシャルメディアマーケティングは難しいが、うまくいけば効きそうである。

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松岡正剛著『多読術』(ちくまプリマー新書)

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多読術

 松岡 正剛著『多読術』(ちくまプリマー新書、2009年4月10日発行)を読んだ。
 インターネット上でブックナビゲーション「千夜千冊」を展開中の松岡正剛氏。氏の書棚は、2009年10月、丸善丸の内本店に設けられた「松丸本舗」に再現されている。
 松岡氏がどのように本と向き合っているか、興味深く、この本を読んだ。

 正直言って松岡氏の表現を100%理解することはできなかった。私が感銘した部分についてのみ、レビューしたい。 
 本について。
 「本というのは、長い時間をかけて世界のすべてを呑み尽くしてきたメディアです」。

 読書について。
 「読書は何かを着ることに似ています」。
 「本は食べてみないとわからない。・・・世界中の食材と料理の数を見て、その数に驚いて食べるのをやめる人がいないように、本と接するというのは、とてもフィジカルなことなんです。と、同時にむろんメンタルでもある」。
 「食べることが出会いでもあるように、読書も出会いです」。
 「無知から未知へ、それが読書の醍醐味です」。
 「読書は他者との交際なのです」。
 「読書は著者が書いたことを理解するためにだけあるのではなく、一種のコラボレーションなんです」。
 
 多読術。
 「多読って、単一な方法でたくさんの本を貪り読むというのではないんです。…スポーツの選手がいろいろの筋肉を動きやすくするように、読書のための注意のカーソルの動きを多様にする。…エクササイズやストレッチは、どうしても読書にも必要です」。
 「ぼくは自分がつきあったり、師事したくなった人の本は必ず読むということを徹底するんです。これも実は多読のコツかもしれません」。
 「著者というのは、実は自信ありげなことを書いているように見えても、けっこうびくびくしながら『文章の演技』をしているんです。…だから本というのは著者の『ナマの姿ではありません。『文章著者という姿』なのです。…そこには文体があって、なんらかの『書くモデル』というものが動いている。それをズバッと見るのが読解力のための読書のコツです」。
 「多読術にとって大事なのは、本によって、また読み方によって、さまざまな感情やテイストやコンディションになれるかどうかということです。…どういう『ながら読書』をするかを、むしろマスターしてほしいと思う」。
 「読書するにあたっては、書物に対してリスペクト(敬意)をもつことも必要です。馬鹿にしてものごとを見たら、どんなものも『薬』にも『毒』にもならない」。
 「知人や友人に薦められると『渇き』がはっきりしてきて、かつ、謙虚になれるんですね。リコメンデーション(おススメ)で本を読む意義はとても大きいですね。…そういうふうに本を読んでいると、そのうち、知人や友人や先輩との会話の中で、本を介した会話ができること自体が、他の会話にくらべてうんと密度や質感をもたらしてくれるものだというふうになり、そういった会話を通して読書の事前エクササイズをしていたということなんでしょうね」。
 「何かたくさんの本とネットワークしていく可能性をもった、いわば『光を放っている一冊』というものが必ずあるんですね。それをぼくは『キー本』とか『キーブック』と呼んでいるんですが、このキーブックをもとに読み進む」。
 「さまざまな本の読書をまぜこぜにしながら、遊びや息抜きも読書でしていく」

 多読「術」というと表層的な感じがするが、読書世界の広がりと奥の深さ、人生の楽しさを教えてくれる名著だった。
 ハウツー本などと思わずに、ぜひ、手にとってみてほしい。

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佐藤尚之著『明日の広告~変化した消費者とコミュニケーションする方法』(アスキー新書)

 ブックレビューを本格的に書き始めたのは2009年3月から。それ以前に読んだ本でも、面白かったものは随時、レビューを書きたい。
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明日の広告

 佐藤尚之著『明日の広告~変化した消費者とコミュニケーションする方法』(アスキー新書、2008年1月25日初版発行、2月19日第1版第2刷発行)を再読した。
 
 第1章は「消費者へのラブレターの渡し方」。
 「広告は消費者へのラブレター」。
・以前はラブレターが相手の手に渡りやすかった。
 「メディア担当者はターゲットに合わせて4マスの場所取りをして広告を載せていればよかったし、そうしておけば、消費者はその広告をわりと見てくれていた」
・他に楽しいことが少なかったので、ラブレターはとても喜ばれた。
 「広告自体をエンターテイメントとして楽しんでくれてもいた」
・渡したラブレターを相手がちゃんと読んでくれた。
 「広告はまだ情報ソースとして信頼されていた。だから消費者は広告ををちゃんと読んでくれた」

 「こうなりゃあとは表現勝負(ラブレターの内容勝負)。いろんな表現手法で相手を感動させれば、シンプルに口説き落とせた時代だったわけだ」

 ところが、状況は変わった。消費者が変わったのだ。
・ラブレターが相手の手に届きにくくなった。
 「消費者の行動をもっともっと観察し、あらゆるタイミングと場所で彼らを待ち伏せしないと、彼らと接触することすら難しくなってきた」
・他に楽しいことが山とあり、相手はラブレター自体に興味をなくしている。
 「消費者は自己防衛本能に近い反射神経で『要らない情報はスルーする』ようになった」
・ラブレターを読んでくれたとしても、口説き文句を信じてくれなくなった。
・しかもラブレターを友達と子細に検討し、友達に判断を任せたりする。
 「消費者は広告はあんなに疑うくせに『使った人や友達の生の声』は深く信じるのだ」「広告よりクチコミが効く時代なのである」。

 もうモテなくなったのである。モテる努力をしなければならない。
・相手の趣味や行動を調べ、よくよく観察し、相手の身になってみる。
・・・
・相手の友人にも気に入られるよう十分ケアする。

 ラブレターを渡したあとも大事だ。
・ラブレターを渡したあと、脈がありそうなら、すかさずもうひと押し。
・・・
・長くつきあうためには、イイトコロだけでなく、欠点も公平にみせていくこと

 つきあいの種類も考える。
・ひっかけナンパ
・・・
・結婚が前提のおつきあい

 そして「もっと効果的な方法」があるという、ラブレターを渡す自分自身を変えるのだ、相手好みに。 
 「消費者とより深くコミュニケーションするとしたら、広告だけが『変化した消費者』に対応してもダメである」
 「商品開発からすでに消費者とのコミュニケーションは始まっている。『変化した消費者』を相手にするとき、商品開発コンセプトという最上流に『全体のコミュニケーションをデザインできる人』を置くことが、これからの時代には必要になってくると思われる」

 第3章以降で、佐藤氏は具体的なノウハウを示してくれる。
 まず、「変化した消費者を待ち伏せる7つの方法」だ。
(1)消費者のコンタクト・ポイントで待ち伏せる
 「コンタクト・ポイントとは、消費者に接触(コンタクト)できるあらゆる接点のこと。マスメディアをはじめ、OOH(Out Of Homemedia:つまり屋外メディア。交通メディアなども含む)やネット、店頭、人など、あらゆる接点のことである」
(2)新しいメディアを創って待ち伏せる
 「いままでメディアと思われていなかったものを、アイデアによってメディアにしてしまうことをメディア・クリエイションと呼ぶ」「アイデアでコンタクト・ポイントそのものを新たにメディアにしてしまう」
(3)クチコミを利用して待ち伏せる
 英語では、BUZZ(バズ)とかWOM(ウァム)とかVIRAL(バイラル)と呼ばれる。
(4)CGMで待ち伏せる
 「消費者が創ったメディア、CGM(Consumer Generated Media)が注目されるのは、それがクチコミを媒介するからである」
(5)エンターテインメントの中で待ち伏せる
 「『消費者がわざわざ探して見に来たくなるようなコンテンツ』をプル型コンテンツ(プル、つまり消費者が自ら取りにくるコンテンツ。逆にプッシュ型は消費者に一方的に送り出すコンテンツのこと)と呼び、その中に広告を忍ばせることをブランデッド・エンターテイメントと呼んだりする」
(6)検索結果で待ち伏せる
 古典的なAIDMA(アイドマ、消費者はCMなどで注意<Attention>を惹きつけられ、興味<Interest>を持ち、欲しいという欲望<Desire>を抱き、商品名を記憶<Memory>し、購買行動<Action>に移るというもの)からAISAS(アイサス、AIまでは一緒。その後が違う。商品に興味を持ったらグーグルやヤフーなどで検索<Search>して調べ、購買行動<Action>をし、その結果を消費者同士が、例えばブログやメールなどで教え合って共有<Share>するというもの)へ消費行動が変化。
(7)メディアをニュートラルに考えてクロスに待ち伏せる
 「『消費者に一番伝わるメディア、もしくはコンタクト・ポイントは何か』を先入観なくニュートラルに考えてコミュニケーションの真ん中に据えるのである」
 「ニュートラルに考えて中心メディアを決めたら、それに連続して戦略的にメディアを配置し、相乗効果を狙いたい」「このように相乗効果を起こし、消費者がメディアをクロスして動くように意識してメディアを配置することを『クロスメディア』と呼ぶ」
 
 佐藤氏は「変化した消費者に対して最低限これらを活用して、コミュニケーション・デザインしていくのである」と説く。

 この後、第5章で、ケーススタディとして、「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」が紹介される。
 これまでの話がよく分かる、この本のキモともいえる事例紹介だ。

 このあたりから、この本は「コミュニケーション・デザイン」について書いた本であることが分かってくる。
 「コミュニケーション・デザインは、メディアの役割分担を明確にして設計するので、メディアそれぞれの役割は最大化される」
 「どのメディアがどう伸びどう衰退するとか、そんな論ばかり言ってないで全部活用すればいいのだ」
 「広告業やメディア業界の外部の人がいろいろ言うのはいい。でも実際にその中にいる人は、消費者が使うメディアを全部活用して前向きにこの業界を伸ばしていくべきだ」 

 佐藤氏は「おしまいに」で次のように言っている。
 「魅力的な新しいメディアや便利なデバイス、次世代のテクノロジーがどんどん増え、エンターテイメントが身の回りに溢れる。既存メディアも(きっと)変化して消費者のために尽くそうとする。ネットという『消費者のメディア』もますます豊かに進化し、発信の自由度も増すと思う。暮らしていく分には相当楽しい『明日』だと思う」

 2年たって再読。新しいメディアがさらに増え、消費者の変化はさらに進んでいるが、この本の「提案」は少しも陳腐化していない。逆に言えば、広告界やマスメディア界は悲観論から脱することも、新しい方向に踏み出すことも、いまだにできていないのかもしれない。

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遅まきながら『サマーウォーズ』

 細田守監督の長編アニメ映画『サマーウォーズ』を観た。
 8月6日午後9時に放送された金曜ロードショー(日本テレビ)を録画しておいたのだが、まだ夏の暑さが残る今日、ようやく観た。

 公式ホームページのイントロダクションを引用する。

『時をかける少女』の細田守監督が放つ、劇場アニメーションの最新作『サマーウォーズ』。
2006年夏、単館公開からスタートした『時をかける少女』は、口コミでロングランヒットとなり、国内外の映画賞を多数受賞。多くの人に愛される作品となった。あれから3年、『時をかける少女』を手がけ一躍注目を浴びたアニメーション監督・細田守が、満を持して送り出す最新作が『サマーウォーズ』。キャラクターデザイン・貞本義行、脚本・奥寺佐渡子など『時をかける少女』のスタッフが再結集したこの作品は、ふとした事から片田舎の大家族に仲間入りした少年が、突如世界を襲った危機に対して戦いを挑む物語である。

主人公はちょっと弱気で人付き合いも苦手な、17才の理系少年。
高校2年の夏休み、天才的な数学力を持ちながらも内気な性格の小磯健二は、憧れの先輩、夏希にアルバイトを頼まれる。二人が辿りついた先は、長野にある彼女の田舎。そこにいたのは総勢27人の大家族。夏希の曾祖母・栄は、室町時代から続く戦国一家・陣内(じんのうち)家の当主であり、一族を束ねる大黒柱だ。
栄の誕生日を祝うために集った、個性豊かな「ご親戚」の面々。そこで健二は突然、夏希から「フィアンセのフリをして」と頼まれてしまう。

ひょんな事から巻き起こった世界の危機に、健二と大家族は戦いを挑む…
栄のためにと強引に頼み込まれ、数日間の滞在をすることになった健二。賑やかな親戚の面々に気圧されながら、必死に「フィアンセ」の大役を果たそうと奮闘するのだった。
そしてその夜、彼の携帯に謎の数字が連なったメールが届く。数学が得意な健二はその解読に夢中になるのだが…
翌朝、世界は大きく一変していた。健二を騙る何者かが、世界を混乱に陥れていたのだ。
「私たち一家でカタをつけるよ!」
栄の号令のもと、健二と夏希、そして陣内家の面々が、一致団結して世界の危機に立ち向かう!

