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与謝野 馨著『堂々たる政治』 (新潮新書)、『民主党が日本経済を破壊する』 (文春新書)

Dodotaruseiji
堂々たる政治

Minshutoganihonkeizaiwohakaisuru
民主党が日本経済を破壊する

 与謝野 馨著『堂々たる政治』 (新潮新書)、『民主党が日本経済を破壊する』 (文春新書)を読んだ。現役の政治家の著書はこれまで、宣伝臭い気がして読まなかったが、自由民主党を離れ、たちあがれ日本からも離れて無所属となり、菅再改造内閣で、経済財政政策担当大臣に就任するという一連の行動には興味を持った。
 
 次々に居場所を変える行動は、見境がないとみられたりもしたが、古い政治学の本(中村菊男著『新版 現代政治の実態』(有信堂、1974年10月15日発行)には、次のように書いてありる。
 「政党の目的とするところは政権の獲得にある」「その結合の基礎が主義や主張にあるのであるから加入離脱も比較的やさしい。加入離脱の容易でない政党は議会主義のワク内では考えられない」。
 主義、主張が異なってきたのに同じ政党にとどまるほうが潔くないのかもしれない。
 
 そう思って与謝野馨という政治家を見てみると、少なくとも、「税と社会保障の一体改革」に関しては、主張に一貫性がある。
 そこを検証してみたいと思って、この2冊を読んだ。

 与謝野氏のプロフィールを「与謝野馨のOfficial Web Site」で調べた。

2009
9月16日鳩山由紀夫内閣成立
民主党・社民党・国民新党の連立内閣となり、自民党は下野する

 これ以降、更新していない。表にしにくいのかもしれない。

 しかたがないのでフリー百科事典『ウィキペディア』を引用する――。

与謝野 馨(よさの かおる、1938年(昭和13年)8月22日 - )は、日本の政治家。衆議院議員(10期)。学校法人文化学院院長・理事。

衆議院議院運営委員長(第50代)、文部大臣(第117代)、通商産業大臣(第63代)、自由民主党政務調査会長(第46代)、内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策、規制改革担当)、内閣官房長官(第74代)、財務大臣(第11代)などを歴任した。

東京府東京市麹町区(現在の東京都千代田区)に与謝野秀(しげる)・与謝野道子の長男として生まれる。父・秀は歌人与謝野鉄幹・晶子夫妻の二男で外交官(戦前は外務省情報部長、調査局長などを経て在外公館勤務)。

2003年以降の主な略歴を抜粋する。
2003年、第43回衆議院議員総選挙で選挙区では僅差で海江田に敗れたが、比例復活で3年ぶりの国政復帰。2004年、自民党政調会長に就任し、小泉首相の進める郵政民営化に尽力、翌年9月に行われた第44回衆議院議員総選挙では、海江田に対して比例区での復活を許さないほどの圧倒的な勝利を収め、5年前の雪辱を果たした。2005年発足の第3次小泉改造内閣では、内閣府特命担当大臣(金融・経済財政政策担当)に就任。

2006年9月26日に安倍政権が発足。・・・結局自由民主党税制調査会会長に就任したが、就任直後の10月に口内に痛みを覚えるなどしたため入院し、11月には税調会長を辞任、療養生活に入った。

2007年1月初旬に退院した後も自宅療養を続け、同年4月13日の衆院本会議に出席し政治活動を再開した。同年6月8日に発売された『文藝春秋』7月号に寄せた随筆「告知」にて、喉頭癌による入院だったことを公表した。

2007年8月27日発足の安倍改造内閣において内閣官房長官に就任。

2007年9月12日、所信表明演説直後に突如安倍が辞任表明。その後安倍は体調不良で入院という事態となった。安倍が入院しても首相臨時代理は置かれなかったが、官房長官である与謝野が官邸を事実上仕切り、「与謝野官邸」と呼ばれた。また、同様に党務を仕切った幹事長の麻生とともに、麻生クーデター説のやり玉の一人に挙げられ、強く批判された(その後この説はデマと判明)。同年9月26日の福田康夫内閣発足に伴い内閣官房長官を退任した。

