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ニッセイ基礎研究所著『定年前・定年後 新たな挑戦「仕事・家庭・社会」』(朝日新聞社)

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定年前・定年後 新たな挑戦「仕事・家庭・社会」

 ニッセイ基礎研究所著『定年前・定年後 新たな挑戦「仕事・家庭・社会」』(朝日新聞社、2007年10月31日発行)を再読した。
 ニッセイ基礎研究所では、1997年から2005年まで、隔年5回にわたって、昭和8年(1933年)から昭和22年(1947年)生まれの男性を追跡する「中高年パネル調査(暮らしと生活設計に関する調査)」を実施してきた。「調査対象者は1997年時点で50歳~64歳であり、現在まさに定年前後の世代にあたる。この調査は同じ調査対象者を追跡するという手法をとっているがゆえに、『定年前にどういう生活をしていた人が、定年後どうなっているか』『定年後ハッピーに生活している人は、定年前にどのような準備をしていたのか』といった実態を明らかにすることができる」。

 パネル調査では「定年前に60歳を過ぎても仕事をしたい」と考えている男性は過半数を占め、定年後、例えば67歳でも約6割が就業している状況にある」。また、労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2007」によると、「60~64歳、65~69歳の男性の労働力率をみると、日本は各70.7%、45.6%と、アメリカ(各57.0%、32.6%)、イギリス(55.7%、18.3%)、フランス(各19.0%、4.1%)などと比べて非常に高くなっている。欧米はできれば早いうちからハッピーリタイアメントを楽しみたいという意識が強い。日本の高齢者の就業意欲の高さ、労働力率の高さは国際的にみて特長的だといえる」。

 「『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律』の改正により、2006年4月より、65歳までの雇用確保措置の導入が企業に対して義務付けられた」「労働政策研究・研修機構が2006年10月に実施した調査によると、企業の98.4%が既に雇用確保のために何らかの対応を行っているが、企業の95.7%は継続雇用制度の導入による対応となっている」「継続雇用制度の内容をみると、継続雇用の希望者全員を雇用する企業は4社に1社にすぎず、多くの企業は継続雇用に何らかの審査基準を設けている」「また、継続雇用者の年収水準については、年金や公的給付などを含めて、定年到達時の年収の『6~7割程度』になるよう給付額を設定していると回答した企業が4割を超える」。

 パネル調査によると、「定年(60歳)前に『自営等』だった男性は、9割以上が定年後も『自営等』だが、定年前に『正社員(役員を含む)』だった男性は、定年後には16.3%が『非正社員』に、4.1%が『自営等』に転じている。また、勤務先の企業の規模をみると『299人以下』については、定年前後で大きな変化はないが、定年前に『300人以上・官公営』に勤務していた男性については、4割弱が『299人以下』の企業に移動している。自営業セクター、中小企業が、定年後の就業の場として重要な役割を担っているといえる」。

 「『働かなければならないので働く』男性は定年前には7割強だったが、定年後は5割強へと低下している。逆に、『働きたい(生活目的以外)ので働く』という選択をした男性は、定年後は4人に1人にのぼり、『働けない』『働かない(自己選択)割合も定年後に増加する』」「働く選択タイプ別に生活全般に関する満足度をみると、『働かない(自己選択)』男性の満足度の上昇、『働けない』男性の満足度の低下が著しい。一方、働いている男性については『働かなければならない』か『働きたいか』にかかわらず、生活全般の満足度が定年前後でほぼ横ばいとなっている」。
 「『働きたい(生活目的以外)ので働く』という男性は、『非正社員』『転職』『非ホワイトカラー』『役職なし』『フルタイム以外』の割合が高くなっている。このことから、定年後の就業条件の変化には、必ずしも求人側の事情による他律的なものでなく、男性側の自律的な選択によるケースも含まれていると推測される。また、『働きたい(生活目的以外)ので働く』という男性は、「『働かなければならないので働く』男性に比べて勤務先年収や貯蓄額が高い」「一方、『働かなければならないので働く』男性は、『継続就業』の割合が約9割と、従来の延長線上で働いているケースが多い。心ならずも就業条件の一部が変更されたとしても、愛着のある職場で、従来とされなりに継続性のある業務に携わっていることが、彼らの満足感を維持している可能性が高い。…また、働き続けることが、家族の生活を支えるという心の張り合いが、生活満足度を維持している可能性もある。さらに、定年という一つの区切りを経て、定年前よりはやや肩の力を抜いて仕事に向き合えるという面もあるのだろう」。

 「定年後に、働くかどうか、あるいはどう働くかという問いは、突き詰めれば、どう生きるかという問いと同義だともいえる。定年後に『働く意味』は人それぞれであり、生活の一部を仕事に振り向けるケース、一つの仕事が複数の意味を持つケースも多々ある。やり残したことへの思い、新しいことへの好奇心、仕事への自負心や誇りの一方に、迷い、心の隙間、不安……そんあゴチャ混ぜの先に定年の仕事がある」「定年というダイナミックな変化をガッチリと受け止め、『働く意味』を『哲学』しながら、しなやかに定年後を楽しんでいる男性は決して少なくない。そういう男性たちに共通するのは、変化を楽しもうという姿勢である。こういう姿勢は定年後に初めて現れるものではない。彼らは総じて、現役時代にも仕事や周辺の変化をそれなりに楽しんできたに違いない」。

 起業についても分析している。

 「『2006年度新規開業実態調査』(国民生活金融公庫総合研究所…)によれば、50歳以上の人による開業は、1991年当時の11.5%から、2006年には28.4%にまで上昇している。60歳以上の人による開業を取り出してみると、91年の2.2%から06年の5.3%まで、絶対水準は低いものの増加傾向を示している」「『2006年度新規開業実態調査』によれば、事業内容に新規性のある『ニュービジネス型』企業における50代、60代の比率は34.4%となっており、むしろ『従来型』企業における同比率の27.3%を上回る結果となっている」。

 「仮に起業をしても、会社運営が軌道に乗るまでには長い期間のエネルギー投入を要するのが通例である。…人生80年の時代とはいえ、起業に伴う不眠不休に近いようなエネルギー投入ができる期間は、そう長くは残されていない。まして、失敗に終わった場合に何回も再挑戦できるような時間的な余裕には恵まれない可能性のほうが大きいのではないかとも考えられる」「株式公開を目指すような本格的な起業については長い期間を要するのが通常であるので、中高年の起業家は自らが使える時間の制約を意識した戦略が必要となってくる」「中高年が起業を考える際に、自分が経営者として機能するようなケースばかりでなく、若い経営者を支えるサポートの役回りに徹するというパターンも考えられる」。

 「『2006年度新規開業実態調査』では、年代層別に開業動機を調べているが、それによれば50代以下の層では利潤目的が社会貢献目的を上回ったものの、60歳以上の層では利潤目的よりも社会貢献目的が上位に位置づけられている」。


 本書は、中高年男性のライフデザインを考える際に押さえておくべきポイントとして、まず仕事、次に家庭、そして仕事の場でも家庭の場でもない「第三の場=社会」を取り上げている。

 定年前後をカバーするパネル調査は珍しい。調査結果にケーススタディも織り交ぜて、定年についてじっくり考えさせてくれる貴重な一冊だ。

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