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川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫)その1

 銀座三越が2011年9月11日、増床オープンする。
 ニュースリリースには次のように書いてある。
 三越が銀座に店を構えて80年。銀座三越は、2010年9月11日(土)に銀座・有楽町地区で最大規模となる百貨店に生まれ変わります。
 これまで、お客様から「 いつも混み合っていてゆっくりと買い物ができない」「売場が狭くて品揃えに偏りがあり、買いたいものが少ない」「休憩スペースやレストランが少なく、楽しい時間を過ごせない」等のご意見を頂戴することもあり、お客様に大きなご満足をいただくためには、サービス施設の充実や品揃えの強化はどうしても必要との思いを長く抱いておりました。

 そのような中、既存店舗および店舗隣接の駐車場スペース、銀行跡地、共同事業者様との一体化開発による「都市再生特別地区」計画が決定し、本館・新館を一体の建物として開発する運びとなりました。

(中略)

 新しい銀座三越は、「銀座ならでは」「銀座らしさ」にこだわった店舗づくりを目指し、「銀座を訪れる方々の価値観にお応えするには…」そして「お客様に『感動』していただくためには…」を深く考えてまいりましたが、それはまさしく小売業の原点である「おもてなしの追求」であり、それが店舗の目指すスタイルです。
 「おもてなしの追求」。それはお客様の一人ひとりの関心事にお応えすること。お客様にとって「わたしのために」を感じていただけるサービス、品揃え、環境を全館で追求し、お客様にとってなくてはならない店「マイデパートメントストア」になることを、銀座三越は目指しています。

 お客様像
 新・銀座三越は、・・・銀座来街者の行動スタイル、ファッション、関心事等を徹底的に分析し、イメージするお客様像をつくり上げました。それを一言で表すと「自分の考え方を持ち、本物本質を見極め、新しさと心の豊かさを求める大人」です。イメージするお客様像に合わせた店づくり、サービス、品揃え、環境を提供し、その価値を最大化することを目指しています。

 MD(マーチャンダイジング:品揃え)
 アイテム展開が基本
 品揃えの基本は「お客様の関心事に基づく品揃え」を行うことです。不特定多数に向けたブランド揃えではなく、百貨店の原点に立ち戻り、想定したお客様の生活シーンや関心事を深く掘り下げることにより、お客様の求める「アイテム」を導き出し、徹底的に追求します。品揃えをアイテム展開することとは、すなわちブランドブティックの展開を最小限にとどめ、展開アイテムの中に比較購買できる複数のブランドや銀座三越な
らではのオリジナリティある商品を配し、ブランドの垣根をなくすことです。

(中略)

 銀座スタイル
 アイテム展開、カスタマイズをMD戦略の基本に展開しますが、ターゲットである銀座来街のお客様に向けては、「銀座らしさ」「銀座三越ならでは」を実現いたします。
 それは銀座ならではという付加価値=「銀座フィルター」が、全館のMDに具体化されていることが重要です。「銀座フィルター」とは、●今あるもの、よくあるものだけど新たな気づき、再発見がある ●愛着を持ち大切に長く使い続ける、特別な思いを形にする ●旬や歳時記、季節感を大切にする ●人とのつながり、コミュニケーションを大切にする など、銀座三越ならではの感性価値を提供することです。
 「銀座フィルター」を最も象徴的に表現し、突き抜けた独自性のある売場を「銀座スタイル」とし、銀座三越が主体的に売場を構築、コントロールした自主展開を基本に、各フロアの最も視認性の高い場所で展開いたします。「銀座スタイル」は、銀座三越にしかできない、お客様に「新鮮さや買いやすさ」が感じられる象徴的な売場。売上規模で全館の約1割を計画しています。

(後略) 

 銀座三越概要
■ 店舗名: 株式会社三越 銀座店 
■ 所在地: 東京都中央区銀座4-6-16
■ 開業年月日:1930年(昭和5年)4月10日
■ 増床オープン日: 2010年9月11日(土)
■ 規模: 地下3階~地上12階
        (建物は地下6階~地上13階)
■ 延床面積: 約81,476㎡(現:43,111㎡)
■ 店舗面積: 約36,000㎡(現:23,248㎡)
■ 営業時間: 地下3階~地上8階/10階:午前10時~午後8時
      ※一部飲食店舗を除く
      銀座テラス(9階):午前10時~午後11時
      ※一部施設を除く
      11・12階 レストランフロア:午前11時~午後11時
■ 売上高目標: 630億円(オープン後1年間)
■ 従業員数: 約720名(うち社員約470名)
■ 総投資額: 420億円

 銀座三越の増床オープンが気になる。三越と伊勢丹が経営統合した成果が、どのようなものなのかを見ることができる試金石となる店だからだ。
 
 そんな関心もあり、川島蓉子著『伊勢丹な人々』(日経ビジネス人文庫、2008年4月1日発行)を読んだ。

 先に「文庫化にあたって」を読んだ。川島氏は次のように書いている。
 「伊勢丹と三越の統合は、一消費者から見ると、まったく異なるイメージの百貨店が一緒になるということで、まずは違和感が先立つ。保守性と革新力。老舗の伝統性と枠組みにとらわれない自由さ、堅牢な品格とカジュアルな上質感――そんな両社が持っている、真逆とも言えるイメージが一体化するということがなかなか想像できなかったのである」
 「しかし、その後、具体的な経営統合に向けてのニュースを耳にしたり、それぞれの社員の話を聞いたりするにつけ、あくまで両社の長所を伸ばす方向で経営統合を図っていく様子がうかがえる」
 「統合によって伊勢丹は、三越が持っている老舗ならではのブランド力、都内の好立地も含めて全国規模で展開されている店舗網、それに加えて突出した富裕層の顧客を視野に入れることができる」
 「三越は、伊勢丹が持っている“ファッションの伊勢丹”としての感度の高さ、独自の品揃えを組めるMD(マーチャンダイジング)力、豊富な知識をもとにブランドを超えた提案ができる販売力などを学ぶことができる」
 「百貨店はどのように競合していくべきなのか。私は百貨店の原点に立ち戻って考え直す時に来ていると思っている。長年培ってきた良い意味での敷居の高さと信頼・安心感、きめ細かい顧客へのサービス……これらを今の時代に適合させるかたちで新たにデザインしていくというプロセスを踏まなければ、消費者にとって魅力的な業態としていき続けることは難しいのではないだろうか」
 「実はそれを常に意識して戦略的に変わり続けてきたのが伊勢丹なのだ。統合によって、伊勢丹には深みが生まれ、三越には進化が始まる」

 三越を進化させる伊勢丹とは、どんな企業で、伊勢丹な人々とはどんな人たちなのだろうか。関心が高まった。

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