« 映画『ソーシャル・ネットワーク』(The Social Network)~フェイスブック創業者の赤裸々なドラマ | Main | 小黒一正著『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)~迫りくる危機を分かりやすく解説 »

野村総合研究所情報・通信コンサルティング部著『IT市場ナビゲーター2011年版』(東洋経済新報社)~2007年版以降、中身がどう変わったか

Itsijounavigator
IT市場ナビゲーター2011年版
 
 野村総合研究所情報・通信コンサルティング部著『IT市場ナビゲーター2011年版』(東洋経済新報社、2011年1月5日発行)を読んだ。この本は2007年版からずっと読んでいる。第2章ネットビジネス市場、第3章モバイル市場(2008年版まで携帯電話市場)、第4章ブロードバンド市場、第5章放送メディア市場(2008年は放送・コンテンツ市場、2007年は放送市場)、第6章ハード市場は市場規模の変化をみるのに役立つが、序章、第1章「これから情報・通信市場で何が起こるのか」は毎年のトレンドを紹介している。

 そこで2011年版だけでなく、2007~2010年版の序章、第1章もレビュー、この5年間のIT市場の変化を追ってみたい。

 2011年版の序章のタイトルは「ICT市場の閉塞打破に向けて」。
 「1990年代中盤から市場の成長をリードしてきたネット(ブロードバンド)と携帯電話サービスの普及は、数量視点では、ほぼ上限に到達した」「ICTそのものの普及を目的とした事業展開ではなく、環境、高齢化、社会インフラの老朽化対応といった課題解決に貢献するため、交通やエネルギーなど他の社会インフラ産業との同期、業際領域での連携など、『コーディネーター役』としてのICTの役割に活路を見いだす時期と考えられる」

 2010年版の序章のタイトルは「業際・融合領域を模索する転換期のIT市場」。
 「量的な『普及』を軸とした成長シナリオは、非常に期待しにくい状況にある」という点は2010年版ですでに指摘している。
 しかし、2010年版では、環境、高齢化といった社会の大問題の解決のためのICTというよりは、ICT基盤の上で展開されるさまざまなコンテンツやアプリケーションに焦点を当てていた。
 「ネットサービスの『普及』が一巡したことを受けて、これらの基盤の上で、非常に短期間に新たな産業や企業が次々と生み出されてきた。放送や金融など、ITにとっての隣接領域も、同様に有望領域となっている」「今後、中期的な視点でIT市場の成長シナリオを見通すには、『新たな産業の育成』と『既存産業の業際見直し』という2つの視点に着目する必要がある」。

 2009年版の序章のタイトルは「転換期のIT市場」。
 2010年版の序章とほぼ同じ内容だった。(^_^;)

 2008年版の序章のタイトルは・・・これまた「転換期のIT市場」。
 こらこら、2010年版と同じ内容じゃないか。(-゛-メ)

 2007年版も「転換期のIT市場」であまり変わらない。
 2011年版は、久しぶりに「公的なサービスへのICT利用」と言う新しい視点を打ち出したことが分かる。

 第1章は、同じということはあるまい(電子書籍で販売して、それ以降は、変わったところだけ、安い値段で売ってほしい、という気分になってきた)。

 逆に2007年版から。
 1.1 Web2.0の潮流:情報大航海時代の羅針盤となるブログ・SNSという個人メディア
 「ブログとSNSの利用者数は、我が国では2004年頃から急増し始め、2006年3月末現在の利用者数は、ブログが868万サイト、SNSの登録が716万登録である(総務省発表資料)」「NRIでは2011年度末までに、ブログが1813万サイト、SNSの登録が5110万登録まで拡大すると予測している」。
 1.2 消費者視点に立った通信と放送の融合に向けて
 取り上げられているのはGyao、YouTube、Yahoo動画、ワンセグ、「テレビポータル」。10年も前のよう…。
 1.3 決済プラットフォームの行方
 1.4 情報・通信サービスと金融サービスの融合 
 1.5 多業界にわたり広まるポイント・マイレージ
 1.6 情報家電と連携したネットサービスが、日本の家電業界進化の鍵
 1.7 コンテンツ流通のネット化への対応
 1.8 テレビの新たな視聴スタイルをつくり出すテレビポータル
 「アクトビラ」。期待ほどではなかったようだ。
 1.9 日本における通信・放送関連の法制度改正の動向
 
