岩崎日出俊著『マネー大激震 逆境下の資産運用術』(ベスト新書)
岩崎日出俊著『マネー大激震 逆境下の資産運用術』(ベスト新書)を読んだ。
東日本大震災で衝撃を受けた岩崎氏が「立ち止まってばかりもいられない」と気持ちを新たにする「まえがき」が、とてもいい。岩崎氏の熱い思いが感じられた。
「われわれは今までのやり方を変えなければならない」「公共事業に頼り、時に談合を行い、道路を掘っては埋めるようなことをいつまでも繰り返す。そんなところに投資のマネーを投入していてもわれわれに未来はない」「一人ひとりが賢い投資家になることでマネーは最適に利用されるようになり、日本の、そして世界の成長に役立つ」。
「投資というのは『成長』に対して資金を提供してその果実にあやかることだ。その簡単な原則を踏みはずさなければ痛い目に遭うことは無く、あなたの資産は増えていくだろう」。
第1章 震災でマネーの流れが変わった
「震災によって首都圏の地価マップが劇的に変化した。東京の高層マンションの中には価格が3割下落したところも出始めたという」。
「これまで『資産』だと思っていた不動産は、震災を機に一気に『リスク』となってしまった」。
「『不動産』『年金』『退職金』。かつてこの3つが揃っていれば老後の生活は安泰、とくに不動産に関しては、『あれば助かる』とだれもが思っていた。しかしこの神話はもはや崩れ去ってしまった」
「投資銀行に就職して日本に転勤してきたユダヤ系アメリカ人のFさん。彼は日本が好きになり、…日本に残る目的で、日本で自らヘッジファンドを始めた。そんな日本好きのFさんでさえ、今回の東電や政府の対応を見てこう吐き捨てた『もう信じられない。日本株はとても買う気になれない』」。
第2章 資産がメルトダウンしていく
「世帯主が60歳代の世帯の平均貯蓄残高は2300万円を超える。日本の家計部門のネット金融資産(借入金を差し引いた後)の8割はこの世代が握っているのだ。これだけの資産を抱えているにもかかわらず『老後は安泰』と考えている中高年はほとんどいない」「一つはわれわれの誰もが、これから先、生活がもっと大変になると感じていることだ」「二つめが、われわれは『老後に意外とお金がかかるのではないか』という漠たる不安を感じていることだ」「三つめが、自分がいま持つ資産がこれから先、メルトダウン(溶けて落ちる)してしまうのではないかという恐怖だ」
第3章 震災後のマネー術
「ある日突然、日本国債を買う人がパタッと途絶える日がやってくるかもしれない。そうなったら2001年のアルゼンチンのように急激なインフレが起こり、100万円で買った国債が50万円になることもあり得る。そんな事態が間近に迫ってきたと分かったとき、自分の資産をすべてドルに変えるなり、不動産を買っておくなり、即座に対応する必要が出てくる」「不確実な時期にはチャンスをつかむ意味でも、ピンチをしのぐ意味でも、すぐ換金できる資産が大事なのだ」。
「日本企業のなかでもコマツ、ホンダ、キヤノンなどは世界の市場へ果敢に出て行き、株価も長いスパンで見れば上げてきているが、逆に言えば数多くの日本企業のなかでグローバルに認知されている企業は数えるほどしかない」「これからは日本企業にこだわらず、勢いのある企業を応援したい」。
「世界の新興国に足場を築き、新興国の成長を捕捉できる体制を整えているグローバル企業に狙いを定めて投資していく」。
「いま、その値段で持っているということは、その値段でその株をいま新たに買うのと同じことなのである」「株式投資とは過去を振り返るものではなく、企業の未来に賭けるものである」。
第4章では個別銘柄、第5章では金、外貨、米国債、FXを検討。
終章ではあとがきに代えて、アップル社のジョブズ会長のスピーチを紹介している。
不安の中での生活防衛、そして本来の投資をしっかり考える。「マネーゲーム」とは対極にある資産運用術を読んだ気がする。
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