中村聡樹著『定年後を海外で暮らす本』(日経ビジネス人文庫)
中村聡樹著『定年後を海外で暮らす本』(日経ビジネス人文庫、2011年7月1日発行)を読んだ。
この本は興味があって購入したものの、長い間、“ツンドク”状態だった。定年後、医療の不安もある海外で暮らすのは現実的ではないと思っていたからだ。
しかし、ページをめくって、そんな非現実的な本ではないことがすぐにわかった。もっと早く読めばよかった。
「中には思い切りがよく、海外に永住する意志を早々と固めてしまう人もいるが、多くの体験者から話を聞いたところでは、あまりお勧めできない。もちろん、最終的に海外に永住することも選択肢の一つになるが、最初は日本をベースにしながら、徐々に海外での体験を積み重ねて行動範囲を広げていったほうがよいだろう」「そこで本書では、完全に他の国に移住するのではなく、これまで住んでいた家を日本に残したまま、1年のうち3ヵ月、あるいは半年を海外で暮らすスタイルを基本として、話を進めることにする」。
1年のうち3ヵ月を海外で! まさに思い描いていた定年後の暮らしだ。読み進めていくと、とても共感できる、中身の濃い本だった。
「巷では、観光名所を巡る旅に飽きてしまった人たちが増えてきた」「お気に入りの国と町を選んで、その地でゆったりとした時間を過ごす。駆け足で通り過ぎる旅行者ではなく、その町の『生活者』になり、旅をしながら暮らしていく」
「海外暮らしを始める前にスタンスを決めておきたい」「決してマニュアルを求めないことだ」「旅の方法は人それぞれに、取り組み方が違って当然だ。自分なりの暮らしを求めた結果うまくいかないことがあっても、それが経験となって活かされれば、振り返ったときに楽しい思い出になるだろう」「旅行に必要な手続きなどの基本的な項目を押さえたら、それ以外の暮らしぶりまで型にはめるようなことはすべきでない。常に自由に考えることである」。
「体験者の多くは、『今がチャンス』と機敏に行動しつつ、きっちりと保険をかけていた。それは、日本に最終的な拠点を残しておくという方法である」「残された時間を有意義に過ごすことが目的なのだから、リスクを取ってまで断行する必要はない。『決断は大胆に、計画は安全第一に』が理想である」。
年をとったら、人生経験も積んでいる。各国の文化に深く接してみたいと思うのは当然だ。通り一遍の海外旅行では物足りない。海外で3ヵ月暮らすことを目標にすれば、普通の旅行が下調べにもなり、それはそれで楽しそうだ。
中村氏はこう言っている。「積極的な人は、とりあえず気に入った国に出かける。簡単なパック旅行でかまわないので、1週間程度、できるだけフリータイムの多いツアーを選んで『下見』をしてみよう」「現地で暮らしている日本人に会って、話を聞くことができれば大成功である」。
避けて通れないのは語学だが、中村氏は次のようにアドバイスする。「いくら語学に長けていても、海外生活そのものに失敗してしまうケースはある。肝心なのは、言葉を使ってどのようにコミュニケーションを取るか、その姿勢なのである」「語学学校に通って基本を身につけていくことで、コミュニケーション力が少しずつ身についていく。自分の考えを懸命に伝えようという姿勢は、海外では好意的に受け入れられる。話せないことを理由に消極的にならず、コミュニケーションを続けていけば、やがて時間が言葉の問題を解決してくれるだろう」。
総論はわかったが、さて、何から始めるか。
中村氏が薦めるのが「ツアーで行く語学留学」だ。「初めての海外暮らしであれば、何もかも自分でやり遂げることに必要以上にこだわらないで、さっさと出掛けることを優先したい」からだ。
「留学期間は基本コースが2週間、希望に応じて、期間を延長できる。現地では、語学教育の実績のある専門学校と提携しているものがほとんどで、その学校のカリキュラムに参加することになる。宿泊先は、ホームステイが基本で、希望者には、ホテルはB&B(ベッド&ブレックファスト)の宿泊を手配してくれる。学校に通いながら、現地のコミュニティに参加したり、ツアーに参加したりできるカリキュラムが組まれている」「いくつものツアーが用意されているので、まずはパンフレットで確認し、旅行会社を訪ねて詳しく説明を聞いてから参加するかどうかを決める。ただし、事前説明が行き届かないツアーには参加しないほうが無難である」。
あとは、海外で何をするか、どこへ行くか、だ。この本のおかげで、「海外暮らし」のハードルが低くなった。
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