田部井淳子著『 タベイさん、頂上だよ~田部井淳子の山登り半生記』 (ヤマケイ文庫)
田部井淳子著『 タベイさん、頂上だよ』 (ヤマケイ文庫、2012年2月5日発行)を読んだ。
テレビや雑誌で拝見する田部井さん。前向きで明るく、悩みなど一つもないように見えるが、この半生記を読むと、断崖絶壁だけでなく、人間関係でも大変苦労されていたのが分かる。
本書を読むと、田部井さんの何気ない言葉に重みが加わってくる。
1 山との出あい
「自分が一歩一歩登らない限り絶対に頂上には着かないんだ、この一歩はだれも代わってくれないんだと頑張り通した後の山頂の喜び、ワァー登ったんだなぁ、とうとう来たんだという感激は毎日の生活の中では決して味わえないものだった」
「山をとりまく自然の広がり、空気、あらゆるものが体中の臓器にしみわたる。ここにいる自分が本当の自分なんだ、一歩一歩汗して歩いてきたからこそ今ここにいるんだという自己存在を、私は山登りによって存分に味わうことができた」。
2 「白い山」と「めぐりあい」
「龍鳳登高会で一番若かった横尾康一氏…が私を”岩へ、雪へ、8000メートルへ”と駆けさせた人であった」。
「『お前はもう登れる、あとは自分でパートナーをみがき会を育てろ、そしてお前は8000メートルへ行け』といわれて私は横尾さんのパートナーから放された。佐宗(さそう)ルミエ(ペンネーム早川鮎子)さんが私を訪ねてきたのはその直後のことだった。
大河ドラマを見ているような楽しさだ。そのあともドラマが続く――。
3 「結婚」そして「友の死」
4 ヒマラヤ「夢」と「現実」
5 アンナプルナ「女のたたかい」
6 女だけの8848メートル
7 「撤退」か「前進」か
8 「タベイサン」頂上だよ
9 そして「これから」のこと。
この本は昭和51年2月から12月まで雑誌『山と渓谷』に連載された「エベレストママさん山を語る」に加筆したもの。
新田次郎「孤高の人」とともに、山好きの人は読んでおきたい一冊だ。
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