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「ハーバードからのメッセージ 世界は震災から何を学べるか」(NHK BS1)

 NHK BS1で5月15日(日)夜、放送された「ハーバードからのメッセージ 世界は震災から何を学べるか」を見た。

 ハーバード大学では、東日本大震災の直後から、日本人学生が中心となって「ハーバード・フォー・ジャパン」というプロジェクトを立ち上げ、復興支援のためのチャリティイベントや募金を行ってきたが、4月22日、その支援活動の一環として、近隣に住む日本人を招いて緊急シンポジウムが開かれた。マイケル・サンデル教授を中心に、ハーバード大学の日本通の学者、日本専門家が一堂に会し、この災害から、何を学ぶことができるのか議論を交わした。

 司会を務めたのはアメリカ有数の日本研究機関、ハーバード大学・ライシャワー研究所の所長アンドリュー・ゴードン歴史学教授。ゴードン氏は番組のインタビューで「人々がこの震災をターニングポイントと捉え、自分の人生を震災前と震災後に分けて考えるようになった」と分析。

 また、冒頭の挨拶で、「東日本大震災関連の多くの情報がインターネット上を飛び交っているが、適切に保存しないとこれらの情報はやがて失われる」として東日本大震災関連情報を保存するデジタル・アーカイブを構築したことを明らかにした。

 第一部はサンデル教授の基調講演と質疑応答。

 「この震災から多くの教訓を学ぶべき。原子力エネルギー、緊急医療、都市の防災建築についてこの後、議論するが、もうひとつの視点を提案したい。それは、どうやって支援するか、なにを学べるかだけでなく、この震災は、私たちを変えるのか、と考えることだ」。

 「他者との関係、自然やテクノロジーに対する考え方は変わるのか。すでに日本人は日本人の自意識や価値観は変わるのかと自らに問いかけ始めている」。 

 「遠く地球の反対側で災害が起きたとき、私たちの行動はこれから変わるのだろうか。これは私たちが生きるグローバル時代の大きな課題だ。人間の共感や関心の範囲をグローバルに拡大できるか」。
 
 「アダム・スミスは著書『道徳感情論』の中で、はるか遠くの国について、中国をたとえに使って話した。スミスは中国が突然、地震に飲み込まれてしまったと仮定した。ヨーロッパのヒューマニズムに溢れた人道主義者は、これをどのように受け止めるか。それがアダム・スミスの質問だ。答えは次のようなものだった」。

 「彼は強い哀悼とお悔やみの気持ちを語るだろう。人間の命のはかなさに対して感傷的な考察をするかもしれない。あるいは、ヨーロッパの景気と世界貿易に与える影響について推測を加えるかもしれない。これらの考察をすべて終えたとき、彼は落ち着きを取り戻し、まるで何事もなかったかのようにもとのビジネスや生活に戻るであろう。そのことで彼の安眠が妨げられることはない」。

 「ところが、これが、些細でも彼の個人的な災害であった場合、例えば小指を失った場合、彼は一晩中眠れずにいるだろう。しかし、地球の反対側にいる出会ったことのない1億人の人間が全滅したとしても、そのヨーロッパ人はぐっすりと眠り、いびきすらかくかもしれない」。

 「スミスは、私たち人間はそういうものだ、と言った。地球の反対側には共感を持ち続けることはできないのだと」。

 「今回の震災は私たちを変えるのだろうか。日本に寄せられた熱い支援や共感は一時的なものなのだろうか。ニュースで取り上げられることが少なくなってくるのにつれ、徐々に人目につかないものになっていくのだろうか。あるいは、これは国家や文化の枠組みを超えて深く持続する新たな関係性の芽生えになるのだろうか」。

 「それは私たち次第。私たちと言うのは、世界の全ての人、グローバルなコミュニティだ。同情だけでなく、さらに深い関わり合い、文化や社会を超えた思いやり、深い人間同士の関係を築けるかどうか。公共の場での表立った関係を築けるかどうか。そのことにかかっている」。

 「今回の一連の出来事がグローバルコミュニティの意識を高めることになるのか。それは、私たちがグローバルに公共の場での対話を重ねていけるかにかかっている。そこには単なる同情を超えるものがなければならない。今回の一連の出来事の意味についての対話、例えば、原子力の問題や自然に対する私たちの姿勢について、私たちの都市設計の方法について、私たちの社会的、国際的な関係について、対話が交わされなければならない」。

