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KMD(慶應義塾大学メディアデザイン研究科)修了記念シンポジウム「ダダ漏れしてもいいですか?」

 9月17日、慶應義塾大学三田キャンパス北館ホールに行き、KMD(慶應義塾大学メディアデザイン研究科)修了記念シンポジウム「ダダ漏れしてもいいですか?」を聴講した。

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 トークセッションのモデレータは中村伊知哉氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)=右。
 登壇者は左から茂木健一郎氏(脳科学者)、古川享氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、川上 量生氏(ドワンゴ 代表取締役会長)、岸博幸氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、夏野剛氏(慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授)。

 ニコニコ生放送でも「日本におけるデジタル社会の明日を描く討論会」として、生中継された。ニコ生の方は「ダダ漏れ」のタイトルでは別の内容を思い描いて来る人が多くなってしまうと思ったのか、ストレートなタイトルだった。
 コメントに、USTREAM+twitterの中継とは違う面白さ、迫力(拍手のときは画面が888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888・・・で埋まる)があった。ニコ生視聴者はいいなあと改めて思った。

 10分ほど遅れてトークセッションは始まった。

 質問はビジネスマンが関心を持つようなテーマ10問。中村氏の絶妙な進行の中、5人の論客が個性的な意見を述べ、刺激的な2時間となった。

 トークセッションの要約は以下の通り。

中村 最初の問いです。
 日本からGoogle, Facebookは生まれる?
 (川上、岸=×、他=○)

茂木 脳科学的に言うと、こういうのは予測することでなく、実行することなのでーー。結論から言えば、古い日本は置いていくしかない。
 大学も、要るのかなと思う。東北から帰ってきたのだけれど、東北の村を歩きながら、この人たちがアクセスできないアカデミックなシステムなら要らないと思った。
 新聞にしてもテレビにしても霞ヶ関にしても、大学にしても、古いものはあるんだけど、それと付き合っていると、グーグルとかフェースブックは出てこない。
 デカップルすればいい。無視して勝手にやればいいんじゃないですか、そうでしょう古川さん。

古川 30歳以上の人は「アメリカにこのままのさばらせていいのか」とか「日本ががんばらなきゃ」とかしか考えないが、どこの国の人でも日本で教育を受け、いい経験を積んで、日本から世界で活躍する人材が巣立ってほしい。
 日本をカタパルト(射出機)にして世界に離陸していく人材は出るだろうということで、yesと答えた。

夏野 日本は経営の3種の神器全部持っている。
 お金がまずある。個人金融資産が1400兆円もある。
 人がいる。すごく働いてくれる。
 米国の経営者は社員をいかにサボらせないか苦労する。
 でも、日本人は、仕事がないと新入社員でも仕事探そうとする。
 こんなすばらしい労働環境の国はない。

 まだまだ技術とアイデアがある。

 お金があって人がいて、技術があるのは国としてアドバンテージとなる。

 しかし、これらはリーダー(マネジメント)がいないと生かせない。
 リーダーシップさえ変えれば、羽ばたける。

川上 今日はテンションが低いので×にしてみた。世界に通用する日本企業ということであれば、出てくると思うが、グーグル、フェースブックみたいのものが日本から出てくるのは難しいと思っている。

 ネットスタンダードは、アメリカ以外ではほとんど生まれていない。

 日本企業が普通に競争していてプラットフォームを獲得するのは難しいと思う。
 日本は別の方法で競争すればいい。
 なんかの偶然でグーグルやフェースブックが日本でも誕生したかもしれないと思うのは間違ではないか。

岸 日本人、日本全体の力落ちている。日本は海外から入ってきた技術を日本流に洗練、アレンジ加えて日本独自のものを作る。
 しかし、その力が明らかに落ちている。
 なぜかITみたいにシンプルに技術を組み合わせるものもだいぶ弱い。そうなると、この分野で世界に通用するものは出てこない。

中村 夏野さんは、著書で「変化を嫌うリーダーは去れ」というけれど、去らないじゃないですか。どうすればいいんですか。

夏野 ITについていけないのは50代以降で、大企業の経営者は50代後半なんです。

 でも、大丈夫です。5年とか7年で全員退職するから。

古川 私、50代なんですがーー。

夏野 いまだに女の子くどいている50代は例外(笑)。

古川 ノウハウ、英知、経験を伝えていく場がほしい。
 世代超えての情報共有がない。ノウハウを受け渡す場がないまま、それぞれのジェネレーションがーー。

(銅鑼が鳴る)
(場内騒然)

