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冒頭とラストシーンがすばらしい! 映画『シチリア!シチリア!』

 東京・銀座のシネスイッチ銀座で、映画『シチリア!シチリア!』を観た。心温まる大好きな映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品と聞いて、期待していたが、期待以上の映画だった。

 冒頭のシーンとラストシーン、その間のドラマが本当にうまく構成されている。「これぞ映画だ」と言える作品だった。

Sicilia_sicilia
 
 公式ホームページの次の説明がこの作品をとても簡潔に説明している。
シチリアを愛し、シチリアに愛され、激動の時代を生き抜いた家族の物語
 豊かな自然にあふれたシチリアの町バーリアで、たくましく生きる牛飼いの一家。次男のペッピーノは、幼い頃から大人たちに交じって働き、学校に行く暇もなかったが、毎日が冒険だった。
 やがて時代は第二次世界大戦に突入し、ペッピーノはそのつぶらな瞳で、激変する時代を見つめる。戦争は終わり、成長したペッピーノは、今度は自らの激動の人生へと分け入っていく。
 希望に輝く瞳が美しいマンニーナとの許されぬ恋と駆け落ち、正義感に燃えて入った政治の世界、そこで見た世の中の闇、マフィアと結びついた権力との闘い、老いてゆく父との絆、子供たちへの愛──幸せな時も悲しみの日も、いつも抱きしめてくれるのは家族だった──。

 1930年代から80年代までの世界のトピックを活き活きと織り交ぜながら、ある家族の愛と絆、彼らを取り巻く様々な人々の人生模様を描き切った『シチリア!シチリア!』。
 どんな時も前を向いて生きようとする彼らに、胸を熱くせずにはいられない。彼らの人生は、時代を越え、国境を越えて、困難な時代に生きる私たちに、ありったけの勇気を手渡してくれるのだ。


 ペッピーノの父、チッコ・トッレヌオヴァ(やたら歯が強い!)から、ペッピーノの息子、ピエトロ(独楽が上手で映画が大好き)までの親子三代の50年間にわたる家族のドラマ。

 すばらしい冒頭のシーンについて聞かれたジュゼッペ・トルナトーレ監督がこう答えている(パンフレットより)。
 「この作品は、人の一生を追ったとてもリアリスティックな物語です。だから観客はどうしてもストーリーを追うことに集中してしまう。でも私は、それだけの要素で映画を観てもらいたくないという思いもありました。それがああいう詩的なショットの形となって表れたのです。ある意味息抜きというか、ほかの現実的な描写から観客をふっと解放するよぅな瞬間をもたらしたかったのです」
 
 現実的な描写すらしっかりできない映画監督が多い。こんな遊びは映画を本当に愛している監督だからできるのだと思う。

 映画の構成や場面転換について聞かれた監督の次の言葉も印象的だ。
 「時間の不在というものを描きたかったのです。たしかに50年にわたる歴史ではありますが、私にとってその時間の観念は、子供が煙草を買いに行く時間に等しい。つまり時間はないに等しいというのがこの映画で言わんとしている哲学です。1世紀などという時間はツバを吐くような瞬間で終わってしまうものですよ」

 ラストシーンで50年が「夢の時間」になり、親と子の二つの時間が重なる。
 青い空と褐色の街が印象的だ。

 この映画は、シリアスな問題を描きながらも、監督の温かい視線が常に感じられる映画だった。

 二重丸!

CAST
フランチェスコ・シャンナ
マルガレット・マデ
アンヘラ・モリーナ
リナ・サストリ
サルヴォ・フィカッラ
ヴァレンティノ・ピコーネ
ガエタノ・アロニカ
ルイジ・ロ・カーショ
ミケーレ・プラチド
ラウル・ボヴァ
STAFF
監督・脚本: ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽: エンニオ・モリコーネ
撮影: エンリコ・ルチディ
美術監督: マウリツィオ・サバティーニ
衣装: ルイジ・ボナーノ

製作年:2009年/製作国:イタリア
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館/配給:角川映画/:©2009 MEDUSA FILM
カラー/2時間31分/9巻/4126m/スコープサイズ/ドルビーSRD

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Tracked on 2010.12.25 05:19 PM

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