2008年8月2日、福田内閣の内閣改造により内閣府特命担当大臣(経済財政政策、規制改革担当)に就任
福田康夫首相の辞任表明に伴う自民党総裁選挙に出馬。財政再建を訴えて2位につけ、麻生太郎内閣では経済財政政策担当相に再任した。
2009年2月17日、財務大臣並びに金融担当大臣である中川昭一が先進7ヶ国蔵相・中央銀行総裁会議に於ける失態を理由として辞任したことに伴い、その後任に指名されたため、与謝野一人で経済関連3閣僚を兼任することとなった。
文藝春秋(2010年4月号)で自民党執行部を批判する記事を書き、同年4月3日自由民主党総裁の谷垣禎一と直接会談し、4月7日付で離党届を提出。会談で与謝野は谷垣に「自民党分裂とはとらないでください、大げさに感じないでください」と述べ、会談後も記者に「“自民党の分裂ではなく、一個人・与謝野馨が去ったということだと考えてほしい”と伝えた」と述べ、自身らの離党は自民党分裂ではないとした。4月10日の午前には「反民主・非自民を貫く」と述べ、結成を予定する新党は反民主の党であるとの認識を示し、4月10日午後、平沼赳夫、園田博之らとともに、新党「たちあがれ日本」の結党を正式に発表した。
2010年12月に民主党政権からたちあがれ日本の連立政権参加の打診を受けたが、与謝野が賛成する中で他5人が反対し、 党内で孤立。2011年1月13日、平沼代表に離党届を提出、たちあがれ日本から離党した。翌1月14日、菅再改造内閣にて、経済財政政策担当大臣に就任した。1月19日に無所属議員として衆議院会派「民主党・無所属クラブ」に入会し、再び与党議員となった。
与謝野の民主党政権参加には、除名処分にした自民党など野党から強く批判をされている。
2011年9月、野田内閣発足に伴い経済財政政策担当大臣を退任。同月5日、衆議院会派「民主党・無所属クラブ」を離脱。無所属議員となった。

生年月日 1938年8月22日(73歳)
出生地 東京都千代田区(旧・麹町区)
出身校 東京大学
前職 日本原子力発電社員
衆議院議員秘書
現職 文化学院院長・理事
所属政党 (自由民主党→)
(たちあがれ日本→)
無所属
称号 法学士(東京大学・1963年)
公式サイト 与謝野馨Official Web Site
特命担当大臣(経済財政政策担当)
(少子化対策担当)
(男女共同参画担当)
(社会保障税一体改革担当)
内閣 菅第2次改造内閣
任期 2011年1月14日 - 2011年9月2日

第11代 財務大臣
特命担当大臣(金融担当)(兼任)
内閣 麻生内閣
任期 2009年2月17日 - 2009年9月16日

特命担当大臣(経済財政政策担当)
内閣 福田康夫改造内閣
麻生内閣
任期 2008年8月2日 - 2009年7月2日

第74代 内閣官房長官
内閣 安倍改造内閣
任期 2007年8月27日 - 2007年9月26日

衆議院議員
選挙区 (比例東京ブロック→)
(東京都第1区→)
比例東京ブロック
当選回数 3回
任期 2003年11月10日 - 現職

その他の職歴
特命担当大臣(規制改革担当)
(2008年8月2日 -2008年9月24日)
特命担当大臣
(金融担当)(経済財政政策担当)
(2005年10月31日 -2006年9月26日)
第63代通商産業大臣
(1998年7月30日 -1999年10月5日)
第121代文部大臣
(1994年6月30日 -1995年8月8日)
衆議院議員
(1980年6月23日 -2000年6月2日)
衆議院議員(1期目)
(1976年12月10日 -1979年9月7日)
日本の旗 初代 たちあがれ日本共同代表
(2010年4月10日 -2011年1月13日)

 長くなったが以上が予備知識である。
 それでは2冊をレビューしてみよう。

 『 堂々たる政治』 は2008年4月20日発行。安倍晋三総理大臣の下で官房長官を務めた、わずか30日間の官房長官時代のことが最初の題材になっていることからも分かるように、書いたのは福田内閣入閣以前。与謝野氏の基本的な政治スタンスがこの本から読み取れる。

