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三田誠広著『夫婦って何? 「おふたり様」の老後』(講談社+α新書)

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夫婦って何? 「おふたり様」の老後

 三田誠広著『夫婦って何? 「おふたり様」の老後』(講談社+α新書)を読んだ。
 
 芥川賞作家の三田氏は1948年生まれ。団塊の世代だ。

 『団塊老人』と言う本も書いている。

 まえがきでこう言っている。
 「団塊の世代と呼ばれる人数の多い世代が定年になって、年金、医療、介護を受けるようになる。すると社会全体の負担が増え、大きな社会的危機が来るのではないかという観点から、どうしたらその危機をきりぬけることができるかと自分なりに考えてみた」「人間が老いるというのは自然界の摂理だから抜本的な解決策はないのだが、とにかく高齢者が明るく元気に生きていけば、健康保険や介護保険が破綻することもないだろうし、何よりも世の中全体が明るくなる」
 「これはとても大切なことで、老人たちが暗くみじめな生活を送っていると、若い人の生きる意欲が減退するし、子供を産み育てようという気分にもなれない。それでは国が滅びる。未来に希望がもてる社会を実現するためには、老人たちが元気で社会とつながりをもちながらいきいきしている姿を、若者たちに見せる必要があるのだ」。

 その通りだと思う。三田氏は、高齢化の問題に大変詳しい。

 この本を出した後、三田氏は地方に講演に出ることが多くなったらしいが「そこで自治体の担当者から、現実はもっと厳しいということを聞かされた」と言う。
 「定年退職をした夫が生きる気力をなくして自宅に引きこもる。すると妻が『主人在宅ストレス症候群』になって病気になってしまう。結局のところ、60代になったばかりの夫婦がそろって病気になるか、さもなければ、はやばやと『熟年離婚』ということになる」。
 「そこでわたしはこの本を書くことにした」「わたしは自宅の書斎で仕事をする。それなりのくふうをしないと妻のストレスが高まってしまう。『主人在宅ストレス症候群』を回避するためのノウハウということになると、わたしは達人だと自負している」。

 タイトルを見て、「夫婦仲良くしましょう」と言う本かと思ったが、ちょっと面白そうだ、と思って読み進めた。


 定年を迎えて、家でごろごろしている夫の描写が面白い。
 「目の前に、テレビの前でパジャマ姿のままごろごろしている老人がいる。確かにこの老人に感謝しなければならないと理性は判断しているのだが、未来のなくなった醜い老人の姿をまのあたりにしていると、どうしようもない嫌悪感が突き上げてくる」「しかもこの老人は、実際はまだ若い。あと20年から30年、このままで、あるいはより醜さを増強させて、自宅のお茶の間に居座り続けるのだ。そのことが妻を絶望の崖っぷちに追いこむ」。

 「未来のない粗大ゴミが出現して、主婦から大切な城を奪うことになる。毛布を巻いてごろごろしているところから、最近はこういう夫を、『ミノムシ亭主』というらしい。しかもこのミノムシは、時間の感覚だけはしっかりもっていて、『メシはまだか』と大声で叫ぶし、ほとんどうたたねばかりしているくせに、唐突に『おーい、お茶』などと命令を発するのである」

 「会社を離れて趣味や生き甲斐がもてない人間。これは明らかに欠陥をもった人間なのだ。こうした自立できない欠陥人間は、言ってみれば、日本企業の過剰な利潤追求によって発生した、産業廃棄物のようなものだ」。

 「粗大ゴミ、ミノムシ亭主、産業廃棄物……。40年働いて、やっと静かに休めると思っていた男性にとっては、なんとも厳しい批判かもしれないが、60歳くらいで人生が終わってしまうというのは、そもそも考え方が間違っている」。
 「あと20年、希望をもって生きなければならない。目標の設定が必要なのだ。人生というのは、長い坂をどこまでも登っていくようなものだ。定年というのが頂上だと思ってはいけない。目の前の坂を登って、ようやく頂上だと思った先に、もう一つ、大きな峰があったと思ってほしい」
 「目標をもち、意欲をもって生きる。これが、粗大ゴミから脱却する秘訣である。定年になっても休むことなく、意欲をもって未来に向かって進んでいく夫の姿を見れば、妻も改めて、夫に惚れ直すだろう」。
 