 1980年代は、サイバーパンクと呼ばれるジャンルが流行。ウィリアム・ギブスンの小説『ニューロマンサー』(1984年)や、映画『ブレードランナー』 (1982年)、『トロン』(1982年)など面白い作品が多かった。
 当時は商用インターネットが普及する前で、まさにSFだった。

 ところがサマーウォーズは、まったくSFと思えなかった。
 仮想世界OZとアバターたち。この仮想世界に現実のシステムもつながっている。バーチャルとリアルの融合。人工知能の暴走により戦いが始まる。OZにアクセスする端末はPC、ゲーム機、ケータイ・・・。それぞれの端末を使って、多くの仲間が戦いを支援する。
 技術的にはいま、すぐにでもあり得る話で、その、ありそうな感じが、まず、面白かった。
 
 映画の舞台はバーチャルな世界と長野県上田市。田舎の大家族の絆とネット上のつながりがオーバーラップし、いい感じの映画になっていた。 

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心に沁みた今日の『ゲゲゲの女房』

 NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』も来週1週間で終了する。
 漫画家・水木しげるの夫人・武良布枝さんが著した自伝を原案としたこの連続テレビ小説、欠かさず見ていたが、今日の父・茂の娘・藍子への励ましの言葉は心に沁みた。
 茂が示したゲーテの格言は、厳しい時代、だれにでも当てはまる格言ではないか。水木しげるもこの格言を胸に、苦しい時代を耐え抜いたのだろう。

(NHKホームページより)
 教師の仕事をがんばっていた藍子だったが、しだいに元気のない様子を見せはじめ、梅雨に入ったころにはかなり追い詰められたような言葉を口にする。目立たない子供のいいところをクラス中に紹介しようとしたことが、えこひいきをしているととられてしまったのが原因だった。藍子は深く落ち込んでいた。受け持ちのクラスはガタガタ。父兄たちからも批判される始末。

 藍子はある日、布美枝に弱音を吐く。喜子は茂に藍子を励ましてくれるように依頼する。藍子は『頑張った藍子を見ていて感心していた。だから早急に答えを出さずによく考えるように』と話していた布美枝の言葉を思い起こしていた。そのとき茂が子供部屋にやってきて、自分の仕事場にも張ってあるゲーテの格言を藍子に手渡す。

意志の力で成功
しない時には好機の
到来を待つほかない。

人は努力している間は
迷うに極まったもので
ある。


茂:好きなことをして生きるのはえー。けど、好きと、楽することとは、ちょっこし違う
藍子:・・・
茂:苦しいことや嫌なことがあっても、それでもやらずにはおられんのが、本当に好きなことだ
藍子:・・・
喜子:・・・
茂:だけん、迷ったり悩んだり、落ち込んだり、苦い思いもしてみんことには、好きなことはなんなのか、本当はわからんのだよ
藍子:・・・
茂:人は神さんではないけん、世の中を思い通りには動かせん。やるだけやってもうまくいかないときは、好機の到来を待つほかない。・・・人間にできるのは、それだけだ
(茂、藍子の方をポンとたたき、)
茂:戦わずして土俵を下りるのが、いちばんつまらんぞ
藍子:うん・・・

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しぇりークラブ東京・銀座店(シェリー専門店&スペイン料理)

 しぇりークラブ東京・銀座店(東京都中央区銀座6-3-17 悠玄ビル2F・3F、03・3572・2527)に行った。

 シェリーは今まで飲んだことがなかった。
 さっそく、「少しずつ3杯のお試しセット」(1575円)を頼んだ。

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 45種のシェリーリストがあり、その中から3種類頼める。3種類では少ないと、もうワンセット、6種類を試した。

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 ブランデーのような香り。紹興酒にも近い。

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(クリックすると大きな画面で見られます)
 シェリーリストはその日飲んだシェリーをチェックしたり、感想をメモしたり、いろいろ使える。店がキープしてくれる。
 LIGHT、HEAVY、SWEET、DRYという軸で銘柄の特徴がすぐに分かる。
 シェリーを楽しませてくれる心憎いアイデアだ。

 甘いシェリーは嫌だと思っていたが、結構うまい。全種類試してみたい。

 シェリーにぴったりの料理が用意されている。
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 トルティージャ(525円)とチョリソー・イベリコ(1260円)
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 フルーツトマトとカラスミのクレソンサラダ(1050円)。

 しぇりークラブのホームページによると――。
 シェリー スペイン・アンダルシア州カディス県にある“シェリーの三角地帯”と呼ばれる「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」、「エル・プエルト・デ・サンタ・マリア」、「サンルーカル・デ・バラメダ」で造られる「酒精強化ワイン」です。原料は「パロミノ」種「ペドロ・ヒメネス」種「モスカテル」種の3種類の白葡萄を使い、「ソレラシステム」という独特の熟成方法によって造られます。

 酒精強化ワイン 酒精強化ワインは、気温が高く温度管理が難しいブドウ栽培地域において、酸化・腐敗防止など保存性を高めると同時に、味わいに個性を持たせるために工夫されたワインです。シェリーの酒精強化に使われるスピリッツは白ワインを蒸留した樽熟成されていない無色透明なブランデーです。すなわちシェリーの原料は全て白葡萄のみとなるのです。「シェリー」は「ポート」「マディラ」と共に世界3大酒精強化ワインとされています。

 ソレラシステム シェリーと他のワインとの大きな違いは特殊な熟成方法によって生まれると言っても過言ではありません。まず、樽の中にワインを3/4ぐらいしか入れず常にワインの表面は空気と接している状態で熟成が進みます。一般的に酸化を嫌うワイン製法とは異なり好気的に酸化させることによって生まれる様々な風味を造り出します。
 次に「ソレラシステム」という抜き注ぎ熟成です。これは毎年同じ味わいのシェリーを瓶詰めする為に行われるシステムです。数段(3~5)に重ねられた樽の中身を古い順から瓶詰する為に、「ソレラ」(床と言う意味)に面している樽から(最低でも中身の2/3以上は残す)出荷の為に抜き取ります。次にその上にある熟成途上の樽(クリアデラ)から抜き取った分を補充していきます。そしてまたその上の樽からと足されていきます。最後の樽には熟成を待つ若いワイン(酒精強化した)が足されるのです。この熟成方法を「ソレラシステム」と言います。この方法により複数年、複数樽と複雑に交わり合った風味豊かなシェリーが、均一の品質を保ちながら生み出されるのです。

 営業時間は、月~木曜日が17:30~26:00、土曜日が17:00~24:00、金曜日が17:30~28:00。
 日曜日定休。

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KMD(慶應義塾大学メディアデザイン研究科)修了記念シンポジウム「ダダ漏れしてもいいですか?」

 9月17日、慶應義塾大学三田キャンパス北館ホールに行き、KMD(慶應義塾大学メディアデザイン研究科)修了記念シンポジウム「ダダ漏れしてもいいですか?」を聴講した。

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 トークセッションのモデレータは中村伊知哉氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)=右。
 登壇者は左から茂木健一郎氏(脳科学者)、古川享氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、川上 量生氏(ドワンゴ 代表取締役会長)、岸博幸氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、夏野剛氏(慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授)。

 ニコニコ生放送でも「日本におけるデジタル社会の明日を描く討論会」として、生中継された。ニコ生の方は「ダダ漏れ」のタイトルでは別の内容を思い描いて来る人が多くなってしまうと思ったのか、ストレートなタイトルだった。
 コメントに、USTREAM+twitterの中継とは違う面白さ、迫力(拍手のときは画面が888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888・・・で埋まる)があった。ニコ生視聴者はいいなあと改めて思った。

 10分ほど遅れてトークセッションは始まった。

 質問はビジネスマンが関心を持つようなテーマ10問。中村氏の絶妙な進行の中、5人の論客が個性的な意見を述べ、刺激的な2時間となった。

 トークセッションの要約は以下の通り。

中村 最初の問いです。
 日本からGoogle, Facebookは生まれる?
 (川上、岸=×、他=○)

茂木 脳科学的に言うと、こういうのは予測することでなく、実行することなのでーー。結論から言えば、古い日本は置いていくしかない。
 大学も、要るのかなと思う。東北から帰ってきたのだけれど、東北の村を歩きながら、この人たちがアクセスできないアカデミックなシステムなら要らないと思った。
 新聞にしてもテレビにしても霞ヶ関にしても、大学にしても、古いものはあるんだけど、それと付き合っていると、グーグルとかフェースブックは出てこない。
 デカップルすればいい。無視して勝手にやればいいんじゃないですか、そうでしょう古川さん。

古川 30歳以上の人は「アメリカにこのままのさばらせていいのか」とか「日本ががんばらなきゃ」とかしか考えないが、どこの国の人でも日本で教育を受け、いい経験を積んで、日本から世界で活躍する人材が巣立ってほしい。
 日本をカタパルト(射出機)にして世界に離陸していく人材は出るだろうということで、yesと答えた。

夏野 日本は経営の3種の神器全部持っている。
 お金がまずある。個人金融資産が1400兆円もある。
 人がいる。すごく働いてくれる。
 米国の経営者は社員をいかにサボらせないか苦労する。
 でも、日本人は、仕事がないと新入社員でも仕事探そうとする。
 こんなすばらしい労働環境の国はない。

 まだまだ技術とアイデアがある。

 お金があって人がいて、技術があるのは国としてアドバンテージとなる。

 しかし、これらはリーダー(マネジメント)がいないと生かせない。
 リーダーシップさえ変えれば、羽ばたける。

川上 今日はテンションが低いので×にしてみた。世界に通用する日本企業ということであれば、出てくると思うが、グーグル、フェースブックみたいのものが日本から出てくるのは難しいと思っている。

 ネットスタンダードは、アメリカ以外ではほとんど生まれていない。

 日本企業が普通に競争していてプラットフォームを獲得するのは難しいと思う。
 日本は別の方法で競争すればいい。
 なんかの偶然でグーグルやフェースブックが日本でも誕生したかもしれないと思うのは間違ではないか。

岸 日本人、日本全体の力落ちている。日本は海外から入ってきた技術を日本流に洗練、アレンジ加えて日本独自のものを作る。
 しかし、その力が明らかに落ちている。
 なぜかITみたいにシンプルに技術を組み合わせるものもだいぶ弱い。そうなると、この分野で世界に通用するものは出てこない。

中村 夏野さんは、著書で「変化を嫌うリーダーは去れ」というけれど、去らないじゃないですか。どうすればいいんですか。

夏野 ITについていけないのは50代以降で、大企業の経営者は50代後半なんです。

 でも、大丈夫です。5年とか7年で全員退職するから。

古川 私、50代なんですがーー。

夏野 いまだに女の子くどいている50代は例外(笑)。

古川 ノウハウ、英知、経験を伝えていく場がほしい。
 世代超えての情報共有がない。ノウハウを受け渡す場がないまま、それぞれのジェネレーションがーー。

(銅鑼が鳴る)
(場内騒然)

中村 最初に説明しておけばよかったのですけれど、今日は10問を用意していまして、時間を厳格に運用いたします。どんなに盛り上がっていても10分たつと銅鑼が鳴りそこで打ち切りとなります。

古川 残りはツイートしま~す。

024

中村 次の問いに行きます。
 ガラパゴスは絶滅する?
 日本は高度に発達しすぎたケータイの国。
 日本のケータイ産業は海外のビジネスに席巻されてケータイ文化もアメリカ化するのかどうか。
 日本のケータイはだめだという人は○、まだまだいけるという人は×を出してください。

 (古川のみ○)
古川 スマートフォンをどうやって成功させようかとがんばってる人いるんだけれど、つぶしにかかる勢力がいる。
 ガラパゴスがだめなんじゃなくて、それを変えようとしている人をまた、さらに、つぶそうとしている。

茂木 いま、○の話?
中村 次は×の意見。

茂木 これまで、2ちゃんの攻撃をしてたわけ。ニコ動もこの文字がでるインターフェースが嫌だった。でも、最近、二コ動が政治改革の中心勢力になっているじゃない。笑い話ではなくて。
 wikiでドワンゴのこと調べたら、「2ちゃん限定で求人して、しかも、中卒または高卒ないしは、大学在学者は卒業の意志がないこという条件をつけた」とあったけれど、すげえいいなと思っていて。

 フェースブック、グーグルみたいに頭から、立派な格好をして、おれたちスタンダードだよっていうのは、日本の芸風にあわない。

 猫だましっぽく、漫画やアニメが世界を席巻したように、ちょっと違う感じで、生き延びる道が絶対あると思う。
 日本のケータイも、正攻法ではうまくいかない。

 でも、二コ動が変質してきたことに期待をかけてしまうんですよ。

 エスタブリッシュメントのじいさんたちはもうだめだと思う。エンジンが古い。

 下克上というか、いま、ばかにされている日本の文化から次のいいものが出てくるのではないか。
 特にネットに関してはいまばかにされているものが希望の中心かなと思います。