 「本来、政治家の仕事は全人格と人生を賭けて大きな判断をすることである。その時々の流れに迎合することではない」「だから耳障りであっても、事実をきちんとお話しする。時には批判を浴びることがわかっていても、国民に堂々と語りかける。それが政治家としての本道ではないかと思う」と「はじめに」に書いている。

 そんな与謝野氏の考えが示されている部分を抜き書きする。
 「最終的にはリーダーたるもの、世論と自分の判断が異なった場合、自らの判断のほうを取る覚悟がなければその座にあってはいけない」「考えの中心を他人の目にしてしまっては、取り返しのつかない失敗をしてしまう可能性がある」(第二章 奇道の政治、小泉元首相の遺産)。
 
 「小泉氏の構造改革論というのは、『国の財政出動で有効需要を発生させない』ということに尽きる」。
 「実体経済を蘇らせたのは、経済政策としての構造改革ではなく、民間企業の血のにじむような努力である」。
 「格差という言葉には、現象として『差がつく』という部分と、その差が不公平によってもたらされたという部分の二つがあるので、両方を考えなくてはいけない」「不公平は見つけ次第、早速直さなければならないが、格差がつくということはあり得る」。
 「これまでの規制緩和は、内閣の有識者会議が抵抗する役所を叩いて制度を改正させるという形が多かった。しかし、少人数の有識者が各省の色々な制度自体を運営できるはずもなく、制度の根幹はそのままにして、枝振りをいじるようなケースが増えてきた」「現実に即して、マイナーチェンジで済むものと、土台から仕組みを建て直すものとを峻別することが必要だ」(第三章 国家観なき市場原理主義の危険)。

 「イデオロギー的な区別ができなくなった政党同士が、きちんとした政権協議・政策協議を行った上で大連立を組めば、国会のブレーキ役を失うことにはならない」「そもそも『連立解消』というのもブレーキ役である」。
 「大連立にした方が、政党間のサービス合戦にならず、本当に日本の将来を考えた政策の実現が可能になるのではないかと思う」。
 「意思決定機能を喪失した今の国会の現状をこのまま放置してよいのか」「要はものを決められるシステムを構築することである」。
 「政治家にとって一番大切なのは何か」「それは、肝心なときにものを言い、肝心なときに行動することである」「人気取りに流れて肝心なことを言わないというのは、政治家としては『下の下』と私は確信している」「基本的に自分の頭で物事を判断し、逆に国民の皆様に理解していただく努力を続けていくことが大事だ」。
 「資源を有効に、ということでいえば、役人を最大限活用することが大切である」「政治主導とは、物事の行く末の方向を指し示すという意味だ」「政治主導ということと、『政治家が細かいことまで全部やらなきゃいけない』というのとはまったく別である」(第五章 政治家の王道)。

 「国と自分を分けて考えがちな国民が意外と多いのではないか」「国家とは、国民が割り勘で運営している組織に過ぎない」。
 「この長期金利がちょっとでも変動したら財政はたちまち破綻するし、破綻すれば長期金利はさらに上がり、経済不況になる。円の評価も下がって輸入物価がどんどん上がるから、インフレにもなる」
 「だから、2011年までに財政健全化の第一歩を踏み出すという方針が決まった。借金の返済のめどをつけつつも、社会保障などの制度も維持することになっている。この方針についてはそう異論はあるまい」「ただし、そのためにはみんなでちゃんと割り勘分を払わなければ、本当にこの国は支えられない」。
 「この割り勘をお願いするのに、二通りの徴収方法がある」「一つは例えば社会保険料を上げるという方法で、これはまだ割と提案しやすい。それは、保険料で払っても、そのまま給付という形で、自分にかえってくるという意識があるからだ」「もう一つの方法は税である」。
 「無駄をカットすることで浮くお金は、どんなに頑張っても年に数百億円にしかならない。ところが、私たちが直面している財政問題は、何兆円単位の収支である。財政赤字の問題解決として、無駄を省けばいいのだという議論は本質的に成立しない」。
 「私が最も訴えたいことは、難しい提言ではなく、負担すべきものは負担していただかないと国はやっていけない、ということ」。
 「国民の望む方向の政策を実現するためには、もっとお金を集めなければならないということを、正直に言わなければいけない」。
 「財布を二つに分けて、社会保障の財布からは社会保障のための費用しか充てないことを決めるべきだ。つまり、官の肥大化には一切使わせないような制度的担保をするということだ」。
 「国民に『大丈夫です』『まだ大丈夫です』と幻想を与えながら、崖っぷちまで引っ張っていくというのは、私は無責任だと思っている」(第六章 国家は割り勘である)。

