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鈴木隆雄著『超高齢社会の基礎知識』 (講談社現代新書)

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超高齢社会の基礎知識

 鈴木隆雄著『超高齢社会の基礎知識』 (講談社現代新書、2012年1月20日発行)を読んだ。

 超高齢社会がさらに進んだ2030年の超々高齢社会とはどんなイメージになのか。
 65歳以上が「高齢者」と言われるが、60代と、70代後半から80代とは健康状態もまったく変わってくる。これを一括りにして論じていいものか。
 高齢者が要介護状態にならないようにするためにはどんな予防をすればいいのか。
 生活の質を保ちながら生きるとはどういうことなのか。

 『高齢社会の基礎知識』がタイトルだが、扱うテーマは深く、考えさせられることばかりだ。
 これから深刻化しそうな超高齢社会の諸問題を見渡しながら、それぞれに、どういうスタンスで立ち向かうべきかを示唆してくれる広くて深い、とても良い本だ。
 

 鈴木氏はまず、超高齢社会がどんな社会で、どんな問題が生じてくるのかを説明する。

 「人口学的には、総人口のなかで65歳以上の高齢者の割合が増加することを高齢化という」。
 「高齢者人口が全人口の7パーセントを超えると『高齢化社会』といい、その2倍の14パーセントを超えると『高齢社会』、さらにその3倍の21パーセントを超えた社会を『超高齢社会』と呼んでいる」。

 「高齢化社会となる7パーセントの4倍化(28パーセント)が達成されるのは2030年ころと推定されている」「このような社会は超々高齢社会と呼ばれても不思議はない」

 「社会を高齢化させる要因のひとつが出生率の低下である」「出生率、なかでも15歳から49歳の女性の年齢別出生率の合計である合計特殊出生率は、1人の女性が平均して、一生のあいだに何人の子どもを産むかを示す指標であり、将来の人口の目安となる」「すなわちこの合計特殊出生率が2.0であれば将来人口は横ばい、2.0以上が自然増、2.0以下が自然減となる」「わが国では1970年代後半にはすでに2.0を下回り、1990年以降20年以上にわたり1.2~1.5とずっとその低い値が持続している」「このため、すでに2007年ころから総人口が減少しはじめている」。

 「一方、総人口の減少とは逆に、高齢者人口あるいは総人口に占める高齢者の割合は大幅に増加する。なかでも75歳以上の後期高齢者が急増することが見こまれる」「現在の後期高齢者人口(割合)・・・・・・1430万人(11.2パーセント、2030年ころの後期高齢者人口(割合)・・・・・・2270万人(19.7パーセント)」「この大きな原因は第二次世界大戦後の1946年から50年ころに出生した、いわゆるベビームーム世代が高齢化するからである」。


 高齢化に伴い問題となるのが単身高齢者世帯の増加だ。
 「2009年では、単身高齢者世帯・・・・・・23.0パーセント 高齢者夫婦のみ世帯・・・・・・30.0パーセント と高齢者だけの世帯が50パーセントを超えている」「2030年には、単身高齢者世帯・・・・・・38パーセント 高齢者夫婦のみ世帯・・・・・・30パーセントとなり、今後単身高齢者が急増してゆくことが想定されている」

 「2010年の75歳以上の後期高齢者での配偶関係を見ると、『有配偶』の男性……78.5パーセント 『未婚・死別・離別』の男性……21.5パーセン トにたいして 『有配偶』の女性……33.1パーセント 「未婚・死別・離別」の女性66.8パーセント と著しい差があり、後期高齢女性において配偶者をもたない者の割合が大きい」。
 「これら単身高齢者や後期高齢女性での非配偶化の増加は、高齢者の自立と尊厳を尊重する一方で、見守りやインフォーマルな支援といった社会的支援(ソーシャルサポート)、高齢者の閉じこもりや孤立の防止などを地域(コミュニティ)でどのように作り上げてゆくのかという今後の超高齢社会のもっとも重要な課題を内包している」。


 「今後の高齢者人口の増加は、わが国で均一に生じるのでなく、大きな地域差が存在する。すなわち東京を中心とする首都圏や大阪といった大都市圏で、より大幅に高齢者人口が増加する」「大都市特有の団地の超高齢化や独居高齢者の急増とそれにともなう閉じこもりや孤独死の増加が懸念される。さらに高齢者、とくに虚弱の進行した後期高齢者への支援や介護サービス量の大幅な増加にたいする有効な対応策を生み出していかなければならない」。


