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香山 リカ著『老後がこわい』(講談社現代新書)

Rogogakowai
老後がこわい

 香山 リカ著『老後がこわい』(講談社現代新書、2006年7月20日発行) を読んだ。

 「あとがきに代えて」で、香山さんは、こんなことを書いている。
 「本書は、私の中では『就職がこわい』『結婚がこわい』と続いた“こわいシリーズ”の第三弾として書かれたものだ」「『こわい』シリーズ前二作を作ってくれた講談社現代新書出版部の岡部ひとみさんにお願いしていざ正式に取り組み出すと、なかなか執筆が進まなかった」。
 「実は私は、これまで『老後問題? ああ、私の場合はどうでもいいんだよ』と思っていた」「『今日いちにちをクリアできればそれでよし』という性格なので、考えられる未来はせいぜい『明日もチコクしないで出勤できるか?』まで、老後の自分などというところまでとても想像が働かないのだ。老後に関係したことで関心があるのは、少し執着のある両親のことと、かなり執着があるペットのことくらいであろうか……」。
 「ところが今回、『老人ホームとは』『ローンか賃貸か』『医療はどうなる』などひとつひとつ検討していく中で、私は本当の自分の老後問題について『考えられない』のではなくて、やはり『考えたくない』のではないか、ということに気づいた」。

 これは、多くの人に共通する心情ではないか。老後のことを考える作業は、あまり前向きな感じはしないし、普通は黙っていても社会や子どもが考えてくれると思いたい。

 それでも、仕事だからと書き進めていくうちに、「すべての問題はいま過渡期にあり、どんどん変わりつつあるのだから、今からあれこれ心配したって、なるようにしかならないのだ」と悟る。
 「ただ、『なるようにしかならない』ということは、『どうなってもよい』『ひどいことになっても仕方ない』という意味ではない」「『勝ち組』と『負け組』の峻別をよしとし、格差や差別もやむなしとする世の中では、『女性』であり『高齢者』であることはそれだけで二重の差別の対象になる可能性がある、ということがわかる。つまり私たちは、…差別される側として、世の中の動きをしっかり見つめていかなければならないということだ」。

 香山さんは、老後のいろいろな問題について、ほとんどの場合、「いますぐ、こうすべき」と言う方向が見えないので焦っても仕方がないと思う半面、ひどいことになるという心配もあるようだ。

 この本ではいろいろな老後の問題を取り上げているが、香山さんがそんな気持ちになるのも良く分かる。
 高齢社会をシニアがどう生きるか、という道筋が、どの問題をとっても見えていないのだ。

 たとえば、“終の棲家”。
 「実は平成13年4月には『高齢者の居住の安定確保に関する法律』という法律が制定され、高齢者の入居を拒まない『高齢者円滑入居賃貸住宅』の整備が各自治体に義務づけられた」「たしかにここに暮せばすばらしい日々が待っていそうな気もするが、ではこのマンションの場合、お金はいくらくらいかかるのだろう」「入居一時金が2210万円~7500万円、健康管理費が525万円。つまり、入居時に最低でも3000万円近いお金がかかるのだ」。
 いろいろ検討してみるが、「持家のないシニアシングル女性の住まいに関して、『これだ』という回答はないのだ」「『現状では住まいに関して多くを期待することはできなさそうだ』と割り切って、さっさと低価格老人ホームにでも居をかまえ、お金や心のゆとりを住まいの外での活動にあてる、という生き方もあるのではないだろうか」というのが本書執筆時点での結論だ。

 「いつまで働けるか」の結論も「『フリーになってこれをしたい』という強い希望がなく『でも何か仕事はしていたい』と思うなら、『もう○○歳なのにいつまでもいるのはおかしいのでは』などと体面を気にしたりせずに、とりあえず今の会社にい続けるほうがいいのだ」ということになる。

 介護についてもしかり。
 「介護保険制度と雨後のタケノコのように増殖した介護ビジネスは、いまだに試行錯誤の段階にあるとも言われている」「そもそも介護保険制度自体が本人や家族が情報を集めて申請し、自分で選ぶ自己責任を原則とするものだ。・・・そのため、介護保険の存在すら知らなかった、知ってはいたが、いったいどうすればいいのかわからない、といまだ申請に至らない人さえ少なくないという」。
 「たとえば、将来、介護の対象になる親を持ったすべての人に、ある年齢になった時点で介護に関する講習の受講を義務づける、といった措置は考えられないのだろうか」。

 医療について。
 「自分で払える医療費まで国や保険制度でまかなってくれ、と言うつもりはない。最高級医療を国民全員が等しく受けられるようにすべきだ、とも言わない。コストダウンは社会全体の傾向なのだから、それが医療の世界にも適用されるのは当然だ」「しかし、医療や介護を本当に必要としている人くらい、あまり無理のない自己負担でそれを受けられるようにはできないものなのか」。
 「一方では、都会を中心に自由診療を掲げる美容外科やアンチエイジングクリニックが林立し、数十万、数百万のお金を投じて“生き死ににかかわりない医療”を受けようとする人もいる」。

  香山さんが「なるようになるしかない」と達観するのも良く分かるが、放っておいても自然に解決する問題ではない。やはり、そろそろ手を打たなければいけない、と強く思った。

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