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小黒一正著『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)~迫りくる危機を分かりやすく解説

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2020年、日本が破綻する日
 小黒一正著『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ、2010年8月9日発行)を読んだ。
 センセーショナルなタイトルだが、本書を読むと、一刻も早く手を打たなければ破綻の可能性が極めて高いことが、説得力を持って語られている。同時に破綻の回避策の具体的な提案もある。

 病名や症状が明らかで処方箋も提示されているのに、政治が動かず破綻の日を迎えるのか。政治を動かさなければいけない。

 第1章 財政破綻はいつ起こるのか?
 「いま欧米を中心に日本リスクに注目が集まっている。公債(Debt)、デフレ(Deflation)、人口動態(Demography)、防衛(Defense)、司令塔なき民主主義(Democracy without leadership)の『5D』リスクだ」。

 「1998年まで、先進国の中で最も財政が悪い『劣等生』はイタリアであった。それが99年を境にその地位は日本に変わった」「OECD(経済協力開発機構)によると、98年の一般政府における金融債務残高(対GDP)は、アメリカが64.1%、イギリスが52.5%、ドイツが62.2%、フランスが70.3%、イタリアが132%、日本が113.2%であった。これが2010年では、アメリカが92.4%、イギリスが83.1%、ドイツが82%、フランスが92.5%、イタリアが127%であるものの、日本は197.2%と突出して財政が悪化している」。

 国の総予算のうち「最も大きな比重を占めているのは、全体の38%を占める『国債費』78.9兆円である。すなわち、国の総予算207兆円の4割ものマネーが借金返済に回っている」「次は、全体の33%を占める『社会保障関係費』68.5兆円であり、9%の『地方交付税交付金等』、5%の『財政投融資』が続く。これらは、年金・医療・介護・生活保護などの社会保障給付や、税収の少ない地方公共団体の行政サービスを維持するための財源、また、民間では供給できない長期・固定の貸付の原資となるものであるから、その削減は容易ではない」。
 
 「増税せずに国の借金をなくすには44.3兆円の予算を削減する必要がある」「仮に31.1兆円の『その他』を全て削減しても、44.3兆円の借金をなくすことはできない状況にまで、日本財政は悪化しているのである」。
 ※公債金収入=借金44.3兆=一般会計歳出92.3兆円-(税収+税外収入)48.0兆円
 ※「その他」31.1兆円は、公共事業関係費8.4兆円、文教及び科学技術振興費5.3兆円、防衛関係費4.8兆円などから構成される。

 「『増税をせずとも、国の総予算207兆円の効率化・削減で、借金返済に必要な予算は簡単に捻り出せる』という議論は大きな幻想であり、誤りである」と小黒氏は言い切る。

 家計貯蓄と一般政府債務の2035年までの推移の試算によると、「2010年に家計貯蓄に対して70%を占めている一般政府債務は、毎年3%弱のスピードで増加していき、2022年には100%を超過する」「今後、少子高齢化がさらに進展し、景気低迷や雇用情勢の悪化などの要因が重なれば…仮定よりも速いペースで家計貯蓄が低下し、政府の借金が家計貯蓄を食い潰す時期はもっと早まるのだ」。

 「政府の借金が家計貯蓄を食い潰す過程で何が起こるのだろうか」「まず、政府は国内から借金ができなくなる」「企業も国内から資本を集めることが難しくなり、海外から十分なマネーが国内に供給されない限り、国内金利が急騰するシナリオが濃厚となる」「金利が急上昇すると、国債価格が大幅に下落するから、金融機関は国債という大量の不良債権を抱える可能性があり、最悪のケースでは、自己資金が欠損・減少し、金融危機が再燃しかねない」。

 「財政破綻を回避するため、できるだけ早期に財政再建を進める必要がある」のだが、巷には、財政再建の障害となるさまざまな誤った議論があるとして、小黒氏は、この後、一つひとつ、そうした議論の誤りを指摘する。

 例えば。
 「景気が回復するまで、財政再建を進めるのは妥当ではない」という議論。
 「いまから景気が回復し始めて、金利が1993年の5%台まで上昇すると、単純計算で、利払費は約4倍の29兆円まで膨らみ、20兆円近くも増加する(消費税1%=2.5兆円で消費税8%分に相当)」「『景気が回復すれば、財政再建しやすい』というのは、財政がそれほど深刻でない段階の話であり、ここまで財政が悪化した現在の日本には当てはまらない」。

 論拠は一つひとつ数字を使って示しており、説得力がある。
 
 第2章 債務超過の日本財政
 直近の国のバランスシートをみると、資産・負債差額は▲283兆円となっている。
 「つまり、国は巨額の債務を抱えているのみでなく、すでに『283兆円の債務超過』となっているのだ」「これが民間企業であれば、通常、債務超過となった段階で倒産してしまうケースも多い。しかし、債務超過でも国が破綻しないのは、政府は国民から強制的に税を徴収できる権限、つまり『課税権』をもつからである」。