 75歳ころを境に「・生活機能障害高齢者 ・要介護高齢者 ・認知症高齢者」が増えてくるという。
 「さらに前期と後期の高齢者における要介護の原因についても明らかな違いが認められる。すなわち前期高齢者での要介護原因の約半数を占める最大の原因は脳卒中であるのにたいし、後期高齢者ではむしろ衰弱、認知症、転倒・骨折が多くなり、まさに老化にともなう心身の機能減弱が顕在化してくるのである」。


 「2030年ころの団塊世代の方々死亡ピーク年齢に達したときの年間死亡者数は、およそ170万人(うち65歳以上hが150万人)に達すると推定される。すなわち現在よりも約50万人の死亡者数増が見こまれているのである」「現在の医療資源、あるいは病院がその急増する死亡者の受け皿となりうるのであろうか? 答えは相当困難であるといわざるをえない」「ひとつは単純に病床数の問題である」「もうひとつの理由は、医療費の問題である」「終末期医療における費用と場所の問題を解決することは必然である。すなわち終末期における濃厚治療のありかたの見直しと、みずからの終末期のありかたを選択しうるリビング・ウィルの普及、あるいは病院での医療から在宅医療への転換などである」。

 
 高齢に伴う衰えは、どんな形でやってくるのだろうか。
 鈴木氏は、旧東京都老人総合研究所が実施している「老化に関する長期縦断研究」をもとに解説する。

 「高齢期では加齢とともに歩行能力が衰えていく」
 「一般に女性では筋肉や骨あるいは関節など筋骨格系の老化が著しく進むのにたいして、男性は血管の老化すなわち動脈硬化を基盤とした血管病変が速く進む」
 「要支援あるいは要介護の1や2といった軽度のサービスを受けている人には圧倒的に後期高齢者の女性が多い。その原因は高齢による衰弱、転倒・骨折、認知症などである」「一方、男性では比較的軽度のものは少なく、たとえ前期高齢者であっても脳卒中により最初から要介護2や3といった重いサービスから受給を開始していく例が少なくない」。

 現在の高齢者は以前の高齢者より若返っているとよく言われるがそれは本当なのだろうか。
 「たとえば、握力については、1992年の65歳以上の集団の平均値と分散に有意差のない、ぴったりと重なる集団は、2002年の男性69歳以上の集団および女性75歳以上の集団であることが明らかとなった」「このことは今日の高齢者は10年前の高齢者に比べて、握力でみるかぎり男性は4歳若返り、女性は10歳若返ったことを意味している」。
 「通常歩行速度は、男女とも11歳若返っており、わずかこの10年間で大きな健康水準の変化が生じていることを示している」

 「今日の高齢者は過去の高齢者とは明らかに異なる身体的に若々しい集団である。とくに65~74歳の前期高齢者、あるいは少なくとも60代は、これまで社会経験が豊富でスキルの十分に備わった社会的資源としても優秀な集団ということができる」「圧倒的多数の企業で定年があるのは労働者としての高齢者の能力を的確に評価できていないのではないだろうか? 意欲と能力のある高齢者の雇用や定年について社会は抜本的な改善が必要だと感じている」。

 「もはや高齢者を一括りにすることはできない。男性と女性、前期と後期の高齢者、10年前の高齢者と今の高齢者、さらには今後出現してくる65歳以上の集団は相当に異なる集団であることを念頭に置きながら、今後の社会においてさまざまな戦略を立て、制度を設計していかなければならない」。


 75歳くらいを超えたら、病気の予防よりも介護状態にならないように予防することが必要と鈴木氏は説く。

 「生活習慣病における死亡率の具体的な変曲点はおよそ70~75歳のあたりに存在してる。ということは、それ以前が生活習慣病の予防対策を重視すべき時期であり、それ以降はむしろ介護予防にその重点を移すべき時期といえるのである」。

 「中年期の男性がとくに注意しなければならない血管の病的な老化(動脈硬化)を予防するためには、まず禁煙が挙げられる」「もちろんメタボ対策の中心といわれる運動は必須である」「中年期から高齢期にいたるまでの継続的な(少しずつ着実で根気強く続ける)運動こそが自分でできる最強の予防対策である」。