 「今回の震災から持ち上がった重要で答えの難しい問題について、公共の場で皆が関わり合いを持つと言うのは、どういうことだろうか。実は、私はこれについてハーバードと日本、中国の学生とともにちょっとした試みに関わってきた。これは地震の前から準備を進めていたことだが、倫理的な問題、難しい哲学的な問題、政治的な問題を国を超えて議論する、いわば、グローバルな教室を作ろうとした。その準備のさなかに地震が起きた」。

 「そこで私たちは"究極の選択"と呼んでいたこの試みを震災に関連する問題へとシフトした。ハイテク映像機器で3カ国をつなぎ、議論を交わした」。

 「震災直後の強いコミュニティ意識はどれほど日本独自のものなのか。世界のいろいろな地域で見られる個人主義的な行動とどのように異なっていたのだろうか。私たちは原子力エネルギーの将来についても議論した。たとえ私たちの生活水準を下げることになっても、原子力への依存を減らす。あるいは原発を廃止すべきかどうか。あるいはそうではなく、私たちは生活水準を犠牲にしないように原発の安全性を向上することで対応すべきか。意見は対立し、議論は分かれた。そして最後に私たちはグローバルなコミュニティや市民意識について話した」。

 (4月16日放送の「特別講義 大震災 私たちはどう生きるか」の映像が流れる)

 「この吹き替えの男性の声、すばらしい」(笑)。

 「今見てもらったのが私たちの試みで、今後、震災に関すること以外にもテーマを広げていく予定だ。この試みで私が期待しているのは、文化の違いによる境界線を見つけることでも、全員が一致する答えへと導くことでもない。実際、この最初の回では、同じ国の人間同士でも意見の相違があった。そして国別に見ていくともっと意見の不一致があった。私たちが考えているのは社会学的検証を何かしたいというよりは、いわばグローバルに討論する教室をこのように作ることができるか、ということだ。もしこのようなグローバルな教室で学生たちが倫理や政治、哲学上の難問をともに論理的に考え、議論を交わし、時には反駁しあいながらも、お互いの考えに耳を傾け、学びあうことができるならば、今度はグローバルな公共の空間に場を発展させ、国境や文化の壁を超えて、これまで経験してこなかったような議論が可能になるかもしれない」。

 (質疑応答)
 「今回の震災は私たちを変えるだろうか、それは私たちをよりグローバルな共同体、責任や関係を共有する方向に関係を導くだろうか」。
 「日本の大震災は何らかの重要な意味を、私たちの時代に持つのだろうか。」
 「今はグローバル時代の黎明期にあたるが、グローバルな市民意識は未成熟で、確かなものとはいえない。その理由はグローバルなアイデンティティの感覚を身につけ、確かなものにするのはとても難しいからだ。それはルソーやアダム・スミスが指摘したとおりだ。しかし、グローバル教室の参加者が語ってくれたように、ルソーはYouTubeを知らなかった。私たちはいま、遠い場所で起きた悲劇や災害と瞬時に接することができる。悲劇や災害だけでなく、世界中の思想や感情、人々の反応、そして議論に接することができる。ルソーには想像もできなかったことだ。アダム・スミスにも。もしかすると、今回の震災は私たちとグローバルなコミュニティのあり方を新たにする何かしらのきっかけになるのかもしれない。」

 「今回の震災はコミュニケーションと通信技術が前例のない発展を遂げたグローバルな時代に世界中で同時に目撃され、理解された。もっとも技術の発展だけでは十分ではない。今回の震災をグローバルな市民意識の発展の機会とするためには、震災について、その意義について、ともに考えようとする私たちの意欲と能力が問われているのだと思う」

 Q)世界のほかの災害と今回の震災との違いは?
 「今回の災害はなにかしらの意味や意義を持つのか?まだ答えは出ていない。今回の震災がより広範なグローバルな関係をもたらすかどうかと言うことで、結論はまだ分からない。それは被害の大きさで決まるものではない。それは私たち次第なのだ」。

 Q)理に訴えるのと感情に訴えるのとどちらがよりグローバルな市民意識を変えていくのだろうか。
 「私が関わっているのは政治哲学であり、道徳哲学だ。これは人間の関係性や義務、責任も扱う。この分野の哲学においては論理や理性を一方に、そして共感や感情を他方に、というように区別することは不可能だと思う。最も優れた政治哲学は西洋ではソクラテスに遡る。それは対話と議論。理解と反論を伴うものだった。人が相手を理解し反論する際には、理性だけでなく、情熱や信念といったものも当然含まれる。私が提案するグローバルな対話の場においては人々の信念や文化、伝統や情熱や感情を置きざりにした、そんな貧弱な論理や理性を目指してはいない。むしろ、そうした信念や伝統や情熱や感情を反映した議論を重ねることができるかにかかっている。私は究極的にはそれこそが市民社会というものだと思う。だから理性と感情の領域を分けるべきと言う考えはない。最も優れた哲学、最も優れた対話の場では人間の経験に基づくこの二つの領域を結び付けるべきだと私は考える」。