川上 そもそも、日本のケータイって昔から過小評価され続けていたと思う。
 孫さんが悪い。孫さんが「タイムマシン経営」というのをインターネット以前から引きずっていて、アメリカのモデルが常に最新で日本は数年後を追いかけていると思っている人が多い。
 ケータイは違う。ケータイを担い手は若年層なのに対し、世の中で発言力のある人はアメリカからITの流行が始まると思っている人ばかりなので、ケータイの産業はずっと過小評価されていた。
 いまiPadやアップルの電子コンテンツ販売が世界をリードしているように言っているが、音楽配信においても電子書籍においても日本のケータイのほうがマーケット規模は何年も前から大きかった。日本が世界最先端なんですよ。
 なんでそれがガラパゴスと言われなければならないのか。

 ガラパゴスだからどうかといった問題提起自体に違和感を覚える。
 日本は競争には負けるかもしれないが、そう簡単には勝負はつかないと思う。課金システム日本のほうがすぐれている。

夏野 iモードは、猫だましで作ったんですよ。最初にiモードをやり始めたときにはドコモの役員はだれも相手にしていなかった。こんなのうまくいくわけがないと放置されたので、勝手にビジネスモデルも端末も作れた。
 おとといサマーダボス会議から帰ってきたのだが、ガラパゴスといっても海外で通用しない。まずガラパゴス諸島の場所から説明を始めて、その後、イグアナとゾウガメの写真を用意して、そこでダーウィンが進化論の研究をしていたといって、「ああ、あれか」なんです。
 ガラパゴスといって喜んでいるのは日本のオヤジだけ。

 何で喜んでいるか。外で挑戦するのは大変なんですよ。英語も勉強しなければならないし、出張しなければならないし、リスクも大きい。
 やらない言い訳に使っているだけだと僕は思います。
 ただ、時々、ドコモが海外に行かないからメーカーも行かないという人もいるが、通信事業者は国内のマーケットだけを考えていればいい。免許制だから。でも、メーカーはマーケットがあるところを考えなければいけないので国内にとどまっていてはだめなんです。

 やればできます。やっていないだけです。

中村 夏野さんはケータイは何を使っているんですか。
 ガラケー(ガラパゴス携帯)です。iPhoneを使っている人はやせ我慢をしていると思う。最高なのはガラケー1台とiPad、それも3G版のiPadの組み合わせです。

岸 ガラパゴスという問題設定自体がおかしい。
 企業としてマーケティング、ユーザーニーズの把握が不足している。
 南米で日本のデジタル放送の方式が結構採用されている。でも現地でその方式を売ろうと一番がんばっているのは韓国メーカーなんです。日本の技術が入ってもビジネスをとるのは韓国。企業の側の問題だと思う。
(銅鑼)

中村 次の質問はJapan Coolは世界を制する?
 日本のpopカルチャーはこれからも海外でいけると思う人は○、そろそろダメなんじゃないかと言う人は×。
(岸だけ×)

岸 Japan Coolは世界を制するというのは単に影響力ということだったら可能性はあるが、産業として成功させるのは無理だと思う。
 アニメ産業は崩壊寸前で、音楽産業も収益がどんどん悪くなっている。
 そんななかでJapan Coolの定義を広げるべきだと思っている。これから世界で売れる日本の文化って、総合格闘技なんです。殴る蹴るだと日本より強いところはたくさんあるけれど、関節技は評価が高い。

川上 Japan Coolとアニメ、漫画に関しては言っている人が多いので、ネットのJapan Coolをどう思っているかを言いたい。
 実はtwitterやYouTubeといった世界で流行っているネットサービスって、日本で一番最初に流行ったんですね。まだ日本語化されていないうちにtwitterのアクセスは世界の1/3が日本人だったり、YouTubeもこのサービスができたばかりのときは米国の次にユーザー多かった。

 英語版の段階で日本のユーザーは世界で流行るネットサービスを見つけてきたという歴史がある。
 日本は世界の中でも、すごい特殊なネットにおける文化発信力を持っている。
 それはどこから来ているんだろうって考えると、日本って世界のなかでネットにつないでいる暇人が一番多いんですよ。ニートの人たちっていうのは、世界のほかの国では生活できないからネットにつなげないんです。日本ではなぜかネットにつないで毎日アクセスしているという人が大量にいる。

 そう考えるとニコ動って、日本の中で最もGDPに貢献していないユーザーを抱えているんじゃないかなと思っているんです。
 日本の中で最もGDPに一番貢献していない人たちは、日本の競争力に変わる可能性を持っているので、ニコ動は楽しみだと思っている。

茂木 日本人が「恥ずかしいなあ、隠したいなあ」と思っているものが一番外国人には魅力的なんだ。2ちゃんの英語版だってあるでしょう、4ちゃん? 

 大学とか立派に見える日本の組織ほどやばい。東大法学部が一番あぶない。一番のガラパゴス認定。
 二コ動とか2ちゃんはそういうことからデカップルしてやってきたからよかった。
 補助金をもらわなければならないような業界がやばい。
 これはガラパゴス認定。
 だから「こんなみっともないカルチャーがあってやばい」と思っているものほど国際競争力が高いんですよ。

古川 得意な領域じゃないので、発言はお譲りします。

中村 日本のコンテンツ産業の市場としてはどのあたりがいいと思いますか。
 
岸 ヨーロッパが親和性があると思っています。歴史や伝統を評価する土壌がありますから。ガングロとか、へんなものも真似するじゃないですか。

夏野 若者文化は全世界いけそうな感じがしてます。
 日本には本音と建前がありますが、中国のほうがもっと表と裏がありますから。本音と建前が分かれていないアメリカとかのほうがきつい。隠れてこそこそニコ動みているみたいな世界ができず、堂々とやっちゃうから面白くなくなっちゃう。

中村 ゲーム産業はどうなると思いますか?

夏野 過去の成功パターンがある業界ほど、過去に成功した人が多いので、ソーシャルメディアが出てきてもパーンと移れないんですね。パッケージメディアの作り方に慣れ親しんでいるので。ゲーム業界でもソーシャルとかが出てきて話題になっていますが、人も資本も含めてわっと新しい勢力も取り込むようなことができると、もっといけると思います。

中村 川上さん、ジャパンエキスポでブース出していましたけれど、何をしていたんですか。

川上 とりあえず、パリの日本人好きのフランス人をカメラに映してみんなで見ようという企画をやりました。日本人のための企画です。フランス人は喜んで出演してくれた。列をなして見世物になりにきた。
(銅鑼)

(KMDの学生の産学連携プロジェクトの研究成果紹介)
 
(Panavi=システムとフライパンが連携して各工程において、適切な温度と動作をナビする)
(きみっポイド=顔写真オリジナル3Dキャラに生成)
(音楽用拍手マシン「音手」=拍手マシンの生音響を音楽表現に利用、拍手マシンの動作で観客の拍手を操作)

 中村 これがわれわれKMDの開発しているものです(笑)。いかがでした?
 夏野 くだらなさがいいっすね(笑)。大学くらいしか、絶対に世の中で役に立たないもの研究できない。

 中村 第4問。2030年、どこでもドアは実現する?
(○=茂木、岸、他は×)

茂木 日本はリアルなものづくりをするしかない。googleなどはつくれない。
 外国に行って帰ってきて日本のコンビニエンスストアの店員の働きぶりに涙が出た。あんなにまじめに働いている人は外国にはいない。ものづくりの現場に行っても本当に一生懸命やっている。
 いいじゃないですか、ジョブズみたいなプレゼンができるCEOがいなくても。物言わずに日本はやってきたんですよ。ものづくりの伝統をうまくいまのITとむすびつけてものをつくるのが日本の生きる道かなと思う。
 弱ったといっても、まだまだすさまじいと思います、日本のそこらへんの基礎力は。

古川 メーカーのエンジニア、デザイナー、試作品を作っている方は、まだまだ冴えたものをつくっていますね。閉塞感があるのは、それを生かさなければならないマネージャーがすべてをつぶしにかかっているのと、いいものをつくる素材とか試作品まではつくるんだけど、それをプロデュースする人がいない。
 基礎技術を商品にしていくプロセスだとか、総合的にマーケティングするだとか、社会の中でそれをアピールするエバンジェリストみたいな人が少ないために、いいものがたくさん生まれているのに誰も知らず、成功するチャンスがないまま眠っているという状況がある。
 一生懸命アピール、プロデュースする人材がもっと生まれれば、まだまだ浮かばれると思う。

中村 ものづくりジャンルはいろいろあるが次に期待できる産業領域は何かありますか?

古川 昨日調べていて驚いたのは、40フィートコンテナの中にサーバー突っ込むというのがものすごい勢いで広まるということ。
 グーグルも、マイクロソフトもシリコングラフィックスもIBMもデータセンターを作る場合、建物を建てて、そこにラックを入れて空調設備を入れてサーバーを入れるというのはやめてしまって、40フィートコンテナ=海上コンテナにに1万1600台のサーバーを突っ込んで空調設備も入れて、移動するときは列車に200本載せて、平置きするとデータセンターができあがる。
 グーグルは(調整段階かもしれないが)、日本では岩手県と十勝平野にデータセンターをつくるらしい。ずらっとコンテナを並べると、あっという間にデータセンターができあがる。何テラバイトのアクセスもどんとこいというセンターがいきなりできてしまう。

 日本の場合、問題があってコンテナを3つ積み重ねると建物としての認可が必要。人が出入りする場合は消火設備を入れなければいけないなどの規制があって、この方式は日本では実現できないという馬鹿なことが起きている。

 できれば、シベリア北海道などの寒いところにサーバー置こうというのが世界の流れだから、チャンスなのだが。

 サーバーのバックエンドが日本にあると、アプリケーションの姿やサービスの質が大きくかわると思う。
 日本ではIIJがやり始めているが日本の政府関係者とコンピュータ関係者はみな無視している。
 世界の知らないところにサーバーが置かれてネットワークが切れたりしないように、日本の中にまともなデータセンター、データベースを置くことを考えるためにコンテナの中にサーバーを入れてばらまくのはいいかもしれない。

川上 どこでもドアって、できないというのが正しい答えだと思う。
 そうじゃないところでも、日本のものづくり精神生かせるところある。
 ニコニコ動画にアスキーアートという仕組みがある。コメントを書くシステムを利用して無理やり絵を描く遊びですが、細かいむだなこと、一生懸命やる。
 日本のものづくり文化はネットのなかにも表れている。
 小学生、中学生など小さい人にものづくりの大切さ教えたい。
(銅鑼)

(稲見昌彦慶應義塾大学KMD教授が2030年までに「どこでもドア」を作りたいと研究内容を説明)
(東大の舘暲先生と共同研究。テレイグジスタンス(遠隔存在感)。TWISTERの中に入ると360度めがねなしで立体映像が出てくる。30年後には触覚も加わる。リアルとバーチャルの境目を無くす。バーチャルとリアルを繋ぐデバイス=ロボットを使ったコミュニケーション、国際VR研究センターを設立)

027

中村 第5問。サマーウォーズは勃発する?
 小説やアニメで描かれるようにネットの世界に大きな混乱はあるのか。
 ネットが混乱した、やっかいな世界になっていく=○、穏やかに平和に発達していく=×
(夏野、古川=×)

茂木 生き物の本質っていうのは、何が起こるか分からないっていうことです。毒が薬になる。生物にとって酸素も最初は毒だった。だから、ネットを怖がっている人は多い。旧来のアンシャンレジームの人にとって危険に見えるものはネット上にたくさんあるんですけれど、生命はその程度ではつぶれない。恐竜を絶滅させた小惑星の衝突だってあったわけだけれど、それでも生命はしぶとく生き残ってきた。
 有害サイトのアクセス規制をするって言うのも、アメリカだったら表現の自由と絡んでものすごい論争になるはずなのに、日本では教育委員会とかの人たちが、「安全でやさしいネット」みたいな絵に描いたようなくだらないことを言う。
 あんなものは関係なくネットの上ではことは起きるんですよ。命って言うのは必ずそれを乗り越えていく。
 サマーウォーズ、やったらいいんじゃないですか。でも、人間は乗り越える。それで古いものが消えたって、いいじゃないですか。

夏野 いろんなテクノロジーとか制度とか出てきても、人間社会の適応能力は相当高いと思っている。人間としては核爆弾のような適応できないものももちろん作り出すんですけれど、少なくともネットに関しては、人間が解釈してほかの人に影響を与えることはあっても、生命が危険になるような直接的なことはないわけです。
 サマーウォーズ勃発するが、それを理由にネットがどんどん危ないものになっていくというのは×だと思っていて、人間は適応していくと思うんです。そのうえで、さらにどんどん危ないものが出てくるんですが適応する。それが進化だと思うんです。