 「女性における筋骨格系の老化予防は、高齢期における自立維持の視点から喫緊の重要課題である」「より具体的に対策方法を挙げるとすれば、中年期の生活習慣予防にたいし高齢期においては、『老年症候群』をいかにして予防するかということである」。
 老年症候群とは「転倒、低栄養、口腔機能の低下、認知機能の低下をはじめ、尿失禁、筋肉の衰弱、あるいは老化にともなう足の変形と歩行障害」などである。

 「老年症候群の早期発見と早期対策は高齢者において疾病予防以上に重要な意義をもっている。もっとも重要なことは、自らが老年症候群のさまざまなサインに気づくことであるが、推奨される効果的・効率的方法は健診(検診)のしくみを活用することである」
 「私たちがこの理念にもとづき、2001(平成13)年からモデル的に開始したのが東京都板橋区で地域在宅高齢者を対象とした『お達者検診』である」「高血圧や糖尿病など必要最低限の(高齢者に多い)疾患もチェックし対応してゆくが、基本的な理念としては個々の高齢者の生活機能や老年症候群の有無を確認することがもっとも重要な機能である」「このような高齢者の生活機能や老年症候群に焦点を合わせた健診によって、なんらかの危険性をもつ高齢者、すなわちハイリスク高齢者が抽出されてくることになるが、そのようなハイリスク高齢者にたいしては、科学的に有効性の確認された介入プログラムを提供することになる」。

 「国の施策としての介護予防は2006年(平成18)年に開始されたが、まだその歴史が浅いこともあり、現時点では必ずしも十分に機能しているとはいいがたい。介護予防サービスを受ける高齢者を当初5パーセントと想定していたが、現在でもたかだか0.5パーセントぐらいであり、その利用率は低迷を続けている」。

 「ひとつには残念ながら、一般にもそして高齢者本人にもその認知度が低いことにある」「もうひとつの問題は、たとえ高齢者に老年症候群や要支援・要介護状態に陥るリスクが高くても、自分には関係ないとか、自分の体のことを他人に知られるのは恥ずかしいという感覚である」「わが身に起きている危険な老化あるいは要介護状態の始まりに気づかないのである。これからは家族や周囲の方々も含めて、さまざまな危険な老化のサインを早く感じ取ることが介護予防、そして生活の自立の第一歩となる」。

 「介護予防事業をおこなうためには、当然要介護状態となる危険性をはらんでいる高齢者(ハイリスク高齢者)を適正に、できるだけ早く把握する必要がある。その把握のしくみとして、最初に『基本チェックリスト』と呼ばれる25項目からなる質問票がある」

 「これからは、いかに生命の質、生活の質を保つかという一点において国民のコンセンサスを得ることが重要となる。ヒトの限界寿命まで生存が可能であるということは、同時にその限界まで疾病を先送りし、要介護状態を先送りすることでなければならない」。

 「年齢とともに高次の生活機能から障害が発生することは確実である。ここではまず、どのようにそれらの障害が発生するのかを見てゆくことにする」。
 高齢者の高次生機能は以下の3つの領域で測定するという。「手段的自立」(自立的な日常生活を送るための活動能力)、「知的能動性」(余暇や創作などの知的活動の程度)、「社会的役割」(家庭や地域などでの社会的つながり)。
 「高齢期では、 ・社会との交流や関係性の低下→知的関心の衰え と移行してゆくことがわかる。その結果、家庭内ではなんとか独りで生活してゆく(手段的自立)能力は保たれたとしても、いわば外部との関連性が失われ、徐々に閉じこもってゆくことが容易に想像されるのである」「したがって、どうすればいつまでも社会とのかかわりを維持できるかが大切であり、家族や地域での高齢者に対する社会的支援を今後どのように充実させるかが課題である」。

 「世のなかには『ピンピンコロリ(PPK)』で大往生したいという願望が根強く存在する。しかし、…死ぬ直前までピンピンと元気で、あるときコロリと大往生するなどという死にかたは非常に少ないといわざるをえない」「もっとも重要なのは、宝クジに当たるようなPPKを望むのではなく、人生の晩年において、自立した生活に向けて努力し、自分が納得した介護を受け容れ、障害をもったとしてもいかに幸福な人生と感じ、満足して死ぬことができるかということである」「そのためにも、どうしても、やはり介護予防による自助努力、歩行能力の維持、排泄障害時のリハビリ、そして摂食障害時の胃瘻か、自然死か、など自己選択について考えておくことは避けて通れない。これらの問題に正面から向き合って考えなければならない時代なのである」 
  

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