 2007年版は初めて買った『IT市場ナビゲーター』だったので、情報整理ができて、ずいぶん活用した。
 
 2008年版。
 1.1 情報通信産業(ICT産業)の国際競争力と国際共生力の強化
 1.2 電子マネー
 1.3 内部統制関連市場
 1.4 電波政策の動向とその影響
 1.5 セカンドライフ
 1.6 ボランタリーウェブ社会の創造
 1.7 エレクトロニクス再編の可能性
 1.8 メディア・コンテンツ産業の再編成の展望

 2007年版で取り扱っていないテーマを見つけて特集を組んだ感じだが、「これが今のトレンド」とはあまり思えず、ほとんど読まなかった。

 2009年版。
 1.1 新たな取り組みが求められる民間放送局
 「2008年度に入り、スポット広告収入の大幅な減少が影響して、民間放送局各局の業績が軒並み悪化している。上半期の決算を見ても、・・・キー局2社が営業赤字となった」「地上波放送メディアに対する、消費者や広告主の考え方の変化が影響し始めていると考えられる。消費者にとっては、テレビが唯一の放送メディアではなくなり、さらには放送をリアルタイムに視聴することも減少してきている。そのため広告主にとっても、地上波放送は莫大な広告費をかけるメディアではなくなりつつある」。
 「CS放送やケーブルテレビ、IP放送などの多チャンネル放送サービスの世帯普及率は2割(約1100万世帯)にのぼる。・・・オンラインレンタルビデオショップサービス(インターネット経由で申し込んで、宅配で受け取れるサービス)などの新しいサービスが提供されており、加入者数を増やしている。インターネット経由で、PCを用いて視聴するVOD(ビデオオンデマンド)サービスも普及しつつある」
 1.2 携帯電話市場のオープン化
 1.3 情報通信社会に求められている消費者保護
 1.4 IDと個人情報は個人の手元へ還る
 「OpenID(オープンID)が注目されている。OpenIDとは、インターネット上において、利用者自身が自分が持つIDの中から1つを選択し、それを他のサービスにも利用できるようにする仕組みである」。
 1.5 インターネット上の有害情報と対策
 1.6 痛みを超えてグローバル化を見据える電子マネー市場
 1.7 SaaS市場の本格的な立ち上がり
 1.8 デジタルネイティブ世代の台頭とメディア・コンテンツ産業の再編シナリオ
 「1990年以降に生まれ、物心ついた小学生の頃から携帯電話、PC,デジタルビデオレコーダーなどを活用している、いわゆる『デジタルネイティブ』世代が2015年には20代に達し、消費の中心に踊り出る」。

 テレビ局の苦悩といった現実的な問題があったこともあるが、取り上げるテーマが、より具体的で、役に立った。

 2010年版。
 1.1 ITを活用したソーシャルビジネスは社会変革の起爆剤になる
 1.2 仮説思考からの脱却がMOP、BOPマーケット成功の鍵
 1.3 期待と不安が入り混じる携帯端末向けマルチメディア放送
 1.4 中国市場に広がる模倣携帯電話「山寨機」

