« 出先での情報収集、やはりTwitterが頼りになる!? | Main | 結城康博著『介護 現場からの検証』(岩波新書) »

染谷俶子著『まだ老人と呼ばないで』(日経プレミアシリーズ)

Mada_rojinto_yobanaide
まだ老人と呼ばないで

 染谷俶子著『まだ老人と呼ばないで』(日経プレミアシリーズ、2010年2月8日発行) を読んだ。
 染谷氏は「老年社会学」を専門とする研究者。1970年に明治学院大学社会学部を卒業されている。恐らく団塊の世代だ。
 「はじめに」で「団塊世代は、青春時代に『若者像』を変えたように、これまでの高齢者イメージを大きく変えるかもしれません。では、新しい価値観を持った『ニュー高齢者』は、日本の社会と日本人の暮らしぶりにどんな影響を与えるのでしょうか」と書いている。団塊の世代(1947年から1949年までのベビーブームに生まれた世代)がいよいよ65歳以上の「高齢者」になるのを前に、著者は「老人扱いするな」「我々が社会を変える」と宣言したいのだろう。


  第一章 人は何歳から「高齢者」になるのか
 「実際には、何歳から高齢者かというはっきりとした定義はありません。最も多く用いられているのは65歳で、国際的な統計にも、65歳が広く用いられています」
 「一方、日本の行政サービスの対象年齢には、60歳を用いることも多くなっています。たとえば、老人クラブの参加年齢、国民年金積立の完了年齢、軽費老人ホームの入居年齢などです」。
 「入場料のシニア割引は65歳が多くなりますが、映画館のシニア割引などは60歳が用いられています」。

 著者が「なんとかならないのか」と思う瞬間が「たいして必要もないと思われるところに、いちいち年齢を書かされること」。「『住所。氏名、年齢』のこの3つが、あたかも無条件の“3点セット”になっています」「日本人は概して、『誰が何歳で、自分といくつ違うか』が気になって仕方がないようです。それが分からないと、安心して話すことができないのです」。
 「アメリカ社会は、日本よりもはるかに年齢による差別に敏感です。…日常生活の中で『○○さんは何歳、私といくつ違う』という意識を持たずに人間関係が成り立っています」「最近のアメリカでは履歴書ですら、年齢、生年月日を記入する必要がなくなっています。それは、『仕事ができる、できない』は、実年齢と関係がなく、採用、不採用を決める要因に、実年齢を持ち出すのは年齢差別(ageism)である、という考え方に基づいています」。
 「多くの日本企業では、実年齢ではっきりと区切った定年退職制度があります。近年、長寿化と労働人口の減少から、定年の延長が盛んに論じられています。しかし、定年をなくすことはなかなか困難です」「まだ多くの職場で(実態としての)年功賃金制度が生きていて、高給の人を雇い続ければ、人件費が嵩み経営上の負担が大きすぎるからです」「そして、役職定年やシニア雇用などの制度がある会社は、一定の年齢に達した人は、それまでと同じような仕事をしていても、給与が大幅に減額されたりします」。
 「日本も、時間給、日給による低賃金の非常勤職ではなく、同一労働、同一賃金のパートタイム、またはワークシェアリングの実践が重要な課題になってきています」。

 ニュー高齢者は青年時代に熱中したギターやバンドを始めたりする例が多く、ゲートボールのような「高齢者文化」なるものが感じられなくなったことが特徴と著者は見る。

 100歳老人人口は「2030年には27万3000人、そして団塊世代が100歳を超える2050年には、なんと68万3000人と推計されています」「今や人生90年に突入しようとしています」。

 第二章 どこに住む? 誰と住む?
 「今60歳を超えた団塊世代になると、『息子がいてよかった』から『娘でよかった』に変化しています」。
 「経済的には楽な長男と結婚した女性たちは、夫の両親との同居が楽ではないことを体験し、さらに平均寿命の延びた老親の介護は容易でないことを実感しています。その体験からか、自分たちは息子夫婦との同居を望まなくなりました」「むしろ娘のほうが、なにかと気兼ねなく支援を頼めるため、『娘がいて安心』と思うように変化しました」。
 「最近の女子大生たちにとっては、『親との同居』または『親の介護』とは、『自分の親との同居』と『自分の親の介護』を意味します」。
 「1970年時点で、65歳以上の人の、子ども家族との同居はおよそ80パーセントを占め」「08年現在では、42パーセントにまで下がっています」。

