FPN、徳力 基彦、渡辺 聡、佐藤 匡彦、上原 仁著『アルファブロガー~11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社)その1
FPN、徳力 基彦、渡辺 聡、佐藤 匡彦、上原 仁著『アルファブロガー~11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社、2005年10月20日発行)を読んだ。
その内容を紹介する前に、「ブログ」についておさらいをしておこう。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると――。
ブログ (Blog) とは、狭義にはWorld Wide Web上のウェブページのURLとともに覚え書きや論評などを加えログ(記録)しているウェブサイトの一種である。「WebをLogする」という意味でWeblog(ウェブログ)と名付けられ、それが略されてBlog(ブログ)と呼ばれるようになった。
ブログの始まりは、自分が気になったニュースやサイトなどのURLを、寸評つきで紹介した英語のウェブサイトとされる。その後、Blogger、Movable Typeなどのブログ用のツールが出現し、本格的な拡大が始まった。
(中略)
現在、より頻繁に用いられている広義には作者の個人的な体験や日記、特定のトピックに関する必ずしもウェブに限定されない話題などのような、時系列で比較的頻繁に記録される情報についてのウェブサイト全般を含めてブログと呼称する。このようなウェブサイトの作成機能を提供するソフトウェアやサービスなどを指して呼ぶ場合もある。また、ブログの他にもSNSや口コミサイトを総称してCGMと呼ぶこともある。
ウェブサイトとしての体裁は主として管理者が記事を投稿する私的ニュースサイト、あるいは日記である。ブログを投稿する特定の方法に限定されないが、ブログ向けのソフトウェアやwebスペースがあり、それをダウンロードやレンタルして使えば、HTMLを知らなくても自身のブログとしてウェブブラウザから手軽に情報の発信・更新ができる。レンタルのものにはパソコン以外に携帯電話などモバイル通信端末のインターネット機能を用いた外出先などからの手軽な更新が可能な仕様のものも多い。それぞれの項目にはタイトルの付与が可能で、時間軸やカテゴリで投稿を整理、分類する構造となっている。用途は幅広く、個人の日記的なものから、手軽な意見表明の場として、時事問題などについて論説するものがある。また、企業やクリエイター集団が、対外的な活動日誌などという位置づけで自社公式サイト内でブログを公開している事も多い。
トラックバック機能などを通じて形成されるコミュニティを指してブログ界 (Blogosphere) とも呼ばれる。ブログの更新者は各界の著名人から一般市民まで様々であるが、彼らブログの更新者のことを一般にブロガー(blogger) と呼ぶ。
ブログについては非売品だが、坪田知己監修・日経メディアラボ編『進化するブログ~交差するマスメディアとソーシャルメディア』(2009年3月31日発行)が詳しい。
特に「第1章 日本ブログ史を振り返る」は日本のブログの普及過程と、現状のさまざまな問題について、詳細に分析しており、役に立つ。
一部を引用させていただき、日本のブログを考えるためのスタートラインとしたい。
本書によると、米国におけるブログの浸透には、2001年9月に発生した、米同時多発テロ事件が関係していると言われている。
「2011年9月11日、4機の旅客機がほぼ同時にハイジャックされ、ビルに激突あるいは墜落した未曾有のテロ事件は、多くの米国民に強い衝撃を与えた。そして、この事件について他人と語り合いたい、自分の意見を表明したい、という人々が次々とブログを立ち上げた」というのだ。
なかでも、「米国のブログ文化をリードしたのは、…ジャーナリスト、企業トップ、エンジニアら各界のエキスパートといった有識者たちである。政治、経済、産業から、エンターテインメントまで、さまざまな論評が文字通り縦横に展開されるようになり、ブログ百家争鳴ともいうべき状態が現出した」。
「こうした米国でのブログブームに対し、日本でも一部の先進ユーザーが反応していた」。後にブログソフトの定番となる「Movable Type(ムーバブルタイプ)」が2001年に誕生するが、これを使ってブログをつくるユーザーが現れたのである。
しかし、「一般的なネットユーザーにまで広まるには少し時間がかかり、日本への本格的なブログの上陸は、ほぼ2003年ごろと考えられる」。
2003年1月「はてなダイアリー」サービス開始
2003年12月「ココログ」、「livedoor Blog」サービス開始
2004年2月「mixi」、「GREE」サービス開始
2004年3月「ブログ人」(NTTコミュニケーションズ)、「gooブログ」、「ウェブりブログ」(BIGLOBE)サービス開始
2004年9月「Ameba」サービス開始
2005年1月「Yahoo!ブログ」サービス開始
