株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ著『ソーシャルストリーム・ビジネス~Twitter、Facebook、iPhone時代の消費者を巻き込むビジネスの新ルール』(インプレスジャパン)
株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ著『ソーシャルストリーム・ビジネス~Twitter、Facebook、iPhone時代の消費者を巻き込むビジネスの新ルール』(インプレスジャパン、2010年8月1日発行)を読んだ。
本書は2007年にリクルートが発足させた“メディアと技術に対する実証研究機関”メディアテクノロジーラボが行った実証実験をもとに、「ソーシャルストリーム」についてまとめた本だ。
「ソーシャルメディア」というと、「ユーザーがコンテンツや情報を作りだす」という側面が強調されてきたように思うが、、実際に今、注目されているのは「ソーシャルストリーム」という情報流通の側面ではないか。
本書はこの流れをしっかり分析している。
最近では、ユーザーが複数台のモバイルデバイスを活用するようになった。本書は「常にネットにつながっている新たな時代において、ソーシャルストリームこそが鍵となるであろう」という。
「ソーシャルストリームとは、ソーシャルな関係性(ソーシャルグラフ)の中を伝わる情報の流れを指す」。
本書は「ポータルサイトの時代」から「検索エンジンの時代」を経て、「ソーシャルストリームの時代」へと突入した、とネットサービスの進化を振り返る。
「この時代の特徴は、ユーザーがコンテンツや情報そのものを作りだすことに加え、その流れもユーザーが作りだすという点である」「クチコミ(バイラル)と呼ばれるこの現象は、リアルの世界でも起きるが、ネット上のクチコミは、そのスピードと広がりが桁違いである」。
「ソーシャルストリームにおいてユーザーは重要な役割を果たしている。ソーシャルストリームの流れを増幅するのも、せき止めるのもユーザーだ」。
「ソーシャルストリームが流れる場所、つまり、ユーザーがコンテンツや情報を作りだしたり、それを増幅したりする場所がソーシャルメディアである」。
「ソーシャルストリームに流れる情報やコンテンツは、ユーザーの視点から作られており、広告より共感・賛同が得られやすい。また、ソーシャルストリームは、ユーザーやブログやSNSで紹介する、つぶやく、コメントするといった、ユーザーの自発的なアクションが積み重なってできるので、企業やブランドがコストを負担しなくてもいい(もしくはコスト負担が小さい)」「反面、企業やブランドにとってソーシャルストリームはリスクでもある。それはソーシャルストリームが企業やブランドの側からコントロールできないためである」。
本書は、ソーシャルメディアを運営した経験からゼロからファン集団を形成するノウハウを公開。
さらに、ソーシャルストリームでの話題の伝播には、次のようないくつかのパターンがあることを紹介する。
1.パルスパターン 瞬間的に広がるが、すぐに収束するパターン
2.クオリティーパターン 瞬間的に広がり、限定したコミュニティーの中でしばらく持続するパターン
3.ブレークパターン 徐々に広がっていき、最高潮を迎え、静かに収束するパターン
4.その他 特にピークがないパターン
ある新しいサービスを投入した時に、そのサービスがものになるかどうかはソーシャルストリームのパターンから予想できるという。
「ブレークしてバイラル的に広がる兆候がある場合は、コストをかけて修正をどんどん行い、ユーザー数を増加させるべきだが、一過性の兆候である場合は、即時にサービス停止の判断をし、次の新しいサービスの企画検討に専念すべきである」。
本書は「ソーシャルメディアを構築する技術」をはじめ、ネットビジネスを手掛けるために必要なノウハウを惜しみなく提供している。
しかし、つかみどころのないソーシャルストリームをどうビジネスにつなげるかというノウハウは、既存のメディアにとっても役に立つ情報だと思う。
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