中村 最初に説明しておけばよかったのですけれど、今日は10問を用意していまして、時間を厳格に運用いたします。どんなに盛り上がっていても10分たつと銅鑼が鳴りそこで打ち切りとなります。

古川 残りはツイートしま~す。

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中村 次の問いに行きます。
 ガラパゴスは絶滅する?
 日本は高度に発達しすぎたケータイの国。
 日本のケータイ産業は海外のビジネスに席巻されてケータイ文化もアメリカ化するのかどうか。
 日本のケータイはだめだという人は○、まだまだいけるという人は×を出してください。

 (古川のみ○)
古川 スマートフォンをどうやって成功させようかとがんばってる人いるんだけれど、つぶしにかかる勢力がいる。
 ガラパゴスがだめなんじゃなくて、それを変えようとしている人をまた、さらに、つぶそうとしている。

茂木 いま、○の話?
中村 次は×の意見。

茂木 これまで、2ちゃんの攻撃をしてたわけ。ニコ動もこの文字がでるインターフェースが嫌だった。でも、最近、二コ動が政治改革の中心勢力になっているじゃない。笑い話ではなくて。
 wikiでドワンゴのこと調べたら、「2ちゃん限定で求人して、しかも、中卒または高卒ないしは、大学在学者は卒業の意志がないこという条件をつけた」とあったけれど、すげえいいなと思っていて。

 フェースブック、グーグルみたいに頭から、立派な格好をして、おれたちスタンダードだよっていうのは、日本の芸風にあわない。

 猫だましっぽく、漫画やアニメが世界を席巻したように、ちょっと違う感じで、生き延びる道が絶対あると思う。
 日本のケータイも、正攻法ではうまくいかない。

 でも、二コ動が変質してきたことに期待をかけてしまうんですよ。

 エスタブリッシュメントのじいさんたちはもうだめだと思う。エンジンが古い。

 下克上というか、いま、ばかにされている日本の文化から次のいいものが出てくるのではないか。
 特にネットに関してはいまばかにされているものが希望の中心かなと思います。

川上 そもそも、日本のケータイって昔から過小評価され続けていたと思う。
 孫さんが悪い。孫さんが「タイムマシン経営」というのをインターネット以前から引きずっていて、アメリカのモデルが常に最新で日本は数年後を追いかけていると思っている人が多い。
 ケータイは違う。ケータイを担い手は若年層なのに対し、世の中で発言力のある人はアメリカからITの流行が始まると思っている人ばかりなので、ケータイの産業はずっと過小評価されていた。
 いまiPadやアップルの電子コンテンツ販売が世界をリードしているように言っているが、音楽配信においても電子書籍においても日本のケータイのほうがマーケット規模は何年も前から大きかった。日本が世界最先端なんですよ。
 なんでそれがガラパゴスと言われなければならないのか。

 ガラパゴスだからどうかといった問題提起自体に違和感を覚える。
 日本は競争には負けるかもしれないが、そう簡単には勝負はつかないと思う。課金システム日本のほうがすぐれている。

夏野 iモードは、猫だましで作ったんですよ。最初にiモードをやり始めたときにはドコモの役員はだれも相手にしていなかった。こんなのうまくいくわけがないと放置されたので、勝手にビジネスモデルも端末も作れた。
 おとといサマーダボス会議から帰ってきたのだが、ガラパゴスといっても海外で通用しない。まずガラパゴス諸島の場所から説明を始めて、その後、イグアナとゾウガメの写真を用意して、そこでダーウィンが進化論の研究をしていたといって、「ああ、あれか」なんです。
 ガラパゴスといって喜んでいるのは日本のオヤジだけ。

 何で喜んでいるか。外で挑戦するのは大変なんですよ。英語も勉強しなければならないし、出張しなければならないし、リスクも大きい。
 やらない言い訳に使っているだけだと僕は思います。
 ただ、時々、ドコモが海外に行かないからメーカーも行かないという人もいるが、通信事業者は国内のマーケットだけを考えていればいい。免許制だから。でも、メーカーはマーケットがあるところを考えなければいけないので国内にとどまっていてはだめなんです。

 やればできます。やっていないだけです。

中村 夏野さんはケータイは何を使っているんですか。
 ガラケー(ガラパゴス携帯)です。iPhoneを使っている人はやせ我慢をしていると思う。最高なのはガラケー1台とiPad、それも3G版のiPadの組み合わせです。

