松岡正剛著『多読術』(ちくまプリマー新書)
松岡 正剛著『多読術』(ちくまプリマー新書、2009年4月10日発行)を読んだ。
インターネット上でブックナビゲーション「千夜千冊」を展開中の松岡正剛氏。氏の書棚は、2009年10月、丸善丸の内本店に設けられた「松丸本舗」に再現されている。
松岡氏がどのように本と向き合っているか、興味深く、この本を読んだ。
正直言って松岡氏の表現を100%理解することはできなかった。私が感銘した部分についてのみ、レビューしたい。
本について。
「本というのは、長い時間をかけて世界のすべてを呑み尽くしてきたメディアです」。
読書について。
「読書は何かを着ることに似ています」。
「本は食べてみないとわからない。・・・世界中の食材と料理の数を見て、その数に驚いて食べるのをやめる人がいないように、本と接するというのは、とてもフィジカルなことなんです。と、同時にむろんメンタルでもある」。
「食べることが出会いでもあるように、読書も出会いです」。
「無知から未知へ、それが読書の醍醐味です」。
「読書は他者との交際なのです」。
「読書は著者が書いたことを理解するためにだけあるのではなく、一種のコラボレーションなんです」。
多読術。
「多読って、単一な方法でたくさんの本を貪り読むというのではないんです。…スポーツの選手がいろいろの筋肉を動きやすくするように、読書のための注意のカーソルの動きを多様にする。…エクササイズやストレッチは、どうしても読書にも必要です」。
「ぼくは自分がつきあったり、師事したくなった人の本は必ず読むということを徹底するんです。これも実は多読のコツかもしれません」。
「著者というのは、実は自信ありげなことを書いているように見えても、けっこうびくびくしながら『文章の演技』をしているんです。…だから本というのは著者の『ナマの姿ではありません。『文章著者という姿』なのです。…そこには文体があって、なんらかの『書くモデル』というものが動いている。それをズバッと見るのが読解力のための読書のコツです」。
「多読術にとって大事なのは、本によって、また読み方によって、さまざまな感情やテイストやコンディションになれるかどうかということです。…どういう『ながら読書』をするかを、むしろマスターしてほしいと思う」。
「読書するにあたっては、書物に対してリスペクト(敬意)をもつことも必要です。馬鹿にしてものごとを見たら、どんなものも『薬』にも『毒』にもならない」。
「知人や友人に薦められると『渇き』がはっきりしてきて、かつ、謙虚になれるんですね。リコメンデーション(おススメ)で本を読む意義はとても大きいですね。…そういうふうに本を読んでいると、そのうち、知人や友人や先輩との会話の中で、本を介した会話ができること自体が、他の会話にくらべてうんと密度や質感をもたらしてくれるものだというふうになり、そういった会話を通して読書の事前エクササイズをしていたということなんでしょうね」。
「何かたくさんの本とネットワークしていく可能性をもった、いわば『光を放っている一冊』というものが必ずあるんですね。それをぼくは『キー本』とか『キーブック』と呼んでいるんですが、このキーブックをもとに読み進む」。
「さまざまな本の読書をまぜこぜにしながら、遊びや息抜きも読書でしていく」
多読「術」というと表層的な感じがするが、読書世界の広がりと奥の深さ、人生の楽しさを教えてくれる名著だった。
ハウツー本などと思わずに、ぜひ、手にとってみてほしい。
| Permalink | 0
« 佐藤尚之著『明日の広告~変化した消費者とコミュニケーションする方法』(アスキー新書) | Main | 池田紀行著『キズナのマーケティング~ソーシャルメディアが切り拓くマーケティング新時代』(アスキー新書) »
The comments to this entry are closed.
Comments