 問題は、「政府のバランスシートに計上されていない巨額な債務がある」ことだという。それが「社会保障(年金・医療・介護)が抱える『暗黙の債務』である」「いまの公的年金は、老齢世代が必要な年金を現役世代が支える『賦課方式』という仕組みを採用しているが、医療や介護も老齢期に支出が集中し、その支出を現役世代が支える仕組みになっており、実態としては『賦課方式』と同じだ。だから、いまの医療や介護も、年金と概ね同じ構造となっており、暗黙の債務を抱えているのだ」「一部の専門家は、対GDP比で年金の債務が150%、医療・介護が80%で、合計230%と推計している。…これらの債務は、GDPを500兆円として、年金が750兆円、医療・介護が400兆円で、合計1150兆円となる」「バランスシートに、社会保障の暗黙の債務1150兆円を加えると、国は280兆円の債務超過ではなく約1430兆円もの債務超過になってしまうのだ」。

 この暗黙の債務を減らすために、年金で実施されたのが支給開始年齢の段階的引き上げだ。「支給開始年齢の引き上げは、見かけ上、増税ではないが年齢別課税の一種となって」いる。「この年齢別課税は、かなり不公平な課税方法である。大雑把にいって、60歳から年金をもらえた幸運な世代は課税ゼロで済むが、65歳からもらうはめになった世代は4年分の年金(60歳から64歳)を課税されたことになるからだ」。

 消費税増税には敏感に反応するのに、年金支給年齢の引き上げに対しては目立った反対がなかったような…。目先のことばかり気にする「朝三暮四」のようだ。(^_^;)

 「このような様々な方法を活用して、政府は債務を圧縮しようとしているが、結局のところ、依然として、社会保障がもつ暗黙の債務は若い世代や将来世代を中心に押し付けられているのが実態だ」「暗黙の債務はGDPを500兆円として、1430兆円近くもあるが、このほとんどを30代や20代などの若い世代、あるいは将来世代に背負わせるのが、公平といえるのか」。

 第3章 「埋蔵金」で問題は解決しない。
 日本財政をめぐる危機的な状況の「背後には、急速に進む人口減少や少子高齢化があり、それに対応できていない財政・社会保障の問題がある」「これまでの財政・社会保障システムは、人口増を前提に構築されてきたものが多いが、これらがすでに限界にきているならば人口減を前提とするシステムに再構築しなければならない」。

 「総人口に占める65歳以上の人口比を『高齢化率』というが、…2010年に23%であった高齢化率は、2050年に40%にまで上昇する。総人口は2008年の1.27億人をピークに減少し、2050年には総人口は0.95億人まで減少する。…2010年時点で4人に1人が高齢者(65歳以上)であった社会が、40年後の2050年には、2.5人に1人が高齢者、つまり社会の半分弱が高齢者になる」。

 「高齢化率が7%を超えると『高齢化社会』、14%を超えると『高齢社会』という」「高齢化率が20%以上の社会を『超高齢社会』という。…日本は世界のフロント・ランナーとして最も早い段階に『超々高齢社会』に突入していくのだ」。

 2050年に半分弱が高齢者…。日本はどうなってしまうのだろう。
 財政は超高齢化に耐えられるのか。

 「75年度にはわずか給付費12兆円、保険料10兆円に過ぎなかった社会保障予算は、高齢化の進展に伴い、2007年度には給付費91兆円、保険料収入57兆円にまで急速に膨張した。そして、給付費と保険料の差額は75年度の2兆円から2007年度には34兆円まで急増したが、この差額は主に国や地方の公費負担で賄っているのが実情だ」「今後の超高齢化に伴い、この公費負担は毎年約1兆円ずつ増加していき、2011年度には40兆円、2015年度には43兆円、2025年度には54兆円と、急増していくことが見込まれる」「ピーク時の2055年度は71兆円にまで膨らみ、2011年度と比較して31兆円(消費税12%分)増加する」「つまり、消費税を現行の5%から17%に引き上げ、その増収分を社会保障の安定財源として活用すれば、ピーク時の社会保障予算に必要な公費負担も賄える試算となる」。

 「このように毎年約1兆円のスピードで膨張していく社会保障予算は、一般会計の他の政策的予算を圧迫し、将来の成長を担う投資を蝕みつつある」。
 「高齢化の進展に伴い、1975年度に一般会計予算全体の18.4%を占めるに過ぎなかった社会保障関係費は、99年度には20.1%、2009年度には28%にまで達しており、引き続き膨張していくことは確実だ」。
 「国の借金利払いを含む『国債費』が一般会計予算全体に占める割合も、75年度の4.9%から、2009年度の22.9%に急増している。この原因はかつてのバブル崩壊後の景気対策や公共投資の拡大も含まれるが、いまやその最大の原因は社会保障関係費の補填のため発行している赤字公債の累積だ」「というのは、現在の社会保障給付費の補填の3~4割は税収で補うことができず、この不足分が赤字公債の発行で賄われ、ツケが将来世代に先送りされているためである」。
 「そのツケは『聖域なき削減』という形で、その他の政策的予算にも回されている」「この予算の中には文教予算や公共投資といった投資的側面をもつ予算もあり、…あまりに極端な削減は、将来の経済成長を押し下げてしまう恐れがある」。