岸 いま、明らかに混乱している。混乱は当分続くと思っている。リアルの世界とのつながりをみるとそれは明らかだ。
 ネットが普及して世の中、よくなったか。たぶんよくなってませんよね。
 文化とかジャーナリズムに悪影響をもたらしていると普段から言っていますが、さらに、ネットは人間をバカにしていると思う。
 人間の知性とか行動の基準を下げている。
 リアルの社会でやっていることはネット上でもできます。でもネット上の場合はマス相手のサービスの基準、プログラムで作られたものに合わせてやらなければならないから、必ず、妥協する。リアルの世界で友達を作る場合、会って、話して気が合うなど、いろいろな要素があるはずなのに、SNSの場合、プロフィール登録して、それで友達を作っている。
 明らかに友達を作る基準が下がっている。

 リアルとの関係で見ると、ネットは必ずしもよくない。それは、サービスがまだ十分なレベルになっていないからだ。ネットは本格的に普及して10年。まだ10歳。
 混乱は当分続くだろう。
 ただ、時間がたって、もう少しカスタマイズされたサービスできれば、リアルの社会とのブリッジができると思う。

茂木 さっき2ちゃんの悪口言ったけれど、2ちゃんにいろいろ書かれたからね。ウィキペディアの俺の項目もひどいんだよ。けれど、2ちゃんやウィキペディアをつぶそうと思ったことはない。ネットで友達を作るのはリアルに対してどうなのか、みたいなことを言って、そういうことをする人を止めちゃいけないと思う。

岸 止める気はまったくなくて。ただ、リアルの世界と基準が違っているよね、とーー。

川上 リアルもネットも、人間にとって居場所だと思います。ネットが居場所ということがわからず、単なるツールとしか見ていない人がいる。でも、ネットにしか居場所がない人やネットが楽しいからネットを居場所に選んだ人がたくさんいるんですよ。その人たちの声は日本ではぜんぜん届いていないし、マスメディアにはあがってこない。
 それがネットの中で起こっている争いの原因だと思うし、これはいつかは爆発する。いやすでに爆発しつつある。

夏野 日本の政治家の人、マスメディアの人とかは、『甲殻機動隊を読むべきだと思います。甲殻の世界観は読んでいて好きなやつも、途中でわけがわからなくなるんですよ。どこまでがリアルでどこまでがバーチャルか。甲殻機動隊、これに尽きる。

(銅鑼)

中村 今年6月にデジタルサイネージジャパンというイベントを開き、3日で来場者が13万人だった。新しいメディアに関心が高まっている。
 第6問 デジタルサイネージは1兆円市場になる?

(茂木のみ○)

夏野 (PC、モバイルに続く)新しいメディアは出てくると思う。ただ、サイネージは、うさんくさい。
 議論している人が、既存のビジネスのサーバー屋さんとか、テレビのディスプレーを作っているメーカーとか、通信会社とか、要はサイネージが出てくると金になると思っている人が議論しているんです。

 ユーザー側の視点に立ってどんな役に立つかということがあまり議論されていない。
 情報を出す画面として今まで紙だったものがディスプレーになるというのはわかるが、サイネージの議論を聞いていると、情報を映し出すウインドウとしてのサイネージよりも、新しい広告メディアという文脈で語られることが多い。
 けれども、大容量の線を引いてコンテンツを流すより、人件費の安い人やとって、でっかいポスター貼ったほうが安く情報量も多いのではないかと思う。
 もっとユーザーサイドに立った付加価値を提示できない限り、1兆円には届かないと思う。

岸 スマートフォンがこれからどんどん普及する。個人は手元に画面を持っていますので、それと競合する。そのうえでさらに魅力のあるコンテンツとしてなにを提供するのというのが問題。画面ばかり増えるのでいまのままでは厳しい感じがする。

川上 進めようといって旗を振っている人や説明している人の話を聴いてもわくわくしない。理念みたいなものを感じない。大きな勢力の人たちがやっているので、それなりの結果はでると思うが、こういうのに日本の産業界が付き合って1兆円も出すかと言うと、こんなに景気が悪いのに無理ではないかなと思う。

古川 みなさん、使っているのに広がらないというジレンマがあります。今飛行機に乗るとエコノミークラスでも画面がついている。
 こういうシステムは六本木ヒルズでは6年間運用しているのだが、7時のニュースを再送信するのは禁止されているんですよ。いま、放送の世界との間には壁があって、サイネージ向けにコンテンツを制作しようとしても、事前に許可を取ってからじゃないと音楽の編集ひとつ始められない。いまは縛りのなかでものを作っている。この先、放送コンテンツの使用の許諾を得たうえで流すとか、蓄積したものを配布するとかができるようになれば環境は一挙に変わるんじゃないか。
 iPadが出たときにショックだったのは、「アメリカ人はこの時間にテレビを見るというのと、録画をするのをやめちゃったんだよ」とアメリカの友人に言われたこと。iPadにそんな機能、付いている?と言うと、アメリカにはhuluというサービスがあって、主要な放送局がネット経由でドラマなどいろいろな番組を配信するサービスを始めて、テレビは好きなときにいつでもみられるように変わったと言われてショックを受けた。

 そのようなってサイネージも、さまざまな携帯、iPad端末も自由にコンテンツが享受できるようになる。
 バックエンドにサービスのあるエンジンがついて初めてサイネージは大化けするわけで、そういうものを阻害している要因がある限りだめだろうなと。
 ウォルマートでは全店舗日本製のサイネージが動いているが、輸出するチャンスがあっても日本で運用する環境が作れないのは残念だ。

茂木 僕はいまこそ、ミルトン・フリードマンが読み直されるべきだと思う。徹底的な自由競争。
 規制だとか既得権益のなかで動いている間はだめだと思う。でも既得権益の外で動いている人も勝手にやればいいわけでしょう。
 はやくブレードランナーの世界に連れて行ってほしい。

中村 デジタルサイネージを推進している人たちがうさんくさいという話がありましたが、私はサイネージコンソーシアムの理事長をしています。確かにまだプレーヤーがはっきりしていなくて、これからだと思います。これを銭儲けとみるか文化とみるかで見え方がぜんぜん違うわけですけれど、いろいろ反省しています。

(銅鑼)

中村 旧来型メディアの話です。
 第7問。マスメディアは復活する?

(茂木、古川が×)

茂木 マスメディアは形を変えて出てくるとは思うんですが、その前にそれ以外のオルタナティブな人にがんばってほしいという意味で○にしました。
 さきほどhuluの話が出ましたが、テレビなんていつでもどこでもみられるの当たり前。対応が遅すぎる。
 
 マスメディアはとりあえずオルタナティブなメディアにつぶしてもらいたい。マスメディアはその後で復活してもらえばいい。

古川 取材をしたり、記事を書いたりするのにはジャーナリトズム魂がある人がたくさんいらっしゃるんだけれども、アウトプットのデバイスとしてのメカニズムに限界がきている気がする。
 新しいジャーナリストが新しいメカニズムのなかで生まれくることに期待したい。

 優秀な記者がいい記事を書こうと思っても場が限られてきたなかでメディアの形態をかえて、今の優秀なジャーナリスト、コラムニストに活躍する場を作っておくと再生するかもしれないが、いまのにマスメディアのメカニズム自体はさびついてきたと思う。

川上 これから、今の状態がよくなることはないと思いますが、マスメディアはそんなに危機でもないと思う。新聞やテレビが倒産とかまでいくには、いったい何十年かかるんだと思う。
 ネットが代わりになるかというと、今の日本の中心の50代以上の人が10年たっても20年たってもネットは使わないと思う。そうすると、世代交代が必要になる。だから、マスメディアは今後10年、20年は、経営的に衰えることはあっても今のような影響力は残ると思う。

岸 フラットに考えると、マスメディアがなくなることはない。どんどん衰退するが、そこで作る記事やコンテンツがいろいろな議論のベースになっているのは変わらない。
 何で経営悪くなっているかというと、やはりつくるものがつまらなくなっているからだと思う。ニュースはうそを書くし、テレビだってつまらない。けれども、徹底的にやばくなったら少しは変えるところがでてくるはずだ。まともなビジネスモデルで、なともなコンテンツ提供をするところが増えることに期待する。
 マスメディアが滅んだらだれがジャーナリズムや文化の役割を担うか。フリーの人がある程度、担うのだろうが、それには限界がある。そう考えるとマスメディアは復活すると言うことになる。

夏野 メディアは編集して記事作るという部分と、それをデリバリー、デストリビューションするという部分がある。
 どこの会社に言っても編集の部分は同じようなことをやっているんですよ。でも配信手段が分かれているわけですね。

 みんな同じことをやっているのだったら、統合したり、ネットに出したり、デリバリーチャンネル変えたらいいじゃないですか、と言うと、経営者の方はデリバリーチャンネルは変えられないという。
 
 ある新聞社の人に、もう勝ち目がないのなら、思い切って字小さくして分厚くしましょう。配達は首都圏だけにしてあとはネットにしましょうと言ったのだが、「そんなことできません」という。「雇用守る」とかが先にくると変化できないんです。メディア新聞はいろんな情報のなかからまともと思われる情報を抽出してコンテンツを作っている。こうした編集をやっている価値はある。必要と思う。けれど、ディストリビューションは変えるべきと思う。


中村 7月27日にデジタル教科書教材協議会が設立された。
 一方で田原総一朗さんが先月『デジタル教育は日本を滅ぼす』という本を出した。
 8問。デジタル教育は日本を滅ぼす?
(○は岸)

茂木 ポプラ社の経営幹部の中にデジタル教育がきらいな人がいて、それで出来た本だと思う。
 デジタル化なんて当たり前で、それよりも文科省が(教育現場を)がちがちに縛っている学習指導要領を何とかしてほしい。デジタル教育なんてちいさな話。
 そんなことよりも日本の教育を勝手に自由にやれるようにしてほしい。
 デジタル教科書になったら内容が膨大になりウェブにリンクも張るわけだから、教科書検定は成り立たなくなる。そちらのほうが楽しみ。

中村 いきなり本質に入ってきましたね。

古川 旧態然たるものにとどまりたいという勢力の一つであることは確かですね。
 書いてあることは非常にまともで、ゆとり教育がなにを生んだかとか、非常に正しいことがずっと書いてあり、最後の2ページくらいにデジタル教育まずいとある。
 だれがこのタイトルをつけたのだろう。

川上 デジタル教科書のことは良く知らないが報道をみると、それ専用のデバイスをどうするといったことが書いてあり、そこが気になる。ノートPCでいいと思う。専用のやつを作るというのはだれかそうしたい人がいるからかと思う。社会に出て使えない機器を覚えてもしかたがない。

 デジタル教育のスローガンがあること自体が嫌。ねじ曲がった方向にいくのではないかと心配している。

岸 デジタル化は当然。けれどそれは手段にすぎない。それで教育が変わることはない。
 教える側に問題があることはデジタル化でクリアされるわけではない。
 
 端末は、どういう端末でもいいはずで、特定の端末というのは論外だ。

夏野 議論するまでもない。戦国時代に鉄砲入ってきているのに騎馬で戦うみたいな話。そういうことを言っている人は早く引退してください。

(銅鑼)

中村 昨日、出た世界の大学ランキング。1-3位がアメリカの大学で東大は26位。慶応大学は200位以内に入っていない。
 第9問。慶應、東大はStanford、Harvardに勝てる?

 日本から世界に胸の張れるガジェット、文化生まれてるが、そこで日本の大学はなにかしたのか?

(勝てる=いない)

夏野 多様性の欠如です。日本の大学のあり方って日本の政府や企業のあり方と一緒なのだが、多様性を非常に嫌がる。
 慶應はちょっと変わっているが、それもSFCとKMDだけといううわさもある。
 一般的には多様性に対して拒否的です。
 日本企業が弱い理由もそれ。
 政府もそうだ。
 同じ釜の飯くって…というのでは食中毒で全滅ですよ。

 いろんな飯食ったやつとか経験をしたやつがいて、はじめてコミュニティーが強いのであって、その意味で多様性を確保しなければいけないのだが、その動きがあまり見えない。
 
 海外留学生の比率はMITが25%。僕が卒業したウォートンというところは33%。海外留学生比率が高いことは一つの競争力になっている。

岸 勝ってほしいという願望があるが、どうすればいいか考えてしまう。文科省をなくすだけではだめで、やることはいっぱいある。
 すごく自由化していろんな才能を集めることをこれからやらざるを得ない。
 真剣に取り組むところが一つでもでれば、だいぶ上位に行けるのではないか。


川上 ドワンゴという会社で、4、5年前にちゃんとしたITを教える専門学校つくりたいと思って調べたことがあるのですが、専門学校作るのが面倒なことがわかった。カリキュラムは自由に作れないし、机の数とか教育の本質に関係ないことが細かく決められている。あまり面倒くさいのでやめた。

 もしも大学がこんながんじがらめだったら、世界で競争するほうにエネルギーは割けないと思う。

古川 大学、大学院のチャートで何位をとるかというモノサシは無意味で、興味がない。それよりは世界に通用する人材を何人送り出したかが一番重要。その部分のものさしにこだわりたい。

 何人どこの企業に就職したのかとか、何人ノーベル賞をとったかなどではなく、光り輝く人材が何人出たかというものさしが必要だと思う。


茂木 タイガー・ジェット・シンみたいにいきなり段取りなしにアカデミックな議論できる人がいない。そういう覚悟や能力がない。
 日本の大学をワールドカップの代表みたいに筋肉質にするにはやはり新組織をつくるしかないんじゃないかな。
 文科省の大学なんていう枠組みだと箸の上げ下ろしまでいろいろいわれるから、勝手にやるのがいいのではないか。
 幕末の私塾のような感じで。

(銅鑼)

中村 第10問。政界再編はある?

