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映画『利休にたずねよ』

Rikyunitazuneyo

 映画『利休にたずねよ』を観た。

 公式ホームページのイントロダクションを見ると、大切なことはほとんど言い尽くされていた。

 利休……彼こそは「茶聖」とまで称えられた至高の芸術家。「美」に対する見識や独創性の数々には、かの織田信長や豊臣秀吉でさえ一目を置いたという。もしも、その崇高なまでに研ぎ澄まされた美意識が、若い頃に体験した情熱的な恋に始まっているとしたら……?大胆な仮説のもとに希代の茶人の出発点を取り上げ、第140回直木賞を受賞した山本兼一の歴史小説『利休にたずねよ』(PHP文芸文庫)。それは、まさに美の本質に迫る極上のミステリーにして、心を焦がす究極のラブストーリー。もはや歴史小説の枠を超えた傑作が今、長編映画として新たな生命を宿す。

 あとは役者の演技を楽しむだけ、という感じである。

 利休の茶の師匠役を故・市川團十郎が演じたことも含め、市川海老蔵でなければ、この原作の千利休役は務まらなかったのではないかと思った。

 利休切腹の際、利休が肌身離さず持ち歩く「美しいもの=香合」を差し出せば許すという秀吉の言葉に対し、「美に対してしか屈服しない」と語る利休。美しいお点前を見せ、美を追求すると言い切る利休の姿は、華がある海老蔵だからこそ演じられる。「千宗易」以降の利休は、父親が亡くなってから一心に歌舞伎に打ち込む海老蔵とオーバーラップしていた。

 しかし、この映画が海老蔵でなければできないと思ったのは、利休が完璧に近い芸術家、プロデューサーの境地に至る前の、若いエネルギッシュな時代が、親に心配をかけた海老蔵とダブったからである。

 美を体現する海老蔵も、はち切れんばかりの海老蔵も、どちらも海老蔵なのだろう。利休の二つの側面をどちらも完璧に演じてくれた。

 「本当に美しいもの」が、陶器ではなく、わび、さびでもなく、一人の女性だということが事実だったとすれば、日本の「おもてなし」の骨格を形作った原点も「恋」だったということになる。それは、とても素晴らしいことではないかと思うのである。 

 利休の美の原点となる高麗から人身売買されて日本に来た女性を演じたのはクララという韓国の女優。失った彼女を追い求めることが利休の美の追求になったと言われて、ナットクできるだけの、本当に美しい女性だった。この映画では、海老蔵に次ぐ大事な役だった。

 山本兼一の原作は読んでいないが、おそらく、原作者も満足のいく、芸のレベルの高い映画だったのではないかと思う。

 海老蔵がますます好きになった。

 監督 田中光敏

 キャスト
 千利休:市川海老蔵
 宗恩:中谷美紀
 武野紹鷗:市川團十郎
 織田信長:伊勢谷友介
 豊臣秀吉:大森南朋

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