 「積立金にまで手を出すというのは、短期的には良くても、結局『国民の財産を売ってしまう』のと同じである。お金に困ったからといって、働かずに資産を売り飛ばす商家の二代目ボンボンみたいなもので、それではいずれ店は潰れてしまう」。
 「日本の場合には労働力人口の減少効果が今後顕在化し、その分が押し下げ要因となるから、毎年2パーセント程度の成長であれば上出来ではないだろうか」。
 「明確に言えるのは、日本人が『もっと働き、もっと自分に投資し、もっと世界に出ていく』ということをしなければ、国際競争の中で日本は現在の豊かさを維持できないだろうということだ」。
 「最も必要なのは、現状と今後の見通しの正確な『告知』である」。
 「世界人口が100億近くにまで増加していく今後のポスト工業化時代に稀少財となるのは、環境であり、資源であり、技術である」「これまで以上の勤勉さ、創造力が求められるだろう。さらに世界へ出て、成果をあげる。また、海外の優秀な人材に日本に住んでもらい、良質な意味で競争を活性化する」(第七章 霞が関埋蔵金伝説と『上げ潮』路線)。

 2008年の著作だが、その後誕生する民主党政権の問題点を見て書いているような表現が多い。政治の劣化を予想していたとも言える。

 その民主党を批判したタイトルの著書が『民主党が日本経済を破壊する』だ。2010年1月20日発行。まだ、自民党に在籍していた時の著作だ。

 税と社会保障の一体改革に繋がるような取り組みについて書かれた部分を抜き書きする。
 第三章 世界同時不況との戦い 
 「将来に向けて期待できそうなのは高齢化でいやおうなく膨らんでいく医療や介護の需要、それに低炭素社会を実現するための環境技術など、これまであまり内需拡大というテーマの下では議論してこなかった新しい分野しかない」
 「4月にまとめた『経済危機対策』は財政出動の総額が15兆円超と過去最大の規模になった。これを盛り込んだ09年度第一次補正予算の内容を振り返ると、15兆円全体は大きく二つの対策に分かれていた」「一つは金融の目詰まりを絶対起こさせない、例えば企業が黒字経営なのに資金繰りで行き詰って倒産する事態を防ぐための金融対策だ。中小企業だけでなく、中堅企業、大企業まで含めて資金繰り支援を拡充した。15兆円のうちの3兆円強をそれに使っていた」「残りの12兆円はそれまでだと公共事業の追加となりがちなところを、この対策では1.8兆円程度と実際は1割強に抑えていた。地方に渡すお金が2.4兆円。残り7兆円余りを雇用、医療、介護や学校施設の耐震強化、低炭素社会作りといった視点を重視して配分していた。大きいところでは農業の体質強化にも1兆円規模を振り向けた」。
 「民主党は衆院選でも『補正は緊急性の高い経費を盛り込むのが原則なのに、たくさんの基金を設けてすぐに支出しない経費を貯めこんでいる。景気対策になっていないし、これこそ官僚のための埋蔵金だ』などと的外れな批判を繰り返し、政権交代した後で、『無駄』や『不要不急』の経費が目立つと言い募って約3兆円を執行停止してしまった」「実態は民主党の主張とはまるで違っていた。基金をいくつもつくったのは予算の単年度主義という原則を尊重しながら、財政支出が1年限りでは政策効果が持続できず、意味がなくなってしまう事業に、多年度にわたる予算をどう確保するこという知恵を絞った結果なのである。つまり、あの補正予算は短期の目先の需要創出はもちろんだが、将来に向かっての社会保障の機能強化による『安心社会』への第一歩を踏み出したり、成長戦略の種をまいておきたい、という中長期の目配りももう一つの大きな特徴だった」「例えば、基金方式で取り組もうと考えた事業には救急医療の確保や地域の医師確保など、地域医療の再生に努力する都道府県を支援する地域医療再生対策費(3100億円)も含まれていた」「介護分野も同じように力を入れていた。一生懸命働いてもなかなか収入が増えない介護職員の処遇を改善するため、事業者に3年間の助成をする。そのために基金を活用し、約4800億円を投入しようと考えた。特別養護老人ホーム、老人保健施設、認知症高齢者グループホームなど介護施設、地域介護拠点の整備を緊急に推進するためにやはり基金方式で2500億円を盛り込んでいた」。