岸 ガラパゴスという問題設定自体がおかしい。
 企業としてマーケティング、ユーザーニーズの把握が不足している。
 南米で日本のデジタル放送の方式が結構採用されている。でも現地でその方式を売ろうと一番がんばっているのは韓国メーカーなんです。日本の技術が入ってもビジネスをとるのは韓国。企業の側の問題だと思う。
(銅鑼)

中村 次の質問はJapan Coolは世界を制する?
 日本のpopカルチャーはこれからも海外でいけると思う人は○、そろそろダメなんじゃないかと言う人は×。
(岸だけ×)

岸 Japan Coolは世界を制するというのは単に影響力ということだったら可能性はあるが、産業として成功させるのは無理だと思う。
 アニメ産業は崩壊寸前で、音楽産業も収益がどんどん悪くなっている。
 そんななかでJapan Coolの定義を広げるべきだと思っている。これから世界で売れる日本の文化って、総合格闘技なんです。殴る蹴るだと日本より強いところはたくさんあるけれど、関節技は評価が高い。

川上 Japan Coolとアニメ、漫画に関しては言っている人が多いので、ネットのJapan Coolをどう思っているかを言いたい。
 実はtwitterやYouTubeといった世界で流行っているネットサービスって、日本で一番最初に流行ったんですね。まだ日本語化されていないうちにtwitterのアクセスは世界の1/3が日本人だったり、YouTubeもこのサービスができたばかりのときは米国の次にユーザー多かった。

 英語版の段階で日本のユーザーは世界で流行るネットサービスを見つけてきたという歴史がある。
 日本は世界の中でも、すごい特殊なネットにおける文化発信力を持っている。
 それはどこから来ているんだろうって考えると、日本って世界のなかでネットにつないでいる暇人が一番多いんですよ。ニートの人たちっていうのは、世界のほかの国では生活できないからネットにつなげないんです。日本ではなぜかネットにつないで毎日アクセスしているという人が大量にいる。

 そう考えるとニコ動って、日本の中で最もGDPに貢献していないユーザーを抱えているんじゃないかなと思っているんです。
 日本の中で最もGDPに一番貢献していない人たちは、日本の競争力に変わる可能性を持っているので、ニコ動は楽しみだと思っている。

茂木 日本人が「恥ずかしいなあ、隠したいなあ」と思っているものが一番外国人には魅力的なんだ。2ちゃんの英語版だってあるでしょう、4ちゃん? 

 大学とか立派に見える日本の組織ほどやばい。東大法学部が一番あぶない。一番のガラパゴス認定。
 二コ動とか2ちゃんはそういうことからデカップルしてやってきたからよかった。
 補助金をもらわなければならないような業界がやばい。
 これはガラパゴス認定。
 だから「こんなみっともないカルチャーがあってやばい」と思っているものほど国際競争力が高いんですよ。

古川 得意な領域じゃないので、発言はお譲りします。

中村 日本のコンテンツ産業の市場としてはどのあたりがいいと思いますか。
 
岸 ヨーロッパが親和性があると思っています。歴史や伝統を評価する土壌がありますから。ガングロとか、へんなものも真似するじゃないですか。

夏野 若者文化は全世界いけそうな感じがしてます。
 日本には本音と建前がありますが、中国のほうがもっと表と裏がありますから。本音と建前が分かれていないアメリカとかのほうがきつい。隠れてこそこそニコ動みているみたいな世界ができず、堂々とやっちゃうから面白くなくなっちゃう。

中村 ゲーム産業はどうなると思いますか?

夏野 過去の成功パターンがある業界ほど、過去に成功した人が多いので、ソーシャルメディアが出てきてもパーンと移れないんですね。パッケージメディアの作り方に慣れ親しんでいるので。ゲーム業界でもソーシャルとかが出てきて話題になっていますが、人も資本も含めてわっと新しい勢力も取り込むようなことができると、もっといけると思います。

中村 川上さん、ジャパンエキスポでブース出していましたけれど、何をしていたんですか。

川上 とりあえず、パリの日本人好きのフランス人をカメラに映してみんなで見ようという企画をやりました。日本人のための企画です。フランス人は喜んで出演してくれた。列をなして見世物になりにきた。
(銅鑼)

(KMDの学生の産学連携プロジェクトの研究成果紹介)
 