 健康なときはいいが、「身体能力が衰え、自立生活がおぼつかない状態になったとき、どこで、どのようにして介護を受けるかが最終的な課題です」。
 「介護保険による介護サービスは、この10年間に目に見えて発展してきました。しかし介護労働従事者の不足、急速な介護需要の増加から、なかなか期待どおりに、公的な介護サービスが受けられない現状があります」。
 「特別養護老人ホームも新設が制限されているため、急増する入居ニーズになったく追いつきません。介護施設不足の中、供給不足を補っているのは、特別養護老人ホームの規模を縮小した、地域密着型の小規模多機能施設とグループホーム、そして民間資本の経営する有料介護施設です」「どちらの場合も、介護サービスに対しては介護保険が適用されます。グループホームでは自己負担が月々10万~15万円程度ですが、有料介護施設は入居一時金の他に、通常、毎月25万~30万円程度の経費がかかります」。
 「病院に併設されていた、介護病棟(療養型病床群)は廃止されることになりました。社会的入院と言われてきた、長期にわたる介護入院はできなくなりました」。
 「老後のライフスタイルの一つとして、金融資産を持つ層に分類される人々の中から、すでにアメリカやオーストラリアで普及している、終身介護付きの有料老人ホームへの入居希望者が、今後増加していくことが予測できます」。

 第三章 ニュー高齢者は日本を変える
 団塊世代にどんな「ニュー高齢者」ぶりを期待するのか。
 まず、経済的には「豊富な資産を保有するニュー高齢者家庭のお財布を握る女性たち」がカギを握るとみる。
 政治的には「中高年の投票率は70から80パーセント台」という参加意識の高さと、全投票者に占める割合の高さが力になると分析。「高齢者の共通な要望を集め、その大きな力で社会保障、制度の制定と改革を実現した」アメリカ退職者連盟(American Association of Retired Persons:AARP)」のように、「政治にも強い影響力を持つようになるに違いありません」と言う。
 文化的にも「現在の60歳代は、以前の世代とは違った価値観の世の中で生まれ、育っています」「伝統的社会規範に囚われない、突飛と思われる選択」が世の中を面白くすると期待する。

 第四章 日本は高齢者に結構やさしい
 「2000年に交通バリアフリー法が施行されて以来、駅にはエレベーターやエスカレーターが取り付けられました」。
 「アメリカではパソコンの普及が早かったためか、家庭にファックスが普及していません。日本では90年代にファックスが企業に普及し、日本のお家芸か、その後小型化が進み、90年代半ばには家庭用の商品も普及します」。
 「現在のコミュニケーション手段は多様化し、また個人のものになっています。…家族との連絡は、携帯電話でいつも取ることができます。…最近の携帯電話の機能には、認知症の高齢者の足取りを地図で示してくれるものもあります」。
 「日本の世帯収入を見てみると、2005年の全世帯の平均収入は580.4万円。そして65歳以上の世帯平均年収は296.1万円でした」「高齢者世帯は平均1.56人で、1人当たりの収入は190.8万円。全世帯の平均世帯員は2.85人で、1人当たり203.3万円となり、ほとんど差はありません。そして、高齢者世帯の収入のおよそ7割が公的年金と恩給によって賄われています」。

|

« 出先での情報収集、やはりTwitterが頼りになる!? | Main | 結城康博著『介護 現場からの検証』(岩波新書) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 染谷俶子著『まだ老人と呼ばないで』(日経プレミアシリーズ):

« 出先での情報収集、やはりTwitterが頼りになる!? | Main | 結城康博著『介護 現場からの検証』(岩波新書) »