「2005年10月、総務省は国内の主要なブログサービス登録者数の合計が473万人に達したと発表した。そして翌2006年の4月には、これが860万人になったとしている。…『インターネット白書2006』(監修:財団法人インターネット協会、発行 インプレスR&D)は、2006年の日本のインターネット人口を7361万9000人と推定しており、単純に計算すればネットを使う人の10人に1人はブロガー、というまでになった」。
「世界的にも日本は『ブログ大国』の仲間入りをする。米国のブログ検索サイト『Technorati(テクノラティ)』が発表したデータでは、2006年6月時点で、世界のブログのうち日本語のものが31%を占めていた(英語は39%)。そして翌年には英語を追い抜いて日本語が世界一になる」。
「だが、2005年になると拡大したブログコミュニティーにひずみが生じ始める。社会的事件の渦中にある人のブログや『問題発言』と見られるような意見が掲載されたブログにアクセスやコメントが集中し、サーバーの機能が低下したり、コメント・トラックバック欄の停止や削除、あるいはブログそのものの閉鎖などに追い込まれる、いわゆる『炎上』事件が続発する」。
「真剣に自分の意見をきちんとした形でネット上に発表しよう、という意気込みが、いつしか読者に責められる息苦しさに変わってしまう。そうして、ブログを閉鎖してしまったり、より気軽に意見を書き込める『Twitter(ツイッター)』などの一口ブログに移行したりする人が増加するようになったという」。
「一方で、もともと気軽に日記的なブログを書いていた人は、一部は『mixi(ミクシィ)』などのSNSに足場を移したものの、基本的にはそうした息苦しさを感じることなく増加し続けた」。
「日本のブログは、時間をかけて事実関係を確認しつつ丹念に文章を書き、自分の意見を表明していく少数の硬派なブログと、個人的な出来事や感じたことを思うさまつづっていく、大多数のゆるやかなブログとに急速に分化していった」。
日本にブログが上陸してからの5年間をどう評価し、今後をどう展望するか。本書は、ブログにかかわってきた識者6人にコメントを求めている(肩書きなどは本書の発行時点)。
はてな・伊藤直也氏 「ブログのようにコンテンツを伝えることに重点を置く集中型のメディアと、SNSのようなコミュニケーションに重きを置く分散型のメディアを併せ持ったようなサービスが実現できれば、大きなビジネスチャンスを生むのではないか」「日本が先行する携帯ネットをさらに活用することだ。…単に携帯にも対応する、というのではなく、そのプラットフォームとしての機能に注目するべきだ」。
ニフティ・前島一就氏「ブログとかSNSとか、ツールの名前を意識せずに、多くの人が発信した情報がストックされてくれば、すごいことになる。これまではツールの5年。しかし次の5年は中身の5年だ」。
会津泉氏「日本のブログは私小説的。…多くは身内同士のコメント付け、ほめ合いやけなし合いにとどまっているようだ。…今後、ネット社会やネット文化をより発展させていくためには、異なる立ち場、異なる意見が共存共栄できる仕組み、泥臭い意味でのコミュニティーが不可欠」。
濱野智史氏「日本のブログは…似たような興味や視点を持った人同士がつながりを持ち、意見を交わすことができる仕組みにはなったが、全体としてブロゴスフィアアの形成には至らなかった」「ネット上において、巨大なポータルサイトによる情報発信と、極限まで細分化した個人の情報発信、すなわち文字通りロングテールの部分との中間を担う存在としてブログが存在感を占めていけば、大きなビジネスチャンスにつながるのではないか」。
佐々木博氏「今、自分たちは情報化社会の次のステージに進めるかどうか、情報の取捨選択や判断の能力を試されているところだと思う、そうしたときに、一度自分が情報の発信者側に立ってみる、ということは非常に重要な経験だ」
久保田達也氏「自分を『開眼』させるためのツールとしては今後も機能していくのではないか」「ただ、同時に大学教授として若い学生たちと接していると、ブログよりもmixiなどのSNS、『前略プロフィール』のような自己紹介サイトの方が人気があり、ブログを使っていても長い記事を書くことは少なく、携帯メールのような1行程度の文章で更新しているケースが多い。学生たちに聞くと『重要なのはコミュニケーション』という答えが返ってくる」
twitterなどが勢いを増す中で、ブログが早くも転機を迎えていることは確かなようだ。ただ、ブログはその可能性をまだ十分に発揮していない。逆にtwitterやSNSも活用しながら、もう一度、ブログスフィアの形成を目指す、ブロガーたちの動きが必要なのではないだろうか。
そんなことを思い、ブログ最盛期のころのアルファブロガーたちの発言をチェックする必要性を感じたのだ。
それでは、『アルファブロガー』の中身に移ろう。
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