堺屋太一著『エキスペリエンツ7 団塊の7人』(日本経済新聞社)
堺屋太一著『エキスペリエンツ7 団塊の7人』(日本経済新聞社、2005年7月15日発行)を読んだ。
experientsは経験豊かな人たちといった意味。この小説は、企業時代に培った専門知識を生かし、定年間近の年齢の団塊の世代のエキスペリエンツたちが商店街の再生に取り組む姿を描いている。
大手銀行を早期退職した坂本龍生は、高校の同級生で、商店街でそば屋を経営する木戸ここ路の相談を受け、商店街の再生に力を貸す。
「これは難しい……いや、駄目だ」
坂本の銀行員としての経験と理性はそう呟いていた。だが、もう一人の坂本龍生、五六歳を迎える金融エキスペリエンツとしての誇りは反対のことを叫んだ。
「難しいからこそ何とかしろ。この街を繁華にして桂ここ路を援けてやれ。一生に一度、そんなばかげた夢を持ったらどうだ」
坂本はこれまで交換した名刺3000枚の中から、信頼できる人間を選ぶ。設計、屋外広告、流通、介護など様々な分野のプロを集め、商店街の再生に取り組み始めるが、彼らの構想は、零細企業の経営支援よりも不良債権処理に力点を置いた金融機関の再開発構想と真正面からぶつかる。
7人のエクスペリエンツは、高齢者に優しい”歩いて暮らせる街づくり”を打ち出すのだが――。
「団塊の世代」という言葉を生み出した堺屋氏は「あとがき」で、団塊の世代が経済に与える影響などについて、「官僚や識者はいつも間違えてきた」と言う。だから団塊の世代の大量引退で労働力不足と年金破綻が同時に起こるだろうといった「団塊お荷物論」も間違いだろう、と見る。
「団塊の世代は、知識と経験と意欲を持ったエキスペリエンツなのだ」
「団塊の世代は、自ら造り上げた職縁社会から離脱、新しい日本――日本型知価社会を創造しようとしている」。
そのヒントは、この小説の中に散りばめられている。
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