岸 客観的に言えば来年3月がポイントです。年度末になって予算は通るが関連法案は通らない事態があり得、そこでなにかあるか。
 ただ、結論としては、大きな動きにはならないのではないか。

夏野 疲れましたね。よく考えたらどっちでも変わらなかった。去年も政権交代したが、なにも変わらなかった。

 政府には期待しない。自分で貯金をためて、円高のうちに海外に出す。これに尽きると思いますね。

 狂った人が間違って首相になって、いきなり国会議員は10年しかやっちゃだめとか、ものすごい変なことをやると、日本は急によくなります。

川上 政界再編は全然興味ない。興味があるのは日本再編があるかどうか。政界再編があっても日本が変わらなければ、関係のない話だから。
 日本は運がいい国と思っているので、なるようになるのではないでしょうか。

古川 政治には何も期待していないので、アカデミックな世界と企業がしでかすことを邪魔しないでほしい。
 民間のエネルギーが生きてこなかった。特にコンピュータの世界ではそうだったけれども、おそらくコンテンツやメディアの世界でも同じことがあったのではと思う。
 政治も官僚ももう少し関与をやめて、引いてくれるといいと思う。

茂木 明治維新でできた体制の賞味期限が切れたということ。
 東大は明治そのものだから。もういらない。
 霞ヶ関も明治。
 日本って本当に市民が力を持った経験がない。パワー・トゥ・ザ・ピープル(Power to the People)が実現できるか。
 日本はみんな文句言うんだけど、政府に何かしてくれという文句ばかり。
 ただ、レーガン大統領が言った「君たちにいいことできる政府は、悪いこともできる政府だ」ということが最近ようやくわかってきたようなので、期待したい。

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いろり家 東銀座店(東京・東銀座、居酒屋)

 「おしぼりは熱いのがいいですか、冷たいのがいいですか、それとも人肌?」。
 ふつうはおしぼりを3種類も用意しない。よく行くゴルフ練習場は2種類用意しているが、「人肌」はない。
 「人肌」を頼んだ。
 おしぼりで、まず楽しい気分にさせてくれる。
 いろり家 東銀座店(東京都中央区銀座3-11-11 銀座参番館2 B1、03・3547・7901)だ。

 今日のおススメは、サバの2点盛り(生サバ、〆サバ、880円)だという。
 松輪漁港の朝獲りの魚貝類を、漁師さんから手渡しで仕入れ、お店でさばく。
 さっそく注文すると、カウンターの向こうからも声がかかる。

017
 「届いたばかりの淡路島の玉ねぎが美味しいですよ」。
 料理長のお薦めだ。
 野菜の炉端炙り。
 こちらは料理長にまかせて、盛り合わせにしてもらうことにした。

019
 サバ2点盛り。確かにうまい! 店の人たちも釣好きが多く、釣りの話をすると盛り上がる。漁師さん直伝の食べ方なども勧めてくれる。トイレにも松輪漁港の朝獲りの魚貝類を紹介する写真と記事があった。
 刺身はその日のおススメを聞いて、選ぶと確実だ。

020
 炉端炙り、まずは高知の赤ピーマンと、群馬・月夜野のしいたけ。しいたけはいしづきの部分までおいしかった。

030
 真黒に焦がした大きな淡路島産たまねぎ。甘味が生きて、おいしい。特製玉ねぎソースか、海藻(クロメ)を原料に、昔ながらの手作りで作った「黒め塩」をつけて食べる。

 食材にこだわった店。鶏ならば、山梨県健美鶏。豚は千葉県旭市の『いも豚』。牛は山形牛。
 松松輪漁港より直送の鮮魚を干物にした「自家製干物」も自慢のメニューだ。

028
 お酒が飲みたいと言うと、ひやおろし(夏の間に熟成させて9月から出荷する日本酒)を勧めてくれた。
 ひやおろしがあるとはうれしい。「開運」(880円)を頼んだが、「この2種類も飲んでみてください」、とほかの銘柄の試飲もさせてくれた。
 お酒は焼酎が充実しているが、今後、日本酒も40種類くらい常時そろえるようにするという。楽しみだ。
 
033
 〆のご飯もいろいろ。自家製昆布醤油のおにぎり(280円)。おにぎりと焼きおにぎりのいいとこどりをしたようなおいしいおにぎり。

034
 掘りごたつ式テーブル席の方から、店の人の元気な掛け声。見ると、「船上めし」のイベント。いくらをお客がストップするまで丼に盛るイベントだ。

 店の人のチームワークの良さ、明るさ、そして食材を重視した料理が印象的だった。
 銀座にこんな居酒屋があったのか、と思ういい店だった。

 営業時間は――。
 月~木…18:00~3:00
 金………18:00~4:00
 土………17:00~23:00
 日・祝定休。

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FPN、徳力 基彦、渡辺 聡、佐藤 匡彦、上原 仁著『アルファブロガー~11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社)その2

Alpha_bloggers
アルファブロガー

 FPN、徳力 基彦、渡辺 聡、佐藤 匡彦、上原 仁著『アルファブロガー~11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社、2005年10月20日発行)を読んだ。

 草の根投票企画「日本のアルファブロガーを探せ2004」が実施され、2005年2月に「ベストイレブン」と「セカンドチーム」の合わせてトップ20のブログが選出された。本書はこの「ベストイレブン」へのインタビュー集だ。

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、「アルファブロガーとは、影響力のあるブロガーをさす言葉。もともとは、ニューズウィークの記事中に書かれた単語を徳力基彦らが引用したものである」。
 「当初は徳力が率いるブログ仲間のグループであるFPNが主催したブログ賞『アルファブロガーを探せ』の受賞者を指し示す単語であった。FPNがアルファブロガーという言葉の紹介として、『世論に影響を与えてる』『ブロガーのリーダー格』『影響力が大きい』『多くの人のアクセスを集める』として紹介を続けたために、アルファブロガーは『影響力のあるブロガー』などの意味で用いられることが多い」。
 もっとも、「アルファブロガーという言葉はニューズウィークの記事にとりあげられたものの海外では定着をせず、影響力の強いブロガーはa-listブロガーなどと表現されている。現在アルファブロガーは和製英語としてしか通用しない。海外のa-listブロガーと日本のアルファブロガーは定義は同じであるが、a-listブロガーが政治に影響をあたえるなど実際に目に見える形で力をふるっているのに対し、日本のアルファブロガーの実態は客観的に分析されたデータは存在せず、2つの言葉が同じであるとの証拠はない」というのが現状のようだ。

 一個人が手がけられる情報発信メディアとして期待されたブログだが、最近はtwitterが話題になってもブログが取り上げられることはあまりなくなってきた。最近の若者は自己主張よりはコミュニケーション重視で、気軽に仲間と話ができるSNSやtwitterに流れる傾向が強いという。しかし、SNSやtwitterに参加するにしても、やはり個人メディアとしてのブログを持っていたほうが中身の濃いコミュニケーションができるのではないかと思う。せっかくソーシャルメディアに参加していても、しっかりした情報や意見を発信していないと、“向こう三軒両隣”的な狭いコミュニケーションにとどまってしまうのではないだろうか。

 そんなことを考えて、もう一度、ブログの可能性を模索してみたくなった(私のブログは単なる趣味だが^^;)。ブログに夢があったころのブロガーに対するインタビュー集には何がヒントがあるのではないか。

 アルファブロガーたちに対するインタビューの中で一番、「自分に近い」と思ったのは、On Off and Beyondの渡辺千賀さんだ。

 「せっかく誰にも文句を言われないで書きたいことが書ける自分のサイトなので、他人のために書くのではなく、自分が面白いと思ったことを、自分が面白いと思うように書くことにしています」

 「うーん、別にネタ集めはしてません。普段の生活の中から出てくるものを書いているだけなので」

 「自分の思いや感想だけ書く、というのもあんまりしません。そうではなく、自分の考えを裏付けるような事実があったときに、その事実を淡々と記述するようにしています」

 「これは、最近しみじみ思うことなんですが、『たくさんの人に読まれる』というのと『自分が伝えたいことを受け止めてくれる人が読んでくれる』というのは違うことなんだなぁ、と」

 isologue(イソログ)の磯崎哲也さんの「私はブログを『誰かのため』に書いているわけではなくて、仕事の中で必ず知っておかなければならないことや自分で考えた結果などを忘れないようにする『自分のためのメモ』に近いものなんです」というのも同じ感覚だ。

 Ad Innovatorの織田浩一さんも「ブログで浅く書いたものを、さらに詳しく調べたり、インタビューするなどして、調査報告書や記事にするとか、ブログで個々に書いたことをまとめて記事やトレンド調査内容にするようなことを行っています。僕のブログはさまざまな業務をするうえでのベースになるものです」と言っている。

 この「自分のために書く」ことがブログの品質維持に不可欠のことではないか。ブログは日記というより、備忘録に近いと思う。

 逆に「一番遠い」と思ったのがネタフル
 コグレ マサトさんは「ネタ元は基本的にはメールマガジンです。それは仕事で見る必要があって見ているものなので、その間にネタも集めています。メルマガは20くらい登録してみています」「(ブログでは)とりあえず読むのは200サイトくらいある」「ニュースをひっぱてきて、それについてコメントを書く、というのは最初のメールマガジンのときから変わっていません」と言っている。

 ネタは自分が体験したこと。それを書くのがブログと、私は思っていた。他のブログやメディアに載った記事を論評するのは、あまり気が進まなかった。本も他人が書いたメディアだが、読書のように時間をかけると「自分の体験」の領域に入ると思っている。

 しかし、ブログの始まりは、自分が気になったニュースやサイトなどのURLを、寸評つきで紹介した英語のウェブサイトとされる。「WebをLogする」という意味でWeblog(ウェブログ)と名付けられ、それが略されてBlog(ブログ)と呼ばれるようになったのだ。
 そう考えるとネタフルのようなサイトこそが、本来のブログなのかもしれない。

 日本のブログに、議論が盛り上がる米国型のようなブログが少ないのは、結局、個人、個人が自分のできる範囲内で独自ネタを自分のために書いてきたためだからかもしれない。相互の接点が少ないのだ。互いのブログについてもっと論評し合えば、米国型になるのだろうが、日本はブログを書く人とコメントをする人というワンセットで閉鎖的なブログの世界が展開される傾向が強い。

 My Life Between Silicon Valley and Japanの梅田望夫さんも「ブログ、つまり『Weblog』とは、もともと『Web上で読んだもののログ(log)である』という原点をいつも意識しています。何もないところから、つまり自分の頭の中から何かを生み出して書く、という作業は、とてもじゃないが毎日できるわけがありません。ただ、日々Web上で読んだものの中で刺激を受けたもの、これくらいの質の高いものならば『読んでみたら?』と薦められるなと思うものもあります。そういう記事や論考を選ぶこと自体が価値なんだと思うようになりました」と話している。

 梅田さんは「ブログをやってはじめて実感したことは、ネットの向こう側にいる人たち一人一人の教養の深さ、知識の広さ、発想の豊かさ、頭の良さ、文章能力の高さ、それぞれの専門について語るときの鋭さでした」「それで、あるときからネットの向こう側に『高校時代の教室』をイメージするようになりました。16、17歳なのにあんなに凄い奴がいたな、こんな凄い奴もいたな、という昔のことを思い出し、そういう人たちが、『高校の教室』を出て、3年、10年、20年、30年という歳月を過ごし、そして今ネットの向こう側にいるんだなと思いました。人が一人生きているということはそれだけで凄いことであり、こういうことを実感できたことが自分にとっての大きな財産になった」と語っている。

 このような体験がブログを介してできれば、ブログスフィアも捨てたものではないと思うのだが、今回のアルファブロガーたちに対するインタビューでは、梅田氏以外には、このような熱いコミュニケーションについて語る人はいなかった。

 印象に残ったのは、極東ブログのfinalventさん。ブログを始めたきっかけについて「小さい声でいいから異論を述べてみたいと感じ、日本社会のさまざまな部分でもっと異論が出てきたら社会は変わるんじゃないかとも思いました」。