(Panavi=システムとフライパンが連携して各工程において、適切な温度と動作をナビする)
(きみっポイド=顔写真オリジナル3Dキャラに生成)
(音楽用拍手マシン「音手」=拍手マシンの生音響を音楽表現に利用、拍手マシンの動作で観客の拍手を操作)

 中村 これがわれわれKMDの開発しているものです(笑)。いかがでした?
 夏野 くだらなさがいいっすね(笑)。大学くらいしか、絶対に世の中で役に立たないもの研究できない。

 中村 第4問。2030年、どこでもドアは実現する?
(○=茂木、岸、他は×)

茂木 日本はリアルなものづくりをするしかない。googleなどはつくれない。
 外国に行って帰ってきて日本のコンビニエンスストアの店員の働きぶりに涙が出た。あんなにまじめに働いている人は外国にはいない。ものづくりの現場に行っても本当に一生懸命やっている。
 いいじゃないですか、ジョブズみたいなプレゼンができるCEOがいなくても。物言わずに日本はやってきたんですよ。ものづくりの伝統をうまくいまのITとむすびつけてものをつくるのが日本の生きる道かなと思う。
 弱ったといっても、まだまだすさまじいと思います、日本のそこらへんの基礎力は。

古川 メーカーのエンジニア、デザイナー、試作品を作っている方は、まだまだ冴えたものをつくっていますね。閉塞感があるのは、それを生かさなければならないマネージャーがすべてをつぶしにかかっているのと、いいものをつくる素材とか試作品まではつくるんだけど、それをプロデュースする人がいない。
 基礎技術を商品にしていくプロセスだとか、総合的にマーケティングするだとか、社会の中でそれをアピールするエバンジェリストみたいな人が少ないために、いいものがたくさん生まれているのに誰も知らず、成功するチャンスがないまま眠っているという状況がある。
 一生懸命アピール、プロデュースする人材がもっと生まれれば、まだまだ浮かばれると思う。

中村 ものづくりジャンルはいろいろあるが次に期待できる産業領域は何かありますか?

古川 昨日調べていて驚いたのは、40フィートコンテナの中にサーバー突っ込むというのがものすごい勢いで広まるということ。
 グーグルも、マイクロソフトもシリコングラフィックスもIBMもデータセンターを作る場合、建物を建てて、そこにラックを入れて空調設備を入れてサーバーを入れるというのはやめてしまって、40フィートコンテナ=海上コンテナにに1万1600台のサーバーを突っ込んで空調設備も入れて、移動するときは列車に200本載せて、平置きするとデータセンターができあがる。
 グーグルは(調整段階かもしれないが)、日本では岩手県と十勝平野にデータセンターをつくるらしい。ずらっとコンテナを並べると、あっという間にデータセンターができあがる。何テラバイトのアクセスもどんとこいというセンターがいきなりできてしまう。

 日本の場合、問題があってコンテナを3つ積み重ねると建物としての認可が必要。人が出入りする場合は消火設備を入れなければいけないなどの規制があって、この方式は日本では実現できないという馬鹿なことが起きている。

 できれば、シベリア北海道などの寒いところにサーバー置こうというのが世界の流れだから、チャンスなのだが。

 サーバーのバックエンドが日本にあると、アプリケーションの姿やサービスの質が大きくかわると思う。
 日本ではIIJがやり始めているが日本の政府関係者とコンピュータ関係者はみな無視している。
 世界の知らないところにサーバーが置かれてネットワークが切れたりしないように、日本の中にまともなデータセンター、データベースを置くことを考えるためにコンテナの中にサーバーを入れてばらまくのはいいかもしれない。

川上 どこでもドアって、できないというのが正しい答えだと思う。
 そうじゃないところでも、日本のものづくり精神生かせるところある。
 ニコニコ動画にアスキーアートという仕組みがある。コメントを書くシステムを利用して無理やり絵を描く遊びですが、細かいむだなこと、一生懸命やる。
 日本のものづくり文化はネットのなかにも表れている。
 小学生、中学生など小さい人にものづくりの大切さ教えたい。
(銅鑼)

(稲見昌彦慶應義塾大学KMD教授が2030年までに「どこでもドア」を作りたいと研究内容を説明)
(東大の舘暲先生と共同研究。テレイグジスタンス(遠隔存在感)。TWISTERの中に入ると360度めがねなしで立体映像が出てくる。30年後には触覚も加わる。リアルとバーチャルの境目を無くす。バーチャルとリアルを繋ぐデバイス=ロボットを使ったコミュニケーション、国際VR研究センターを設立)

