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松本すみ子著『地域デビュー指南術~再び輝く団塊シニア~』(東京法令出版)

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地域デビュー指南術

 松本すみ子著『地域デビュー指南術~再び輝く団塊シニア~』(東京法令出版、平成22年7月6日発行)を読んだ。
 松本さんは2004年、日経BP社の情報サイト「Nikkei BPnet」で「松本すみ子の団塊消費動向研究所」を連載。2005年に日経BP社のシニア向けサイト「セカンドステージ」のプロデューサーとして企画に携わり、「団塊世代のための定年準備講座」を連載した。シニア市場、シニアライフに詳しい「シニアライフアドバイザー」だ。

 「団塊マーケットは、2004年ころから急速に盛り上がった。2007年の団塊世代(※1947年から1949年にかけて生まれた人たちで、日本の全人口の5~6%を占める)第一陣の退職がいよいよ間近に迫ったからだ」「自由な時間とゆとりある資金。この両方を持ったリタイア組がたくさん出現するに違いない」と多くの企業が期待した。「50代の平均貯蓄額は1150万円。これだけの貯蓄がある団塊世代に、今後、退職金が入る。子供は独り立ちしている年代だし、順調であれば住宅ローンも終わっているだろう。これからは趣味に楽しみに、活発な消費活動を行うに違いない」。

 「しかし、期待に反し、2007年を迎えても、そしていまだに、団塊世代にも市場にも、さしたる動きは見られない」「もともと彼ら自身にそのようなのんきな将来予測ばかりがあるわけがなく、売り手側が勝手に創り出した期待値でしかなかったからだ」。
 「団塊以降の世代は、その前のリタイア世代とは状況が異なる。…団塊世代以降の人は、定年後すぐには満額の年金がもらえない。…したがって無収入に等しい時期を埋めるためにも、なんらかの形で働かなければならないと考えている人が多い」。

 「財布の中身だけを狙った中途半端な商品やサービスは撤退してしまったが、“若くもなく、かといって高齢でもない人たち”という難しい分野があることへの理解が進んできた。そこに可能性があると判断した企業は残るだろう」。

 「団塊市場が期待どおりでないと思い知った企業の多くは、シニアマーケットから撤退し、さっさとほかの分野に移った。しかし、自治体・行政は、団塊世代への対応・政策から逃げることはできない。団塊世代の高齢化で生じる様々な現象への対応や問題解決は、今後の自治体・行政運営にとって、もっとも重要な課題のひとつである」
 「これは、団塊世代自身にとっても同じだ。ぴったりこない団塊向け商品にそっぽを向いても何も問題はないが、地域社会とのつながりなしには豊かなセカンドライフを築くことはできないからである」。

 団塊の世代の働きたいという願望は強い。品川区が「品川区に住む団塊世代(総数約1万7700人)約5000人に『何歳まで働きたいか』」を聞いたところ、「半数が65歳までと回答し、それ以上70歳までが3割以上、70歳以上でも13%いる」。
 なぜ、そんなに働きたいのか。
 「2008年3月に三鷹市が市内在住の58歳から60歳の市民約650人に行ったアンケート」によると、「最も多かった回答は『生活を維持するため』(54.6%)、次いで、『自分の生きがいややりがいのため』(47.0%)、『頭や体をなまらせないで、健康を維持したいため』(39.8%)。以下、『社会とのつながりを持つため』」(26.7%)、『仕事を通じて、社会に貢献するため』(22.2%)と続いている」。

 もっとも、「小さい会社や郊外の企業には若い人はなかなか集まらないため、シニア世代を活用したいと思っている会社はそれなりにあるという」が、「アクティブシニア就業支援センター」のようなところに「相談に来ても、決まらないことが多い」という。
 「せっかく決まっても、すぐに辞めてしまう人も珍しくない」「辞める理由は、仕事の内容よりも人間関係が多いという。新しい職場に行くと、そこには先輩がいる。中小企業ならたたき上げの個性的な経営者がいる。社長や先輩の下について指図されて、時には理不尽なことも言われる……。長年、管理職で部下を指導するような立場だった人にとっては勝手が違う。カルチャーショック状態で『今さら、こんなところで働いていられない』と思うようになる」。

 「雇われない働き方といえば起業だ。起業というと、大掛かりな創業を思い浮かべがちだが、個人事業主として『ひとりビジネス』を始めることもりっぱな起業である」。

 「リタイア世代の新しい起業スタイルとしては、社会貢献型ビジネスが考えられる。本格的な社会貢献型起業を起こす人は、“ソーシャルアントレプレナー”と呼ばれるが、リタイア世代は起業というよりは、地域社会の問題解決を目指して活動するゆるやかなコミュニティビジネスがふさわしい」。
 「アメリカでは大学、病院、美術館、博物館といったところまで活躍の場が広がっている。今後は日本でも活動分野が広がる可能性は大きい」。
 「最近は有償ボランティアが主流になってきた」「有償であれば、そこに責任と覚悟ができ、活動の質も上がる」。