 マスメディアのアンチテーゼとしてのブログ。こうしたブログの多くが炎上し、消えようとしているのだろう。
 finalventさんは「やはり日本のブログに対しては『小ネタ(ちょっと気の利いた話題)に留まっていろ』というような沈黙の圧力や『ジャーナリズムの領域を侵すな』という圧力のようなものがあります」とも語っている。
 彼の「誰でもができることをたまたましているだけのように思います。自分が先行しているともそれほど思わないですね。これからはもっといろいろな人がいろんなことを言うようになればいいと思います」という言葉は本音だろう。しかし、日本が誰もが自由にものを言える社会でないからこそ、彼のしていることは貴重なのだろう。


 切込隊長BLOG(ブログ)の山本 一郎さんは、「ブログの最初の注目の度合いからすると、一回『終わった』のかなぁと思います。…検索エンジンの経由で『一見さん』が多くなったようです。『固定客』というか、ブックマークやRSSリーダーに登録してるような読み手の率が減って、ある程度客数を取れているサイトであっても1日当たりの一見さんが5割を超えるようになった。そういう一見さん比率が高くなるにつれて、他のブログからリンクを張られる比率が減ってきて、ブログ同士の関連性を示すトラックバックの送り合いのようなものがかなり薄れたように見えます」と2005年ごろの“現状”について語っているが、その傾向はますます強くなっているのだろう。

 自己主張する個性的なブロガーたちは、それぞれが孤軍奮闘しているが、その間で、有効なネットワークは作られていない。この本を読んで、そう感じた。仲良しがあつまるようなSNSとは違う、実りあるブロガーのネットワークが構築できないものかと思った。

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FPN、徳力 基彦、渡辺 聡、佐藤 匡彦、上原 仁著『アルファブロガー~11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社)その1

 FPN、徳力 基彦、渡辺 聡、佐藤 匡彦、上原 仁著『アルファブロガー~11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社、2005年10月20日発行)を読んだ。

 その内容を紹介する前に、「ブログ」についておさらいをしておこう。

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると――。
 ブログ (Blog) とは、狭義にはWorld Wide Web上のウェブページのURLとともに覚え書きや論評などを加えログ(記録)しているウェブサイトの一種である。「WebをLogする」という意味でWeblog(ウェブログ)と名付けられ、それが略されてBlog(ブログ)と呼ばれるようになった。

 ブログの始まりは、自分が気になったニュースやサイトなどのURLを、寸評つきで紹介した英語のウェブサイトとされる。その後、Blogger、Movable Typeなどのブログ用のツールが出現し、本格的な拡大が始まった。
(中略)
 現在、より頻繁に用いられている広義には作者の個人的な体験や日記、特定のトピックに関する必ずしもウェブに限定されない話題などのような、時系列で比較的頻繁に記録される情報についてのウェブサイト全般を含めてブログと呼称する。このようなウェブサイトの作成機能を提供するソフトウェアやサービスなどを指して呼ぶ場合もある。また、ブログの他にもSNSや口コミサイトを総称してCGMと呼ぶこともある。

 ウェブサイトとしての体裁は主として管理者が記事を投稿する私的ニュースサイト、あるいは日記である。ブログを投稿する特定の方法に限定されないが、ブログ向けのソフトウェアやwebスペースがあり、それをダウンロードやレンタルして使えば、HTMLを知らなくても自身のブログとしてウェブブラウザから手軽に情報の発信・更新ができる。レンタルのものにはパソコン以外に携帯電話などモバイル通信端末のインターネット機能を用いた外出先などからの手軽な更新が可能な仕様のものも多い。それぞれの項目にはタイトルの付与が可能で、時間軸やカテゴリで投稿を整理、分類する構造となっている。用途は幅広く、個人の日記的なものから、手軽な意見表明の場として、時事問題などについて論説するものがある。また、企業やクリエイター集団が、対外的な活動日誌などという位置づけで自社公式サイト内でブログを公開している事も多い。

 トラックバック機能などを通じて形成されるコミュニティを指してブログ界 (Blogosphere) とも呼ばれる。ブログの更新者は各界の著名人から一般市民まで様々であるが、彼らブログの更新者のことを一般にブロガー(blogger) と呼ぶ。


 ブログについては非売品だが、坪田知己監修・日経メディアラボ編『進化するブログ~交差するマスメディアとソーシャルメディア』(2009年3月31日発行)が詳しい。
Shinkasuru_blog
 特に「第1章 日本ブログ史を振り返る」は日本のブログの普及過程と、現状のさまざまな問題について、詳細に分析しており、役に立つ。

 一部を引用させていただき、日本のブログを考えるためのスタートラインとしたい。

 本書によると、米国におけるブログの浸透には、2001年9月に発生した、米同時多発テロ事件が関係していると言われている。

 「2011年9月11日、4機の旅客機がほぼ同時にハイジャックされ、ビルに激突あるいは墜落した未曾有のテロ事件は、多くの米国民に強い衝撃を与えた。そして、この事件について他人と語り合いたい、自分の意見を表明したい、という人々が次々とブログを立ち上げた」というのだ。
 
 なかでも、「米国のブログ文化をリードしたのは、…ジャーナリスト、企業トップ、エンジニアら各界のエキスパートといった有識者たちである。政治、経済、産業から、エンターテインメントまで、さまざまな論評が文字通り縦横に展開されるようになり、ブログ百家争鳴ともいうべき状態が現出した」。

 「こうした米国でのブログブームに対し、日本でも一部の先進ユーザーが反応していた」。後にブログソフトの定番となる「Movable Type(ムーバブルタイプ)」が2001年に誕生するが、これを使ってブログをつくるユーザーが現れたのである。

 しかし、「一般的なネットユーザーにまで広まるには少し時間がかかり、日本への本格的なブログの上陸は、ほぼ2003年ごろと考えられる」。
 2003年1月「はてなダイアリー」サービス開始
 2003年12月「ココログ」、「livedoor Blog」サービス開始
 2004年2月「mixi」、「GREE」サービス開始
 2004年3月「ブログ人」(NTTコミュニケーションズ)、「gooブログ」、「ウェブりブログ」(BIGLOBE)サービス開始
 2004年9月「Ameba」サービス開始
 2005年1月「Yahoo!ブログ」サービス開始

 「2005年10月、総務省は国内の主要なブログサービス登録者数の合計が473万人に達したと発表した。そして翌2006年の4月には、これが860万人になったとしている。…『インターネット白書2006』(監修:財団法人インターネット協会、発行 インプレスR&D)は、2006年の日本のインターネット人口を7361万9000人と推定しており、単純に計算すればネットを使う人の10人に1人はブロガー、というまでになった」。

 「世界的にも日本は『ブログ大国』の仲間入りをする。米国のブログ検索サイト『Technorati(テクノラティ)』が発表したデータでは、2006年6月時点で、世界のブログのうち日本語のものが31%を占めていた(英語は39%)。そして翌年には英語を追い抜いて日本語が世界一になる」。

 「だが、2005年になると拡大したブログコミュニティーにひずみが生じ始める。社会的事件の渦中にある人のブログや『問題発言』と見られるような意見が掲載されたブログにアクセスやコメントが集中し、サーバーの機能が低下したり、コメント・トラックバック欄の停止や削除、あるいはブログそのものの閉鎖などに追い込まれる、いわゆる『炎上』事件が続発する」。

 「真剣に自分の意見をきちんとした形でネット上に発表しよう、という意気込みが、いつしか読者に責められる息苦しさに変わってしまう。そうして、ブログを閉鎖してしまったり、より気軽に意見を書き込める『Twitter(ツイッター)』などの一口ブログに移行したりする人が増加するようになったという」。

 「一方で、もともと気軽に日記的なブログを書いていた人は、一部は『mixi(ミクシィ)』などのSNSに足場を移したものの、基本的にはそうした息苦しさを感じることなく増加し続けた」。
 
 「日本のブログは、時間をかけて事実関係を確認しつつ丹念に文章を書き、自分の意見を表明していく少数の硬派なブログと、個人的な出来事や感じたことを思うさまつづっていく、大多数のゆるやかなブログとに急速に分化していった」。

 日本にブログが上陸してからの5年間をどう評価し、今後をどう展望するか。本書は、ブログにかかわってきた識者6人にコメントを求めている(肩書きなどは本書の発行時点)。
 はてな・伊藤直也氏 「ブログのようにコンテンツを伝えることに重点を置く集中型のメディアと、SNSのようなコミュニケーションに重きを置く分散型のメディアを併せ持ったようなサービスが実現できれば、大きなビジネスチャンスを生むのではないか」「日本が先行する携帯ネットをさらに活用することだ。…単に携帯にも対応する、というのではなく、そのプラットフォームとしての機能に注目するべきだ」。

 ニフティ・前島一就氏「ブログとかSNSとか、ツールの名前を意識せずに、多くの人が発信した情報がストックされてくれば、すごいことになる。これまではツールの5年。しかし次の5年は中身の5年だ」。

 会津泉氏「日本のブログは私小説的。…多くは身内同士のコメント付け、ほめ合いやけなし合いにとどまっているようだ。…今後、ネット社会やネット文化をより発展させていくためには、異なる立ち場、異なる意見が共存共栄できる仕組み、泥臭い意味でのコミュニティーが不可欠」。

 濱野智史氏「日本のブログは…似たような興味や視点を持った人同士がつながりを持ち、意見を交わすことができる仕組みにはなったが、全体としてブロゴスフィアアの形成には至らなかった」「ネット上において、巨大なポータルサイトによる情報発信と、極限まで細分化した個人の情報発信、すなわち文字通りロングテールの部分との中間を担う存在としてブログが存在感を占めていけば、大きなビジネスチャンスにつながるのではないか」。

 佐々木博氏「今、自分たちは情報化社会の次のステージに進めるかどうか、情報の取捨選択や判断の能力を試されているところだと思う、そうしたときに、一度自分が情報の発信者側に立ってみる、ということは非常に重要な経験だ」

 久保田達也氏「自分を『開眼』させるためのツールとしては今後も機能していくのではないか」「ただ、同時に大学教授として若い学生たちと接していると、ブログよりもmixiなどのSNS、『前略プロフィール』のような自己紹介サイトの方が人気があり、ブログを使っていても長い記事を書くことは少なく、携帯メールのような1行程度の文章で更新しているケースが多い。学生たちに聞くと『重要なのはコミュニケーション』という答えが返ってくる」

 twitterなどが勢いを増す中で、ブログが早くも転機を迎えていることは確かなようだ。ただ、ブログはその可能性をまだ十分に発揮していない。逆にtwitterやSNSも活用しながら、もう一度、ブログスフィアの形成を目指す、ブロガーたちの動きが必要なのではないだろうか。
 
 そんなことを思い、ブログ最盛期のころのアルファブロガーたちの発言をチェックする必要性を感じたのだ。

 それでは、『アルファブロガー』の中身に移ろう。

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デイビット・マイヤー カフェ(DAVID MYERS CAFE)三越銀座店

 増床オープンした銀座三越に行ってみた。
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 これがこれまでの銀座三越のイメージ。銀座4丁目交差点から中央通り沿いに店があるイメージだったが・・・。

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 晴海通り沿いにも新館が加わって、店が広くなった。

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 写真を撮るため、晴海通りを挟んで反対側にいた。銀座四丁目交差点を渡らないと、東銀座まで信号がない。しかし、三越の前は大混雑だ。すぐ目の前に地下道の入り口があった。地下道に入ると、なんと売り場に直結する通路ができていた。大発見! こちらから三越に入ると、とてもすいていた。

 この程度の発見で「大発見!」と喜ぶくらいだから、たいしたことはない。

 開店日。とにかく混んでいた。地下3階のコントワグルマン(03・3535・0126)でオリーブとミモレットを買い、赤ワインを1本買って、カフェに退避することにした。

 銀座三越のみどころは日経トレンディネットAll Aboutが詳しい。この二つを頼りに、銀座三越は今後、ゆっくり探訪したい。

 退避したカフェはデイビット・マイヤー カフェ(DAVID MYERS CAFE、東京都中央区銀座4-6-16 銀座三越 6F
03・3561・7052)。
David_myers
 説明は名刺に(クリックすると大きな画像で読めます)。初日のためか、マイヤー氏が各席に挨拶に来たのには驚いた。

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 紳士服売り場の奥にある。

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 売り切れメニューも多く、今回は、「北海道産小麦粉で作ったストロベリーパンケーキ、バターとカラメルソース」(1200円)を注文した。コーヒーや紅茶は単品だと840円だがセットだと500円になる。

 紳士服売り場の奥で、アメリカンスタイルの気取らない店。
 シェイクやパフェ、ハンバーガーも人気のようだ。
 
 営業時間はAM10:00~PM20:00(L.O.19:30)。

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炭火焼鳥 旬の味 しんのや(東京・駒込、小料理、焼き鳥)

 チェコからスロバキアに住まいを移したM君が日本に帰ってくると必ず訪ねるという店、炭火焼鳥 旬の味「しんのや」(東京都北区中里1-3-4 能勢ビル1階、03・3828・5638)に行った。

