人を幸せにする空間づくりのノウハウがわかる!戸倉蓉子著『いい家に抱かれなさい』 (日経BPコンサルティング)
「患者が元気になる病院」や「お年寄りが若々しくなる高齢者施設」づくりを目指すドムスデザイン代表の戸倉蓉子(とくら・ようこ)さんの原点を知りたいと思い、戸倉蓉子著『いい家に抱かれなさい』 (日経BPコンサルティング、2008年12月22日発行)を読んだ。
同書によると、戸倉さんの略歴は――。
株式会社ドムスデザイン代表。建築デザイナー。ナースとして慶応義塾大学病院に勤務中、人間は環境で生き方が変わることを悟り、インテリアの勉強を始める。 インテリアコーディネート会社を起業後 1998年、ミラノに建築デザイン留学。世界的建築家パオロ・ナーバ氏に師事し帰国後、一級建築士取得。イタリア滞在中に多くの街を訪ね個性あふれる建築空間と人生を謳歌する人々に感銘を受ける。 回廊の家、路地のあるマンション、元気になる病院などユニークな企画で豊かなライフスタイルを提案する。2006年、日本フリーランスインテリアコーディネーター協会会長就任。 講演活動、雑誌等への執筆多数。
帯を見ると、ストレスの多い「30代女性」たちに向けて書かれた本のようだが、そこには、高齢者や患者をも元気にする秘訣が書かれていた。
看護師だった戸倉さんが最も影響受けたのがナイチンゲール。戸倉さんは「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを与えることである」というナイチンゲールの言葉を引用。
「これはまさに良い住環境をつくる秘訣ではありませんか」とし、戸倉さんなりの分析を加える。
たとえば、「暖かさ」。
「現代の私たちはありがたいことに、布団や暖房などが 十分にあります。しかし、私たちに本当に足りないのは「暖かさ」ではなく、人との触れ合いや肌のぬくもりを感じる「温かさ」の方ではないでしょうか」「ひと昔前は、親子三代が一緒に暮らすスタイルが主流でした。『向こう三軒両隣』という言葉もあったように、夕飯のおかずをおすそ分けしたり、隣の子供も自分の子供のように一緒に育てたりする。地域社会が存在していました」「古くは江戸時代でもそうでした。狭い路地を行き来するとき、『傘かしげ』という所作が行われていました」
「私が10戸、20戸の分譲住宅のデザイン監修を行うときはイタリアの街をモデルにしています。よくお手本にするのはトスカーナ州にある『サンジミニャーノ』という街」「私はイタリア建築を日本に再現するのではなく、サンジミニャーノの街で暮らす人々のような“豊かさ”をつくりたいのです」「—―隣人への心遣い —―街を愛する心 これらは決して目に見えるものではありませんが、人間の心に大きな影響を与えるものです。街はそこに住む人の舞台です」
「CHAPTER2 豊かな私になるための『いい家』選び7つの条件」も、なるほど、と思う。
「イタリアの玄関は小さくても二畳くらいの大きさがありますが、日本のマンションでは五、六足の靴を置いておくとそれでいっぱい」「日本のドアは外開きですが、イタリアのドアは内開きです。もしドアを外開きにしていたら外に取りつけてある蝶番をはずし、ドアごと取りはずして泥棒が入ってしまう恐れがあるからです。しかし玄関が内開きのおかげで、お客様をそのまま家にスムーズに迎え入れられます」「玄関は単なる靴脱ぎスペースではないのです。玄関スペースに五、六足の靴を並べていっぱいになってしまうような空間では、幸福が入ってくるスペースがありません。運気も玄関から入ってくるのですから」「ゆとりのある玄関スペースの目安は、小ぶりの椅子が置けるかどうかです」「私は30坪くらいの住宅でも玄関には豊かなスペースをつくります。そのポイントは、家の中になるべく壁をつくらないことです」
「自然界にはまったくの直線など存在していません。つまり、直線は人工的につくり出されたものなのです。人工的に作り出されたものなのです。人工的な空間にばかり見をおいていたら心が疲れてしまいます。あなたのバスルームを見渡してみてください。もし、直線ばかりが目立つ空間であれば、小物などに積極的に曲線を取り入れてみましょう。丸い石鹸・シャンプーボトルを選ぶ時も心地よい色や形かどうかも考えて」
この後の章では、女性たちが幸せを引き寄せるためのインテリアのノウハウなどを具体的に紹介する。「8星人・スタイルアップシステム」診断は、男性版もつくってほしい。
「努力の差がツキを呼び込むのです」「私はイタリアというアンテナを立てたときからイタリアに関する情報をうまくキャッチできるようになりました」「最近、心あたたまるコミュニケーションをしましたか?会話がなくても物が買えるということは、どこかで物のやり取りが金銭的なものだけになっているということです」——戸倉さんの経験に裏打ちされた金言にも共感した。
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