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中村寿美子著『こんな介護で幸せですか?― 知らなければ絶対に後悔する終の棲家の選び方』(小学館101新書)

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こんな介護で幸せですか?― 知らなければ絶対に後悔する終の棲家の選び方

 中村寿美子著『こんな介護で幸せですか?― 知らなければ絶対に後悔する終の棲家の選び方』(小学館101新書、2009年2月7日発行)を読んだ。
 本書はまず、「人生において、持病を抱えて介護を受けながら過ごす期間が長期化している現在、その要介護期間をいかに幸せに、快適に暮らせるかが、高齢期の生活の質を大きく左右します。だからこそ、自分が安心して満足に暮らせる『終の棲家』選びが大切なのです」と主張する。

 しかし、これまでの日本では、終の棲家は基本的には自宅で、終の棲家選びを真剣に考える必要はなかった。家族がいれば自宅で家族が介護するのが当たり前だった。介護の手がなく困窮した人々に対しては、老人福祉の手が差し伸べられていた。

 この状況が大きく変わったのは、「時代とともに家族形態が変化」したためだ。「専業主婦の嫁がいて、孫がいて、という2世代、3世代同居の大家族が減り、代わりに核家族や単身・夫婦二人のみの世帯が全体の約85%を占めるようになりました」。
 自宅で介護してもらおうと思っても、子どもや嫁が家にいないケースが普通になってしまったのだ。

 さらに、「少子高齢化も進み、日本は1994年に『高齢社会』(65歳以上の高齢者が人口の14~20%を占める)へ突入しました。2007年には高齢者が人口の21%以上を占める『超高齢社会』になっています」。
 「家族jで世話するという形の介護が困難になり、また介護を必要とする高齢者が急増し、福祉では支えきれなくなってきていました」「そこで『社会全体で介護を支えていこう』という考えのもとに生まれたのが、2000年4月にスタートした介護保険制度です」。

 「介護保険の施行後は、介護が必要な人は、介護保険の支給限度内であれば1割の自己負担で介護サービスが利用できるようになり、介護サービスを提供する事業者も急増し、プロの介護が身近な存在になりました」「そして高齢者の住まいも、介護保険を利用しながら暮らすことができる多様なタイプの住宅や施設が誕生し、選択肢が格段に広がりました」。

 ところが、ほとんどの人には、大人になっても、介護についての知識、情報は与えられず、介護が受けられる住宅や施設の知識、情報も十分ではないのが実情だ。

 そうした認識のもと、本書は介護の基礎的な知識と、介護が受けられる住宅、施設の選択のポイントなどをやさしく解説してくれる。

 まず「介護」とは何か。
 「『医療』と『介護』とはかなり近いところにありますが、両者は明らかに別物です。…私はしばしば、『みる』という言葉を使って説明しています。学校で習う『みる』という読みの漢字は、5つあります。『見る』『視る』『観る』『看る』『診る』です。では、介護はどの漢字で表現できるでしょうか?」「答えは『観る』、つまり『観察』です。手取り足取り、何から何まで、何でもやってあげるのがよい介護ではありません。その人の身体のどこが不自由で、いつ、どんな状態のときに、どこを、どのように援助してあげたらスムーズに動けるのかを、よく観察することが重要なのです」。
 目からウロコの解説だ。
 
 そして、「第3章 介護付き有料老人ホームなら『介護は安心』のウソ」。

 「介護付き有料老人ホームでは、介護保険の限度内で提供できる入浴介護は週2回と定められているので、多くの施設では入浴日が決まっています」「決められた入浴日以外に入浴介助を受けたい場合や、週2回以上お風呂に入りたい場合は、全額自己負担の有料サービスで、お風呂に入れてもらう以外に方法がありません」。