 食通のM君が気に入っている店だから、いい店と期待して行った。

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 「アザレア通り」と呼ばれる商店街の中にある。
 
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 店に入ると、地元の常連のお客さんがカウンター席で談笑していた。

 ご主人は鹿児島県出身、女将さんは群馬県出身!メニューの田舎の野菜と書いてあるところに(鹿児島・群馬)と書いてあり、尋ねてみてわかった。ジャガイモは群馬産だ。

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 ポテトサラダ(400円)。

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 釣りあじ(750円)

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 焼き鳥1本150円、手羽先は1本200円。

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 おにぎり(2個400円、1個でもOK)。

安くておいしい良い店だった。

東京でも駒込あたりまでくるとローカルのよさがある。都心の店とは時間の流れ方が違った。とてもくつろげた。

 M君が気に入るのも頷ける。

 営業時間は17時から23時まで。
 日曜休み。

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一の宮カントリー倶楽部(千葉県長生郡一宮町)~「大人のゴルフ」は1日にして成らず

 一の宮カントリー倶楽部(千葉県長生郡一宮町東浪見3166、【予約専用】0475・42・7200【フロント】0475・42・3711)で10人の小規模コンペを行った。前日の伊香保カントリークラブは「悪くてもボギー」という大人のゴルフができたので、今日も、と思って臨んだのだが…。

 コンペの後、宴会があるというので、バッグをかついで、電車でゴルフ場に向かった。7時19分新宿駅発「新宿わかしお」。上総一ノ宮に8時43分に到着する。46分発のクラブバスがある。
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 座席は3号車1番D席。バッグを置けるスペースがあるので、端っこの席を選んだ。

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 すいていて極めて快適。

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 錦糸町駅あたりでは建設中の東京スカイツリーがよく見えた。

 ゴルフ場に到着し、さっそく練習を始めた。練習場はアイアンのみと、パットの練習場がある。
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 パットの練習場は細長くて平らな練習場。狭い場所でも、多くの人数で練習できそう。

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 傾斜がないのが物足りない半面、まっすぐパットを打つ練習には適していた。ふつうのパット練習場だと、傾斜でパットが曲がるのか、例えば右手が強すぎて左に曲がるのか、分からないからだ。

 外房州一宮海岸にほど近く、太平洋を望む高台にひろがる36ホールのコース。海からの風で、思ったよりは涼しかった。松の木がきれいなシーサイドコースで、南国に来たような観光気分でラウンドできた。

 東コースを回った。芝は高麗。レギュラーティーはアウトが3161ヤード(パー453443445)、インが3109ヤード(パー534445443)。
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 インスタート。ティーショットはきれいに打てたが、2打目は左右がOBゾーンでグリーンは左。そのすぐ右にバンカー。狙う場所がとても狭く感じた。安全のためにと持った5番アイアン。打った後左に曲がり、OBゾーンへ。打ち直しはセーフと思ったがボールはなかった。OB。
 続けてOBを打って動揺、いきなり+7。これが響いた。
 インの成績は+7+1+3+2+2+0+2+1+1=+19で55。パット数は322221312。

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 アウト1番は広々としていて、どこに打ってもよさそうだった。右方向へ打った。

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 ところが、バンカーにつかまった。ここからうまく打てたと思ったが、グリーンを若干オーバーした。グリーンまで行くとすぐ後ろがOBゾーン。後半は挽回しようと思っていたのに、いきなりOBで+3だ。
 このゴルフ場は一見すると大洗ゴルフ倶楽部(茨城県大洗町)のようなのだが、グリーンの後ろがすぐOBゾーンだったりして、あまりスペースに余裕のあるゴルフ場ではなかった。しかもラフを短く刈っているので、打つときはいいのだが、ラフでボールが止まらず、どんどんOBゾーンに転がってしまう。
 このあたりは初めてのゴルフ場でセルフプレーだったので、計算に入れていなかった。

 しかし、問題は3番ショート。この日はアイアンが左に行き、丘の上に打ち込んだ。ティーショットで使った9番アイアンを持ったまま、丘の上に行くと、ぎりぎりセーフ。そこでクラブを取りに戻るべきだったのだが、そのまま9番アイアンでグリーン上めがけて打ったところ、ボールがとまらず、バンカーへ。
 そしてバンカーショットを5回も打ってしまった。
 +6。今日も2ホールで+13。
 ミスにミスを重ねる悪いパターン。
 アウトの成績は+3+1+6+3+2+1+2+1+1=+20で56。パット数は212222222。

 コンペの結果はブービーメーカー。グロスでもネットでも最悪スコアだった。
 まだまだです。

 ちなみに、師匠のKさんは本来の調子でイン、アウトとも44だった。

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山香うどん(群馬県渋川市、うどん)

 伊香保カントリークラブでのラウンドはスループレーで早く終わったため、地元で評判の手打ちうどん店、山香うどん(群馬県渋川市渋川4173、0279・23・1966)に行った。

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 営業時間は午前11時45分から午後3時まで。朝打ったうどんは昼間のうちに売れてしまい、午後3時に店じまいという。

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 座敷のみ。緑茶がおいしかった。

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 天ざるうどん(1200円)うどん、つゆがとてもうまい。

 天ざるうどん以外のメニューは
 ざるうどん     600円
 もりうどん     550円
 天ぷらうどん   800円
 肉うどん      600円
 山菜うどん    600円
 たぬきうどん   500円
 月見うどん    500円
 天ぷら盛合わせ 800円
 大盛りは100円増し

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伊香保カントリークラブ・各ホール、ダボ以下で回る

 ゴルフのスコアが改善しない最大の理由は1ホールで何打も叩くケースが多いからではないか。
 例えば8月21日の日高カントリークラブ。西コース・3番ホールの+8。
 8月9日の愛媛ゴルフ倶楽部は+4が2回、+5が2回。
 7月31日の廣済堂埼玉ゴルフ倶楽部は+7と+5。
 これではほかのホールでがんばっても台無しだ。

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 今日は+3以上は打つまいと心に決めてラウンドした。
 伊香保のラウンドは、いつも、群馬のゴルフの師匠、Sさん、伊香保在住の宿命のライバル、Mさんは固定メンバーで、今日もSさん、Mさんと回った。

 インスタート。11番はティーショット打ち損じ。12番は2オンチャンスでシャンク。いつもなら大叩きしそうなホールを+2で切り抜けた。今日はミスショットの後も無理をせず、比較的得意とするアイアンでまずはフェアウエーに戻した。

 インの成績は+1+2+2+2+2+1+2+1+2=+15で51。パット数は222322322。

 今日はスタートが7時台で、スルーで回った。
 アウトは1番ロングでいきなりOB。ピンチだ。前進4打の5Wがうまくヒットし、+1で乗り切った。
 8番ロングもOB。前進4打をドライバーで花道に打ち、5オン。1パット目は外したが2パット目で入れて+2。
 9番ミドルもティーショットをミスしたが、その後の2打目、3打目をアイアンで打ち3オン。1パットで+1。
 
 スコアは+1+2+0+1-1+1+1+2+1=+8で44。パット数は122212222。
 
 各ホール、+2以下でとどめられた。大乱れするホールがなければ100は切れる。

 打ち方をコンパクトにして、安定感が増した。ただ、コンパクトにしようという意識が強くなりすぎると、手打ちの小さいフォームになってミスショットもした。
 S師匠にトップはきちっと「決める」よう言われた。また、打ち損じたときは打ち急ぐ感じだったのでリズムよく打つようにアドバイスされた。

 まっすぐ打つつもりのパットが左に曲がる傾向があり、「テイクバックは左手主導」と教わった。ヘッドアップにも気をつけ、左手主導で打つとまっすぐ打てた。

 落ち着いた打ち方とラウンド。イメチェンでがんばりたい。

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川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫)その2

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『伊勢丹な人々』

 川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫、2008年4月1日発行)を読んだ。

 本書によると、「伊勢丹は、1886年、神田明神下の旅籠町に、伊勢屋丹治呉服店として産声を上げた。呉服店時代からの歴史の長さで比べると、三越、高島屋、白木屋といった老舗に比べ、明らかに劣っていた。老舗というブランド力では、他の店に太刀打ちできなかったのである」
 「対抗手段としての差別化は、創業者である小菅丹治が、当初から努めて実践してきたことでもあった。その一例が、1909年に行った『帯の展覧会』だ」。
 
 「伊勢丹が神田から新宿に進出した時、すでに、三越、ほてい屋、新宿松屋、二幸といった百貨店が店舗を構えていて、伊勢丹は後発組みだった。しかも、駅から徒歩10分という立地は大きなハンディキャップだったという」。
 「ハンディを逆手にとって『常に独自性や話題性を発信し続ける』という命題を、自らに課す。それが伊勢丹の歴史なのだ。企業スローガンは『毎日があたらしい。ファッションの伊勢丹』」。

 本書によると「バブル景気も追い風となり、80年代までは、百貨店という業態は順風満帆の環境にあった」。
 しかし、バブルが崩壊。「物が売れなくなってくると、目先の売り上げを取るために、売れ筋を追いかけることに奔走する。特にアパレルが、週単位で売れ筋を迅速に追加投入するシステムを確立し始めたことが、この傾向を後押しするかたちとなった」。
 「特に大型ブランドでは、全国に同じような『売れ筋商品』が並ぶことになり、百貨店の同質化が進んだ」。
 「そしてついに百貨店で価格競争が始まったのである」。
 「『文化やライフスタイル提案』を謳って、新しい業態や売り場をつくって時代を先導してきた百貨店が、90年代に入って一気に変質してしまったのである」。

 90年代にチャレンジをし続けたかどうかが、百貨店のその後の成否を分けるのだが、伊勢丹はチャレンジを続けられた。それはなぜか。

 「おそらく表面的に斬新な売り場を設けたり、外部任せでかっこいいフロアをつくるという発想ではないところで、人が動いてきたからだろう」と川島氏は分析する。
 「90年代の伊勢丹の『顔』と言えば、現在は福助の代表取締役として名を馳せている(2005年の単行本刊行時)藤巻幸夫が火付け役を務めた『解放区』『リ・スタイル』『BPQC』。21世紀に入ると、巷では逆風下の挑戦と言われながら大成功を収めた『メンズ館』が挙げられる」。
 「いずれも、濃い人間たちの強い思いが結集して、生み出されたものばかりだ。伊勢丹出身で、今も業界内外で活躍している人材が多いことが、それを証明している」。
 「伊勢丹には、新しいことに果敢に挑戦する体質から、破天荒とも言えるほど個性の強い人材を活かそうとする地盤があるのだと思う。だからこそ、伊勢丹を離れて起業する、あるいは他企業で活躍している人材が、数多く存在するのではないだろうか」。
 「自分だけでなくチームとして、強い意志を持ってやり遂げようとする求心力も、企業の強みと言える」。

 本書では、「解放区」「リ・スタイル」など、90年代から21世紀にかけて注目された店を詳細に取り上げ、その成功の秘密を解き明かす。

 そして、その中でどのように伊勢丹な人々が醸成されたかを分析している。

 伊勢丹な人々を作り上げた要因の一つがが「55パーセント攻撃論」だ。
 「新しいことを提案するに際し、50パーセントの可能性があると思ったら上司に相談、55パーセントの可能性があると思ったら自分で判断し、勇気を持って実行する。ただ、後の45パーセントは自分で努力して100パーセントにもっていく」。 

 川島氏はバイヤーにも目を向ける。
 「バイヤーの資質は、『今』を読むことにあるのではなく、『次』を見ることにある。『今』から『次』の兆しをつかむ――そのクリエイティブなジャンプこそが求められる職種なのだ」。
 「しかも、『自分の好きなもの』ではなく『お客の求めるもの』を揃えなくてはならない。伊勢丹の顧客という枠組みを理解した上で、先を読むわけだから、難易度は高い」。
 「リ・スタイル」のバイヤーたちは「服が好きでたまらない。それを伊勢丹のお客につなぐことにこそ醍醐味がある。そんなバイヤー魂とも言えるものが、強烈に発信されている」。
 「『若い頃から海外出張には積極的に出す。年間で延べ400人は行っている。新しい挑戦をできるだけして欲しい』と・・・言うように、伊勢丹には、バイヤーを育成していく風土が長年にわたって根付いている」。
 「『濃い』バイヤーをどう育成・維持していくかは、“ファッションの伊勢丹”であり続けるための命題なのだ」。

 
 自他を厳しく律する伊勢丹の風土も大きい。
 「当時、『メンズ館』策定のリーダーとしてかかわっており、現在は執行役員営業本部MD統括部婦人統括部長の中込・・・は、トップから『覚悟はできているのか』と厳しく問われ、最終的にはゴーサインという理解がなされた」。
 「この『覚悟』に対する『理解』というマネジメントは、厳しく自他を律する考え方だと思う」。
 「多くの企業では、この『覚悟』ができないから、『理解』も示さない」。

