カーマイン・ガロ著『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』(日経BP)
スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
カーマイン・ガロ著『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』(日経BP、2010年7月20日発行)を読んだ。
「プレゼンテーション、メディア対応、コミュニケーションのスキルを教えるコーチであり、世界の有名ブランドを陰から支えている」カーマイン・ガロ氏が、アップルのCEO、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを分析し、「聴衆を魅了するテクニックの数々を初めて明らかにする」本だ。本書は「ストーリーを作る」「体験を提供する」「仕上げと練習」の3幕で構成されており、合計18のシーンで細かくジョブズのプレゼンのノウハウを伝授してくれる。
このなかで、プレゼンの大前提となるのがシーン3「救世主的目的意識を持つ」。
「ジョブズはコンピューターが作りたかったわけではない。人の可能性を束縛から解放するツールを作ること――それが、ジョブズの胸でもえつづける欲求である」。
「偉大なプレゼンターは情熱的なものだが、それは自らの心に従って行動するからだ。偉大なプレゼンターにとって会話とは、その情熱を他人と分かち合う方法なのだ」。
「コーヒー、コンピューター、iPod……なんでもいいのだ。大事なのは、世界を変えるというビジョンに突き動かされていること、『宇宙に衝撃を与える』というビジョンに突き動かされていることだ」。
「自分のサービス、製品、会社、主義主張に対する情熱がなければ、テクニックなど何の役にもたたない。コミュニケーションの極意は、情熱を心底かたむけられるものをみつけること」。
情熱があるからこそ、プレゼンの準備にも全力投球できる。
シーン15「簡単そうに見せる」では練習の必要性を唱える。
「ジョブズは自信を持って気楽にプレゼンテーションをしているように見える。少なくとも聴衆にはそう見える。その秘けつは……何時間もの練習にある。いや、正確に言おう。1日何時間もの練習を何日も何日もするからだ」。
「ゴルファーのビジェイ・シンは、毎日何千個ものボールをたたいてトーナメントの準備をする。オリンピックの金メダリスト、マイケル・フェルプスは毎週80キロも泳いで競技に備える。そしてスティーブ・ジョブズは、何時間も何時間も集中して基調講演の練習を行う。どの分野でも、スーパースターはささいなことまで運任せにしない」。
この二つをクリアしたうえで、テクニックが生きてくる。
シーン2「一番大事な問いに答える」
「聞き手は『なぜ気にかける必要があるのか』と必ず自問している。まずこの問いかけに答えてあげれば、聴衆を話に引き込むことができる」。
ジャーゴン(業界の特殊用語)やバズワード(一見、専門用語のようにみえるが、明確な合意や定義のない用語のこと)を使わずに、大事な問いにきちんと答え、話を聞くべき理由を明確にすることが必要だという。
シーン4とシーン8の考え方は似ている。
シーン4は「ツイッターのようなヘッドラインを作る」。
「1000曲をポケットに」など、簡潔で、「ユーザーの視点から書かれている」ヘッドラインだ。
これを読んでいて、コピーライターの糸井重里氏を思い出した。
西武百貨店が最も元気だったころの糸井氏のコピーには力があった。
「じぶん、新発見。」
「不思議、大好き。」
「おいしい生活。」
「ほしいものが、ほしいわ。」
コピーライターブームの時代もあった。われわれは糸井氏に学べばいいのではないか。
シーン8は「禅の心で伝える」。
「ジョブズは製品でもスライドでも、『すっきりシンプルに』をモットーにデザインを行う」。
「スライドをシンプルにすれば、注意は集中すべきところ、つまり、スピーカーへと集まる」。
18のシーンを学び、すっかりプレゼンの天才に手が届く気になった。
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