 第二部 
 パネリスト
 ①ステファニー・ロズボロウ医師:ハーバード大学メディカルスクール緊急医療講師、ハーバード人命救急活動チームでは国際医療と救急活動を指導
 ②オリ・ハイノネン博士:ハーバード大学ケネディ行政大学院 上席研究員 2010年までIAEA・国際原子力機関に27年間勤務 元IAEA事務次長
 ③ミホ・マゼレウさん:建築家 ハーバード大学デザイン大学院講師 専門は環太平洋火山帯における災害予防と都市開発・防災デザインの研究

 ①ステファニー・ロズボロウ医師
 救急医療から見た日本の防災対策
 「日本ほど対策が整っていた国はほかにない」「他の国ではさらに深刻になったであろう事態を回避できた」「建物については耐震設計基準がしっかりしていた」「世界中どこよりも避難訓練、津波対策ができていた」「被害の拡大防止に役立った」「津波警報システムも効果があった」「過労な医師の補充、慢性的な病を持っている人たちへのケアが大変だった」「被害をもたらしたのは津波」「1万5000人以上が亡くなった」「津波の後の対応も評価」「緊急避難所、屋根のあるところで避難できた」「将来への課題もいくつか見えてきた」「ひとつは緊急時のリーダーシップ。総意を尊重するのが日本。通常はこれでいいが、災害は非常事態。決断は普段とは違う考え方を導入すべき。迅速な決断が必要。コンセンサスを得ようとして決断のスピードが遅れ間に合わなくなってしまう」「災害時は特例的な意思決定の方法やリーダーシップのあり方、即断、即決が必要」「もうひとつは情報公開のあり方。情報開示と伝達」「福島第一原発周辺では必要な情報が届かずかなりの混乱を招いた」「情報は可能な限り正確に、正直に、いち早く」「福島第一原発の事故以降、近隣の住民は情報がなく戸惑った。情報確認のため原発まで歩いていった人もいたと聞く」「復興の段階へ。被害や問題は何年も残る。報道が減ると問題も減ったように思われるが被災地は長い間、影響を抱える」「日本には災害から立ち直る力がある」「被災地は世界各国の支援、専門家、日本人自身の力を結集。教訓を生かしすぐれた防災システムが作り上げると思う」