 第五章 小泉改革の功と罪
 「2009年6月に経済財政担当大臣として取りまとめ、閣議決定した『経済財政改革の基本方針2009~安心・活力・責任~』(骨太の方針09)は自民党政権の『遺言状』のようになってしまったが、一つの特徴は、『格差がある』ということを前提に政策の方向性を書いたということだ」。
 「『骨太09』を取りまとめた際に、自民党内で大騒動になったのが小泉改革の遺産である『骨太の方針2006』の取り扱いだった」「尾辻秀久参院議員会長ら厚生労働関係に詳しい議員たちから、社会保障予算の抑制基調を転換するため、『「基本方針2006年」等を踏まえ』という記述を削除せよという強硬な主張が出され、党議決定機関である総務会が紛糾してなかなか決着がつかなかった」「党側の猛反発を受け、私は社会保障の1兆円規模の自然増はそのまま認める方針を示した」「ただ、『「骨太06」を踏まえた歳出改革の継続』という記述そのものをなくしてしまうと、社会保障だけでなく、公共事業や防衛費など、それ以外の経費も歳出抑制の拠り所を失ってしまう。だから、その基本的な枠組みだけは残そうと考えた。社会保障のセーフティネットはしっかりと守り、安心社会の柱とする。しかし、財政再建に向け、それ以外の歳出はギリギリの効率化や削減努力をするという二本立ての考え方で取り組んでいかなければならない」。

 第六章 高福祉・低負担はあり得ない
 「ここ最近、ずっと思案を続けていたのは、日本の将来を考えるうえでどうしても避けて通れない消費税率の引き上げを、国民にどう理解してもらい、政治的にどう実現できるかということだった」。
 「財政再建を進めるには、歳出カットの努力や経済成長で税の自然増収を得ることも大事だが、それだけではどうにもならないのが現実だ。その最大の理由は年金、医療、介護、少子化対策といった社会保障の給付やサービスが、今の仕組みのままでも少子高齢化が進めば、どんどん膨らみ続けるからである」「2002年には20歳から64歳までのいわば『勤労世代』が3.6人で、65歳以上の高齢者1人を支えている計算だったものが、このまま少子高齢化が進むと、2025年には勤労世代1.9人で高齢者1人を支えなければならなくなる。足元の2010年度予算編成を見ても、年金、医療、介護などの高齢化に伴う社会保障の自然増は1兆円を超えている」「社会保障も一定の節約や効率化には努めなければならないが、高齢化の圧力でそれを大きく超えて予算は膨らむ。歳入を増やし、この費用を安定的に賄う財源がどうしても必要だ。それには広く薄く国民全体で負担を分かち合う消費税が一番、適しているのではあるまいか」。
 「高齢者の中には、資産をたくさん持つ富裕な方もおられる。実際、マクロの統計では、国民の貯蓄の約7割は65歳以上の高齢者が保有していることになっている。こうした中で、高齢化に伴って生じる費用を、人口が減り続ける勤労世代にのみ負わせていくのは、社会正義に照らしても不公平であり、また、現実問題として困難である」
 「つまり、消費税率を引き上げるのは、全国民が連帯して皆保険・皆年金が象徴する日本の充実した社会保障制度を守るため、とも言える。この関係を一番分かりやすく説明し、納得してもらうには、消費税率をアップしたうえで、その増収分はすべて社会保障に充てるというやり方が考えられる。消費税をいわゆる『社会保障目的税』にするという言い方もできるだろう」。
 「消費税は既に1999年度から、当時は連立を組んだ自民党と自由党の政策合意で、税収の全額を基礎年金、高齢者医療、介護といった社会保障経費に充当する方針を一般会計予算の総則という部分に明記している」「現状では、基礎年金などの三つの経費の予算額が消費税収のうち国が使える分を大きく上回っている。したがって、目的税化したからといって無駄遣いや硬直化につながるといった批判は当たらないのではないか」。