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中村 第5問。サマーウォーズは勃発する?
 小説やアニメで描かれるようにネットの世界に大きな混乱はあるのか。
 ネットが混乱した、やっかいな世界になっていく=○、穏やかに平和に発達していく=×
(夏野、古川=×)

茂木 生き物の本質っていうのは、何が起こるか分からないっていうことです。毒が薬になる。生物にとって酸素も最初は毒だった。だから、ネットを怖がっている人は多い。旧来のアンシャンレジームの人にとって危険に見えるものはネット上にたくさんあるんですけれど、生命はその程度ではつぶれない。恐竜を絶滅させた小惑星の衝突だってあったわけだけれど、それでも生命はしぶとく生き残ってきた。
 有害サイトのアクセス規制をするって言うのも、アメリカだったら表現の自由と絡んでものすごい論争になるはずなのに、日本では教育委員会とかの人たちが、「安全でやさしいネット」みたいな絵に描いたようなくだらないことを言う。
 あんなものは関係なくネットの上ではことは起きるんですよ。命って言うのは必ずそれを乗り越えていく。
 サマーウォーズ、やったらいいんじゃないですか。でも、人間は乗り越える。それで古いものが消えたって、いいじゃないですか。

夏野 いろんなテクノロジーとか制度とか出てきても、人間社会の適応能力は相当高いと思っている。人間としては核爆弾のような適応できないものももちろん作り出すんですけれど、少なくともネットに関しては、人間が解釈してほかの人に影響を与えることはあっても、生命が危険になるような直接的なことはないわけです。
 サマーウォーズ勃発するが、それを理由にネットがどんどん危ないものになっていくというのは×だと思っていて、人間は適応していくと思うんです。そのうえで、さらにどんどん危ないものが出てくるんですが適応する。それが進化だと思うんです。

岸 いま、明らかに混乱している。混乱は当分続くと思っている。リアルの世界とのつながりをみるとそれは明らかだ。
 ネットが普及して世の中、よくなったか。たぶんよくなってませんよね。
 文化とかジャーナリズムに悪影響をもたらしていると普段から言っていますが、さらに、ネットは人間をバカにしていると思う。
 人間の知性とか行動の基準を下げている。
 リアルの社会でやっていることはネット上でもできます。でもネット上の場合はマス相手のサービスの基準、プログラムで作られたものに合わせてやらなければならないから、必ず、妥協する。リアルの世界で友達を作る場合、会って、話して気が合うなど、いろいろな要素があるはずなのに、SNSの場合、プロフィール登録して、それで友達を作っている。
 明らかに友達を作る基準が下がっている。

 リアルとの関係で見ると、ネットは必ずしもよくない。それは、サービスがまだ十分なレベルになっていないからだ。ネットは本格的に普及して10年。まだ10歳。
 混乱は当分続くだろう。
 ただ、時間がたって、もう少しカスタマイズされたサービスできれば、リアルの社会とのブリッジができると思う。

茂木 さっき2ちゃんの悪口言ったけれど、2ちゃんにいろいろ書かれたからね。ウィキペディアの俺の項目もひどいんだよ。けれど、2ちゃんやウィキペディアをつぶそうと思ったことはない。ネットで友達を作るのはリアルに対してどうなのか、みたいなことを言って、そういうことをする人を止めちゃいけないと思う。

岸 止める気はまったくなくて。ただ、リアルの世界と基準が違っているよね、とーー。

川上 リアルもネットも、人間にとって居場所だと思います。ネットが居場所ということがわからず、単なるツールとしか見ていない人がいる。でも、ネットにしか居場所がない人やネットが楽しいからネットを居場所に選んだ人がたくさんいるんですよ。その人たちの声は日本ではぜんぜん届いていないし、マスメディアにはあがってこない。
 それがネットの中で起こっている争いの原因だと思うし、これはいつかは爆発する。いやすでに爆発しつつある。

夏野 日本の政治家の人、マスメディアの人とかは、『甲殻機動隊を読むべきだと思います。甲殻の世界観は読んでいて好きなやつも、途中でわけがわからなくなるんですよ。どこまでがリアルでどこまでがバーチャルか。甲殻機動隊、これに尽きる。

(銅鑼)

中村 今年6月にデジタルサイネージジャパンというイベントを開き、3日で来場者が13万人だった。新しいメディアに関心が高まっている。
 第6問 デジタルサイネージは1兆円市場になる?