 「介護付き有料老人ホームに入居することは、そのホームが提供する介護保険のサービス(特定施設入居者生活介護)を受ける契約をすることと一体です」。

 これに対し、「住宅型有料老人ホームに入居している人は、介護保険上は自宅にいるのと同じ扱いになります。ホームの居室を『自宅』と見なし、マンションや一戸建てなどの自宅で生活して介護保険を利用するときと同じように、一人ひとりが個別に外部の介護サービス事業所と契約をして、介護予防サービスや在宅介護サービスを受けることができるのです」「介護保険の介護サービスと、ホームが提供する生活サービスを上手に組み合わせることで、ゆったりとしたサービスを受けながら、自分らしく暮らすことができるのが、住宅型有料老人ホームの大きなメリットなのです」。

 ならば住宅型有料老人ホームのほうがいいではないか、と思えるが、住宅型有料老人ホームにはデメリットがある。「要介護度が重度になったり、十分なケアを受けるために多くの介護サービスを盛り込むと、介護保険の利用限度額を超えてしまいがちなことです」。

 「介護付き有料老人ホームでは、ホーム側のルールやタイムスケジュールにそって、1日の流れの中で介護を受けるので、あまり自由度は高くありません。けれども、ホーム内に介護職員が24時間常駐しているので、要介護度が高くなり頻繁なケアが必要になったときは、こまめに対応してもらえるメリットがあります」。

 この違いを分かっている人は少ないのではないだろうか。

 このほか、「なぜ老人ホームの食事は『おいしい』と感じられないのか?」「入居費用が同じに見えても、施設によって異なる総費用」「家族が入居させたい施設に入居させられない不可思議」などの秘密が解き明かされる。


 本当によい有料老人ホームを見きわめるためには、こうした基本的な知識を得た上で、有料老人ホームの経営についての情報が必要になる。
 「有料老人ホーム市場は2000年の介護保険制度開始以降、急拡大しています。高い志をもってホーム経営に携わり、まじめに入居者と向き合う経営者もいれば、介護ビジネスは今後成長が見込めると考え、ビジネス優先でこの業界に参入してきた企業もあります」。

 ホームを経営する企業が倒産した場合は悲劇だ。「2006年4月から、ホームが倒産して入居者が住めなくなった場合、事業主体は500万円を上限に入居一時金の一部を入居者に返還することが義務づけられましたが、介護が必要な高齢者がゼロから生活基盤を立て直すには、決して十分な金額とはいえないでしょう」。 

 「ランキングや世間の評判、広告のあやふやなイメージなどに惑わされることなく、確かな情報を得たうえで、条件に合うホームかどうかを自分の目で確かめることこそが大切なのです」「ホームの確かな情報とは何でしょうか。それは、パンフレットや広告に記載されている『一時情報』だけではわからないホームの特徴、職員の質、入居一時金の取り扱い方、パンフレットには書かれていない隠れた費用、医療が必要なときの対応など、ホームの本当の姿を自分で確認して得られる『二次情報』です」「二次情報の情報源には、まず各ホームが都道府県の指導で作成している『重要事項説明書』や入居者と交わす入居契約書などのさまざまな書類があります」「二次情報にはもうひとつ、重要な柱があります。それは、実際にホームを訪れて、そこで自分の目で見て、耳で聞いてて、肌で確かめた情報です」。

 有料老人ホームについては、固定観念で見ている人も多い。本書は、最後に、多様な利用の仕方があることも紹介する。
 「有料老人ホームの入居者というと、多くの人が一人住まいの高齢者をイメージします。しかし、実際は入居者の2割くらいは二人入居で、夫婦で入居しています。中には親子で入居するケースもあります」。
 「有料老人ホームを積極的に活用した先駆者たちは、自立した生き方を実践した女性の文筆業の方々でした。今は亡き、評論家の石垣綾子さん、旅行随筆家の戸塚文子さん、そして社会学者で上智大学名誉教授の鶴見和子さんも早くから入居されて、ご自分の人生を全うされました」「最近では、女優の有馬稲子さんが、76歳で有料老人ホームへ入居されたことが話題になっています」。

 「介護は『自己決定』が原則であり、どのような介護を受けるかを選択・決定するのは本人です」。

 終の棲家は十分な情報を入手して、自分で決めたいと思った。

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