 「財務省ともずっと議論を重ねてきたが、あるきっかけで消費税の社会保障財源化を財務省も受け入れたのである。それが05年10月の自民党財革研の中間報告、いわゆる『柳澤ペーパー』だった」「『柳澤ペーパー』は消費税率を引き上げる前提として、税収の全額を年金、医療、介護といった社会保障の給付に充てるという『社会保障目的税化』を初めて正面から打ち出した政府・与党の公式文書ではないだろうか」。
 「消費税の社会保障目的化にはいくつもの意味を込めていた」「第一は国民世論の増税への理解を得やすくする目的だ」「第二に消費税収は名目成長率にほぼ連動して伸びるので、少子高齢化で急激に膨らむ社会保障経費を経済成長のペースの範囲内に抑えることが一つのメドになりうる」「第三に社会保障費はどうしても増えざるを得ないとしても、その他の分野の歳出はここで勘定をはっきりと切り分けることができる」。
 「『柳澤ペーパー』で示した消費税の社会保障財源化の方向性は、私が経済財政担当大臣として取りまとめたと『骨太の方針2006』でも引き継いだ」。

 「07年秋、福田首相の下で再始動した第三次財革研は『骨太06』を土台に据え、『柳澤ペーパー』の路線に軸足を戻し、消費税の社会保障財源化の本格的な議論を進めていった」「11月21日、財革研は、『消費税の社会保障財源化』を実現したうえ、税率を2010年代半ばまでに少なくとも10%程度まで引き上げるよう提唱する中間報告を取りまとめ、発表した」 

 「なぜ税率を10%と見込んだかというと、年金、医療、介護や少子化対策の給付規模に2010年代半ばでほぼっ見合う税収を得られるのが10%だからである」「これから先、消費税は財政赤字を減らす目的には使わない、あくまで社会保障のサービス水準との関係で決まってくる税になるということを意味している。つまり、北欧諸国のように高福祉を望むのなら高い税率、低福祉を甘受するなら低い税率という具合だ」。

 2007年秋に大連立を巡る話し合いが不調に終わった後、「福田首相は吉川洋東大教授を座長に任命して有識者会議『社会保障国民会議』を首相官邸に設置した」
 与謝野氏は「08年8月の内閣改造で、福田首相から二度目の経済財政担当大臣に任命を受けた」
 しかし、夏野月遅れ盆休みも返上する勢いで経済対策を何とかまとめ上げた直後の9月1日夜、福田首相は突然、退陣を表明してしまった」「福田首相退陣を受けた総裁選に、私は初めて名乗りを挙げる決心をした」。
 「皆保険・皆年金が象徴する社会保障制度を将来にわたって守る。中福祉・中負担を維持する。その安定財源を確保するため、消費税率引き上げを含む税制抜本改革から逃げない。これが私が総裁選で訴えたかった『温かい改革』の核心部分だ。

