本田桂子著『その死に方は、迷惑です ―遺言書と生前三点契約書』(集英社新書)、『書くだけで安心 あなたと家族のための エンディングノート』(日本実業出版社)
本田桂子著『その死に方は、迷惑です ―遺言書と生前三点契約書』(集英社新書、2007年5月22日発行)、『書くだけで安心 あなたと家族のための エンディングノート』(日本実業出版社、2010年2月1日発行)を読んだ。
映画『エンディングノート』を観て、エンディングノートの書き方、遺言書との違いなどを学びたいと思い、この2冊の本を手に取った。
まず、『書くだけで安心 あなたと家族のための エンディングノート』より――。
なぜエンディングノートがあるといいのか。
①家族を悩ませずにすむ
●治療が難しい重病のとき、本人に告知するのかしないのか
●認知症になったとき、誰がどのような介護をするのか
●脳死状態になったときに延命措置を行なうのか、行なわずに自然死(尊厳死)を望むのか
このような決断を迫られると、家族はおおいに迷い苦しむはずです。そんなときに本人の希望が書かれているノートがあれば、家族はそれを参考にして決断できるので、精神的な負担が少なくてすみます。
②自分の希望をかなえられる
あなたが意思疎通できない状態になったときでも、万一のときはこのようにしたいというあなたの希望をまわりに伝えられます。ノートに記入しただけでは強制力はありませんが、家族があなたの思いを尊重してくれることが期待できます。
③財産を整理してマネープランを立てられる
いまある財産を整理して一覧にすることで、現在の財産状況が把握でき、将来のマネープランを立てやすくなります。また、これから使う予定のお金と残すべきお金が区別でき、将来の相続に際して「誰にいくら残すのか」を把握しやすくなります。
④家族へのメッセージが残せる
いつかあなたがこの世にいなくなったとき、家族はノートの中にあなたの自筆の文字を読んでなぐさめられ、普段のあなたを思い出すことでしょう。そのノートは子どもや孫たちにとって、あなたの生きざまを知ることができる、特別な贈り物になるはずです。
なぜ遺言書をつくったほうがいいのか。
エンディングノートをもとに、法的効力のある遺言書を作成すれば、あなたの願いを確実に実現できます。
遺言書をつくるメリットは遺産争いを未然に防ぐことだけではありません。遺族にとっては、むしろ相続手続きが簡略化されて負担が軽くなったり、高齢や病気で生活に不安を抱える家族が確実に財産を相続できるなど、それ以外のメリットのほうが大きいのです。
エンディングノートを書こうと思うと、財産について、自分がいかに無頓着であったかが分かる。
自分はどんな保険に入っていて、どんな場合にどのくらいの保険金を受けられるのか。ローンはどのくらい残っていて、いつ払い終わるのか。複数の銀行に、それぞれいくら預金があるのか。ほかに価値のあるものはないのか・・・財産に関することをまったく把握していない。
このまま突然死んだら、残された人間は預金通帳を探し、保険証書を探し、ローン残高の証明書を探し…と、大変な手間だろうと思う。本人でさえ、何も把握していないのだから。
自分が死んだ時に備え、このブログに最後の挨拶を入れておき、死んだ後に、家族か友人に反映してもらえば面白いと思うのだが、仮に“ブログ遺言”を残していても、ブログのID、パスワードを知らせておかなければ、実現できない。ブログがプロバイダーへの料金未払いで、突然消えてしまったら寂しい。エンディングノートの一つとして残しておきたい。どうすればいいか?
ブログのことだけでも、エンディングノートに書くべきことは、いろいろある。
エンディングノートは本当に1冊でいいのか。これは家族に頼みたい、これは友人に頼みたい…。個別の案件ごとに頼みたい相手が違うような気がする。“エンディングメール”があればいいのではないか。
エンディングノートは想像力を刺激してくれる。
自分が死んだり、寝たきりになったり、認知症になったりしたときにどうするのか…。こうしたリスクにしっかり対処しておくことが、「大人」という気がする。
そのためには遺言書と、“生前三点契約書”を作る必要がある。
『その死に方は、迷惑です ―遺言書と生前三点契約書』からポイントを拾ってみよう。
・死後のトラブルを防ぐ……遺言書
・高齢期のトラブルを防ぐ……財産管理等の委任契約書、任意後見契約書、尊厳死の宣言書―便宜上、この三つの書類を「生前三点セット」と呼ぶことにする。
「これらはいずれも公正証書にする必要性が高く、準備すべき書類も共通するものがあるため、一緒につくれば手間がかからないというメリットもある」。
「もし、あなたが人生の最終章を不本意な状態で終えるのではなく、最後まで自分らしく生き、周囲に迷惑をかけずにこの世に別れを告げたいと願うのなら、ぜひ、いまのうちにこれらの方法を活用してそなえていただきたい」。
遺言書は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がある。
▼自筆証書遺言
名前のとおり、遺言書の全文を自筆で書くものだ。紙とペンさえあればいつでも作成できるので、内容を誰にも知られずにすみ、費用がかからないというメリットがある。
その反面、書き方に不備があって遺言が無効になったり、遺言書を紛失したり、第三者が遺言書を破棄・隠匿・変造するおそれがある。また、本人の死後、相続人が相続手続きをするためには、その前に家庭裁判所で遺言書の検認を受けなければならず、手間と時間がかかる。
▼公正証書遺言
公正証書による遺言のこと。遺言をする人が、公証役場で公証人に遺言の内容を話して文面を作成してもらう。その際に、証人二人が立ち会う必要がある。遺言書の原本は半永久的に公証役場で保管されるので、紛失のおそれがない。
多少の手間と費用がかかるが、法律の専門家が作成するので様式不備によって無効となる可能性が低く、遺言書の紛失や偽造、隠匿などのおそれもない。また、本人の死後、検認手続をしないですぐに相続手続をすることができる。それ以外にも、次のようなメリットがある。
・自分で文面を作成する手間がかからない
・公証人から、遺言書の内容について法的なアドバイスが受けられる
・証人が立ち会うので、あとで遺言書の有効性が問題になったときに立証しやすい
財産管理等の委任契約書とは「財産管理や日常的な事務手続きをかわりにやってもらえるように、家族や信頼できる第三者と包括的な契約を結んでおくというものだ。この契約書があれば、原則としていちいち委任者(本人)が委任状を渡さなくても、受任者(契約を結んだ相手)が手続きを代行できるようになる」
委任契約の内容として、次のようなことが考えられる。
・預貯金や不動産などの財産管理(所有するアパートの家賃回収や、不動産の売却など)
・生活費、療養費、介護費用などのための金銭の引き出し
・ヘルパーとの契約、福祉関連施設・病院への入退院手続、介護保険の手続など
「財産管理等の委任契約書は体が不自由になったときのものだが、任意後見契約書は病気や精神障害などで、判断能力が低下したときのためのものである」。
「判断能力が低下している人を守るための制度として、『成年後見制度』がある。これは、後見人が本人の代わりに金融機関との取引や病院での手続きを行うなど、日常のさまざまな場面においてサポートしてくれるというものだ」
遺言書やエンディングノートは、会社にたとえれば、予算と中長期計画。それをしっかり立案することが、充実した老後を送る秘訣だ。
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