 専門的なテーマばかりという感じだった。携帯端末向けマルチメディア放送については課題が多いということがよく分かった。

 そして2011年版。1年おきに当たり年になるような感じなので、期待して読んだ。
 期待通り!2011年版は今後のビジネスにも役立ちそうな具体的な情報が多かった。

 1.1 ICT政策動向~「光の道構想」の行方
 ◆論点1:「光の道」は、光ファイバーの道か、象徴としての光の道か
 「現時点では、光ファイバーが通信速度という面で一歩抜きん出ているが、『技術中立性』という考え方にのっとれば、特定の技術に偏った政策を打ち出すべきではなく、むしろ技術間競争を促進させる政策が望まれる。ケーブル(HFC)や地域WiMAXでも、下り30Mbps以上の速度が出ることから、地域特性(敷設の難易度や費用対効果)に応じて光ファイバー、ケーブル、WiMAXなどをうまく使い分けるべきである」。
 ◆論点2:インフラ整備か、利活用か
 「ブロードバンドインフラを利活用する上で、ボトルネック(隘路、障害)となっている、さまざまな規制の緩和や、教育、医療・福祉、行政など多様な分野でのICTの徹底利活用を促進させることが、ひいてはより高速なブロードバンドニーズを喚起し、一方高速ブロードバンドインフラの普及が、そのインフラ上での多様なサービスを産み出すという構図となっている」。
 ◆論点3:ボトルネック設備の分離か、否か
 「『設備競争なくして利用者利益なし』という…考え方が、WG・判断のベースとなった」「NTT東西の光ファイバー回線というボトルネック設備に関して、それを利用する各社の同等性を確保するためには、別会社として“切り出す”という最終手段ではなく、管路・とう道などの線路敷設基盤のさらなる開放、NTT東西の加入光ファイバー接続料の低廉化、そして、『機能分離』」が必要と判断したという。
 ◆論点4:設備規制か、SMP規制か
 「以前からある我が国のドミナント規制が、ボトルネック設備を保有している事業者に対する『設備規制』であるのに対して、『SMP規制』は、ボトルネック性以外の要素にも着目して市場支配力を判断し、その状況に応じた規制を柔軟に課すことができるという利点を有している」。
 ◆論点5:ノンビリ型か、スピーディ型か
「孫氏の提案する『スピーディ』では、NTT東西のボトルネック部門で資本分離した上で、5年という短い期間の中で、一気に全国5000万世帯のメタルアクセス回線を光に置き換えてしまう、しかも税金投入はゼロで、というプランである。しかし、そこには、さまざまなリスクと軋轢が生じる可能性がある」「このような決断は、結局、政治家に任されるべきものである」。
 1.2 全貌が見え始めた携帯端末向けマルチメディア放送
 V-Highマルチメディア放送(全国向けの放送)携帯電話向けサービス 
 「有料サービスとなると、消費者への浸透度合いは大きく後退する。現在、携帯電話向け有料動画配信サービスを展開している事業者の中で最大の会員数を持つBeeTVでも、2010年3月時点でようやく100万人に達した段階」「サービス成功のカギは、委託放送事業者(受託放送事業者からインフラの提供を受けて、コンテンツを提供する事業者)が、既存の携帯電話向け動画配信サービスと差別化されたコンテンツを提供できるかどうか(product)、および現在有料動画を携帯電話で視聴していない層に対してどうプロモーションをかけていけるか(promotion)にかかってくる」。 
 product面では「リアルタイム型サービスを提供するのであれば、人気コンテンツよりも、ワンセグで提供されていないような専門コンテンツを提供すべきである。具体的には、地上波で提供されていないようなスポーツやニュースの配信などが考えられる」「蓄積型サービスであれば、既存のサービスで提供されているマスコンテンツを提供しても、消費者へのレコメンデーション(推薦情報の付加)で差別化を行うことができる」。
 V-Lowマルチメディア放送(地域ブロック向けの放送)
 「悪化する受信環境への対策として、ラジオ業界が著作権などの長年の調整の末に実現にこぎつけたのが、東京と大阪の民放ラジオ局13局の番組を、インターネットで地上波と同時放送するIPサイマルラジオ『radiko』である」「radikoの事例から示唆されるV-Lowマルチメディア放送への教訓としては、まず良好な受信環境を築くことが、サービス成功のためには必須である」。もっとも「既存の放送設備の更新もままならない状況にあるラジオ局にとって、新しいビジネスチャンスをもたらすとはいえ、V-Lowのための設備投資に割ける投資余力は少ない」。
 「また、すでに普及している汎用端末上で聴取可能にすることがradikoの成功の一因だとすると、対応端末の普及はV-Lowマルチメディア放送成功の必要条件といえる。新たにV-Low専用端末を聴取者に購入してもらうよりは、外付けチューナーを普及させるか、あるいはV-Lowチップを搭載した汎用端末を普及させるべきであろう」「キャリアという後ろ盾がなく、財政的に厳しい状況にあるラジオ局が主なコンテンツ提供事業者と想定されるV-Lowマルチメディア放送の方が、問題は深刻である」。
 1.3 アジアコンテンツ市場
 「2010年5月には経済産業省に設置された『コンテンツ産業の成長戦略に関する研究会』から、2020年の目標として、国内外売上高を現状の15兆円から20兆円、海外売上高を現状の0.7兆円から2.3兆円と3倍に増加させることで輸出産業TOP5入りを果たすことや、コンテンツ産業の雇用を5万人増加させるといった、具体的な数値目標を示した報告書が取りまとめられた」「2010年の6月には同じく経済産業省に『クール・ジャパン室』が開設」された。
 「アジアの新興国では、PCよりも先に携帯電話が普及してきており、着メロや壁紙、ゲームなどコンテンツに関するビジネスも携帯電話から始まっている。日本では人気コンテンツの会員数は数100万人程度であるが、10億人を超えるアジアの携帯電話市場では、それが数千万規模に膨れ上がる可能性がある」。
 もっとも「日本でビジネスをする場合に比べて高料率の回収代行手数料に加えて、単価の安さが日本のコンテンツ事業者に海外展開を思いとどまらせる理由になっている」。
 「日本企業がアジアでコンテンツビジネスを行っていく上では、いかによい海外のパートナーを見つけられるかが重要なポイントとなる。特に注目される分野としては漫画やアニメーション、キャラクターゲーム、それに紐付くキャラクター製品などがあげられるが、言語や文化・慣習、事業環境が異なる海外市場において、日本でヒットしたコンテンツをそのまま輸出していくだけのモデルでは、海外市場で継続的にビジネスを行うことは難しい」。
 1.4 本格的に立ち上がる電子書籍・iPad
 「1つ目の変化として、日本では、2009年にアマゾンのキンドル、そして2010年にはiPadと、話題の電子書籍端末が発売され、その市場が立ち上がったことがあげられる」
 「もう1つの変化は、これら端末の販売拡大を受けて、2010年から雑誌・新聞などの電子化が進んでいることである」。
 「電子書籍でも…電子化ならではの部分購入やレンタル機能などにより、利用者が拡大する可能性はある」「『画像・映像・音楽コンテンツとのリンク』に対するニーズも比較的大きく、消費者の15.3%が『メリットを感じる』と答えている」。
 「コンテンツが充実した後の電子書籍ビジネス拡大においては、『クラウドコンピューティングを活用したコンテンツの提供』、『教育分野での活用』『広告収入』などがカギになると考えられる」。

