新橋演舞場初春花形歌舞伎「通し狂言 壽三升景清(ことほいでみますかげきよ)」
新橋演舞場(中央区銀座6-18-2、03・3541・2600)に初春花形歌舞伎「通し狂言 壽三升景清(ことほいでみますかげきよ)」を観にいった。
チラシの「みどころ」にある作品解説がわかりやすい。
2014年の新橋演舞場の年頭を飾る「初春花形歌舞伎」では、"悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)の世界"を新たな構想で描く、通し狂言『壽三升景清』を御覧頂きます。
平家一門が繁栄から源氏との戦いに敗れ没落するまでを描いた軍記物「平家物語」の中の登場人物の一人、悪七兵衛景清。「悪」は勇猛さを指すと言われ、その名の通り源氏との戦いの中で勇将ぶりを発揮した景清は、「平家滅亡の後も源氏打倒を胸に秘め、頼朝の暗殺を三十七回も企てた」など、いわば"反逆の英雄"として数々の伝説的なエピソードが語り継がれています。
この景清の謎に満ちた波乱の生涯は、魅力的な題材として、能、浄瑠璃など幅広いジャンルで取り上げられ、歌舞伎でも、いわゆる「景清物」として多くの作品が創作されています。七世市川團十郎が撰定した「歌舞伎十八番」には、二世團十郎が初演した『関羽(かんう)』『景清(かげきよ)』、四世團十郎が初演した『鎌髭(かまひげ)』『解脱(げだつ)』の四演目で景清が登場します。
これまで「歌舞伎十八番」の継承と復活に意欲的に取り組んできた市川海老蔵が新たに挑む『壽三升景清』。「歌舞伎十八番」ならではの荒事で魅了する、お正月にふさわしい華やかな舞台にどうぞご期待ください。
入場前にイヤホンガイドを借り――。
弁当を買い――。
筋書き(カタログ)を買い――。
1階16列21番の席に荷物を置き――。
海老蔵と妻の麻央さんが初めて出会った場所をチェックした(昨日、日テレの番組で見た)。
その後、時間まで演舞場内をウロウロしていた。
そして、開演。
面白かった。
勧進帳に代表される歌舞伎十八番だが、ほとんど演じられていない演目もあるという。今回は、景清が登場する4つの演目を「通し狂言」としてひとつのストーリーにまとめた。伝統の十八番を自ら蘇らせようという海老蔵の熱い気持ちが伝わってきた。
カタログに掲載されているインタビューで、海老蔵はこう言っている。
「景清が死ぬ間際に走馬燈のように人生を振り返った時に、彼の欲望を全て叶えた夢をみせてあげたいと思っています。『関羽』で無敵の力を得るということを証明し、『鎌髭』で源氏のところに乗り込み、思う存分やりたいことをして引っ込む。そして『景清』では、重忠と問答のようなものがあり、牢を破り、立廻りをする。『解脱』では、そういったものを全部乗り越えて悟りの境地にいく。亡くなる0.0何秒という瞬間の中に、ぱーっと、想像した全てのものを絵巻物的荒事として表現したい、それが私の今回のテーマです」
見得を切る海老蔵が格好良かった。中村獅童とのコンビが輝いていた。ラストの「解脱の場」は、この世のものと思えない美しい舞台だった。
今回の歌舞伎を見る前に能を鑑賞したことで、歌舞伎は、格式を重んじながらも、自由自在な展開で観客を楽しませるエンターテインメントであることに気づいた。江戸時代においては、現代の映画のような存在だったのではないだろうか。
海老蔵は、観客を、まだ見ぬ世界にどんどん誘ってほしい。
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