 伊勢丹な人々は百貨店業界の関係者でなくても参考になる一冊だった。

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川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫)その1

 銀座三越が2011年9月11日、増床オープンする。
 ニュースリリースには次のように書いてある。
 三越が銀座に店を構えて80年。銀座三越は、2010年9月11日(土)に銀座・有楽町地区で最大規模となる百貨店に生まれ変わります。
 これまで、お客様から「 いつも混み合っていてゆっくりと買い物ができない」「売場が狭くて品揃えに偏りがあり、買いたいものが少ない」「休憩スペースやレストランが少なく、楽しい時間を過ごせない」等のご意見を頂戴することもあり、お客様に大きなご満足をいただくためには、サービス施設の充実や品揃えの強化はどうしても必要との思いを長く抱いておりました。

 そのような中、既存店舗および店舗隣接の駐車場スペース、銀行跡地、共同事業者様との一体化開発による「都市再生特別地区」計画が決定し、本館・新館を一体の建物として開発する運びとなりました。

(中略)

 新しい銀座三越は、「銀座ならでは」「銀座らしさ」にこだわった店舗づくりを目指し、「銀座を訪れる方々の価値観にお応えするには…」そして「お客様に『感動』していただくためには…」を深く考えてまいりましたが、それはまさしく小売業の原点である「おもてなしの追求」であり、それが店舗の目指すスタイルです。
 「おもてなしの追求」。それはお客様の一人ひとりの関心事にお応えすること。お客様にとって「わたしのために」を感じていただけるサービス、品揃え、環境を全館で追求し、お客様にとってなくてはならない店「マイデパートメントストア」になることを、銀座三越は目指しています。

 お客様像
 新・銀座三越は、・・・銀座来街者の行動スタイル、ファッション、関心事等を徹底的に分析し、イメージするお客様像をつくり上げました。それを一言で表すと「自分の考え方を持ち、本物本質を見極め、新しさと心の豊かさを求める大人」です。イメージするお客様像に合わせた店づくり、サービス、品揃え、環境を提供し、その価値を最大化することを目指しています。

 MD(マーチャンダイジング:品揃え)
 アイテム展開が基本
 品揃えの基本は「お客様の関心事に基づく品揃え」を行うことです。不特定多数に向けたブランド揃えではなく、百貨店の原点に立ち戻り、想定したお客様の生活シーンや関心事を深く掘り下げることにより、お客様の求める「アイテム」を導き出し、徹底的に追求します。品揃えをアイテム展開することとは、すなわちブランドブティックの展開を最小限にとどめ、展開アイテムの中に比較購買できる複数のブランドや銀座三越な
らではのオリジナリティある商品を配し、ブランドの垣根をなくすことです。

(中略)

 銀座スタイル
 アイテム展開、カスタマイズをMD戦略の基本に展開しますが、ターゲットである銀座来街のお客様に向けては、「銀座らしさ」「銀座三越ならでは」を実現いたします。
 それは銀座ならではという付加価値=「銀座フィルター」が、全館のMDに具体化されていることが重要です。「銀座フィルター」とは、●今あるもの、よくあるものだけど新たな気づき、再発見がある ●愛着を持ち大切に長く使い続ける、特別な思いを形にする ●旬や歳時記、季節感を大切にする ●人とのつながり、コミュニケーションを大切にする など、銀座三越ならではの感性価値を提供することです。
 「銀座フィルター」を最も象徴的に表現し、突き抜けた独自性のある売場を「銀座スタイル」とし、銀座三越が主体的に売場を構築、コントロールした自主展開を基本に、各フロアの最も視認性の高い場所で展開いたします。「銀座スタイル」は、銀座三越にしかできない、お客様に「新鮮さや買いやすさ」が感じられる象徴的な売場。売上規模で全館の約1割を計画しています。

(後略) 

 銀座三越概要
■ 店舗名: 株式会社三越 銀座店 
■ 所在地: 東京都中央区銀座4-6-16
■ 開業年月日:1930年(昭和5年)4月10日
■ 増床オープン日: 2010年9月11日(土)
■ 規模: 地下3階~地上12階
        (建物は地下6階~地上13階)
■ 延床面積: 約81,476㎡(現:43,111㎡)
■ 店舗面積: 約36,000㎡(現:23,248㎡)
■ 営業時間: 地下3階~地上8階/10階:午前10時~午後8時
      ※一部飲食店舗を除く
      銀座テラス(9階):午前10時~午後11時
      ※一部施設を除く
      11・12階 レストランフロア:午前11時~午後11時
■ 売上高目標: 630億円(オープン後1年間)
■ 従業員数: 約720名(うち社員約470名)
■ 総投資額: 420億円

 銀座三越の増床オープンが気になる。三越と伊勢丹が経営統合した成果が、どのようなものなのかを見ることができる試金石となる店だからだ。
 
 そんな関心もあり、川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫、2008年4月1日発行)を読んだ。

 先に「文庫化にあたって」を読んだ。川島氏は次のように書いている。
 「伊勢丹と三越の統合は、一消費者から見ると、まったく異なるイメージの百貨店が一緒になるということで、まずは違和感が先立つ。保守性と革新力。老舗の伝統性と枠組みにとらわれない自由さ、堅牢な品格とカジュアルな上質感――そんな両社が持っている、真逆とも言えるイメージが一体化するということがなかなか想像できなかったのである」
 「しかし、その後、具体的な経営統合に向けてのニュースを耳にしたり、それぞれの社員の話を聞いたりするにつけ、あくまで両社の長所を伸ばす方向で経営統合を図っていく様子がうかがえる」
 「統合によって伊勢丹は、三越が持っている老舗ならではのブランド力、都内の好立地も含めて全国規模で展開されている店舗網、それに加えて突出した富裕層の顧客を視野に入れることができる」
 「三越は、伊勢丹が持っている“ファッションの伊勢丹”としての感度の高さ、独自の品揃えを組めるMD(マーチャンダイジング)力、豊富な知識をもとにブランドを超えた提案ができる販売力などを学ぶことができる」
 「百貨店はどのように競合していくべきなのか。私は百貨店の原点に立ち戻って考え直す時に来ていると思っている。長年培ってきた良い意味での敷居の高さと信頼・安心感、きめ細かい顧客へのサービス……これらを今の時代に適合させるかたちで新たにデザインしていくというプロセスを踏まなければ、消費者にとって魅力的な業態としていき続けることは難しいのではないだろうか」
 「実はそれを常に意識して戦略的に変わり続けてきたのが伊勢丹なのだ。統合によって、伊勢丹には深みが生まれ、三越には進化が始まる」

 三越を進化させる伊勢丹とは、どんな企業で、伊勢丹な人々とはどんな人たちなのだろうか。関心が高まった。

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志村一隆著『明日のテレビ〜チャンネルが消える日』(朝日新書)

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『明日のテレビ〜チャンネルが消える日』

 志村一隆著『明日のテレビ〜チャンネルが消える日』(朝日新書、2010年7月30日発行)を読んだ。

 とにかく楽しい本だ。「はじめに」で志村氏はこの本のことを「アメリカのメディア、コンテンツ業界やベンチャー企業の動向を記したもの」で、「『広く、自由に、柔軟に、考えれば、ビジネスチャンスはたくさん転がっており、視聴者にとって楽しいテレビライフが待っている』ことが伝われば、本望です」と語っているが、世の中の変化を危機と捉えずにチャンスと捉えると、こんなに楽しくものが見えるのかと思う。


 「なぜインターネットでテレビの生放送が見られないのか」と竹中平蔵総務大臣(当時)が「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)の設立を発表した2005年末に語っていたが、いまだに日本ではテレビの生放送は見られず、見逃し番組のビデオオンデマンドサービスも一部しか提供されていない。

 「ネットでの著作権処理が難しいから」「テレビほどの広告収入をネットでは得られないから」・・・。テレビ局にも言い分はあるのだろうが、視聴者の利便性を考えた映像サービスは既存の日本のテレビ局からは出てきていない。

 そんな閉塞感のあるなかで、この本を読むと、新鮮さを感じる。

 志村氏はまず、50年周期で映像メディアの交代が起きていると説明する。

 「映画は、今からちょうど100年前の1910年代から世界各地で人気の娯楽となりました」
 「日本でもアメリカでも今から50年前の60年代がテレビの黄金時代といわれています」
 「2010年代は、ケータイでもブロードバンド化が進み、どこからでも映画やスポーツ中継を楽しむことになります」。
 「1910年、60年、そして2010年、なんだか偶然のようですが、映像の主役が交代する端境期に私たちは生きているのです」


 そして、映像は次のような変革を遂げるであろうと予測する。

 第一が「映像をどこでも見られる、モバイル、クラウド配信」だ。
 「すでにDLNA(Digital Living Network Alliance)」という技術のおかげで、居間にあるハードディスクレコーダーに録画したテレビ番組を、寝室にあるテレビで見たり、そのあとケータイにダウンロードして見ることが簡単になっています」
 「このサービスがさらに進化すると、録画をしなくても、映画やテレビ番組の見る権利を買えば、パソコン、テレビ、ケータイあらゆる端末から一生その映像作品を楽しめるようになります。・・・これはコンテンツのクラウド配信と言われています」

 第二が「番組をバラ買い、集めてマイ・チャンネル」。
 「これからのテレビでは、自分の好きな番組を集めた自分だけのマイ・チャンネルを見る感覚が普通になります」
 「インターネット時代のビジネスは、商品の送り手の都合が優先するのではなく、消費者である私たちの都合が優先されます。インターネットはオンデマンドな文化なのです」
 「インターネットでマイ・チャンネルばかり見ていると、自分の知らないことをどうやって知るのか?という問題点にぶつかります」「インターネットでも自分の知らないことを知る手段はたくさんあります。そのひとつが、ブログやツイッターの発信機能です」
 「あらゆる映像ニーズに応えるには、膨大な映像が必要となります。・・・そこで、インターネットにある映像は、普通の企業、個人が作り手として登場します」
 「インターネット時代の映像ビジネスを担うのは、既存の大手メディアではありません。あまりにビジネスが小さすぎて利益が出ません」

 第三が「映像をシェアする時代」。
 「ユーチューブには好きな動画だけを集めてマイ・チャンネルを作る機能が付いています。ニコニコ動画(日本の動画共有サイト)を見ながら、友達とチャットをしたり、好きな動画を見つけたら友達にそのURLを送って共有することも簡単です」


 こうしたインターネットに対応するテレビを象徴する言葉として、最近アメリカで「ソーシャル・テレビ」という言葉をよく聞くと言う。
 「ソーシャル・テレビとはなにか? インターネットを利用し、映像を友人とシェアをしながら楽しむという、新たな視聴者の映像消費行動やそれに対応するテレビ局のことを言います」
 「ソーシャルと名のつくものは、既存の大手メディアにとって、本来自分のビジネスを脅かす存在です。インターネットでは、自分の好きな映像は、友達からのメールやRSSフィードが届けてくれるわけです」

 大きな変化に直面すると日本のメディア企業は守りに入ることが多いのだが、アメリカの企業は違うと志村氏は言う。
 「それでもアメリカではテレビ局、広告代理店、コンテンツ・ホルダー(映像コンテンツを所有する映画会社やテレビ局)たちはとても前向きです。社会が変わったことを前提に自分たちも変わっていこうとしているのです」。

 第一章を要約するだけでも、こんなに中身が濃い。
 
 テレビが好き「だった」人にはおススメの本だ。


 第二章以下ではさらに具体的に話が展開するが、長くなったので、読みどころを簡単に紹介しよう。

 第二章
 フールー(アメリカの大手テレビ4社のうち3社=NBC、ABC、FOXが出資して作ったインターネットの映像サイト)について紹介する。
 「インターネット的な機能で私がいちばんすごいと思ったのは、テレビ番組を切り取れる機能です」

 第三章
 アメリカのテレビの紹介。ケーブルテレビのコムキャスト(Comcast)、衛星放送のディッシュ(DISH Network)、ディレクTV(DIRECTV)、IPTVのユーバース(U-Verse)、ファイオス(FiOS)などにも触れている。

 第四章
 インターネット動画をテレビで見る。ボクシー(Boxee)、テレビ・ウィジェット、ティーボ(TiVo)などが紹介される。
 そして、iPadの可能性——。

 第五章
 テレビは何で儲ける会社になるか。
 CBSは屋外看板市場で全米2位。
 NBCの、「録画視聴に加え、インターネットやモバイルで見た人も視聴率に加える試みである『TAMi(Total Audience Measurement Index)』」
 
 第六章
 地デジ移行とモバイル放送の関係

 第七章 3Dにかける映画会社と家電メーカー

 第八章
 これからのテレビ
 アルビン・トフラーの言葉。「歴史を知る必要はあるが、過去を振り返る必要はない。環境が変わってしまったら、古き良き時代の記憶はそばに置いて、新たなルールで生きるほうが楽しい」。

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