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川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫)その2

Isetannahitobito
『伊勢丹な人々』

 川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫、2008年4月1日発行)を読んだ。

 本書によると、「伊勢丹は、1886年、神田明神下の旅籠町に、伊勢屋丹治呉服店として産声を上げた。呉服店時代からの歴史の長さで比べると、三越、高島屋、白木屋といった老舗に比べ、明らかに劣っていた。老舗というブランド力では、他の店に太刀打ちできなかったのである」
 「対抗手段としての差別化は、創業者である小菅丹治が、当初から努めて実践してきたことでもあった。その一例が、1909年に行った『帯の展覧会』だ」。
 
 「伊勢丹が神田から新宿に進出した時、すでに、三越、ほてい屋、新宿松屋、二幸といった百貨店が店舗を構えていて、伊勢丹は後発組みだった。しかも、駅から徒歩10分という立地は大きなハンディキャップだったという」。
 「ハンディを逆手にとって『常に独自性や話題性を発信し続ける』という命題を、自らに課す。それが伊勢丹の歴史なのだ。企業スローガンは『毎日があたらしい。ファッションの伊勢丹』」。

 本書によると「バブル景気も追い風となり、80年代までは、百貨店という業態は順風満帆の環境にあった」。
 しかし、バブルが崩壊。「物が売れなくなってくると、目先の売り上げを取るために、売れ筋を追いかけることに奔走する。特にアパレルが、週単位で売れ筋を迅速に追加投入するシステムを確立し始めたことが、この傾向を後押しするかたちとなった」。
 「特に大型ブランドでは、全国に同じような『売れ筋商品』が並ぶことになり、百貨店の同質化が進んだ」。
 「そしてついに百貨店で価格競争が始まったのである」。
 「『文化やライフスタイル提案』を謳って、新しい業態や売り場をつくって時代を先導してきた百貨店が、90年代に入って一気に変質してしまったのである」。

 90年代にチャレンジをし続けたかどうかが、百貨店のその後の成否を分けるのだが、伊勢丹はチャレンジを続けられた。それはなぜか。

 「おそらく表面的に斬新な売り場を設けたり、外部任せでかっこいいフロアをつくるという発想ではないところで、人が動いてきたからだろう」と川島氏は分析する。
 「90年代の伊勢丹の『顔』と言えば、現在は福助の代表取締役として名を馳せている(2005年の単行本刊行時)藤巻幸夫が火付け役を務めた『解放区』『リ・スタイル』『BPQC』。21世紀に入ると、巷では逆風下の挑戦と言われながら大成功を収めた『メンズ館』が挙げられる」。
 「いずれも、濃い人間たちの強い思いが結集して、生み出されたものばかりだ。伊勢丹出身で、今も業界内外で活躍している人材が多いことが、それを証明している」。
 「伊勢丹には、新しいことに果敢に挑戦する体質から、破天荒とも言えるほど個性の強い人材を活かそうとする地盤があるのだと思う。だからこそ、伊勢丹を離れて起業する、あるいは他企業で活躍している人材が、数多く存在するのではないだろうか」。
 「自分だけでなくチームとして、強い意志を持ってやり遂げようとする求心力も、企業の強みと言える」。

 本書では、「解放区」「リ・スタイル」など、90年代から21世紀にかけて注目された店を詳細に取り上げ、その成功の秘密を解き明かす。

 そして、その中でどのように伊勢丹な人々が醸成されたかを分析している。

 伊勢丹な人々を作り上げた要因の一つがが「55パーセント攻撃論」だ。
 「新しいことを提案するに際し、50パーセントの可能性があると思ったら上司に相談、55パーセントの可能性があると思ったら自分で判断し、勇気を持って実行する。ただ、後の45パーセントは自分で努力して100パーセントにもっていく」。 

 川島氏はバイヤーにも目を向ける。
 「バイヤーの資質は、『今』を読むことにあるのではなく、『次』を見ることにある。『今』から『次』の兆しをつかむ――そのクリエイティブなジャンプこそが求められる職種なのだ」。
 「しかも、『自分の好きなもの』ではなく『お客の求めるもの』を揃えなくてはならない。伊勢丹の顧客という枠組みを理解した上で、先を読むわけだから、難易度は高い」。
 「リ・スタイル」のバイヤーたちは「服が好きでたまらない。それを伊勢丹のお客につなぐことにこそ醍醐味がある。そんなバイヤー魂とも言えるものが、強烈に発信されている」。
 「『若い頃から海外出張には積極的に出す。年間で延べ400人は行っている。新しい挑戦をできるだけして欲しい』と・・・言うように、伊勢丹には、バイヤーを育成していく風土が長年にわたって根付いている」。
 「『濃い』バイヤーをどう育成・維持していくかは、“ファッションの伊勢丹”であり続けるための命題なのだ」。

 
 自他を厳しく律する伊勢丹の風土も大きい。
 「当時、『メンズ館』策定のリーダーとしてかかわっており、現在は執行役員営業本部MD統括部婦人統括部長の中込・・・は、トップから『覚悟はできているのか』と厳しく問われ、最終的にはゴーサインという理解がなされた」。
 「この『覚悟』に対する『理解』というマネジメントは、厳しく自他を律する考え方だと思う」。
 「多くの企業では、この『覚悟』ができないから、『理解』も示さない」。

 伊勢丹な人々は百貨店業界の関係者でなくても参考になる一冊だった。

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