 1.5 ソーシャルメディアの到来:一人ひとりの個人の力が社会を変革していく
 「利用者は全世界で1億人を大きく上回り、日本でのTwitter利用者も1000万人を超えた(2010年8月)」。
 Twitterを支えているのは次の3つのユーザーだという。
 「クリエイター」「多くの共感を呼ぶツイートをする(つぶやきを入力する)人」
 「エディター」「新たなハッシュタグ(#から始まるアルファベットの文字列。Twitterを分類するタグ情報)を作り、情報の整理に努めている人たち」
 「バリュア」「『これは』と思うつぶやきに対して、リツイートをする。それは無言の評価であり、相手への拍手と捉えられる」
 「Twitterは手軽さゆえに、実名で登録している人が多い。批判にさらされることも少なく、言葉足らずでも、気軽につぶやける」
 1.6 クラウドによる国内ICT市場の破壊とビッグデータビジネスの可能性
 1.7 スマートグリッドとITの可能性
 1.8 インターネットを活用した健康管理サービスの今後

|

« 映画『ソーシャル・ネットワーク』(The Social Network)~フェイスブック創業者の赤裸々なドラマ | Main | 小黒一正著『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)~迫りくる危機を分かりやすく解説 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 野村総合研究所情報・通信コンサルティング部著『IT市場ナビゲーター2011年版』(東洋経済新報社)~2007年版以降、中身がどう変わったか:

« 映画『ソーシャル・ネットワーク』(The Social Network)~フェイスブック創業者の赤裸々なドラマ | Main | 小黒一正著『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)~迫りくる危機を分かりやすく解説 »