佐々木俊尚著『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』(日経ビジネス人文庫)
佐々木俊尚著『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』(日経ビジネス人文庫、2010年9月1日発行)を読んだ。
ブログ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、Twitterなどのソーシャルメディアには縁がないと言う人も「食べログ」のお世話になったことはあるのではないか。口コミのサイトまで含めるとソーシャルメディアはわれわれの生活に欠くことのできないものになっている。
そんなサイトを集め、紹介しているのが本書だ。
「はじめに」に佐々木氏は次のように書いている。
「これまで『何を買うのか』というような商品情報は、テレビや新聞、ラジオ、雑誌などのマスメディアを経由して集めるのがごく普通でした。しかしこれからは、そうした消費のための情報はすべてソーシャル化していきます。われわれの生活文化がどんどん高度化し、その結果として文化圏域が細分化していく中では、そうした情報をマスメディア経由で一元的に受け取るようなやり方は、もう間尺にあわなくなってきています」「そうした高度化して細分化した圏域に対応するかたちで、インターネットの中には細分化された圏域をきちんと捕捉することのできるソーシャルメディアがたくさん立ち上がってきています。これからはソーシャルメディアなしには成り立たないようになっていくでしょう。私たちの文化は、今そういう転換点に位置しているのです」。
カバーするジャンルは「おしゃれ」、「食生活」、「家探しや家具選び」、「エンタテインメント」、「レジャー」、「生活の悩み」、「人と人のつながり」。合計28のウェブサイトが紹介されている。
人気サイトには、必ず独自の工夫がある。
ネット上の人形を着せ替えて楽しめる「プーペガール」は「50枚まで重ね着できるようになっているので、…自分のファッションに近い感覚で着せ替えを楽しむことができる」のが特長。
「着せ替えアイテムを入手するには、仮想通貨のリボンが必要」。「リボンを獲得する…メインの方法は自分が実際にリアルの世界で持っているファッションアイテムの写真を撮影し、それをアップロードすること」なので、「リアルに所有しているファッションアイテムを確認することができ」、「そのユーザーがどのようなファッションセンスの持ち主なのかを感覚的に理解でき」る。それゆえに、「他のユーザーたちのコーディネートを学ぶこと」ができるのだ。
「食べログ」は「サクラと思われるクチコミは評価点数に加算」せず、「たくさんの店のクチコミを書いている人の評価は、より多く加点される」ようにして、組織票を排除している。
食べログの上手な使い方は「自分と舌が似ているお気に入りのレビュアーを見つける」ことだという。そうして「その彼や彼女が高評価している店を訪れれば、『ハズレ』になることはないでしょう」。食べログというシステムは「集合知であるのと同時に、自分とマッチする『個人』を見つけるソーシャルな場所でもある」。
インターネットで映画などのDVDを借りられる「オンラインDVDレンタル」を手がけるTSUTAYA DISCAS(ツタヤ・ディスカス)の「最大の醍醐味は、実はクチコミレビューにあります」と言う。
「ディスカスの『レビュー広場』というクチコミコーナーにレビューを書き込んでいる人は、5万人近く。レビュー数は合計47万件にも達しています」「ここに載っている優秀なレビュアーの記事は、きわめて質が高いことで有名です」。
「会員からレビュアーに対する評価も行われ、そのランキングは常時サイトに表示されています」。
国内最大のQ&A掲示板である「OKWave(オウケイウェイヴ)」。
「オウケイウェイヴにはこれまで約500万件もの質問が寄せられ、それに対して1700万件以上の回答が送られています。登録ユーザー数は約165万人に上っています」。
「90年代の企業のナレッジマネジメントは、社員の持っている『知識』をすくい上げるため、『自分の営業ノウハウを書き込みなさい』『自分の仕事のやり方を書いてファイルにしなさい』と社員に求めました。でもこのような方法では、社員は何をどう書いていいのかわからないし、『知識』をテキストにする方法も各自バラバラになってしまい、あまりうまくいきませんでした」
「しかし質問を広く募って、それに対する回答を書いてもらうという方法であれば、『知識』はすべて『質問・回答』というフォーマットで蓄積されるから、後から探しやすいというメリットがあります」「人々は『自分が知識データベースに知識を蓄積しているのだ』ということを認識することなく、ただ質問したり、それに対する回答を書いているだけなのです。でもそういう人々のごく自然な行いが、知らず知らずの巨大な知識データベース生成へとつながっていくのです」。
この本を読み、ソーシャルメディアは工夫次第で、社会のあらゆるジャンルをカバーしていくのだろうと確信した。
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