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保坂隆著『老いの手本―いきいきと輝いて生きた人々―』(廣済堂新書)

Oinotehon
老いの手本―いきいきと輝いて生きた人々―

 保坂隆著『老いの手本―いきいきと輝いて生きた人々―』(廣済堂新書、2011年8月1日発行)を読んだ。
 保坂氏は聖路加国際病院精神腫瘍科医長、聖路加看護大学臨床教授。
 「はじめに」で、「年金や介護問題などの社会政策はいうまでもなく大きな関心事ですが、私は『心の問題を扱う精神科医』として、長い老後をどのようにして『楽しみ、喜び、輝きに満ちた日々にしていくか』ということに大きな関心を持っています」「そうした関心を持ちながら、本を読んだり、ニュースに触れているうちに、その答えが先人たちの生き方にあることに気づいたのです」と述べている。
 「十人十色、百人百様という言葉のように、老いの日の生き方も人の数だけあります」「本書は、そうした『老いの手本』をひもときながら、これから老いの日を生きていく標(しるべ)を見出していただきたいとおまとめたものです」。

 楽しい本だった。

 平櫛田中(ひらくし・でんちゅう) 彫刻家 1872~1979年
 「60、70は洟垂れ(はなたれ)小僧。男盛りは100から、100から」の言葉で知られている人だ。
 72歳で東京美術学校の教授になり、77歳で東京芸術大学の教授、93歳で名誉教授になっている。
 「100歳を超えても毎朝、丹念に新聞を読み、彫刻の題材によいと思われる記事はせっせと切り抜いていたといいます」。
 「『60、70は洟垂れ(はなたれ)小僧。男盛りは100から、100から』の言葉は、さらに『せくな いそぐな 来世もあるぞ』と続きます」。

 三井高利(みつい・たかとし) 三越の前進「越後屋」の創業者 1622~1694年
 「元禄時代、すでに当時の平均寿命を過ぎた52歳という年齢で伊勢から江戸に上り、呉服屋を開業して大成功を収めた」。
 「高利は勇躍江戸に出ると、かねてからいだいていた新しい構想の商売を始めるのです」「客を武士から庶民に替える。訪問販売をやめ、店売りにする。掛け売りはしないで、現金取引だけにする。一反売りだけでなく、端切れも売る。即日仕立ても行う……。どれもこれも、それまでの呉服屋商法の逆手をいくものでした」。
 「今日の三越、そして三井財閥に続く大商人の成功が晩年の20年で実現されたという事実は、現代の私たちにも大きな勇気を与えてくれます」。

 伊能忠敬(いのう・ただたか) 江戸時代の商人・測量家 1745~1818年
 「一心不乱に働いた第一の人生に、忠敬は50歳で終止符を打ち、息子にあとを託します。そして、いよいよ第二の人生とばかり、若い頃からの夢であった天文学の勉強を始めるのです」「忠敬は江戸に上り、当時の天文学の第一人者・高橋至時(よしとき)の門下に入門します。至時は忠敬より20歳も下」。 
 「じつは、蝦夷地測量の本当の目的は、地球の大きさを知ることでした」「江戸から最も遠い蝦夷地に行き、北極星の高さを測量する。江戸と蝦夷地の距離と、見上げる角度を比較して計算すれば、地球の大きさが算出できると推測したわけです」。
 「全国測量の旅は一度に行われたのではなく、忠敬56歳から72歳まで、計10回にわたっています。測量にかけた延べ日数は3737日」「忠敬が歩いた距離は4万キロにおよび、ちょうど地球一周を歩いたのとほぼ同じ距離になるそうです」。

 クロード・モネ フランス印象派の画家 1840~1926年 
 「なぜ、人々がモネの絵に強く心ひかれるのかといえば、モネは晩年、目を患い、かすれゆく視力と戦った画家だったからでしょう」。
 「白内障のほかにも目の病気に冒されたモネは深い絶望に陥り、60代最後の年から74歳までの作品は自ら切り裂いてしまったので、ほとんど残っていません」「しかし、それでも絵を描き続けます。80代に入ると片目は完全に失明し、もう片方の目も、かろうじて色を識別できる程度まで視力が落ちていました」「こうして心の目に映った光景を描いた70年代後半から80年代の作品は、おぼろげにとらえた光景に記憶のなかの光景を重ねあわせたものになりました」「モネは老いからくる衰えを、芸術的価値へと、より高い次元へと引き上げた画家なのです」。

 37人の晩年のドラマに感動した。

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