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小林雅一著『日本企業復活へのHTML5戦略 アップル、グーグル、アマゾン―米IT列強支配を突き崩す』(光文社)

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日本企業復活へのHTML5戦略

 小林雅一著『日本企業復活へのHTML5戦略 アップル、グーグル、アマゾン―米IT列強支配を突き崩す』(光文社、2012年4月20日発行)を読んだ。

 「非常に狭い意味でのHTML5とは、ホームページ(ウエブ・ページ)を記述するマークアップ言語『HTML』の第5版、つまり4回目の大幅改定版を指す」。
 「しかし、最近IT業界のバズワード(流行語)ともなっているHTML5とは、このマークアップ言語HTML5を中心とする、かなり広範囲にわたる『最新のウエブ技術』群を指している」「この中にはインタラクティブ(動的)なホームページを製作するために必須のスクリプト言語『ジャヴァスクリプト(JavaScript)』や柔軟なデザイン機能を司る『CSS』、あるいは高度なグラフィクス機能を実現する『SVG』や『WebGL』など多彩な言語(技術)が含まれる」。

 「私たちがこれまで使ってきたウエブは、たとえば新聞社のサイトのように『何かを見て、情報を得るためのホームページ』であったが、HTML5で作られる今後のウエブは、たとえば『ワープロ』や『表計算』や『ゲーム』のように、動的なアプリケーション・プログラム(アプリ)を提供するシステムへと大きく転換する」「要するにウェブが、アプリを提供するプラットフォームになるわけだ。これがHTML5の最大のポイントであり、アップルのアップストアやグーグルのアンドロイド・マーケット(2012年、グーグル・プレイに統合された)など各社独自のアプリ配信システムに対抗できると期待されている所以である」。

 「HTML5は『W3C(World Wide Web Consortium)』と呼ばれる中立的なコンソーシアム(企業連合)が管理する、いわゆる『オープン・プラットフォーム』である。つまり、誰にでも均等な機会を提供するものだ」「したがって、HTML5がいずれ優勢になれば、今の突出したアップル、グーグル、アマゾン支配の構図をひっくり返すことも可能と見られている」。

 「このため2011年頃から、HTML5に向かって走り出す企業が目立ち始めた」「たとえば主要メディアでは『フィナンシャル・タイムズ』『ボストン・グローブ』『BBC』『日本経済新聞』など」。

 「しかし、それでもまだウエブ・アプリは完全にネイティブ・アプリの域には達していない、と言われる。それなのに、何故、前述の世界的な企業が次々とHTML5を使ったウェブ・アプリを提供するのか」。

 「1つ目は『マルチ・デバイス時代の到来』である」「ここ数年でスマートフォンやタブレット、電子書籍リーダーなど、さまざまなデバイスが普及し始めた。ここにいずれはテレビや自動車など、私たちの身の回りにあるいろいろな商品がインターネット端末化して加わる。これらのマルチデバイスが個々に音楽、動画、書籍、ゲームなどのコンテンツを保存すると、ユーザーにしてみれば、それらをいちいち同期させるのは非常に面倒だ。むしろ、これらのコンテンツをウエブ・アプリ化して、クラウド・サーバー上に置けば、どこからでも、どんな端末からでも利用することができる」。

 「2つ目の理由は……『プラットフォーム戦略』を意識してのものである」「HTML5で作られたコンテンツ(ウエブ・アプリ)は、形式的には従来のホームページと同じものだから、デバイスにブラウザさえ搭載されていれば、どれがアイフォーンであろうとアンドロイド携帯であろうと同じように動く。したがってコンテンツ・プロバイダー側から見ると、アップストアやグーグル・プレイなどをバイパスできるということになる」。

 そして、携帯電話事業者や家電メーカーの奮起を促すというのが、この本の大筋なのだが、第2章「HTML5を巡って交錯する米IT列強の思惑」、第3章「領域破壊にとまどう日本の『モノ作り』と『コンテンツ』」などで展開している、日米の産業界に詳しい小林氏ならではの産業論、企業戦略論が面白い。
 終章の「あなたの仕事に役立つHTML5講座」ではより深くHTML5が理解できる。


 本書はいろいろなエピソードが面白く、以下の話は琴線に触れた。

 「米IT列強は、新しい仕組み(プラットフォーム)を作ろうとするとき、相手(コンテンツ・プロバイダー)に気を遣ったり、相手のやり方を尊重したりするといった姿勢はいっさい見せない」「こうした姿勢の背後にある、彼らIT列強の意図は明白である。それは『何か新しいことを始めるときには、既存の業界に気を遣っていてはだめだ。むしろ既存の枠組みを破壊して、俺たち自身のルールに基づいて新しい枠組みを作ってこそ、真に画期的でユーザーのためになるサービスを作ることができる』という考え方だ」。

 既存の書籍業界に気遣いばかりしているから、ソニーやパナソニックの電子書籍ビジネスはうまくいかなかった。
 日本の政界も、市民一人ひとりを見るのではなく、いろいろな利益集団に配慮ばかりしているから、新しい社会システムが築けないのだろう。

 政治や産業にかかわる人間は、市民、消費者をまっすぐに見て、目先の利益を超えたグランドデザインを描かなければ、これから衰退する一方ではないかと感じた。

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