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変化を嫌うリーダーは去れ! 夏野剛著『夏野流 脱ガラパゴスの思考法』(ソフトバンククリエイティブ)

Natsunoryu
夏野流 脱ガラパゴスの思考法

 夏野剛著『夏野流 脱ガラパゴスの思考法』(ソフトバンククリエイティブ、2010年6月4日発行)を読んだ。

 日経電子版の前身であるNIKKEI NETのIT PLUSで連載されていた「夏野剛のネオ・ジャパネスク論」を書籍化したもの。
 IT PLUSの連載をちゃんと読んでいたつもりだったが、本で一気に読むと、忘れている記事もあったし、新たな「気づき」もあった。
 「本」という形態は捨てがたいと改めて思った。

 「はじめに」に本書の狙いが語られている。
 「恐慌や混乱、争い、経済ショックは、多くの場合、不自然な仕組み、合理性のないシステム、社会のコンセンサスを無視した強権、あるいは古い考えに固執するあまりに環境の変化に対応しきれなくなった『歪み』を原因として生まれる。そういう意味では、現在の金融恐慌と社会混乱は、人間社会あるいは社会システムが新しいフェーズに脱皮するためにもがき苦しむ時期なのだと捉えることができないだろうか。そのように考え、原点に戻っていろいろなことを見直してみよう」

 夏野氏がまず、メスを入れるのは企業だ。
 「マネジメントのリーダーシップが問われている。変化する市場環境、広がるグローバル市場、ますます重要になるビジネスモデル――。会社を組織を、どの方向へ走らせるのか、焦点を定め、限られたリソースを効果的に使い、結果を出す。…IT革命により業際があいまいになり、順列組み合わせ的にすべての可能性を追求することは不可能となった。数が多すぎるのである。マネジメントに求められているのは、思い切った割り切りと『選択と集中』だ」。
 問題は「そんな意識で役員をやっている人」が多数派ではないことだ。「まだまだ根強く残る日本の経年重視昇進システムは、幹部ほど長い期間その会社にいるという仕組みを作り上げてしまった。勤務年数が長い分、危機感は薄い。変革意識に乏しい。…どこか過去における会社への『貸し』(人生を会社に捧げて生きてきたこと)を、自分に役職がある理由だと思っている」。
 しかし、「IT革命後の今、ビジネス上の決断をするにあたり、昔のパラダイムは通用しない。昔の経験だけをベースにしていても判断はできない。変化する市場の動向、トレンドを『読み』、過去の経験を参考にしながらもそれに捉われることのない『決断』をしなければいけない。経験がないことに対して判断を下す時、経営者はどうするだろうか。当然いろいろな人に意見を聞くだろう。…経営判断ともなれば、相当真剣に、時間と労力をかけて意見をしてもらわなければならない。とすれば聞く相手は経営幹部の中に持つしかない。…つまり、現代の大企業では経営陣の多様化が必須ということになる」。
 「会社をよく知っており、長く勤めてきた人の知見・経験は大事である。しかし、全員がそうである必要はないはず」。

 IT、メディアにも切り込んだ後、再びリーダー論を展開する。
 「Changeはトップからしなければならない。社会体制というものはボトムアップで大きな変化を実現するのは難しい」。
 「平時には日本型システムは強い。…しかし、緊急時には弱い。とりあえず周りに合わせて動く、過去の延長線上に戦略を描く、内部の論理で仲間内だけで議論する――というのでは、市場の変化についていけない」。
 「高度成長期のシステムを長々とひきずっている日本では、リーダーは指導力よりも、人徳、性格、ウケなどが優先されることが多い。これは高度成長には誰がリーダーでもある程度の繁栄は『市場の成長』という形で保証されていたからである。しかし、この選び方では、方向を決めない、強くは導かない人をリーダーにする確率が高い。なぜなら、既存の仕組みを変えようとする発言や主張を行っている人は、必然的に構成員のウケが悪いからだ」。

 最終章でも、夏野氏は改革を嫌う現在の日本リーダーたちに苦言を呈する。
 「今の日本が低迷している最大の原因は、この20年で前の高成長時代のシステムを変革できなかったことにあると強く感じる」。
 「経済大国化の時代に形作られた終身雇用、年功序列、官僚主導、長期政権、サラリーマン社長、多様性欠如、ものづくり神話、外国語軽視などの特徴は今も根強く日本社会のシステムに根付いている。これらの特徴はすべて、右肩上がりの成長基調の中で、『みんなで成長し、みんなで困難を克服する』システムである」。
 「日本に足りないもの、それは変化、変革を積極的に受け入れようとする姿勢ではないだろうか。世界経済は、市場環境は予想以上のスピードで変化し続けている。特にIT革命以降のこの10年は、変化のスピードに拍車がかかっている。そんな中、変化を嫌い、過去となるべく同じように仕事をし、同じような政策を考えていては、状況についていけないことは明白である」。
 「しかし、日本のリーダー層、特に今現在政治や企業経営の中枢にいる政治家や経営者は、変化についていけない制度、仕組み、ビジネスを、なんとか延命させることを第一の目標にして懸命の努力をしているように見える」。

 「日本には期待の持てる点もたくさんある。まず技術。…次に人材の教育レベル。…そして資金。いまだに個人金融資産は1400兆円以上。文化もそうだ。アニメのようなオタク文化だけではなく、ファッションから伝統芸能まで、日本文化に対する世界の尊敬、憧れは大きな資産である。そして国内市場。目の肥えた、所得水準の高い、しかも競争の激しい国内市場は、世界に打って出る際に非常に有利なローンチパッド(発射台)になるはずだ。…足りないのはリーダーシップだけなのだ」。

 いろいろなことが書いてあるのだが、何よりも帯のキャッチフレーズが強く印象に残る本だった。
 「変化を嫌うリーダーは去れ!」

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Comments

夏野さんの本は、ある種のワンパターン。

リーダーシップ批判がスゴイのだけど、私も含めて、夏野さんの部下にはなりたくないと思う。

ドコモのように安定志向が強すぎる組織には、それなりに批判は当たっているけど、世の中にはリスクを取りたくない人間が大多数なんだから。

Posted by: chiki | 2010.10.01 12:23 PM

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