 人口減少対策として民主党はこども手当てによる内需拡大を目指しているが、本書の分析では、こども手当では、問題の解決にはならないとしている。人口減少の主因が「女性が出産・育児で失う『就労の逸失所得』だ」からだ。「女性が正社員として就労し続けたケースと、出産・育児のために退職し、その後パートタイムなどとして就労するケースとでは、退職金算定も不利となるから、1億円以上の差がつく」「余程の『超』巨額な子育て支援でない限りは『焼け石に水』で、人口減少は脱出できないのだ」

 第4章 縮む日本経済、進む世代格差
 「いま各世代の受益と負担の構造をみると、将来世代は8309万円もの、20歳代は1107万円、30歳代は833万円、40歳代は172万円の負担超過である一方、50歳代は989万円、60歳以上は3962万円もの受益超過となっており、将来世代と60歳以上世代との世代間格差は1億2271万円にも及んでいる」。

 第5章 「崩壊する社会保障」の再生プラン
 「世代間格差を引き起こす主な要因は2つだ。1つは、現役世代から老齢世代への移転、年金・医療・介護といった『賦課方式の社会保障』だ。もう1つは、将来世代や若い世代へのツケの先送りである『財政赤字』だ」。
 前者については「事前積立」の導入で解決できるという。
 「第1期には16.7%である高齢化率(つまり若者5人に対して高齢者1人の人口比)が、この期の若者が高齢者となる第2期には25%(つまり若者3人に対して高齢者1人の人口比)にまで上昇するとしよう」『年金・医療・介護を合計した、老齢世代1人あたりの社会保障給付費が1年あたり400万円で、その費用は現役世代の負担で賄われるとする」「このような前提で、第1期と第2期の現役世代の負担(保険料)を試算」「第1期は、高齢者1人を若者5人で支えるから、若者1人あたりの負担は1年あたり80万円」で、「もし現役世代1人あたりの年収が500万円とすると、第1期の保険料は16%」になる。」「第2期は高齢化の進展により、高齢者1人を若者3人で支えることになるから、若者1人あたりの負担は1年あたり133万円」となる。「第2期も現役世代1人あたりの年収が500万円とすると、保険料は27%」に上昇してしまう。
 事前積立の考え方は以下の通りだ。
 「第1期の『移転』(80万円)が『少なすぎ』で、第2期の『移転』(133万円)が『多すぎ』と言うだけの問題に過ぎない」「80万円(保険料16%)と133万円(保険料27%)の平均は106.5万円。これは保険料で21.3%」に相当する。「あらかじめ第1期の保険料をおおむねこの21.3%の水準まで引き上げておけばいいのだ。そして、この引き上げで得る増収分(現役世代1人あたり26.5万円=106.5万円-80万円)を高齢化の進展に備えて『事前積立』しておく。他方、第2期の保険料は、積立金を取り崩し、第1期と同じ21.3%の水準まで引き下げてあげればよいのだ」。

 第6章 いまこそ世代間の公平を実現せよ
 「いまの若者の負担を軽減するには、中高年世代が追加負担をせざるを得ない。負担が増える人々は、理屈の上ではそれが『公平』だと分かっていても、やはり自分たちが『損』をするという思いにとらわれ、抵抗を感じるだろう」「現在の社会保障制度によって最も『損』をするのは、まだ選挙権さえもたない(あるいは生まれてさえいない)将来世代である。その世代が不利益を被らないような意思決定を行うのは難しい」「このような民主主義の弱点と現行憲法の欠陥を克服し、損得勘定をめぐる世代間の対立などを防ぐためには、いかなる社会情勢になろうとも『公平』を維持するだけの強制力をもつ法律を、あらかじめ用意しておくべきだろう。…それが、…『世代間公平基本法』だ」。
 「この基本法には、その目的、実現に必要な枠組み、工程表などを盛り込むことになるが、その中でも特に重要なのは、まず『世代間公平委員会』を設置することである」「『受益』と『負担』の一方を政治が決め、それに合わせてもう一方の水準が公平になるよう調整するのが世代間公平委員会の役目だ」。

 「少子高齢化が進展して新たな財源が必要となるたびに、『どれだけ借金をするのか』『何を削って社会保障に回すのか』という議論が巻き起こり、政治的な利害対立を招くことになる」「これを解決するためには、あらかじめ社会保障のベース財源(公債を除く)を1つに決めておくべきだろう」。

 「少子高齢化が進展し、国際競争が激しさを増す中、活力を失いつつある日本経済に残された課題は『成長戦略』だ」。しかし、「日本全体のエネルギーを『成長戦略』に傾注するには、まずもって、財政・社会保障の再生が成し遂げられている必要がある」。

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