 「まず、朝起きたらパジャマを着替えよう。ヒゲも剃ろう。朝食のあとは、用がなくても外出しよう」。

 そして、三田氏は第一章で、熟年の夫が妻に嫌われない方法を伝授する。

 「わたしは便座をつねに下げておくことにした」
 「便器や床が汚れているとすれば、それはすべてわたしの責任である。わたしはこまめに清掃をするようになった」。

 「妻の前でこそ、最高のオシャレをこころがけるべきではないだろうか」。

 散歩の仕方。
 「ただ、歩くだけでは時間がもったいない。車の往来の少ない裏道の安全なコースをいくつか設定しておけば、体がコースを記憶しているので、歩き始めたら、もう自分が散歩しているということは忘れてしまっていい。そこでいろいろなことを考える」
 「貯金してある退職金と年金とをちょびちょび使う人生では、あまりに寂しいではないか」。
 「友人とグループを作って趣味の活動を広げるとか、社会に役立つボランティアをするとか、自分で会社を作って稼ぐとか、何か面白そうなことはないかと構想を練る」。


 第二章では、定年後の生きがいを考える。

 「1回きりの人生だから、ただ働きづめに働いて死んだということではなく、何か文化的なものを遺したいではないか」「文化というものは、ただ見るだけでなく、参加することに意義があるのだ」。
 「隠居というのはただのリタイアではなく、新たな名前でもう一度、人生を再出発することを意味している」。
 「趣味の世界というのは、お金を使うばかりではないのだ。コーチになるためにはそれなりの技術の習得が必要で、授業料を払わなければならないが、技術が身につけば、逆にコーチになってお金をもらうこともできる」。
 「少ない費用でたっぷり楽しめる。これが本物の文化なのだ」
 「何かに役立てる教養ではなく、教養そのものが最終目的であるような、本物の文化を求める熟年学生の出現で、大学のあり方も変わっていくはずだ」。

 「定年延長で働く期間を延ばしてもらったところで、賃金は半減してしまうことが多い。それならば独立して、自分が働く部門をそっくり引き受ける下請け会社を作ってはどうだろうか」。
 「大手企業はいま、製造部門だけでなく、経理や総務の部門まで中国にアウトソーシングする動きをみせている。これに対抗できるのは老人パワーだ」。
 「目指すのは金銭ではなく、社会に尽くすことで、生きることの充実感を得るということだ」。
 「老人フリーターの派遣業みたいなものをNPOでやれないだろうか。実際に仕事をする人だけでなく、緊急の場合に代役として仕事に出るリザーブ要員をスタンバイさせておけば、持病をもっている高齢者でも、調子のいい時だけ働けばいい」

 「わたしは、定年後の生活こそ、本当にやりたいことを探し、本当の自分と出会う、本物の青春時代だと考えている」。


 夫がいきいきと生きるようにするためには妻にもノウハウが必要と三田氏。第三章でそれを伝授する。
 
 「とにかく、しばらく休んでいると、体も頭も、いうことをきかなくなる。老人というのは自転車みたいなもので、止まってしまったら、バッタリ倒れるしかないのだ」。
 「夫のこれから先の人生が、妻の方にずっしりとのしかかってくる。いま妻ががんばらなければ、夫は一生、生きたしかばねになってしまう」。

 「妻には妻の生活があるということを、夫に理解させることが出発点である」。

 「子供に自立が必要なように、亭主も妻から自立しないといけない。かわいそうだけれども突き放して、一人でできるかな、と温かく見守ってやる」。

 「ずっと昔、わが子がよちよち歩きのころに、公園デビューをさせて、近所の子供たちと付き合わせ、友だちをつくってやった」「それと同じことをやるのだ。亭主というものは、子供と同じように、あるいはそれ以上に手のかかるものである」
 「地域の主婦が何人か集まるような機会には、ご近所の男性たちが、どんな暮らしぶりをしているかといった情報交換をする必要がある」。