 「吉川洋東大教授が座長を務めていた『社会保障国民会議』は最終報告書で、日本が戦後世界に誇っていた国民皆年金・皆保険を旨とする社会保障制度は、無年金、低年金者の増大や年金記録の大量の記載漏れの発覚、産科医の不足や救急医療・高齢者介護の現場における過酷な勤務実態など、綻びを見せていると警鐘を鳴らした」「年金、医療、介護や少子化対策といったセーフティネットを立て直す『機能強化』を実行する必要があり、そのためには、2015年度の時点で消費税率に換算して3.3%から3.5%分の新たな財源を確保する必要があるのではないか、という試算を公表した」「基礎年金の国庫負担率を三分の一から二分の一に引き上げるのに約1%分。最低保障年金の機能を持たせるなどの年金改革にもう1%分が必要になる。『医療崩壊』とも言われる中で、足りなくなっている医師を増やしたり、救急医療体制を充実したり、介護サービスを充実するのに約1%分。少子化対策にも約0.4~0.6%分というのが内訳だった」「社会保障の『持続可能性の確保』から『機能強化』に軸足を移すとはどういう意味か。それは聖域なき歳出削減を徹底し、少子高齢化でいやおうなく膨らむ社会保障費も例外とはせず、極力、伸びの抑制を目指した小泉首相以来の路線を軌道修正し、年金、医療、介護や少子化対策の給付などサービスを必要とする部分は一段と手厚くしていくということにほかならない」

 「12月24日には『3年後に消費税増税をお願いしたい』という首相の方針に沿って、『11年度より消費税を含む税制抜本改革を実施』することを目指した税制・社会保障改革の中期プログラムを閣議決定した」「09年の1月には、通常国会に提出した09年度税制改正法案の付則にこの中期プログラムを盛り込もうと考えた」「結局、付則には消費税を含む税制抜本改革を実行するため、経済状況を好転させることを前提に『2011年度までに必要な法制上の措置を講ずる』と明記した」「『付則』と聞くと何か軽く考えがちかも知れないが、法的効力は本則と変わらない立派な法律である。しかも、この付則には消費税の税収の全額を年金、医療、介護の給付と少子化対策に充てるという社会保障財源化の方向性も書いている」。

 第七章 民主党よ、耳障りな議論から逃げるな
 「消費税は年金、医療、介護などの社会保障に使う、という一言だけで、負担を増やしていただくなどということは、どうも甘い考えではなかろうか。…私はもう一度、原点に立ち戻って考えてみようと考えた」。
 「ここでもう一段、議論の幅を広げ、国民の多くが将来に対して抱いている不透明さや不安を払拭し、ある種の安心感を与える努力をまずしなければいけないのではないか」「私は麻生太郎首相とも相談し、…電通最高顧問の成田豊さんに座長をお願いして、民間有識者の皆さんにお知恵を借りようと09年4月、首相官邸に『安心実現会議』をつくった」「6月15日に『安心と活力の日本へ』と題した報告書をまとめていただいた」。
 「私たちが目指す安心社会とは、まず、『働くことが報われる、公正で公平な社会』でなければならないと思う」 「次に『家庭や地域で豊かなつながりが育まれる社会』でもなければいけない」「さらに安心して働き、生活していくには、教育・訓練、医療、保育、介護、住宅などの基本的な支えが欠かせない。これを言い換えれば、国や自治体、民間企業、非営利民間団体(NPO)などが連携して安心作りに取り組む『働き、生活することを共に支え合う社会』という言い方もできるだろう」
 「こうした安心社会を実現するためには、高齢者支援型の社会保障を引き続き大事にしながらも、若者・現役世代への支援も合わせて充実させて、全生涯、全世代を通じての『切れ目のない安心保障』を創り上げていくことが求められる。つまり、これまで重視してきた領域にまで幅を広げて多様な改革に取り組んでいかなければならない」

 「医療・介護・福祉の分野には、シビルミニマムとして必要な公的資金(すなわち税と保険料)を十分に投入し、それをベースに付加的なサービスに対して民間資金が存分に投入されていく、つまり高齢化社会における基幹産業として充実させていく。これは成長戦略的な発想からも必要なことだと思う」。

 今年6月にまとまった「社会保障・税一体改革案」は与謝野氏が関わった社会保障国民会議や安心社会実現会議以来の議論の積み重ねがもとになっている。
 「社会保障・税一体改革案」の策定には、与謝野氏の執念を感じる。

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