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浅川澄一著『これこそ欲しい介護サービス!―安心できるケア付き住宅を求めて』(日本経済新聞社)

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これこそ欲しい介護サービス!―安心できるケア付き住宅を求めて

 浅川澄一著『これこそ欲しい介護サービス!―安心できるケア付き住宅を求めて』(日本経済新聞社、2006年3月20日発行)を読んだ。
 
 浅川氏はまず、ケア付き住宅とは何かを説明する。
 「自宅並みの生活を施設に求めることはできない。施設は住宅ではないからだ。といって、自宅では施設のような24時間対応のケアを導入することはできない。そこで、両者の中間に位置するような新しい概念が必要だ。施設以上の暮らしの環境と、自宅以上のケアサービスの両方が求められる。それが『ケア付き住宅』である」。

 理想のケア付き住宅はまだまだ少ないが、介護の大きなトレンドは明らかにケア付き住宅に向かっているようだ。

 個室&小型化で「住宅」に近づく特養
 「従来、特養といえば、プライバシーのない4~6人部屋で、食事は全員が大食堂に集合するという集団処遇施設だった。どうして、そのように建てられたのか。病院をモデルにしていたからだ。6人や8人の雑居部屋が当然の入院病棟を参考に造ってきた」「1963年の老人福祉法成立によって制度化された特養は、長きにわたってそのような位置づけだった。それが40年近くたってようやく、特養は医療類似機関ではなく、長期療養の生活を送る所であるという意識転換が起こる」「厚生労働省は2002年度から、全室個室で、かつ入居者が10人前後でグループ生活を送れる造りの特養を推進し始めた。『個室&ユニット型』と名付け、同年度から認可する新設特養は原則的にすべてこのタイプにすることにした」。

 「従来型の特養の中でも、収容型ケアから抜け出そうという試みが始まっている。介護保険のデイサービス(日帰り通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)などのサービスを、特養ではなく周辺の民家で行う『サテライトケア』だ」。

 期待が高まる「特定施設入所者生活介護」
 「『有料老人ホーム』とは、常時10人以上の高齢者が入居し、食事など日常生活に必要な便宜を受ける施設で、ほとんどが民間企業の経営だ」「有料老人ホーム自体は、介護保険制度の対象外だが、これに特養レベルの介護サービスを付けた有料老人ホームは、介護保険上では『特定施設入居者生活介護』という在宅サービスに位置づけられる」。

 「介護スタッフがいて食事付き、しかも有料老人ホームほど高額ではない個室の集合住宅――。先々の介護不安を抱える高齢者にとって理想の住まいであろう。そんな施設が介護保険制度の施行で登場してきた。『特定施設入所者生活介護』の指定を取った『ケアハウス(軽費老人ホーム)』だ」。

 様々なケア付き住宅が相次ぎ登場
 「制度化された施設などの絶対的不足を背景に、『ケア付き住宅』と呼べる様々な高齢者向け集合住宅が増えてきた。これらは"住まい"を確保したうえで介護保険の在宅サービスを導入するなど、ユニークな手法を取っている」。

 「診察するだけでなく『高齢者にとって医療と生活は分かち難い』と考える医師たちが、住まいの提案を始めた。診療所近くに高齢者向けの集合住宅を造り出したのだ」。

 「『三度の食事を作るのが億劫になってきた』『もし急に倒れたら一体、誰が介護してくれるのだろうか』――。こんな悩みや不安を抱えた高齢者は多い。それに応えるような高齢者専用の住宅制度がやっと動き出した。国土交通省の『高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)』という制度を活用して、集合住宅に食堂や介護サービスを加えたものである」。

 認知症ケアの切り札「グループホーム」
 「90年代半ばになると、認知症高齢者向けの『グループホーム』が北欧から紹介され、ケアの切り札として登場してくる」「『グループホーム』は、少人数の高齢者が個室付きの家庭的な施設で暮らせるサービスである」「介護保険で制度化され、急速に普及する」「実質的な入居施設ではあるが、介護保険制度上は『在宅サービス』と位置づけられた」「『在宅サービス』だからこそ企業やNPO法人が運営に参入できた。そのうえ、訪問介護やデイサービスなど他の在宅サービスと違って、事業者が自由に利用料を決められる」「グループホームのようなスタイルがこれからの居住系ケアのモデルとなる」「個室をきちんと確保したうえで、ケアが入る」。

 「宅老所」こそケア付き住宅の原点
 「改正介護保険法に新しい複合サービス『小規模多機能型居宅介護』が導入された」「これは、デイサービスを中心に、要介護者の希望に応じてそのまま宿泊できたり、訪問介護も使える融通性あるサービスである」「小規模特別養護老人ホーム(サテライト特養)、小規模特定施設(介護付きの小規模有料老人ホームおよびケアハウス)、グループホーム、認知症高齢者対応型デイサービス、夜間対応型訪問介護と並ぶ6つの『地域密着サービス』の一つで、2006年4月から始まる」「地域密着サービスはいずれも、従来のように都道府県が指定権限を持つのではなく、市町村が事業者を指定しサービス量も決定できる」。
 「小規模多機能型居宅介護は『宅老所』というわが国独特のケア手法を厚労省が制度としてすくい上げたもの」「『宅老所』とは、認知症高齢者がゆったり自由きままに過ごせるように民家を活用した生活の場である」「その生活の場が『宅老所』という言葉で認知され始めたのは、NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター(CLC)の活動によるところが大きい」「CLCが掲げ続けてきた理想的な高齢者ケアの場は『小規模・多機能・地域密着』というスローガンに集約される。その具体的な答えが『宅老所』であり、それは『通って、泊まって、来てくれて、住まえる所』である」
 「『小規模・多機能・地域密着』を実現させた宅老所とは、要介護高齢者が自宅にヘルパーを呼び、時にデイサービスを使い、あるいはショートで滞在し、いよいよ自宅でのケアが難しくなれば、ショートの部屋がロングステイ、すなわち住み込んで"終の住処"となるところである」「重要なのは、最終的に『看取り』までできる住宅が保証されていること。自宅で死を迎えるのが普通の生活だろう。…ところが、厚労省は『小規模多機能型居宅介護』から『居住』を切り捨ててしまった」。

 「ケア付き住宅」に絞って、レビューをしたが、本書では、自治体が有料老人ホームやグループホームなどの進出を規制する動きなどもリポートしている。介護保険のコストを何とか抑えようとしているのだ。高齢者を抱える家族にとって必要な介護サービスも財政危機の国や自治体にとっては削るべき対象になっている。

 施設介護も在宅介護もどちらも中途半端という日本の現状。一体どうするのか。本来は、きちんと政治が対応しなければならない問題だと思う。

 本書のまとめのワンフレーズが、浅川氏の気持ちをよく表している。
 「『介護の社会化』は介護保険法の最も分かりやすいスローガンである。この7、8年の間に大変革を遂げた日本の高齢者ケア。制度を根底から変えたのは、アンチ家族介護の声であり、おざなりの施設介護からの改革運動だった。…様々な先駆的ケア手法が、これからも各地で競い合いながら花開いていきそうだ」。

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