(茂木のみ○)

夏野 (PC、モバイルに続く)新しいメディアは出てくると思う。ただ、サイネージは、うさんくさい。
 議論している人が、既存のビジネスのサーバー屋さんとか、テレビのディスプレーを作っているメーカーとか、通信会社とか、要はサイネージが出てくると金になると思っている人が議論しているんです。

 ユーザー側の視点に立ってどんな役に立つかということがあまり議論されていない。
 情報を出す画面として今まで紙だったものがディスプレーになるというのはわかるが、サイネージの議論を聞いていると、情報を映し出すウインドウとしてのサイネージよりも、新しい広告メディアという文脈で語られることが多い。
 けれども、大容量の線を引いてコンテンツを流すより、人件費の安い人やとって、でっかいポスター貼ったほうが安く情報量も多いのではないかと思う。
 もっとユーザーサイドに立った付加価値を提示できない限り、1兆円には届かないと思う。

岸 スマートフォンがこれからどんどん普及する。個人は手元に画面を持っていますので、それと競合する。そのうえでさらに魅力のあるコンテンツとしてなにを提供するのというのが問題。画面ばかり増えるのでいまのままでは厳しい感じがする。

川上 進めようといって旗を振っている人や説明している人の話を聴いてもわくわくしない。理念みたいなものを感じない。大きな勢力の人たちがやっているので、それなりの結果はでると思うが、こういうのに日本の産業界が付き合って1兆円も出すかと言うと、こんなに景気が悪いのに無理ではないかなと思う。

古川 みなさん、使っているのに広がらないというジレンマがあります。今飛行機に乗るとエコノミークラスでも画面がついている。
 こういうシステムは六本木ヒルズでは6年間運用しているのだが、7時のニュースを再送信するのは禁止されているんですよ。いま、放送の世界との間には壁があって、サイネージ向けにコンテンツを制作しようとしても、事前に許可を取ってからじゃないと音楽の編集ひとつ始められない。いまは縛りのなかでものを作っている。この先、放送コンテンツの使用の許諾を得たうえで流すとか、蓄積したものを配布するとかができるようになれば環境は一挙に変わるんじゃないか。
 iPadが出たときにショックだったのは、「アメリカ人はこの時間にテレビを見るというのと、録画をするのをやめちゃったんだよ」とアメリカの友人に言われたこと。iPadにそんな機能、付いている?と言うと、アメリカにはhuluというサービスがあって、主要な放送局がネット経由でドラマなどいろいろな番組を配信するサービスを始めて、テレビは好きなときにいつでもみられるように変わったと言われてショックを受けた。

 そのようなってサイネージも、さまざまな携帯、iPad端末も自由にコンテンツが享受できるようになる。
 バックエンドにサービスのあるエンジンがついて初めてサイネージは大化けするわけで、そういうものを阻害している要因がある限りだめだろうなと。
 ウォルマートでは全店舗日本製のサイネージが動いているが、輸出するチャンスがあっても日本で運用する環境が作れないのは残念だ。

茂木 僕はいまこそ、ミルトン・フリードマンが読み直されるべきだと思う。徹底的な自由競争。
 規制だとか既得権益のなかで動いている間はだめだと思う。でも既得権益の外で動いている人も勝手にやればいいわけでしょう。
 はやくブレードランナーの世界に連れて行ってほしい。

中村 デジタルサイネージを推進している人たちがうさんくさいという話がありましたが、私はサイネージコンソーシアムの理事長をしています。確かにまだプレーヤーがはっきりしていなくて、これからだと思います。これを銭儲けとみるか文化とみるかで見え方がぜんぜん違うわけですけれど、いろいろ反省しています。

(銅鑼)

中村 旧来型メディアの話です。
 第7問。マスメディアは復活する?

(茂木、古川が×)

茂木 マスメディアは形を変えて出てくるとは思うんですが、その前にそれ以外のオルタナティブな人にがんばってほしいという意味で○にしました。
 さきほどhuluの話が出ましたが、テレビなんていつでもどこでもみられるの当たり前。対応が遅すぎる。
 
 マスメディアはとりあえずオルタナティブなメディアにつぶしてもらいたい。マスメディアはその後で復活してもらえばいい。

古川 取材をしたり、記事を書いたりするのにはジャーナリトズム魂がある人がたくさんいらっしゃるんだけれども、アウトプットのデバイスとしてのメカニズムに限界がきている気がする。
 新しいジャーナリストが新しいメカニズムのなかで生まれくることに期待したい。