 ②オリ・ハイノネン博士
 福島原発で何が起きたのか
 「日本にしばらく住んでいた」「すべての原子力発電所の中に入った」「東海村に訪れたときに地震が起こったが、チェック体制は優れていた」「今回は福島の原発事故が起こったため問題が大きくなっている」「マグニチュード9の大きな地震、地震には耐えた。放射性物質の漏れはなかった」「津波が施設の電源をすべて遮断。ディーゼル発電機も使えなくなった」「浸水で予備のバッテリーも使えなかった」「原子炉を冷却するために必要な電源を得る方法がまったくなくなった」「それが災害の始まり」「周辺のインフラが破壊され、橋も道もなくなる」「ディーゼル発電機を持ち込み、設置することもできない」「設置できても燃料がない」「製油所が破壊され、道路が破壊され、配達する車両も無く、燃料を補充できない」「そうした状況が重なって起きた事故」「福島の原発は一番大きな原子炉で1000メガワット。停止しても冷却しなければならない」「すべてが金属でできていてなかなか熱が逃げない」「熱を取り除くために冷却水を必要とする」「それができないと燃料が加熱していく」「セ氏300℃が事故直後は400℃まで上がった」「原子炉内に十分な冷却水がなくなり、燃料が加熱され、溶けてしまう。それが実際に起こり始めた」「燃料が溶けるとそれを包んでいたジルコニウムの被膜が破損。水素を生成する」「この水素がテレビで見た爆発を発生させた」「この段階で事故は最悪の様相を呈するが、その段階では防ぎようがなかった」「その結果大規模な原発災害が起きた」「日本政府の対応で評価できるのはすぐに10キロ範囲の住民を避難させたこと」「これがチェルノブイリと大きく異なるところだ」「問題は現在も続いている。短期的な対策が多く、状況は不安定」「燃料の温度を下げる努力が続けられ、今はかなりh低くなりセ氏200℃くらい。しかし100℃以下にしないと安全に管理できない」「この原子炉の底の部分は高い放射線煮汚染された水に浸かっている」「この汚染水を取り除き新しいポンプを設置する必要がある」「それが無理と分かったので別の場所にポンプを設置する必要がある」「この追加工事に3ヵ月くらいかかる予定だ」「その3ヵ月間に汚染水を取り除き、浄化して原子炉の中で作業員が仕事をできるようにしなければならない」「そこから標準の温度になるまでさらに3ヵ月ほどかかるかもしれない」「その後、原発のある地域で生活できる可能性も出てきて住民も近づくことができるようになるかもしれない」「今の状況は今年いっぱいくらい続くだろう」「まだしなければならないことがたくさんある」「原発の中の放射性瓦礫を撤去しなければならない。しかし、それをどこに捨てるかと言う問題もある」「東京電力が汚染水を海に流していることについて周辺諸国から多くの苦情があった」「しかし、どう考えても悪い答えしか出せない状況だった」「放射線の汚染水が大量にあったが移す場所がない」「仕方なく汚染度の低いほうの水を海に流し、拡散して濃度が薄まることを期待した」「まだ放射性物質が漏れる可能性はある」「3ヵ月くらいたち、密封する設備ができたらなくなるはずだ」「しかし、大きな余震があったら、また問題が生じるかもしれない」「原発事故の教訓。吉田兼好『徒然草』から言葉を借りる。『世は定めなきこそいみじけれ』」「世の中は不確かで将来を知るのは難しい」「地震も予知できない」「原子力発電に対する考え方を改める必要があるだろう」「一番大切なのは情報開示。ここにかなり失敗があった」「原発の事業者側に落ち度があった」「彼らが対応に追われていたと言う状況も分かる」「これまでの緊急対応計画ではエンジニアは恐らくひとつの事故しか想定していなかったと思う」「多発的な災害は考えていなかっただろう」「情報開示の余裕がなかった」「政府は東京電力からの情報に頼っていて、IAEAもこの点では不十分だった」「厳しいことを言うとIAEAの役割は政府から得た情報を流すだけでは足りない」「IAEAは独自の調査を行い、情報を確認し、影響を調べる必要があった」「何がまだ分からないのか、その不明の部分にどんな危険性があるのかを市民に説明すべきだと思う」「IAEAは加盟国にも情報を伝え、日本に住む自国民への対応を考える材料を提供すべきだ」「正確な情報があればそれらの国も効果的な援助が可能になった」「日本が必要とする専門家を送る、機材を送るなどだ」「作業員のことも考えなくてはならない。彼らは、1ヵ月、休まず作業を続けている。そのような状況では想像力を失ってしまう」。医師がほかの医師にセカンドオピニオンを求めるように、ほかからの意見を求めることも大切だ」「日本は海外からの支援の受け入れも遅れた」「すぐに実行すべきこと。緊急冷却方法と予備電源について検査する必要がある」「日本国内だけでなく世界中にある400の原発すべてで検討する必要がある」「原子力の設計についても検討する必要がある」「装置が設計どおりに作動しているかどうか」「短期的な対応と長期的な対応がある」「この震災の影響で福島の原発が実際にどうなっているかは中に入ってみないと確認できない。それはたぶん5年後くらいになると思う。検証ができるのはまだ先の話だ」「原発の立地も議論になるだろう」「原発の規模や災害時の対応についても検討が必要だ」「深刻な事故だったが、これを改善のためのきっかけとすべきだ」「原子力業界は基本に立ち戻り、作業を見直し、改善策を考えるべきだ」「原子力が今後安全に使用できるかどうかはまさに彼らにかかっている」。

 ③ミホ・マゼレウさん
 「日本が防災対策の分野で世界に先駆けていることを忘れてはならない」「神戸での震災を教訓に、日本の防災対策を紹介」「三木総合防災公園(兵庫県)は、陸上競技場が備蓄倉庫、仕分け場所になる」「これは自治体レベルの防災対策の一例。1995年の阪神大震災以降数多くの対策がとられる」「予防的措置の費用は災害後に対応した場合の4分の1で済む」「環太平洋火山帯にある地域の対策を紹介」「復興への市民の参加。コミュニティを作っておき、信頼、責任をはぐくむ」「情報とリスク伝達のあり方。都市計画を固める前に十分な情報開示が必要」「多方面からの関与のあり方。異なる分野にも対応できるように」「環境保護。津波にあった農地の塩害緩和で植林。防災にも役立つ」。

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Comments

支援してくださり
ありがとうございました。

世界中が支えあったこの年を忘れないでください。

日本は確実に復興します。

Posted by: an | 2012.03.11 at 11:18 PM

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