 「おひとりさま向けのサービスは同年代が助けあう『お互い様ビジネス』として有望株だ」「地域社会には、料理、家事、子育て、介護のスキルを持った女性たちがたくさんいる。男性も、ちょっとした住宅の修理や庭の手入れ、買い物時の車の運転と付添いなど、いくらでも仕事は開拓できるはず。自治体は生活サポート分野を具体的なコミュニティビジネス、協業事業の分野として認識すべきである」。

 本書はこの後「行政の団塊世代対策」「特色ある市民活動」を紹介する。
 このなかではすでに2010年3月で活動を終えた埼玉県の「団塊世代活動支援センター」が面白かった。
 「従来なら、行政や社会福祉協議会がプランし運営していたことを、団塊と同じ世代のリタイア組に委ねたことに特徴がある」「同世代が当事者としての観点で企画・運営し、同じ目線でアドバイスを行い、地域に根ざしたリアリティのある活動が求められている」
 「このセンターは就業に力を入れており、キャリアカウンセラーによる就職相談、県内で新たに農業を始めたい人に向けての休日農業相談などもあった」「仕事関係だけでなく、『会社人間のための定年準備支援講座』『福祉の現場レポート』『市民防災セミナー』『マネー学』などの真面目なものから、パソコン教室、料理教室、街道を歩くなど、生活を豊かにするカルチャー的なテーマまで、幅広く開催していた」という。

 北九州市が2006年から50歳以上を対象にして開催している「生涯現役夢追塾」も面白い。
 「メインターゲットは団塊世代で、『退職後も現役時代に培った知識や技術、経験や人脈などを活かし、経済・産業、社会貢献活動などの担い手として活躍できる人材を発掘、育成する』事業だ」「卒塾後は、市内大学・高校などの講師や企業などでの技術系指導者として活躍する道がある」「また、NPO法人の設立、コミュニティビジネスへの展開、独立コンサルタントとしての活躍なども期待しているという」。

 「すでに活動している人たちへの効果的な支援策があれば、さらに活動への参加者を増やすことができるかもしれない。最近、地域で活用されているのがポイント制度だ」「自治体でいち早くポイント制度を始めたのは東京都稲城市だ。2007年に『介護ボランティア制度』として、元気なシニア世代が介護支援ボランティア活動を行えばポイントを与える制度を試験的に始めた」。

 「少子高齢化が進む日本では、労働人口の減少から、女性、障害者、リタイア世代、外国人など、年齢・性別・国籍などに関係なく、意欲と能力のある人を活用する場を創らないと社会が立ち行かなくなるという認識も浸透してきた」「問題解決のひとつは、定年を理由に企業が放出した団塊世代という人材に、地域でもうひと働きしてもらうことである」。そんな期待から、「『独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構』の委託を受け、『雇用開発協会』が開設していた全国14か所の『高齢期雇用就業支援コーナー』は、2010年3月をめどにすべて廃止となった。鳩山内閣での事業仕分けの結果である」。

 特色のある市民活動で一番印象に残ったのは「男の居場所作り」を目指す東京都杉並区荻窪2-3-1の「NPO法人 生きがいの会(松渓ふれあいの家、ゆうゆう西田館)」。松渓中学校の一角にある「高齢者在宅サービスセンター」だ。
 「仲間たちの話題は、地域に男たちで集まる場所や活動がないということだった」「メンバーにはある思いがあった。デイケアセンターのような施設の利用者はほとんどが女性で、男性は来たがらない。なぜなら、男はプライドが高いから、みんなで一緒に歌を歌ったり、ゲームをしたりするような子供扱いはいやなのだ。男性が参加できて、かつリハビリにもつながる魅力的なプログラムはないものだろうか」。そんな思いが実現したのが松渓ふれあいの家だ。
 「ここは4人掛けが基本だ。理由は、プログラムの中に麻雀を取り入れようと思っていたから。麻雀は、頭と体の両方のリハビリになるはずという考えもあった」「また、月に数度はワインをたしなむ日も設定した」。

 「シニアSOHO普及サロン・三鷹」(三鷹市下連雀3-38-4)は「シニアがシニア自身をサポートする地域活動の先駆けとして全国的に注目を集めたNPOだ。主な事業内容は、パソコン教室の開催、訪問サポートや講師の育成、ウェブサイトの製作と編集」。三鷹市インキュベーションセンターの「パイロットオフィスに集まってワイワイと楽しそうにパソコンをいじっているシニアのグループ」を市の担当者が見つけ、「経済産業省の外郭団体が主催している『情報システム活用型シニアベンチャー等支援事業』」に応募してみては、と提案。これが通り、「これを契機にグループは『シニアSOHO普及サロン・三鷹』となり、翌年の2000年にはNPO法人としてスタートした」という。

 
 「NPOにしろ、ひとりビジネスにしろ、仲間が集まって打ち合わせをしたり、お客さんの対応をする場所を確保しないことには、活動が始まらない」「今、団塊シニア世代はどのようにして、その問題を解決しているのだろうか」「手近なところでは喫茶店がある」「定年後のシニアの利用の多いのは図書館だ」。

 定年退職後は起業するもよし、地域の新しい需要にこたえるビジネスに取り組んでもよしだ。
 この本は具体的事例が多く、読みながら、いろいろなアイデアが浮かんでくる。

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