 優秀な記者がいい記事を書こうと思っても場が限られてきたなかでメディアの形態をかえて、今の優秀なジャーナリスト、コラムニストに活躍する場を作っておくと再生するかもしれないが、いまのにマスメディアのメカニズム自体はさびついてきたと思う。

川上 これから、今の状態がよくなることはないと思いますが、マスメディアはそんなに危機でもないと思う。新聞やテレビが倒産とかまでいくには、いったい何十年かかるんだと思う。
 ネットが代わりになるかというと、今の日本の中心の50代以上の人が10年たっても20年たってもネットは使わないと思う。そうすると、世代交代が必要になる。だから、マスメディアは今後10年、20年は、経営的に衰えることはあっても今のような影響力は残ると思う。

岸 フラットに考えると、マスメディアがなくなることはない。どんどん衰退するが、そこで作る記事やコンテンツがいろいろな議論のベースになっているのは変わらない。
 何で経営悪くなっているかというと、やはりつくるものがつまらなくなっているからだと思う。ニュースはうそを書くし、テレビだってつまらない。けれども、徹底的にやばくなったら少しは変えるところがでてくるはずだ。まともなビジネスモデルで、なともなコンテンツ提供をするところが増えることに期待する。
 マスメディアが滅んだらだれがジャーナリズムや文化の役割を担うか。フリーの人がある程度、担うのだろうが、それには限界がある。そう考えるとマスメディアは復活すると言うことになる。

夏野 メディアは編集して記事作るという部分と、それをデリバリー、デストリビューションするという部分がある。
 どこの会社に言っても編集の部分は同じようなことをやっているんですよ。でも配信手段が分かれているわけですね。

 みんな同じことをやっているのだったら、統合したり、ネットに出したり、デリバリーチャンネル変えたらいいじゃないですか、と言うと、経営者の方はデリバリーチャンネルは変えられないという。
 
 ある新聞社の人に、もう勝ち目がないのなら、思い切って字小さくして分厚くしましょう。配達は首都圏だけにしてあとはネットにしましょうと言ったのだが、「そんなことできません」という。「雇用守る」とかが先にくると変化できないんです。メディア新聞はいろんな情報のなかからまともと思われる情報を抽出してコンテンツを作っている。こうした編集をやっている価値はある。必要と思う。けれど、ディストリビューションは変えるべきと思う。


中村 7月27日にデジタル教科書教材協議会が設立された。
 一方で田原総一朗さんが先月『デジタル教育は日本を滅ぼす』という本を出した。
 8問。デジタル教育は日本を滅ぼす?
(○は岸)

茂木 ポプラ社の経営幹部の中にデジタル教育がきらいな人がいて、それで出来た本だと思う。
 デジタル化なんて当たり前で、それよりも文科省が(教育現場を)がちがちに縛っている学習指導要領を何とかしてほしい。デジタル教育なんてちいさな話。
 そんなことよりも日本の教育を勝手に自由にやれるようにしてほしい。
 デジタル教科書になったら内容が膨大になりウェブにリンクも張るわけだから、教科書検定は成り立たなくなる。そちらのほうが楽しみ。

中村 いきなり本質に入ってきましたね。

古川 旧態然たるものにとどまりたいという勢力の一つであることは確かですね。
 書いてあることは非常にまともで、ゆとり教育がなにを生んだかとか、非常に正しいことがずっと書いてあり、最後の2ページくらいにデジタル教育まずいとある。
 だれがこのタイトルをつけたのだろう。

川上 デジタル教科書のことは良く知らないが報道をみると、それ専用のデバイスをどうするといったことが書いてあり、そこが気になる。ノートPCでいいと思う。専用のやつを作るというのはだれかそうしたい人がいるからかと思う。社会に出て使えない機器を覚えてもしかたがない。

 デジタル教育のスローガンがあること自体が嫌。ねじ曲がった方向にいくのではないかと心配している。

岸 デジタル化は当然。けれどそれは手段にすぎない。それで教育が変わることはない。
 教える側に問題があることはデジタル化でクリアされるわけではない。
 
 端末は、どういう端末でもいいはずで、特定の端末というのは論外だ。

夏野 議論するまでもない。戦国時代に鉄砲入ってきているのに騎馬で戦うみたいな話。そういうことを言っている人は早く引退してください。

(銅鑼)

中村 昨日、出た世界の大学ランキング。1-3位がアメリカの大学で東大は26位。慶応大学は200位以内に入っていない。
 第9問。慶應、東大はStanford、Harvardに勝てる?