 「お茶の間というのは、かつては家族の団欒の場であった」「しかし、子供が学校に行き、夫が会社で働いている間は、妻の城であり、地域コミュニティーの社交の場でもあるのだ」。
 「できればじゃまな亭主には、図書館にでも行ってもらいたいのだが、次善の策として、夫の居場所を作ってやる必要がある」「書斎などといったものがあれば、最高の居場所になる」。

 「夫が地方出身者の場合、定年になれば生まれ故郷に帰るというのも、一つの選択肢になる」「奥さんが同郷で、農家の出身で、性格も地味な良妻賢母型というのなら、問題は生じないだろう。しかし都会での暮らしが長い女性なら、農業など考えたくもないということになる」。
 「とりあえず夫だけが故郷に帰るという選択肢もある。妻は自宅に残り、夫の故郷を別荘のようなものと考え、時々訪ねるということで様子をみるのだ」。

 「妻だけなら、結婚して独立した息子のところや、嫁に行った娘のところに招かれるケースもある。子供の世話を任せれば共働きができるから、おばあちゃんの同居は歓迎される」。

 「老人の介護は専門家に任せるべきだ」。
 「親の介護を心配しているうちに、夫の介護をするはめになる。親はそのうちいなくなるが、まだ60代の夫は簡単には死なない。夫のオムツをかえる生活があと20年近く続く。そう考えると、夫の健康というものが、妻の老後の生活の重大ポイントであることはわかるだろう」
 「対策は簡単である。朝昼晩、粗食に徹することだ」。
 「夫が酒を飲み始めたら、『朝から酒を飲むな』と一喝しよう」。
 「まさかとは思うが、家の中で夫にタバコを吸うのを許している妻はいないだろうか」「定年を機に、きっぱりと禁煙する。妻の方から提案してみると、夫もしぶしぶ従うのではないだろうか」。


 そして、終章。

 「未来のビジョンについて、心ゆくまで話し合う必要がある」
 「自分の人生とは何だったのか。そういうことを考え、この世を去っていくための覚悟を固めるのが、晩年という時期だろう。その最後の期間、人生の多くの時間をともにすごしたパートナーがそばにいて、おりにふれて思い出を語り合うことができるのは、とても幸せなことだとわたしは思う」。

 当初予想していた「おふたり様」の老後になりかけたとき、また、ちょっと話がとんでくれた。

 「ある程度の年金があると安心している人も、これからどんどん支給額が目減りしていくおそれがあるし、医療も介護も、自己負担の割合が増やされるおそれがある。放っておくと、老人は社会から切り捨てられてしまう。政治に対する無知や無関心は、わが身を滅ぼすことになる」「日本は民主主義の国だ。高齢者が結集して政党を作るなり、高齢者を大切にする政治家の応援組織を作るなりして、民主主義にのっとった選挙の投票で、老人にやさしい国を作ればいいのだ」。
 「高齢者が明るく元気にすごすことが、この国を支えることになるのだ。そのためには、一人一人の高齢者が積極的に家の外に出ていき、社会と関わることが必要だ」
 「すでに高齢者向けのビジネスが盛んになりつつあるが、投資信託とか、パック旅行とか、高齢者に金を使わせることしか考えていない、貧しい発想の企画しかないのが残念だ」「むしろ高齢者自身がアイデアを出して、少ない出費で多く楽しめるようなイベントを企画すればいいと思う」。

 「単に消費するだけでなく、積極的に社会と関わり、社会に貢献する。そういう老人たちの活動があれば、若者たちも、老人に理解を示してくれるだろう」。


 積極的に社会に働きかけるような高齢者になるための基本が「おふたり様」であり、それをリードするのは女性の方なのだろう。この本を読んでそう思った。 

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