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川嶋朗著 『医師が教える幸福な死に方』(角川SSC新書)

Ishigaoshieru_kofukunashinikata
医師が教える幸福な死に方

 川嶋朗著 『医師が教える幸福な死に方』(角川SSC新書、2012年3月25日発行)を読んだ。

 この本の狙いは「はじめに」に簡潔にまとまっている。

 「長生きをしたいのなら、これからの時代は一人ひとりが『自分の体については自分で責任をもって管理する』という意識を持たなければなりません。そうしなければ、社会の高齢化の急速な進行により、高齢者の医療費増加、介護の問題などがさらに深刻化し、医療は崩壊してしまうでしょう」。
 「私たちは、自分の寿命について考えることを先送りにし人任せにして、無自覚ですらあると言えなくもありません。その結果が『ただ長生きでいいや』につながり、昨今生じている医療現場におけるさまざまな歪みの一因になっているとも言えます」。

 いま、消費税増税が最大の政治課題になっているが、その背景には高齢化に伴う社会保障費の膨張がある。しかし、「一人ひとりが『自分の体については自分で責任をもって管理する』」ようになれば、社会保障費の膨張に一定の歯止めがかけられるのは間違いない。社会保障の問題は、本来はこうした国民一人ひとりの自覚の問題にまで踏み込まなければいけないのだろう。本書は、健康に生き、幸福に死ぬために我々が何をすればいいかを具体的に示してくれる。
 

 まず問題点から。
 「2010年時点での国民医療費は、37.5兆円まで膨れ上がっていますが、これは同年の国の税収41.5兆円に近い数字です。さらに15年後の2025年には52兆円に達すると、厚生労働省は試算しています」。
 「現在でも国民医療費総額の約半分は、65歳以上の医療費が占めていますから、今後、医療費が増大することは避けようのない現実です。さらに、一人あたり2300万円といわれる生涯医療費の半分は70歳以上になってから消費すると言われているのです」。
 「高齢者、そして私も含めたその予備軍である世代の人たちは、『医療費を減らすために自分たちができること』を考えるべきなのです」。

 消費税増税の議論の中で、「行政の無駄などを減らせ」とよく言われるが、「自分たちの医療費の使い方を見直そう」との呼びかけはあまり聞こえてこない。不健康な老後を送ることは、本人も家族も、そして国にとっても不幸なことなのだ。「医療費を減らすために自分たちができること」を見ていこう。

 「ただ単に、『死なせない医療』を受けて、『名ばかりの長寿』を喜んでいるという時代は終わりにしなければいけません。高齢化する社会の未来を明るいものにするためには、より実りのある『質の高い寿命』を全うすることが大切です」「言ってみれば、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を保ち、QOD(クオリティ・オブ・デス=死の質)を高くして人生を終えることが大切なのです」。
 「『QOD』とは、超高齢社会をよりよく生きてほしいという願いをこめて、私が提唱するキーワードです。最期の瞬間まで、『本人の理想とする生き方をし、残された家族にも後悔の念を残さない死に方をする』ということです」。

 以下、QOL、QODを高めるためにすべきことを詳しく説明している。
 「たとえば、今60歳の人が、当面の寿命の目標を80歳までと定めれば、あと余命は20年です。さしあたって、健康診断を受けましょう。そして、今の健康状態に照らして、20年を元気で長生きするためには、何をするべきなのか、あるいは何をやめるべきなのかをリストアップします」。
 「自分の体の状態を相談でき、ただやみくもに投薬をすすめるのではなく、適切なアドバイスをしてくれる医者を見つけるべきです」。

 「日頃から、『死ぬまでにやっておくべきこと』をきちんと整理し、実行していくと、QOD(死の質)の高い死を迎えられます」「
 『やるべきこと』は『財産管理や遺産相続をどうするのか』『受けたい医療や介護、延命治療の要不要は?』『葬儀については?』『家族に言い残したい遺言は?』など、自分のためであると同時に、残された人々が後々困らないために、やっておかなければならないことが中心です」。

 「延命治療にはさまざまな方法がありますが、患者さん本人やその家族は、回復の見込みがないのに人工呼吸器や人工心臓、人工透析、輸血、水分・栄養補給、薬剤投与などで延命を図られること対しては総じて否定的です」。
 「人工呼吸器や人工透析など中断すればすぐ死に至る治療を、始めてしまってから中止するのは家族にとっても医者にとっても非常に重い決断となります」「ですから、患者さん本人がしかるべき書面などによってきちんと意思表示をし、家族や周囲の人に納得してもらった上で、かかりつけの医者などに事前によく相談しておくことが重要なのです」「いわゆる『事前指示書』、あるいは『リビング・ウィル(尊厳死宣言書)』によって意思表示するということです」。

 殆どの人は、なかなか自分の死を具体的に思い描けないのではないかと思うが、老いてから死ぬまでのプランニングはをしておけば「終わりよければすべてよし」になるのかもしれない。

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