 日本から世界に胸の張れるガジェット、文化生まれてるが、そこで日本の大学はなにかしたのか?

(勝てる=いない)

夏野 多様性の欠如です。日本の大学のあり方って日本の政府や企業のあり方と一緒なのだが、多様性を非常に嫌がる。
 慶應はちょっと変わっているが、それもSFCとKMDだけといううわさもある。
 一般的には多様性に対して拒否的です。
 日本企業が弱い理由もそれ。
 政府もそうだ。
 同じ釜の飯くって…というのでは食中毒で全滅ですよ。

 いろんな飯食ったやつとか経験をしたやつがいて、はじめてコミュニティーが強いのであって、その意味で多様性を確保しなければいけないのだが、その動きがあまり見えない。
 
 海外留学生の比率はMITが25%。僕が卒業したウォートンというところは33%。海外留学生比率が高いことは一つの競争力になっている。

岸 勝ってほしいという願望があるが、どうすればいいか考えてしまう。文科省をなくすだけではだめで、やることはいっぱいある。
 すごく自由化していろんな才能を集めることをこれからやらざるを得ない。
 真剣に取り組むところが一つでもでれば、だいぶ上位に行けるのではないか。


川上 ドワンゴという会社で、4、5年前にちゃんとしたITを教える専門学校つくりたいと思って調べたことがあるのですが、専門学校作るのが面倒なことがわかった。カリキュラムは自由に作れないし、机の数とか教育の本質に関係ないことが細かく決められている。あまり面倒くさいのでやめた。

 もしも大学がこんながんじがらめだったら、世界で競争するほうにエネルギーは割けないと思う。

古川 大学、大学院のチャートで何位をとるかというモノサシは無意味で、興味がない。それよりは世界に通用する人材を何人送り出したかが一番重要。その部分のものさしにこだわりたい。

 何人どこの企業に就職したのかとか、何人ノーベル賞をとったかなどではなく、光り輝く人材が何人出たかというものさしが必要だと思う。


茂木 タイガー・ジェット・シンみたいにいきなり段取りなしにアカデミックな議論できる人がいない。そういう覚悟や能力がない。
 日本の大学をワールドカップの代表みたいに筋肉質にするにはやはり新組織をつくるしかないんじゃないかな。
 文科省の大学なんていう枠組みだと箸の上げ下ろしまでいろいろいわれるから、勝手にやるのがいいのではないか。
 幕末の私塾のような感じで。

(銅鑼)

中村 第10問。政界再編はある?

岸 客観的に言えば来年3月がポイントです。年度末になって予算は通るが関連法案は通らない事態があり得、そこでなにかあるか。
 ただ、結論としては、大きな動きにはならないのではないか。

夏野 疲れましたね。よく考えたらどっちでも変わらなかった。去年も政権交代したが、なにも変わらなかった。

 政府には期待しない。自分で貯金をためて、円高のうちに海外に出す。これに尽きると思いますね。

 狂った人が間違って首相になって、いきなり国会議員は10年しかやっちゃだめとか、ものすごい変なことをやると、日本は急によくなります。

川上 政界再編は全然興味ない。興味があるのは日本再編があるかどうか。政界再編があっても日本が変わらなければ、関係のない話だから。
 日本は運がいい国と思っているので、なるようになるのではないでしょうか。

古川 政治には何も期待していないので、アカデミックな世界と企業がしでかすことを邪魔しないでほしい。
 民間のエネルギーが生きてこなかった。特にコンピュータの世界ではそうだったけれども、おそらくコンテンツやメディアの世界でも同じことがあったのではと思う。
 政治も官僚ももう少し関与をやめて、引いてくれるといいと思う。

茂木 明治維新でできた体制の賞味期限が切れたということ。
 東大は明治そのものだから。もういらない。
 霞ヶ関も明治。
 日本って本当に市民が力を持った経験がない。パワー・トゥ・ザ・ピープル(Power to the People)が実現できるか。
 日本はみんな文句言うんだけど、政府に何かしてくれという文句ばかり。
 ただ、レーガン大統領が言った「君たちにいいことできる政府は、悪いこともできる政府だ」ということが最近ようやくわかってきたようなので、期待したい。

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Comments

うpありがとうです。
生放送もタイムシフトも見られなかったので助かりました。

Posted by: | 2010.10.10 07:07 AM

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