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香山リカ著『しがみつかない死に方―― 孤独死時代を豊かに生きるヒント』 (角川oneテーマ21)

Shigamitsukanai_shinikata
しがみつかない死に方

 香山 リカ著『しがみつかない死に方―― 孤独死時代を豊かに生きるヒント』 (角川oneテーマ21、2010年4月10日発行)を読んだ。

 この本は高齢者向けの本かと思ったら、30代、40代のひとり暮らしの女性の心に影を落とす、孤独死の問題を取り上げた本だった。

 「ちょっと考えれば、高齢でひとり暮らしをしている人たちのほうが、孤独死に対する恐怖は大きそうなものである。しかしこの人たちは、長くそこで暮らしてきて地域のつながりがあった、介護保険サービスでヘルパーや看護師が訪問したり、いっしょに生活していなくても子どもがどこかにいてときどき連絡してきたり、と完全な孤立状況ではない場合も少なくないようだ」「むしろそれよりも、にぎやかな都会でひとり暮らしをする30代、40代の比較的、若い単身者が、エアポケットに落ち込んだかのように孤立し、孤独死を迎えるケースが目につく」。
 
 「とくにシングル生活者にとって衝撃を与えたのは、08年暮れの、タレントの飯島愛さんの孤独死であった」。

 飯島愛の死以来、香山リカさんの精神科診療室を訪れる女性たちは、「飯島愛さんのことを想像しているうちに、『自分もそうなったらどうしよう』『いや、“なったら”ではなくてそうなるのだ』と思うようになり、その恐怖に耐えられなくて不眠、動悸などのお現実的な症状に襲われるまでになっている」という。

 「もし、自分が突然死を迎えることになったときには、いつ誰に気づいてもらえばよいのか。ひとり暮らしの人にとっては、切実な問題である」。
 「一般的には、遺体の傷みもそれほどではなく、倒れたままの姿で発見されるのはせいぜい『死後、3日以内』。それを超えると、人間の遺体とはいえいわゆる“生もの”なのだから、当然、腐敗が進んだりムシがわいたりする」。

 「遺体の傷みの程度により、発見してくれた人のショックの大きさが違ってくるのではないか、と思う」。

 
 「片付いていない部屋や台所、冷蔵庫、机、タンスなどを残して突然、主がこの世を去ったら、その後はどうなるのか」「家族、友人、恋人、同僚といった身近な仲間が片づける場合が、いちばん多いだろう」「しかし、そういった片づけを引きうけてくれる家族や知人がまったくいない、あるいはいても高齢だったり病弱だったりして、とてもやっかいな片づけなどできそうにない、という場合はどうするのか」「今はそういうケースのために、『遺品整理』を代行してくれる業者がいる。その草分けが、キーパーズ有限会社だ」。

 「パソコンのハードディスクに入っているデータやバックアップを取ったCD-R、携帯電話や過去のメモリはどうすればよいのか」。

 葬儀、尊厳死、遺言書・・・。孤独死の問題から、話題はどんどん広がっていく。

 しかし、たくさんの材料を検討した後の、香山さんの結論は意外にシンプルだった。
 「もしかすると、孤独死こそ、何にもしがみつかず、何からも解放された、究極の『自由死』なのかもしれない」「死に方なんて、その人とは何の関係もない。死に方にしがみつくのは、やめておこう」。

 死ぬことを当人があまり考えても仕方がない。人間は、いつ死んでもおかしくないのだから、「今を精いっぱい生きよう」と考えるのが正しいのだろう。ただ、死に方にしても死んだ後にしても、残された人が困らないように配慮しておくということは、最低の礼儀として必要なのではないだろうか。

 孤独死問題からスタートし、「死に方にしがみつくのはやめよう」と結んだ本書だが、エンディングノートなどはきちんと書いておき、いつ死んでも残された家族や友人たちに迷惑がかからないように生きたいと思った。
 
 「死に方=生き方」を考えるきっかけとしてとても参考になる本だった。

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